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庾亮3  詩経読もうぜ

孫盛そんせいと言う人が庾亮ゆりょうさまの秘書にいた。


庾亮さまが猟に出かけようという時、

孫盛の息子二人、孫放そんほう孫潜そんせんも同行。


この頃の二人は七、八歳、という所。

大人たちに囲まれる中では、

否応なしに目立つ。


この子たちがついてくることを

知らなかった庾亮さま、

二人に聞く。


「其方ら、

 どうしてまたついて参ったのか?」


すると孫放が答える。


「詩経の魯頌ろしょう泮水はんすい

 示す如くでございます。


 公に従う万民に、大小無し。

 公をお慕い申し上げての

 ことにございます」




孫盛為庾公記室參軍,從獵,將其二兒俱行。庾公不知,忽於獵場見齊莊,時年七八歲。庾謂曰:「君亦復來邪?」應聲答曰:「所謂『無小無大,從公于邁』。」


孫盛は庾公の記室參軍と為り、獵に從い、將に其の二兒も俱に行かんとす。庾公は知らず、忽ち獵場にて齊莊を見、時にして年は七、八歲なり。庾は謂いて曰く:「君は亦た、復た來たらんや?」と。聲に應じて答えて曰く:「所謂『小無く大無く、公に從いて于邁す』なり」と。


(言語49)




孫盛

孫綽そんしゃくの弟。文人としての名の売れ方は兄貴以上なのだが、世説新語では割と兄貴の陰に隠れがち。


孫潜

孫盛の長男。東晋末、王国宝おうこくほうとよしみがあったような、ないような、と言う感じだったようである。豫章よしょう(東晋の中でも指折りの主要都市)に任じられているから有能ではあるのだろうが、しかしどうしても弟が才気迸らせ過ぎておってな……。


孫放

才気煥発だと書かれているんだが、なんだろうこのこざかしさ……まぁ、七歳八歳でこれ言えちゃうのはバケモノのような気はしないでもないけれども。


泮水

其旂茷茷 鸞聲噦噦

無小無大 從公于邁

 人々が魯公の出来を見れば、

 きらびやかな旗がはためいている。

 鈴の音が美しく響く。

 人々は身分の高低に関係なく、

 みな魯公に付き従うのだ。

世説新語ではこの詩が簡文帝と桓温とのやり取りのところにでも引かれていて、ちょっとした流行りの言い回しだったっぽいのが伺える。

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