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02エピローグ

 ライト帝国セブン地域南部、サウシス魔法学校。


「おらー! 一年! 来年の予選枠はなんだかんだで三枠になった! 俺とリカルドは出るとして残り一枠は一年から出す! なんかめちゃくちゃ新入部員も増えたから、出てえなら気張れよ‼ うちは超体育会系だからな‼」


 男子部員が後輩たちへと檄を飛ばす。


 ここは戦闘部。

 サウシス魔法学校の生徒が【総合戦闘競技】を行う部活動だ。


 全帝国総合戦闘競技選手権大会を目指して、日々研鑽している。


 この戦闘部には全帝大会に出場したOGや現役生徒がいるので、かなり気合いを入れているようだ。


「いやテリィ、おまえやる気満々だけど選出はライラコーチがやるんだぞ? 俺はまあ今年出るはずだったってのがあるけどおまえは普通にわからんからな」


 別の男子部員が呆れるように、飛ばされた檄に対して返す。


 彼は本年度の全帝大会予選に出場予定の実力者だったが、交通事故でその機会を逃した。


「う、嘘だろ……? いや待てリカルド、おまえが休んでる間に俺は五倍は強くなった。螺旋光線って知ってるか? 喰らわせてやるよ‼」


 檄を飛ばした男子部員は、返す刀で臨戦態勢を取り。


「テリィ……五倍じゃ足らねえだろ、俺はおまえの十倍は強い‼」


 呆れた男子部員も、臨戦態勢を取り。


 二人同時に『纒着結界装置』を起動する。


 ここからこの二人は切磋琢磨して、翌年は二人とも全帝大会予選に出場したのだった。


 ライト帝国セブン地域西部、新シャーストの街。


「ショッテ、来年の全帝予選出場権はなくなった。今年は地力の底上げ努めろ『土竜叩き』の速度向上を目指すぞ」


 弟子に向かい、男は厳しく指導する。


「はい! テンプ師匠‼」


 脱力からの瞬発力を鍛えるを行いながら弟子は返す。


 ここはレイト流道場。

 主に護身術や運動や魔法などについて教えている武術流派。

 一部の門下生は、より実戦的な技術を学び【総合戦闘競技】に活かしたり帝国軍人を目指したりしている。


 この弟子もまさにそのクチだ。

 流派の強さを知らしめるために、日々鍛錬を怠らない。


「おーやってるな、槍の直し終わったぞ」


 そう言いながら道場内へあからさまに鍛冶屋のような男が、槍を担いで入室する。


 男は見ての通りの鍛冶屋。

 そして、弟子の父親であり師匠の友人らしい。


「ああ助かる、しかしおまえの鋼は頑丈だな。まさかあの大氾濫でも折れんとは」


 槍を受け取った師匠が、槍の刃を見ながら感謝を述べる。


「ああ、自分でも驚いてる。でも先代ほどじゃあねえな、あの全帝に出てる一撃必殺なんちゃらなんちゃらの大男の大斧は先代が造ったもんだ。結構改修されてるけど、現役で使われてるとは思わなかった」


 鍛冶屋の男は感謝に対して淡々と返す。


「ええ⁉ あれうちで造ってたのか⁉ あんな悪ふざけの馬鹿な武器を⁉」


 弟子は父親の言葉に驚きを返す。


「ああ、ありゃあ【西の大討伐】より前……おまえが生まれた頃だな。冒険者ギルドからの依頼でタライ回されてきたもんだが、先代が酒に酔って受注したんだ。俺も手伝ったが、スキルも魔法も体力もフル活用で鍛えたからな。めちゃくちゃ大変だったぞ、まあ金払いはめちゃくちゃ良かったが」


 鍛冶屋の男は昔話を語る。


「ええ……、あれってそんなノリで出来てたのか……?」


 昔話に弟子は慄く。


「造ったはいいけど運べねえからギルドの職員と一緒に公都まで運んでな……したら公都に受け取りに来たなんか垂れ目の黒いギルド職員が一人で担いで持ってったのには驚いたな。トーンの町に運ぶって言ってたが」


 鍛冶屋の男の昔話は続き。


「トーン……ってことはあの大斧はチャコール・ポートマンの父親が使っていたのか……、まさかこんなつながり方するとは……世間って狭いな」


 弟子はしみじみと、縁のある人物につながることを驚いた。


 このまま弟子は鍛え続け、なんとか再度全帝大会予選に出場。


 魔法学校戦闘部の生徒を撃破するも、本戦出場は叶わず。修行の日々は続くのだった。


 ライト帝国セブン地域旧公都、傭兵派遣アドベント。


「トラジ、聞いたか? あの噂」


 傭兵派遣会社の社長は専務へと尋ねる。


「噂? ……おい待て潰れるのかこの会社、ふざけんなまだ定年まで結構あるぞ」


 専務は書類仕事の手を止めて、社長へと返す。


「潰すか馬鹿、ちげーよ。【総合戦闘競技】のパーティ戦大会が開催されるって話だ、デイドリームがスポンサードしてて結構デカい大会にしたいらしい」


 呆れるように社長は淡々と具体的な噂を語る。


「へえ、盛り上がるといいな。楽しみだ」


 噂話に専務は少し興味ありそうに返す。


 この専務は現役の戦闘競技選手、齢五十だが青春真っ只中なのだ。


「馬鹿! 盛り上げんだよ! 俺達で‼」


 社長は専務の返しに声量を上げてさらに返す。


 この社長もまた青春真っ只中。

 仲間と一緒に暴れられることに、彼は喜びを隠せない。


「はあ……やってやるか」


 そして専務は不敵に笑う。


 噂を信じてここから、社長と専務と人事部長と企画部長でパーティ戦の訓練を行い。


 実際に、パーティ戦大会の第一回優勝を飾ったのだった。


 ライト帝国セブン地域旧公都、旧ハッピーデイ伯爵邸。


「申し訳ございませんが、私は強くなりすぎました。来年は間違いなく私が優勝することになります」


 一人の乙女が、汗一つかかず涼しい顔で言ってのける。


 周りには倒れる人々……二百人はいる。


 そう、現在彼女は百人組手ならぬ二百人組手を完遂した。


 その圧倒的な実力を、チームの全員に見せつけたところだ。


「でも、油断はしない! 目標はセブン地域予選からセブンスバーナー二名の本戦出場‼ 歴史に名を刻むよ‼」


 彼女は高らかに目標を宣う。


 この数ヶ月で彼女は急激に、加速度的に強くなった。


「ソフィアが予選に出るかどうか……セブン地域はかなり激戦区になってきたな」


 チームのエース……いや、かつてのエースが冷静に漏らす。


 この地域は現在、かなり選手層が厚い。

 どれたけ彼女が圧倒的な実力者でも、競技は個人戦。

 団体として勝ち進むには、全員の実力が必要不可欠だ。


「だからこそ熱いじゃない、セブンスバーナーが帝国最強……いや世界最強ってところ見せつけるよ!」


 不敵に不適に笑みを浮かべて、彼女は嘯いてみせた。


 ここから彼女は仲間たちに、世界最強から受け継いだ超絶技術の一端を共有し。


 翌年は目標を達成。

 彼女は全帝王者となった。


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