98. 『ましポん48』~オフパート 観ちゃダメです~
窓から光が差し込む。時間は6時30分。オレは微睡みの中、リビングのソファーから起き上がると軽く伸びをする。やはり慣れない場所で寝ると身体は痛い。しかも……なんか途中で誰かが居たような気がしたし……。
そろそろ彩芽ちゃんと日咲さんのゲーム配信が終わる頃だな。深夜帯の時間を担当してくれる2人に感謝しながら、色々確認をしようとパソコンを立ち上げる。すると、丁度終わったところのようだ。
このあとは日咲さんの通常配信。そしてそのあとがオレの通常配信になる。意外に時間が限られてるなと思っていると、配信を終えた彩芽ちゃんがリビングにやってくる。
「あ。……はっ……あの……ぎ……牛乳……」
「おはよう。どうした?そんなに慌てて」
「あ……いえ、なんでもないです」
「そうか?ならいいけど。次の彩芽ちゃんのコラボ配信は10時から。オレは朝配信が終わったら、すぐにリリィさんの家に向かわないといけないから何かあったら連絡してくれ」
そう。実は今日のスケジュール的に、このあとは彩芽ちゃんとは21時の配信まで会えないのだ。なので双葉かのんのマネージャーとして今の内に確認しておく必要がある。とはいえ、同じ仕事をしているしそこまで心配はしていない。
「それより長時間耐久ゲーム配信どうだった?」
「えっ!?あ、楽しかったです……色々と勉強になりましたし……七海さんもすごく優しくて……色々フォローしてもらいました」
「そっか良かったな。あとでアーカイブや切り抜きで観るよ」
「だっダメです!!」
「え?」
「いっ……今はダメです……せめて……来週で……」
彩芽ちゃんはそう言って、牛乳を一気に飲み干す。何でダメなんだ?もしかしたらオレに配信を観られたくないような、恥ずかしいことでもあったのかもしれない。というか……彩芽ちゃん、どことなくいつもと違うような……しかも少し顔が赤い?オレはそのまま彩芽ちゃんの顔をよく観察する。
「まっまっまっましろん先輩!?」
「いや、ちょっと熱あるんじゃないかと思って……」
「へ?いやいや!全然元気ですよ?そっそれより、ましろん先輩は……朝配信の準備しないと……です!私は……仮眠とります!アーカイブは観ないでください!」
そう言って急いで自分の部屋に戻っていく彩芽ちゃん。何なんだ一体?そんなこんなでオレは配信の準備をするために部屋に行く。
ノックをして部屋に入る。この時間は日咲さんが自分のノートパソコンで通常配信しているからだ。
「ん?あ。姫だ!おはよう!」
コメント
『姫おるの?』
『おはよう!』
『寝起き姫とかレア』
オレは焦りながら、今声を出せないことをジェスチャーで日咲さんに伝える。本当にこの人は……マジで困るぞ?仕方ないのでパソコンを立ち上げる。
すると日咲さんは空気を読んだのか、部屋から出ていきリビングに向かう。オレはそのままディスコード越しに会話を始める。
「姫めっちゃ顔怖かったんだけど……あ。姫からだ……ヤバい……もしもし?」
《怖くないよポアロ探偵。おはよう。ましろです》
コメント
『おお!姫だぁ』
『なんでディスコード越し?』
『察しろw』
『寝起きだからチューニングしたんだろw』
『姫おはよう!』
『ましろんおはよー!』
《なんかポアロ探偵のせいで、ましろのイメージ悪くなってるけど?》
「ごめ~ん姫!許して!ポアロたちの1期生の絆でさ?」
《ましろの中でFmすたーらいぶの1期生はひなたさんだけになりました。ポアロ探偵も共演NGです》
コメント
『www』
『姫が怒ってて草』
『わらしべのやつw』
「ちょっ!?ごめんって姫!?」
《冗談だよ。長時間耐久ゲーム配信お疲れ様。残り37時間か……頑張ろうポアロ探偵》
「うん。ありがとう姫」
《そう言えばさっき、かのんちゃんに会ったらゲーム配信観ないでって言われたんだけど何か知ってるポアロ探偵?》
「え。あー……実は配信中、姫の寝顔を見に行ったんだよね?その時のかのんちゃんが、もうガチ恋みたいな反応でさ?」
《えっ本当に?それは恥ずかしいけどw》
なるほど。だから彩芽ちゃんはあんなに必死になって止めたわけか。ガチ恋みたいな反応……か。いや……でもまさかな……だって相手は彩芽ちゃんだし……。そんなことを思いながらも、やはりどこか気になってしまう自分がいた。