ショーンは、アパートから目を話して、すぐさま壁の下に飛び下りる。
「ショーン、どうだったのかしら? ゾンビ達の様子は?」
「爆弾は使う必要があるか?」
「いざとなったら、俺が支援してやる」
「いや、支援と爆弾は必要なんだが~~お前らから見て、右側の道はゾンビが少ない、そこを通るしかないな」
不安そうな顔で、リズが聞いてきたが、スバスも真剣な顔つきで質問してくる。
ワシントンは、背中から狩猟弓を取り出すが、ショーンは困ったように答える。
「しかし、ゾンビの数が少ないから、なるべく音は立てないように戦うぞ」
「聞いたか、俺達も音を立てないように戦うぞっ!」
「分かりましたよ、マルルン、ここは静かに戦いましょう」
「なら、私の魔法は使えないね」
「銃は使えないのか…………」
ショーンは、皆に指示を出すと、マルルンも仲間たちに、それを伝える。
ジャーラは、話しを聞いてから、マジックワンドを背中に背負い、バトルフックに持ち変える。
カーニャも、二刀流の構えで、マチェットを持ち、敵との戦いに備える。
他の人間に合わせて、ゴードンも仕方なく、懐にピストルを仕舞った。
「おっし、行くぞ、あそこの連中に開けて貰うか」
「よっしゃっ! また、ゾンビとの戦ができるんだねっ! 腕が鳴るよっ!」
ショーンとフリンカ達は、右側に置いてある樽の山へと向かっていく。
これは、ピラミッド型に設置してあり、バリケードとして築かれているようだ。
「なあ? 通って良いか? 俺たちは食糧を取りに戻りたいんだ」
「帰りは、全員で装甲車に乗ってくるから開けといてくれにゃ」
「はあ、行くのは勝手にしろ? しかし、戻って来られるのか?」
「まあ、いいだろう、さっさと通るんだな」
バリケードの見張りをしている二人組に、ショーンは通行許可を求めた。
同じく、ミーは棍を両手で強く握りしめながら、これから戦うと言う、闘気を放ちつつ頼んだ。
それに気圧されつつも、白いローブを着ている金髪ロングヘアの男性エルフは、樽から声をかける。
オレンジ色のアリ人間は、ミリタリーフォークを構えながら、バリケード左脇に立っている。
「行くなら構わないが、本当に戻れるのか?」
「心配すんな、俺たちは歴戦の冒険者だからな」
マジックケーンを持ち、見張りに立つ、男性エルフは、怪訝な顔を向けてきた。
その横を通りすぎながら、ショーンは軽口を言って、道路に飛び降りた。
彼とともに、他の仲間たちも、樽に上がったあと、向こう側に降り立った。
そこには、何体かのゾンビ達が、彷徨い歩いていたが、危険度は低そうだった。
「ウオオ…………」
「ウルル?」
「ここは、俺の弓矢で、連中を仕留めてやる」
「ああ、狙撃支援なら任せてくれ」
唸り声を上げる二体のゾンビ達を、ワシントンは弓で射貫こうとする。
クロスボウを構えて、テアンも照準を覗いて、何時でも射撃可能な態勢を取る。
「いや、二人が出るまでもない、コイツらは格闘武器で倒す」
「二人は、必要に応じて、後ろから支援してくれないか? スパタだけで、充分だしな」
「白兵戦なら、私達の出番だねぇ?」
「うむ、俺のヘビーパンチを連続で、食らわせてやろう」
ショーンは、そう言うと剣と盾を握りしめ、ゾンビ達へと向かっていく。
スパタを鞘から抜き取りながら、マルルンも敵を切り伏せるために、一気に駆け出した。
ロングソードを真っ直ぐ構えながら、フリンカは突撃していく。
豪腕を振り回しながら、ゴードンは近くの人影に狙いを定めて、猛突進する、
「ああ、そう言う事だから、白兵戦に突入だっ!」
「グッ!?」
「ゾンビは数える程度しか居ない、簡単に倒せる」
「グアッ? グエエ」
「行くよっ! 私の剣に殺られちゃいなっ!」
「ウエエエエッ!!」
「これでも、喰らえっ! 喰らえっ! 喰らえっ!」
「グアッ! ゴアッ! ガァッ!」
ショートソードを振るって、ショーンはスーツ姿のゾンビに斬りかかる。
