2回戦目は、互いに闘志を抑えすぎたために、モヤモヤしたものが残ってしまった。休憩時間の間、それは互いに心の中で感じていた。
「次の回で決着をつけよう」
2人は同じことを考えていた。最初に伊達から言われていた「平常心で行うこと」というアドバイスは、すっかりどこかに飛んでいた。
「そろそろいいか? 始めるぞ」
伊達が2人を見て、3回戦目を促した。両者とも、早くやりたくてウズウズしていたために、二つ返事で組手に臨んだ。
開始線に立つ両者。防具越しでも互いに目線を外さないのが分かる。表情すべてが見えるわけではないが、その雰囲気からすごい形相になっていることは誰にでも容易に想像できる。
伊達は最初と同じような注意をした。
一応「はい」と答えるものの、2人とも心の中は異なっていた。
武道は表芸としては戦うためのものなので、そういう闘志は大変結構なことではあるが、上位の武道を意識するならば、平常心の意識は不可欠だ。これは古来の名人・達人の格言にも必ず出てくる要素であり、単純な闘争心だけでは本当に武道・武術の道を究めることはできない。
まだ途上の2人にそういうことを求めるには無理な部分があるが、伊達としては内弟子だからこそ、そこを理解してほしかった。
だが、伊達のそういう気持ちがうまく届かないまま、組手は再開された。
両者ともすごい勢いで飛び出していく。しかも、最初から1本取ってやろうという気持ちが先行して、不要な力みも入っている。そのために、それぞれの技も乱れている。低レベルな喧嘩を見ているような雰囲気だ。
2回戦目で感じていたフラストレーションが、ここで爆発しているようだ。伊達が注意した平常心の意識を失ったのだ。
伊達はたびたび両者の中に入り、戦いを中断した。そのまま続行することの危険性を感じて、両者の頭を冷やすために、意識的に中断していた。最初と同じようなアドバイスも繰り返し行った。
しかし、この回で事故が起こった。