レイミが選んだであろうサラでも歩きやすい道、その道をオレは進んだ。
どこかでひょっこりレイミと出くわすことをわずからながら期待していたが、森の出口までの間に、オレはレイミと会うことはなかった。
しかし、レイミが残したものを見つけることができた。
枯れ葉が落ちた地面にレイミが付けていた髪飾りが落ちていた。レイミが偶然ここに落としたものではないだろう。何かの危険を察知したレイミが自らこの場所に髪飾りを落としていったのだ。
よくよく目を凝らしてみれば、レイミやサラではない足跡がいくつかあった。この森の出口にサラのような迷い人ならいざ知らず、わざわざ複数の人間が訪れることはない。
レイミの靴の跡らしきものが点々と散らばっている。これが意味するものは、レイミがこの場で動き回ったということだ。ただサラを送り届けるだけでこんなにあちこちに足跡が残るはずがない。
そして、森の外に出てみると、どこにもレイミの足跡は見つかることはなかった。
「完全にオレの失態だな」
オレは馬車らしき車輪の跡を見つけて、ため息をつく。
消えた足跡と馬車の痕跡、これらを結び付けて考えられる結論は一つしかなかった。
二人は何人かの人物によって
なぜレイミだけに送らせてしまったのか、サラの事情をもう少し聞いてみたならば考え方も変わったのかもしれない。しかし、オレはそうしなかった。
その人間が話そうとしないことを聞き出さないようにしてしまうのは、オレ自身が過去に触れられたくないせいだが、今回はまずい方向に動いた。避けられる危機を避けることができなかった。
下唇を一度噛んでから自分の過ちを受け入れ、オレは車輪の跡を追うことにした。
レイミが残した髪飾りを拾い、オレは馬車の車輪の跡が続いている方向を見た。先日、雨が降ったばかりで、車輪の跡はくっきりと付いていた。
馬車の跡がある限り、ここから先を追うことは可能だ。
「絶対に逃がさない」
オレは車輪の続く方向の少し遠くを見るようにして目を走らせる。どれだけ逃げようとも車輪の跡が続く限り、追いかけてやる。
「――レイミはどうした?」
背後からの声にオレはゆっくりと振り返る。後ろに来ていることは知っていた。その声の主はハルトだった。手綱を引いて馬も連れている。
「攫われたらしい。エルリーアの王女とやらと一緒に」
「追うのか?」
「当然」
「どれぐらいの距離かわかったのか?」
「ああ。オレの『目』が既に補足している。
「とんでもない目だな、オマエのは」
ハルトは馬をオレのほうに引き寄せた。使えという意味だろう。
「助かるよ」
「オレの判断じゃない。頭領が馬がいる可能性があるから連れていけと」
「敵わないな、あの人には」
オレは苦笑する。
「誰もあの人の先読みには勝てないさ」
「違いない」
ハルトの言葉に頷き、オレは馬に跨った。
「無理をするなよ」
オレは頷き、馬を走らせた。この車輪の跡の向こうに二人がいるはずだ。