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679. 姫は『やってのける』そうです

679. 姫は『やってのける』そうです




 オレは家に帰宅する。そしてリビングへ向かうとすごく真剣な顔をしながら誰かと電話をしている桃姉さんがいる。


「ただいま……」


「お帰り。……ええ。とりあえずそれでお願いできるかしら?ライバーのメンタルケアが最優先よ忘れないでね?ええ。それじゃまた」


 そう言って桃姉さんは電話を切ると、そのままスマホを机の上に置く。そして大きなため息をつく。


 ……なんか嫌な予感がするぞ? オレは恐る恐る桃姉さんに声を掛けることにする。


「何かあったのか?」


「え?ああ……あんたX見てないの?」


「ああ。忙しくて確認してなかった」


「……ちょっと炎上しててね。今はだいぶ下火になったんだけど」


「炎上?」


「うん。八神えるるちゃんがね……」


 えるるちゃん?オレは桃姉さんに内容を聞く。どうやら、えるるちゃんが誤ってすたライの時間に枠を立ててしまったらしい。そこで、SNS上で『Fmすたーらいぶついに解禁!』とか『カウントダウンできる!』など拡散されてしまったようだ。


 そしたら、もちろんのこと『○○はやらないのか?』や『どうせ男とカウントダウンだろ?』みたいな杞憂民が沸いたらしい。


 すぐに事務所やえるるちゃん本人からも謝罪の投稿をしたが、えるファミと他のリスナーが揉め始めたり、別のリスナーが勘違いし始め、それを事実のように拡散して更に事態が悪化したらしい。


「おお……こんな年の瀬に……」


「彼女もわざとじゃないだろうし、今はだいぶ下火で落ち着いてるけど、本人と話し合って謝罪配信という名目のカウントダウン配信をすることにしたの」


「配信するのか?」


「確かに会社としては基本配信禁止になっているわ。でもここで配信を中止にしたら、『杞憂民を認めた』ということになりかねないでしょ。更に炎上する可能性もある。八神えるるちゃんにとっては厳しいことかもしれないけど、会社のルールを守らなかったのは彼女。会社だって彼女がわざとやってないことくらい分かる。でもなかったことには出来ない。これが最善の判断よ」


 そうか……確かに会社としてルール違反をしたのに、謝罪配信をさせないのはまた炎上しそうだし。こういう問題は難しいだろうな。でもえるるちゃん……明日香ちゃんは大丈夫だろうか?最近こういう大きい炎上はないからな。


 オレは桃姉さんと少し話した後、自室に戻りパソコンでSNSを確認することにした。するとそこには、えるるちゃんのXに何名かのライバーがフォロー的なリプライをしているし、ほぼ沈静化はしている。


「こういう時……オレは先輩として何か出来ないのか……」


 思わずそう呟いてしまう。炎上したのだから慰めることはできるかもしれないが、そうじゃないしな……こういう時に何か力になれるような存在になりたい……それをやってのけるのが姫宮ましろだから。


 そのためには……


 そんなことを思っていると、パソコンにディスコードのメッセージが来る。


「ん?え。……なるほど」


 無意識に頬が緩む。お互い考えは一緒なのか……なんか今年1番嬉しいかもな。オレはそのまま通話を繋ぐことにする。


「もしもし?」


 《あ。ましろ?これディスコードか。えっと……説明不要よね?》


「雑だなぁwでもね、ましろも今同じタイミングで連絡しようと思ってたよリリィさん」


 《本当?後輩のために一肌脱ごうって話よ。このままじゃえるるが可哀想だし。私たちが配信に行けば少しは変わるでしょ?》


「ましリリィのほぼ初コラボだよね?大型企画や1期生の企画では一緒だけど」


 《確かに。まぁどうせ待っていても実現しないのなら、このタイミングでいいんじゃないかしら?そっちのほうが『謝罪配信』から『ましリリィ』に話題がそれそうだし、なんかFmすたーらいぶっぽいしねw》


 立花さん。やっぱり後輩想いで良い先輩……いやもうみんなのママだよな。まぁ……えるるちゃんには少し申し訳ないけど、Fmすたーらいぶの伝説の謝罪配信として語り継がれてもらうか。

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