「じゃあ、どうするんですか」
堀田が反論するような感じで尋ねた。
「まず龍田君に、はっきり断ってもらう」
伊達はきっぱりと答えた。
「そんなことで引き下がるとは思えません。もし、それで大丈夫なら龍田さんもこんなに悩まないでしょう」
また堀田が言った。口調は変わらない。
「俺もそう思います」
高山も同じ意見だった。
「もっともだ。しかし、最初にそういう意思表示ははっきりしなくてはならない。その上で相手がどう出てくるかを見極める必要がある。その点がはっきりいない内から喧嘩腰であれば、落ち着くものも落ち着かなくなる。まず相手の様子を知る、出方を伺うのは兵法の常道だ。君たちも武道・武術を学んでいるのだから、その点は理解できるだろう。龍田君、どんな連中なんだ?」
伊達が龍田に尋ねた。
「はっきり言ってしつこいです。そして卑怯なこともやります。俺も暴走族だったけど、あいつらのような汚いことだけはやらなかった。それは今でも誇りです」
龍田はその連中がやってきたことをすべて話した。暴行や強盗まがいのことなど、数え上げたらキリがないくらいだった。そこには未成年なら大した罪にはならないという甘えがあったことも指摘した。そして龍田たちのチームは、そういうことには大変腹を立てていたのだ。
「そうか。そういう連中だったら断ったくらいで諦めるような感じではないな。しかし、根っ子の部分では意外と臆病だったりする。だから虚勢を張ったりするんだ。また、何かあった時は、力のある者に加勢を頼んだりするかもしれないな。いずれにしても、その後の出方で対応を決めよう」
「じゃあ、いざという時にはやるんですね」
高山が言った。堀田も同じ意見らしく、高山の質問に伊達がどう答えるか、興味深げに見ている。
「やる、といってもいろいろな方法がある。あくまでも状況を見て、どうするかはその時考える。初めから本当に戦うことばかり考えてはいけない。先ほども言ったが、それが武道家として考える兵法につながっていくんだ」
内弟子たちにとっては多少不満が残る答えではあったが、何か事が起こった際には伊達にも考えがあることが分かった。
龍田は伊達をはじめとして内弟子全員が自分の味方になってくれたことを大変嬉しく、また心強く感じていた。同時に、今度連絡があった時にはきっぱりと断る心積もりができた。