「な、……!?」
「やはり所詮は火竜。俺の敵では無い。」
完全に真っ二つになったドラゴンが地面に崩れ落ちて行くのを見ながら、レザリオはそう言い、背中に大剣を戻す。
いや、マジで意味わかんねぇって!?
今のなんだよ!?
「流石レザリオだな、俺たちとはレベルが違う。」
「そうねぇ、私もぉ、今回は少し甘いところがあったわぁ」
スザクとミラボレアは、そんなレザリオをどこか遠い目で眺めていた。
やっぱり上級下位と上級上位は違うんだな。
すると、そこで少し離れた場所に避難していたみさと達がこっちへ走って来た。
「とうま!!大丈夫!?」「あんな無茶しようとするんじゃねぇよ!?」「心配したんだよ!?」
「あぁ……すまなかった。あそこでレザリオに助けられなかったらどうなってたか――考えたくもねぇよ。」
俺は笑いながらにそう言う。
「本当よ全く。それにしても驚いたわ。まさかレザリオにあんな力があったなんて。」
「ほんとだよなー」
「話には聞いてたけどね、まさかこんなに凄いなんて思って無かったよ」
あ、そうか。こいつら今回でレザリオのあのモードを見るのは初めてだったな。
「だろ?いや俺も初めて見た時は本当にビビったぜ。――――」
そこで俺はレザリオの方を向きながらそう言う。するとそこには、
「もうぅ……無理やでぇ……」
「って!?レザリオ!?またかよ!?」
まるでスライムの様に、ふにゃふにゃと地面にひれ伏すレザリオの姿があった。
実はこれ、前レザリオが大剣を抜いた時にも起こったのだ。
でもあの時はここまでじゃなかった気が……
「もう、大丈夫か?」
「いや、もう無理やぁ……」
するとそこで後ろからスザクが駆け寄って来て、
「すまんなとうま、前もなってたからある程度は理解出来るとは思うが、こいつ自分の力が強過ぎて少しでも動くとこうなるんだよ。」
だから最初にみんなへ指示をした時、もしドラゴンの他に強いモンスターが出て来ても対応出来る様にレザリオという一度限りの切り札を残して起きたかったのだそうだ。
「……ッ!すまん、あの時俺が避けようとしなかったから……」
「いや、構わん。人は誰でも失敗する物だ。今日の事は次に活かせばいい、それに、」
「全員が無事にこうして生きているんだ、それだけで上出来だ。」
「……ッ!!そうだな、」
「よし、じゃあレザリオ。肩を貸してやるから馬車に乗るぞ」
「了解ぃ……やでぇ……」
とにかく、無事に終わることが出来て良かったぜ。
「――あ」
そこで俺はふと、馬車の荷台に乗ろうとした直前、俺の視界に真っ二つになったドラゴンの遺体がある方を見る。
するとなんと――
「って、無い……?」
そこに遺体は無かった。
「おいスザク……あれ……」
「ん?――ッ!今回もか……」
そう、実は最初に現れた変異種サラマンダーを倒した時も、同じ様に気が付けば遺体は消えていたのだ。
まるで生き物では無く魔法の様に。
「お見事ですね、皆さん。」
「「……ッ!?」」
するとその瞬間、馬車を止めていた砂利道の左側の森から、ひとりの白いローブを纏った怪しげな男が現れた。
手には手紙に書いてあった通りの赤く、丸い宝石の様な物を持っている。
まさかあの石……来者ノ石……!?
だとしたら、この男は……ッ!
「お前!何者だ!」
「私ですか?私はエイブ・シュタイナー。ソルクユポを率いる者、そしてこの世界を再構築する神ですよ。」
ソルクユポ……!俺たちがずっと探していた人間じゃないか……!しかもそれを率いるって……!?
「さ、再構築だと……?何を言って――」
「とうま、ここは俺が話す。」
するとそこで、突如現れたエイブ・シュタイナーと名乗る人物の前に荷台から降りてきたスザクが出て行った。
「お前がソルクユポを従える人間か?」
「えぇ」
「最近現れる変異種モンスター、そいつらを召喚しているのはお前らか?」
しょ、召喚!?なんだよその黒魔術!?
「おいスザク!召喚って何言って――」
「今は口を挟むな。お前は魔王の言っていた事を忘れたのか?」
「……ッ!!」
来者ノ石にはモンスターを召喚する力があると魔王は確かに言っていた。
そしてそれを持っているソルクユポの人間が目の前にいる。考えてみれば確かに今の質問で最近起こっているこの事態がソルクユポの仕業なのか、確信に変える事が出来るのだ。
そして、その質問に対してエイブ・シュタイナーは、
「よく知っていますね。その通り。私たちソルクユポがあのモンスター達を召喚しました。」
ニヤリと笑いながら首を縦に振った。
「それにしても、実は中央大陸の他にもうひとつの大陸でもモンスターを召喚したのですが、まさかそれも討伐されてしまうとは思いませんでしたよ。最近の冒険者は強いのですね。」
もうひとつの大陸って……ッ!!
エスタリを殺した変異種サラマンダー、それもこいつが……
「くそが……くそがぁ!!!!」
そこで俺は背中から剣を引き抜くと、足に力を貯め、目の前のエイブ・シュタイナーに向かって突撃しようとする。――が、すぐにスザクによってそれを止められた。
「おいスザク!!離せ!!エスの仇を今ここで取るんだ!!」
「落ち着け。」
「落ち着けるかよ!!こうなったら力ずくにでも――」
俺は必死に暴れてスザクの拘束を解こうとする。
しかし、そこで首筋を叩かれ、意識は闇へと落ちて行った。