伊達は内弟子たちのほうに行き、誰が相手をするかを相談した。御岳は病み上がりなのではじめから候補ではないが、内弟子は4名が戦える。1名多いので、誰が戦わないかというのが問題なのだ。この様な状態になれば、もともと血気盛んな若者だけに血が騒ぐ。全員、自分がやる、ということを盛んに伊達にアピールしている。
その中で龍田については、もともとのターゲットになっているだけに、外したらまたしつこくやってくるかもしれないので、候補としてはすでに決定している。だから松池、堀田、高山の誰が抜けるか、ということを決めなくてはならない。
全員がアピールする中、いつまでたっても決まらないのでは先に進まないので、公平にじゃんけんで決めることになった。これはある意味内弟子たちの余裕の部分で、こういう様子を見せつけるのも伊達の作戦の内である。
その状況を見ている黒田たちは、少々苛立ってきた。
「お前ら、なめてんのか。誰でもいいから早く決めろ。すぐ片づけてやるから。3対4でもいいんだぞ」
黒田が大きな声で言った。内弟子たちはそういう声を無視し、結局じゃんけんで松池が外れることになった。松池の表情から残念そうな心が伺えたが、しっかり戦いぶりを観戦しようという気持ちで臨むことにした。
「では、こちらは堀田、高山、龍田の3人が相手をする。それでいいな」
内弟子たちの決定を黒田たちに伝えた。
「そんなのどうでもいい。早くやろうぜ」
「ここでの組手の稽古は防具を着けて行なうが…」
伊達が道場での稽古のやり方を説明しようとした。しかし、黒田が話を遮った。
「防具なんて必要ねえよ。お前たちは防具で守られて武道ゴッコしているかもしれねえが、俺たちは実戦なんだよ、実戦。恐けりゃお前たちだけ着けてもいいぞ」
黒田が小馬鹿にしたような言い方で返してきた。伊達としてはなるべく怪我を最小限に留めたいというところからの話のつもりだったが、それが理解できないのであれば、その範囲内で早く勝負がつくようにしなければならない。
伊達は堀田、高山、龍田を呼んだ。