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解決 3

 感情論としては、御岳が希望すればそのまま継続させたいのは山々だが、それにはいろいろな条件がクリアされなければならない。御岳の将来もある。伊達には前途ある若者を預かり育成する責任があるが、そこには一定のルールもあり、それはたとえ伊達であっても曲げるわけにはいかない。今後、同様の問題が出てきた時の悪しき前例にならないようにするには、時として心を鬼にしなければならないこともある。それが今回でなければ良いのだが、そこは御岳の状況を見た上で決まる。

 ただ、いきなりみんなの前から御岳がいなくなる、というのは良くない。伊達は事前にその可能性を告げ、残念ながらということになっても動揺が起こらないよう、あらかじめ可能性について言及したのだ。

「でも、そんなことになったら御岳さんがかわいそうです。せっかく内弟子としてもう一度やりたいと思っているんでしょう? だったら、以前とまったく同じような内容でなくても、続けていいんじゃないですか?」

 龍田が言った。性格的に熱くなりやすいタイプなので、こういう話になると情の部分が出てくる。ある面では大変良いが、流されると見えなくなることもある。伊達にしても龍田の言い分は十分すぎるほど分かっているが、感情面が突出した場合のデメリットも熟知している。

「その考えはもっともだ。今話したことは、まだ決まったわけではない。あくまでも御岳君の意思と、体調を見た上での総合判断が必要だ。みんなは内弟子としての修行に耐えられないという時、それを引き留めることで、稽古ができない自分を責める御岳君を見たいのか? 決定自体は2つの選択肢しかないが、それを決めるにはいろいろ考えた末になる。単純なことじゃないんだよ。でも今は、元気になった御岳君をそのまま迎えよう。病気と戦って生還したところをねぎらってほしい」

 実際この時点では、まだ何も決まっていない。ただ、ことがことだけに、場合によってはということまでも知っておいてほしかったのだ。

 その気持ちがどこまで通じたか分からない。龍田などはまだ完全に納得したという顔ではないが、一応全員、了解の返事をした。

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