目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

ガン 24

 お昼過ぎ、見舞いに行く時間になった。一度行ったところなので、地図を見ながらでもある程度見当がつく。2人はそのまま徒歩で病院に向かった。

 御岳の病室は分かっている。受付でお見舞いの旨を伝え、2人は御岳の病室に向かった。

 御岳はベッドでくつろいでいた。2人の訪問にすぐに気づき、会釈をした。その後、談話室のほうに行こう、というジェスチャーをし、3人は病室を出た。他の患者さんたちに気を使ってのことだ。

 談話室に入ると、高山が言った。

「御岳さん、俺たち、お昼くらいの新幹線で帰ります。今度は東京で待っています」

「そう。帰る前に寄ってくれて、ありがとう。ところで、お蕎麦屋さんには行った?」

「はい、行きました。俺、79杯食べました。証明書がこれです」

 堀田が証明書をもらったことを嬉しそうに言った。龍田がもらえなかったものをもらって、ちょっと得意げな感じだ。基本的に龍田と堀田は似ている部分があり、こういう食欲自慢的なことは東京でもやっていた。だから今回、はっきりと証明書をもらったことが嬉しくてたまらないのだ。

「すごいね。たいていは30杯前後だというのに。賢は食べるねぇ」

 御岳が感心ながら言った。

「それから夜は、ちょっとしたスリルもありました」

 御岳の言葉に気を良くしてか、堀田が言った。この時も、妙にうれしそうな表情で言った。御岳にはちょっと意味が分かりかねたので、すかさず尋ねた。

「えっ? スリルって?」

「実は昨日の夜、映画館のそばのゲームセンターに行ったんですよ。ちょっと肩がぶつかって、危うく喧嘩になりかけたんです。幸い、高山さんのおかげで大丈夫でしたけど…」

 堀田が言った。堀田の顔には、それが問題であることの自覚はない。旅先での良い思い出の一つくらいの感覚なのだ。

 だが、本当にトラブルになれば面倒なことになる。御岳はすぐに堀田に言った。

「あっ、あの辺りか。あまり良くない場所だな。喧嘩しても2人なら勝っただろうけど、後が面倒くさいから、逃げて正解だよ」

「ほら見ろ。やっぱりみんな、そう言うだろう」

 高山が堀田のほうを見て言った。

「そうですね。反省します」

 すまなさそうに堀田が言った。ここは堀田を責める場所ではないので、この話はそこで打ち切りになった。

 それからしばらく雑談が続き、病院を後にした。

 2人はそのまま駅に向かい、東京に戻った。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?