名門、
彼について、
「かれの言葉にはしばしば頷かされる。
その言葉を聞いていて、
気を抜くことは許されぬのだが、
しかし、決して疲れることはない」
ただ、ある人が支遁にこう訊ねる。
「
支遁は答えた。
「いうまでもなく、
謝安を下から仰ぎ見てよじ登り、
謝万には上から手を差し伸べてやる、
となるだろうね」
そんな王胡之が、
「心が洗われる、だけではないな。
心なしか太陽も、月も、
ここでは輝きを増すようだ」
知的、風雅な人ではあったのだが、
一方では感じ悪い人だったようだ。
ある、雪の日のこと。
王胡之、ふと思い立ち、
ここでの会話が、王恬にしてみれば
だいぶカチンとくるものだったようだ。
王恬、露骨に気分を悪くする。
それを見て、王胡之もムカつく。
何やってんだこいつら。
王胡之、腰掛を担いで
王恬にぐいと近づく。
そして、その腕を取って言う。
「お前、わしと張り合えるとでも
思っているのかね?」
そんなこと言われたら、
そりゃ王恬だって黙ってられない。
腕を払って、言う。
「何だその冷たい手は、
死人かアンタは!
そんな手で
俺に触って来るんじゃない!」
林公云:「見司州警悟交至,使人不得住,亦終日忘疲。」
林公は云えらく:「司州の警悟の交ごも至るを見るに、人をして住まわしむを得ざれど、亦た終日疲れを忘る」と。
(賞譽136)
或問林公:「司州何如二謝?」林公曰:「故當攀安提萬。」
或るもの林公に問うらく:「司州は二謝とでは何如?」と。林公は曰く:「故より當に安に攀り、萬を提ぐ」と。
(品藻60)
王司州至吳興印渚中看。歎曰:「非唯使人情開滌,亦覺日月清朗。」
王司州は吳興に至り、印渚が中を看る。歎じて曰く:「唯だ人が情をして開滌せしむるのみに非ず、亦た日月の清朗なるを覺ゆ」と。
(言語81)
王司州嘗乘雪往王螭許。司州言氣少有牾逆於螭,便作色不夷。司州覺惡,便輿床就之,持其臂曰:「汝詎復足與老兄計?」螭撥其手曰:「冷如鬼手馨,彊來捉人臂!」
王司州は嘗て雪に乘じ王螭が許に往く。司州が言氣が少しく螭にては牾逆せる有り、便ち色の夷せざるを作す。司州は惡しきを覺え、便ち床を輿ぎ之に就き、其の臂を持ちて曰く:「汝、詎んぞ復た老兄と計るに足らんか?」と。螭は其の手を撥ねて曰く:「冷たきは鬼が手馨が如し、彊いて人が臂を捉うるに來たらんか!」と。
(忿狷3)
この二人の関係は、こんな感じ。
王覧→王正→王廙→王胡之
→王裁→王導→王恬
いわゆるはとこ、と言う奴である。
王胡之も割と名声のあった人だし、どっちが