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解決 2

 次の日、内弟子稽古が終わった時、御岳から電話があったことを伝えた。昨日話しても良かったのだが、伊達に思うところがあって、みんなに伝えるのを1日延ばしたのだ。

 みんなを集めたところで、伊達が言った。

「昨日、御岳君から電話があった。元気そうな声だったよ」

 みんなの顔が一瞬で変わり、笑顔で一杯になった。龍田のことで緊張の連続だったが、うまく対応でき一段落したところに御岳からの連絡の話だ。病気の経過もある程度知っているだけに、この時期の電話であれば退院や復帰の話が出たであろうことは、容易に想像できた。2つの嬉しさが思わず顔に出たのだ。

「いつ帰ってくるんですか?」

 松池が尋ねた。

「退院してしばらく、実家で日常生活のリズムを取り戻すと言っていた。その期間を入れて、およそ1ヶ月後くらいになるようだ。みんなによろしく、と言っていた」

「そうですか。嬉しいな。また、一緒に稽古できるんだ」

「早く戻ってこないかな」

 内弟子たちの口から御岳の帰りを楽しみにしている言葉が出てきた。それぞれ一度は見舞いに行っているので、峠を越したといっても病気の時の御岳を知っている。元気になった姿を見るのは帰ってきた時だ。どうなっているか、みんなの心の中に期待が膨らんだ。

「みんなの気持ちは分かった。御岳君もまた一緒にやりたいと言っている。だから出来るだけその方向でやれるように考えたいが、実際にどうするかは帰ってきてからきちんと話をし、その上で決めたいと思う」

 みんなの気持ちは御岳の復帰を待ち望んでいるが、伊達はあえてこの時に現実の話をした。

 御岳の退院と回復は嬉しい。だが、ここでの内弟子修業は、癒しだけでなく武道の稽古と一緒に行なわれるものだ。当然、それに耐えられるだけの肉体的条件が必要となる。それは会って、様子を見なければ分からない。その結果、御岳には内弟子継続は無理という判断になるかもしれない。伊達が御岳からの電話の話を次の日にしたのは、今後の御岳の内弟子修行について考えていたためだ。

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