中途半端に言葉が途切れると、余計に気になるものだ。御岳は伊達に尋ねた。
「『ただ…』、何ですか?」
強い口調ではなかったが、ここはきちんと尋ねなければならないと思い、しっかりした口調での質問だ。
「うむ。空手のことだ。体力について、普通の生活ということならもう大丈夫だろう。しかし、内弟子として続ける場合の武術の稽古のほうなんだ、問題は…。体力的なことを考えて、今は一般生の稽古にのみ参加してもらっているが、それもなかなか難しいようだね。内弟子稽古は一般部より激しくなるので、今の状態で継続できるかという問題が出てくる。基本的に『活殺自在』を意識した部分が内弟子修業の根底にあるからね。『活』は問題なくても、もう一つの学び、『殺』とのバランスがある。内弟子修業の場合、両者の微妙なバランスの習得という目的があるが、その一方が難しいとなると、一度考えてみなければならない、ということだ」
伊達は内弟子の意味を、しっかり目を見ながら改めて御岳に話した。
話を聞きながら、実は御岳のほうも、空手の稽古で自分の身体が以前のように動かないことに大変なもどかしさを覚えていたことを、改めて心の中で確認していた。内弟子の長男格としての立場もある。それが後輩たちに不甲斐ない姿を見せていることに、自分自身にもやりきれないものを感じていたのだ。もちろん、それはガンのためにこれまでの体力が戻っていないことが原因であり、決して御岳の問題ではないことは伊達も理解している。御岳もそのことを理由に一方の学びを軽視するつもりもない。
そのため御岳自身、伊達のもとで内弟子として続けていきたい、という気持ちはあるものの、もう一方では限界かもしれない、という気持ちも芽生えていた。伊達もその辺りの気持ちを何となく感じていたこともあって今回の話になったのだが、そういう意味では御岳も大きなショックを受けたということはない。