この辺りを、
話していたことがある。
「支遁殿の眼差しは、深く黒々としている」
「その聡明さがありありと
にじみ出ておりますな」
さてそんな支遁を、謝安さまは
どのように評価なさっていたのだろう。
「支遁殿と
論談に優れているだろうか」
謝安さまが答える。
「ぎりぎりで嵆康かな。
相当に踏ん張らねばならなさそうだが」
再び郗超が問う。
「では、
「高邁である点にかけては、
支遁殿が圧倒的であろう。
ただ論談、と言う意味では、
殷浩様のほうが粘り強く論を展開、
支遁殿を制するだろう」
「支遁様と
どちらが優れておりましょうか?」
すると謝安さまの返答はつれない。
「先人たちがそのようなことを
気にしたことはないよ。
庾亮様と較べてしまっては、
支遁殿はどうしても霞んでしまう」
「支遁様と
どちらが優れておりましたか?」
謝安さまは答える。
「王羲之様が上だ。とは言え、
謝公云:「見林公雙眼,黯黯明黑。」孫興公見林公:「稜稜露其爽。」
謝公は云えらく:「林公の雙眼を見るに、黯黯として明らかなる黑たり」と。孫興公は林公に見したるらく:「稜稜として其の爽なるは露る」と。
(容止37)
郗嘉賓問謝太傅曰:「林公談何如嵇公?」謝云:「嵇公勤著腳,裁可得去耳。」又問:「殷何如支?」謝曰:「正爾有超拔,支乃過殷。然亹亹論辯,恐殷欲制支。」
郗嘉賓は謝太傅に問うて曰く:「林公の談は嵇公をして何如?」と。謝は云えらく:「嵇公は腳を勤著し、裁かに去るを得るべきのみ」と。又た問うらく:「殷と支とでは何如?」と。謝は曰く:「正にして爾れ超拔せる有り、支は乃ち殷に過ぐ。然して亹亹たる論辯、恐るらくは殷は支を制せんと欲す」と。
(品藻67)
王子敬問謝公:「林公何如庾公?」謝殊不受,答曰:「先輩初無論,庾公自足沒林公。」
王子敬は謝公に問うらく:「林公は庾公とでは何如?」と。謝は殊に受けず、答えて曰く:「先なる輩は初にして論無し、庾公は自ら林公を沒せるに足る」と。
(品藻70)
王孝伯問謝公:「林公何如右軍?」謝曰:「右軍勝林公,林公在司州前亦貴徹。」
王孝伯は謝公に問うらく:「林公は右軍とでは何如?」と。謝は曰く:「右軍は林公に勝れる。林公は司州が前に在りて亦た貴きを徹す」と。
(品藻85)
おぉう……林公のこのヤムチャ感……
そして王胡之のこのとばっちり感……