数百匹のモンスターも、さすがに
救助と保護、それと駆逐の分担も、それだけいればなんら滞りはなく、
『
『……戦える機体が手を出さずに見ている、というのも……本来は問題行動ではある……が』
『邪魔してくれるなよ! チョロチョロしてても物の役には立たねぇ!』
『……だそうだ』
通信を共有しているため、ユアンに普通に拒否された。
そのユアンの駆るスミロドンは絶好調だ。片腕を旧式に付け替え、サブアームも一本しか稼働できない状態だが、それでも腕が三本あれば、
そして
確実に行くなら
それをユアンは派手に動きながら冷静に実践していた。
とは言っても、一撃でも
操作が慣性を振り切って反映されるタイムラグを考慮すれば、見てから避けるのでは間に合わない。常に回避機動を連続して仕込み、予知めいた勘でジャストタイミングに攻撃する……そんな技巧が求められるのが、
ヘルブレイズの場合はあまりに高い機動性のために、そこまで熟練した動きを必要としない。手出しできない距離から回避できない速度で突っ込み、あっという間にまた離れることができるのだからリスクは最小限だ。
それができない陸戦型
常に巨大貝の攻撃を誘い、軟体部分が引きこもるのを防ぎつつ、それが飛んでくるタイミングには必ず予想困難なステップで攻撃を触れさせない。
そして最高のタイミングで三発の拳銃を揃え、効果を最大に発揮しつつ自分が被害を食わない最適の距離で射撃。
人間がそのままやるのも難しいのに、数十トンの慣性を引きずり合って演じるそれが、どれほどの度胸と計算を両立させなくてはいけないのか。
パイロットである彼らだけが、その本当の凄まじさを実感として理解する。
(……腕に関しては本当に化け物だな、あいつは)
「気に食わんがな」
リューガも手助けには行かず、スミロドンの独演を放置しつつ残存モンスター探索に集中する。
人間が手こずるクラスのモンスターは、あらかたヘルブレイズを含む巨人たちが踏み潰した。
あとは犬猫レベルのモンスターだが、それでも油断をすれば、常人なら手足の一本ぐらいは捥がれかねない。慎重にセンサーレベルを調節する。
熱感知センサーは
いくつものセンサーを複合させ、無反応と過剰反応の狭間で、なんとか実のある情報を拾えるバランスを探る。
……なんとか拾った情報から実際の映像を覗き込んだら普通に中型犬だった。首輪もついている。
(誰か猟犬としてハントに連れてきてんのかな)
(むしろ人間が逃げ回ってる中よく普通に生きとるな……いや待てよ。近くにご主人がいるんでないか?)
(……それだ)
「サーク隊長。B棟エリアの北面に犬がいる。ハンターが連れて来たんだろうが、この騒ぎの中で隠れてない。確認してくれ」
『あぁ? おいガキ、犬がどうとかでいちいちこっちに……』
『アンタは黙りな』
何か邪魔臭いことを言いかけたジミーを女性パイロットのエリーが制し、それをよそにサーク隊長はヒューガたちの意図を素早く察する。
『なるほど。負傷している飼い主から離れられないというのは有り得るか。……俺が降りる。エリー、指揮を引き継げ』
『了解』
サーク隊長は
その彼がヘルメットをつけてダイアウルフから素早く降り、ヒューガの言ったポイントに走る。
そして。
『ドンピシャだ。酷い状態だ……普通の回復キットでは無理だ、高機能回復キットを誰か持ってこい!』
ユアンのスミロドンが巨大貝の
しかし、その規模とは裏腹に、ユアンの活躍は「
◇◇◇
「ま、基本的に一般人は
「そういうキルレシオ情報みたいなの紹介してるサイトもあるんだけどな……」
「あーそれねー。所詮シロートの考察サイト、情報が全然更新されないから今とはやっぱり食い違いも多いわよー。だいたい一機でなんとかしたのを『ネットの情報通りだとありえない!』なんて一般人がいちいち言うと思う? やってるんだからできるんだろう、としか思わないわよー」
ルティは苦笑しながらヘルブレイズ用
武装全般がそうならないように容量の大きい変圧器を実装しているのだが、それでもまだ完全かどうかはポテンシャルを使い切っていないのでわからない。
なので普通に使えるだけで充分、ということで逆の改造をしているのだった。それで通用しなかったとしても、どうせ「ドラゴン」に変形すれば高出力に特化した
「……そういえばツバサ。やっぱりいらなかったぞ」
ポケットに手を突っ込んで、出てきたパンツをツバサにぶらんと見せる。
……よく考えたらこれは変態行為ではないだろうか。自分のものとは言え。
「次からもちゃんと持って行ってね」
「毎回!?」
「いつ裸になるかわからないんでしょう?」
「滅多なことじゃならねえよ!」
「それがいつ起きるかわからないのが戦いってものでしょ」
「……それはそうだけど」
「裸で恥ずかしがってる男の子をそんなとこから引っ張り出すの、私やルティさんなら心が痛まないわけじゃないし。ちゃんと備えておいて」
「…………」
一応心が痛んではいたらしい。
「ヒューガと私が逆の立場だったら、絶対下着持たせるでしょう?」
「……それはまぁ」
まず、変異しているとはいえ裸の女性をコクピットから引っ張り出すとかできるだろうか。
さすがにいろんな意味で出来なさそうな気がする。
いや、そもそもそういう意味で出られなかったわけじゃなく……とツバサに抗弁しようとしたが、結局彼女はヒューガの「変異」をその程度のものとしか捉えていないということでもあり。
それはそれで救われる話でもあるので、ヒューガは言うのをやめた。
「あ、私はフルヌードのヒューちゃん蹴り出すの別に心痛まないわよー。オムツから世話してるんだしー♥」
「それは知ってる」
ルティにとても可愛い笑顔でオカン丸出しなことを言われ、ヒューガは無の表情になった。