「どれ、ちょっくらこの詩を
まねてみようかね」
そうしてできた詩が、ひどい。
つい、噴き出してしまう。
「いやいや、真似したのだろう?
なんでこうなるのだ」
すると殷融は答える。
「乱暴な太鼓の音を真似れば、
どうしたって鈴の音のようには
いかぬものさ」
殷洪遠答孫興公詩云:「聊復放一曲。」劉真長笑其語拙,問曰:「君欲云那放?」殷曰:「㯓臘亦放,何必其鎗鈴邪?」
殷洪遠は孫興公が詩に答えて云えらく:「聊さか復た一なる曲を放たん」と。劉真長は其の語の拙きを笑い、問うて曰く:「君は那んぞ放たんと云わんと欲したるか?」と。殷は曰く:「(木翕)臘を亦た放たば、何ぞ必ずしも其れ鎗鈴たらんや?」と。
(排調37)
㯓臘
撃鼓(攻撃命令の太鼓)の音を指す。それだけ孫綽の書いた詩が荒々しく、ひどかったから、そいつを真似した殷融の詩もどうしてもひどいものになる、というわけだ。孫綽さんの扱われ方がとても雑で良い。