レベル50から牛歩の如くレベルが上がらなかった俺だが、ようやく転移スキルのレベルが100に至った。
事業を始めたのは世のため人の為もあるが、ぶっちゃけ熟練度上げのところもあった。
で、大台に乗った事で覚えた能力は……
『カウンター転移』とかいうぶっ壊れスキルだった。
さすがLV100の能力だぜ!
ここまで熟練度溜め込む奴もそうそう居ないしな?
これは俺のルームを介さず、何かに反応して勝手に転移が作動するやつだ。
カウンター転移にもレベルがあって、LV1ならひとつだけ設定出来るようだ。
普段の転移との違いは状況に応じて自動発動する。
【何時】【何をされた時】【どこへ】転移させる。
のように設定できるっぽいな。
さて、何を設定しようかな?
やっぱり身の危険に反応するのがいいよな?
殺意? 敵意? 害意?
まぁ戦いになれば流石に俺も意識を集中するし、じゃあ設定は……
【無意識下の時】
【害意を持って近づいた者を】
【惑星ストリーム】に転移させる。
よし、こんな感じだな。
これの熟練度は……発動回数で上がるタイプか。
どっちにしろ意識して発動するタイプじゃないので、放っとけばいいか。
っていうかこれ、流石に範囲は俺の近くだけだよな?
半径数kmとか勘弁してくれよ?
そう思って宿で一泊。
借りた部屋から家に帰り、両親のいない実家で家族団欒で過ごした。
何がとは言わんがナニがな?
姫野さんのところでで覚えてきたテクニックで翻弄してきたので俺も本気を出して相手をした。
勝敗は聞くな。
美玲は日に日にパワーアップしてるとだけ付け加えておく。
いい加減木村の準備も大丈夫だろう。
メールしようにもあいつにメールするとなるとネットワークの繋がるところ来ないとだし。
なので一回実家に帰ってきたわけだ。
飯もタダで食えるしな。
「それじゃお義母さん達はその並行世界の日本にデートに行ったわけねー?」
「そうそう」
「じゃあ今晩はゆっくりできるわけよね?」
「今はあいつらの世話がなー?」
熱視線を向けてくる美玲さんから逃げるように視線を泳がせる。
そんなに毎晩毎晩は勘弁して!
死んじゃう。
干からびちゃうよ、俺!
「むー、何よー。あたしとの子供は欲しくないわけー?」
「めっちゃ欲しいけど、それとこれとは別っていうか……」
「えー、姫りんは毎日チャレンジすることでお互いがその気になるって言ってたのに〜」
「そう考えると下野ってめちゃくちゃ頑張り屋さんなんだな。もっとのほほんとしてるかと思ってたぜ」
「それ! むしろそっちがすごいから離れられないらしいの! 意外よねー!」
「マジか。ほんと人は見た目じゃわかんないよな」
「本当よねー。やっぱり一国一城の主になると変わるのかしら?」
チラチラと俺をみてくるけど、俺に家を買えっていうの?
無駄遣いはいけません!
ただでさえ遊びに金使い過ぎてんのにさ。
いや、絶対買っても持て余すじゃん。ただでさえ転移しまくってんのにさ!
「それはともかく、今日はバイト休みでしょ? たまにはデートしようぜ。俺案内するよ?」
「木村っちは?」
「別行動」
「そっか。なら……?」
「しないから!」
「そっち系の魔道具とか見に行こうよ」
「そっち系かー、あるかなぁ?」
ファンタジーの世界はたまにえっぐい奴あるから、そっちにハマり過ぎても困るっつーか。
俺ので満足しといて欲しいもんだよ。
そんなこんなでエスペルエム。
相変わらず朝っぱらから不機嫌そうな辛した住人が弱者をカモろうと目を皿のようにしている。
と、俺たちに狙いをつけた瞬間にその姿が消えた。
そして増えるカウンタースロット【1】
待て待て待て。
え? 感知能力高過ぎやしません、この能力。
「どうしたのー? あっくん」
「なんでもない。行こうぜ、確かこっちの方にそれっぽい店が」
どんどん裏通りに入っていき、さらにグルングルン回るカウンター。
もう金目のもの頂こうとか考えた瞬間にストリーム行きにしてる状態だ。
ちょっと怖過ぎない、この能力?
俺はすぐさまステータスを開いて設定を変えた。
もし悪事を働かなくてもカウントするなら、とんでもないことになる。
アトランザより下位互換のエスペルエムから直通でストリーム行きは難易度高すぎでしょ。
ちょっと痛い目見るくらいならアトランザでいいべ。
転移先はアトランザっと。
あっちはこっちから比べたらステータスの数値がアホみたいに減る程度のモンだ。モンスターはそこそこ強いが、貴族はクソなのでそこはこっちと同じ。
罪を悔い改めたら元の世界に返せばいっか。
ただ、その設定をする場所はないのでレベルアップしたら新しく設定しなおそうか。
ちょうど木村を牢屋から呼び出したのもあり、転移先に牢屋も増えていた。
カモろうと思ったら直接牢屋でもいいかな?
とりあえず、レベルアップしてから考えるようにすっか。
その前に木村を呼んで、その場で別れる。
あいつはいるだけで便利な奴だからな。
ただ、一緒に居たくはないだけで。