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解決 13

 伊達は、事ここに至っては腕力的な衝突は避けられないと考えた。しっかり相手に分からせるためにも、力の違いを具体的に教える必要がある。しかし、相手に無用の怪我をさせるわけにはいかない。打撲程度のことならば通常の稽古でもよくあるので問題はないが、骨折とかそれ以上の怪我であれば問題がこじれてくる。いくら無法なふるまいをされたとしても、こちらは常識を持った集団だ。それなりの対処法を講じなければならない。伊達は頭の中で、どのようなルールであれば実力差を分からせることができるかをイメージしていた。

 もちろん、その自信には根拠がある。伊達は黒田たちが道場に入ってきた時から全員を観察していた。特に黒田と北島以外に注目していたが、相手を威嚇する時にありがちな態度が全員に見て取れた。

 それは必要以上に胸を張り、両足をやや外開きにするといった典型的なポーズだ。これは弱い動物が襲われた時、自分を大きく見せて侵害者を威嚇する姿に似ている。強く見せようという仕種なのだ。一見強そうに見える相手より、本当に何かやっているのか、と思われるほうが強いことが多い。それは抜き身の刀ではなく、鞘の中に納まっている刀と同じだ。恐さは目に見える場合より、見えない場合のほうが大きい。武術的な目から見ると、この3人はいわゆる虚仮威しこけおどしのレベルなのだ。

 実際、黒田の口上がある程度本当のことであっても、毎日本格的な武術の稽古をやっている者とは基礎体力も違うし、身体の動きも違う。虚勢で勝てる可能性がある喧嘩と異なり、本当の戦いになった時の地力の違いがそこに現れてくるので、伊達は心の中で早々に負けを認めさせるようにもっていきたいと思っていた。

「では、君たちからはさっき話が出た3人でいいんだな。君と君、2人はいいんだな」

 まず、戦う人数を確認した。どのみち、黒田と北島の場合は話にもならないことは以前の一件で証明済みだったが、念を押す意味であえて確認した。

「おっ、おう。そうだ。お前らなんか、3人で十分だ」

 予期せず自分たちにも話がふられて、少しびっくりした黒田だが、ここでも虚勢を張った。

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