「次に行きますか」
「え? ここから距離が……かなり有りますよ? 体力回復ポーションは頂きましたが、無理があると思います。今から出発しても、到着は明後日ですかね……」
俺の転移を何回見てるんだよ?
それを聞いた仲間の、ピンクの髪のシルがルークの後ろに立ち背中を突っつき、小さい声で話をかけた。
「ルーク! 歩きで向かわないでしょ! ユウヤ様の転移で向かうに決まってるでしょ! ……多分」
「あ! そうか! 転移か! ……ちょっと待て。今、戦闘が終わったばかりだぞ!? 転移ということは、いきなり戦闘か!?」
「ばかっ。 あんたは戦ってもないし! 見てただけでしょうがっ!」
アリアとミーシャを見ると、いつも通りで緊張もしていなさそうだし。ここに5人を置いて放置でも良いんだけど、後でうるさそうだし、連れて行くか。
大所帯は賑やかで、ウルサイな……
チラッと見ていたら青い髪の毛のフィーが、俺の視線に気づき慌てていた。
「ちょっと、静かにしなよ。私達の討伐じゃないんだよ? ユウヤ様のじゃまになってるよ」
中々、鋭い子が居るんだな。アリアと気が合いそうだなぁ。大人しそうで気が効きそうでお姉さんって感じで、良い相談相手になるかもな。ピンクのシルは……ミーシャと組ませるのも面白そうかな? ケンカになるかもな……シルが引かなかったらどうなるんだろ……100%シルが負けるだろうな。
「次に行くよ」
「うん。行こう」
およその位置に転移して、南のダンジョンへ付近へやってきた。完全にダンジョンの攻略はする気が無くなっているので……ボスらしい気配を探った。
「いきなりボスだけど大丈夫? 話に聞くと今回は、パワー系らしいよ? それに魔法があまり効かないらしいから気を付けて、無理だと判断したら逃げてきてよ」
「うん。分かったぁ」
「はぁい」
「ミーシャとは、相性が良いかもな。パワー系で、スピードは無さそうな感じだし。回避をして、攻撃が通用すれば勝ち目はあると思う」
「うん。いつも通りに戦ってみるっ!」
「よし、じゃあ行くぞっ」
ボスの居る付近へ転移すると、広いダンジョンの空間の大きな窪みに体を丸め、目だけを開けこちらに反応をした。
毎回、余裕そうだな……そりゃそうか、俺達人間が数人が、この空間にやってきても瞬殺されるだろうしな。人間を見ても警戒するに値しないって思ってるんだろうな。
「ボスが油断している間に、あそこの窪みに隠れて」
「若様は!?」
「もしもの時のために、ここで見てるから気にするなって
、早く避難をしないと巻き込まれても自業自得で助けないよ」
5人が窪みに入ったのを確認をしてバリアと結界のセットをした。こちらの準備が整っても、ボス様は動く気配がない。
これはチャンスなんじゃないの? 取り敢えず魔法が効くか確かめるべきだろ。
「アリア、魔力弾を当てて、様子を見よ!」
「うん!わかったっ!」
アリアが岩陰に隠れ、ナイスな場所にミーシャが潜み気配を絶っている。三人で顔を見合わせ頷きあった。
あ、あれ? 何故か俺も巻き込まれてる!?
アリアが手を翳し魔力弾を放ち、犬の鼻に直撃をした。痛みからか、慌てて立ち上がり辺りを見渡して居る所に、ミーシャが頭上から飛び降り首にナイフで切りつけた。
そう簡単に倒せる訳がなく、オオカミの毛と皮を少し傷を付け少し出血をしている程度だった。
ミーシャのはナイフだしな。双剣にすれば良いのに、と思うけど……普段の戦い方だと、双剣だと高速移動をするのに邪魔だからナイフを選んだんだろうけど……攻撃が通らないなら変えるべきだろ。
そう思っていると、ミーシャが落下中に武器を双剣に変えた。シールドを使いフェイントを掛けつつ上昇をし、再び落下をしながら同じ箇所に切りつけた。
今度は深く刃が食い込み大量の出血になった。それを確認をすると、ミーシャがその場から離脱をして俺の隣に逃げてきた。
「ユウちゃん、ムリムリ……無理だよっ。皮膚がぶあつい!双剣の刃で……あれだよ!」
アリアも魔力弾を試していたが、諦めた様子でこちらを見ていたが、何かを思い出したようで……
場所を移動をするのに、気配を絶ち魔法を放つのにちょうど良い場所に潜み、ウォーターボールを放った。
バシャッ!と音が鳴るはずだが……ベチャッ!と音が鳴った。あれはさんざん練習をして習得した……と言っても1時間も練習をしていないけどね。見事に口と鼻に覆い被さり殆ど息ができなくなっていた。追い討ちで再び口に魔法を放つと完全に息が出来なくなり、その場に倒れた。
「良く思い出したな!」
「うん。何かないかな〜って思って♪」
あれは魔法抵抗があっても、物理攻撃と同じだしなぁ。狼だし前足で取れないしな。苦しませるのも可哀想なので早速、魔石を回収をし素材も回収を終えると地底へ埋葬をした。
「アリアちゃん、すごい!」
「ミーシャちゃんもスゴかった! カッコ良かったよ」
アリアがミーシャを抱きしめて褒めると嬉しそうな顔をして、アリアに抱きついていた。
窪みで待機をしていた5人がライトの魔法を使用し、足元と周りを照らし警戒をしながら駆け寄ってきた。