それに合わせて、スパタの刃で、マルルンも敵を何度も斬りまくる。
ロングソードを、女ゾンビに突き刺したまま、壁まで追い詰めた、フリンカは相手に頭突きする。
ゴードンは、走りながら連続で強烈なパンチを繰り出し、太ったゾンビを殴りまくった
こうして、道路を彷徨いていた、ゾンビ達は難なく一掃された。
「やったな、楽な相手だった…………いや、みんな? 動くな」
「どうしたの? は…………」
敵を倒した、ショーンは仲間たちに指示を下して、近くにあった大きなゴミ箱の裏に身を隠す。
リズを含む、他の仲間たちも、道路脇に置いてある樽や木箱へと退避する。
それらに隠れられなかった者は、地面に伏せて、じっと動かなくなる。
または、壁際から何時でも射撃武器や魔法で、遠距離攻撃をできるように待機する。
「グアア、グアア………」
「ガオ、ガルルッ!」
ブクブクに体が膨らんだ、自爆ゾンビと女性型ゾンビが、遠くの道路を歩く姿が見えた。
どうやら、彼等は十字路を歩いており、右から左へと進んでいるようであった。
連中は、ゆっくりと動いており、周辺に凄まじい緊張感が漂う。
コイツ等が暴れたり、爆発したら、遠くから大量にゾンビの群れが四方八方から現れるからだ。
「行ってしまったようだな? この辺りの物資をかき集めて、両側から連中が来られないように、バリケードを作ろう」
「それは、良いアイデアだねぇ? よっこら、さあっと」
「重たい物を運ぶのは…………」
「俺達に任せろ、さっさと運びまくってやるからな」
重たい木箱を、ショーンが持ち上げると、仲間たちも次々と、バリケードに使えそうな物を持つ。
フリンカは、両肩に樽を軽々と載せて、右側の道路に向かっていく。
小柄なマルルンは、物音を立てないように静かな足取りで、木箱を運んでいく。
その後ろから歩いてきた、ゴードンは十字路にあったドラム缶を両脇に抱えて運ぶ。
「ワシントン、リズ、テアン、ジャーラ、お前らは警戒してくれっ! ミー、サヤ、カーニャ、スバス、お前達は援護チーム四人の護衛を頼む」
「分かりました、ですが、先に私の魔法で、バリケードを作成しておきましょう」
「ああ、これなら、バリケードを置かなくても安心だにゃっ!」
「ええ、私も刃を振るう必要が無くなりましたわ」
指示を出しながら、ショーンは木箱を、十字路の右側に設置した。
その間に、ジャーラは魔法を使って、左側に長い氷壁を作り上げた。
これを見て、ミーは驚きながら、重い荷物を持たなくていいんじゃないかと思った。
サヤも、安堵したような言葉を口からだしたが、薙刀を構えたまま警戒心は解かない。
「済みません、後ろを警戒していたので、作成するのが遅れました…………それから、氷ですから、何れは溶けてしまうでしょう」
「つまり、それまでに、こっちにもバリケードを設置しなければ成らないんだな? 分かった、それより、そのまま射撃チームは警戒を続けてくれ」
申し訳なさそうな顔で謝るジャーラに対して、ショーンは、怒らずに樽を運んでいく。
こうして、道路の右側には、ゾンビを通さない立派なバリケードが完成した。
「資材が足りないな? どうしようか…………あの氷が溶ければ、ゾンビ達が入ってきてしまう」
「私の氷なら数時間は持つでしょうが、強力なゾンビの攻撃を防げる訳じゃありませんし?」
「ショーン、アレは使えるんじゃないの?」
「なるほど、あのトラックを運転してくるんだな、これで射撃しなくて済む」
悩む、ショーンとジャーラ達は、氷を攻撃するゾンビの大群やマッスラー等を思い浮かべる。
しかし、リズとワシントン達は、遥か向こうに黄色いトラックが止まっているのを目にした。
「なるほど、しかし、あそこはゾンビが多いぜ…………となると、密かに動くしかないか」
そこには、十字路に何台かの車両が見えたが、ショーンは同時にゾンビ達を目撃する。
こうして、彼は連中に対して、奇襲を仕掛けようと思案するのだった。