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殷融2  轟く㯓臘の音

殷融いんゆう孫綽そんしゃくの書いた詩を見て、言う。


「どれ、ちょっくらこの詩を

 まねてみようかね」


そうしてできた詩が、ひどい。

劉惔りゅうたんさん、それを読んで、

つい、噴き出してしまう。


「いやいや、真似したのだろう?

 なんでこうなるのだ」


すると殷融は答える。


「乱暴な太鼓の音を真似れば、

 どうしたって鈴の音のようには

 いかぬものさ」




殷洪遠答孫興公詩云:「聊復放一曲。」劉真長笑其語拙,問曰:「君欲云那放?」殷曰:「㯓臘亦放,何必其鎗鈴邪?」


殷洪遠は孫興公が詩に答えて云えらく:「聊さか復た一なる曲を放たん」と。劉真長は其の語の拙きを笑い、問うて曰く:「君は那んぞ放たんと云わんと欲したるか?」と。殷は曰く:「(木翕)臘を亦た放たば、何ぞ必ずしも其れ鎗鈴たらんや?」と。


(排調37)




㯓臘

撃鼓(攻撃命令の太鼓)の音を指す。それだけ孫綽の書いた詩が荒々しく、ひどかったから、そいつを真似した殷融の詩もどうしてもひどいものになる、というわけだ。孫綽さんの扱われ方がとても雑で良い。

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