休憩の後、2回目の戦いが始まった。
お互い、この回で決着をつけようと、「始め」の宣告と同時に飛び出すつもりだ。その気持ちは、開始線に立った時から誰もが感じていた。
伊達が試合開始を宣した。
思った通り、2人とも一気に間合いを詰めた。共に攻撃するが、間合いが短いため、突きでも有効打にならない。そういう場合、本来ならば打ち技を使うところだが、まだそういう技を使いこなすまでに至っていない分、どうしても通常の突きや蹴りに頼る組手になってしまう。
道場内、特に内弟子稽古の場合、試合ルールという枠にとらわれない稽古を信条とする関係上、試合ではめったに取られることのない打ち技でも、1本に相当すると認められる場合はちゃんと取られる。だが、まだ試合ルールを意識する段階であるため、なかなかそういう使い分けができていない。そのため、こういう近間になった場合、有効打が出せないのだ。
2人とも後ろに下がらないため、組み合い、床に倒そうとする。両者とも、同じような感じでもつれ合うが、堀田がちょっとバランスを崩した。
だが、堀田が高山の道衣の襟と袖を掴み、引っ張り込んだため、そのまま2人とも床に転んだ。倒れた拍子に堀田の掴みが緩み、態勢を先に立て直したのは高山だった。そして立ち上がりざま、すぐに下段突きを放った。
こういう場合、たとえ防具を着けていても、危険防止のために直接加撃は行わない。当たる寸前で止めることになっているが、突きとして有効な間合いが取られているかどうかが判定の対象となる。また、突きを出すタイミングも問題で、倒れた状態から少しでも間が開けば無効となる。
高山の攻撃は攻撃までの間があったということで、1本にはならなかった。
堀田もそのまま攻撃を受けるわけではない。倒れた状態から蹴りで反撃してくる。高山を近づけさせないようにするためでもあるが、攻撃としての意識もある。
もちろん、伊達もたとえ倒されてからの攻撃であっても、的確に入ったと認められるものであれば1本を取る。それは両者とも分かっていたために倒れてからも攻撃するのだが、残念ながらそのような攻撃にはならない。
伊達が中に入って「止め」をかける。
「2人とも、闘志は認めるが、技が雑になっては喧嘩と同じだ。戦いの中でも平常心を失わないようにし、きちんとコントロールされた技を出し合うように」