十字路にある何台かの車両を、ショーンは見つけたが、そこにはゾンビ達も、何体か存在する。
それより手前、右側にはオレンジ色のハチが描かれた、黄色いトラックが停車している。
左側には、白いキャンピングカーと青い業務用バンがあった。
「しまったな? リズ、ワシントン、テアン、ジャーラ…………奴らを頼む」
ショーンは、狙撃支援を頼みながら、自身は右側の壁に沿って、ゾンビ達へと密かに近づいていく。
「任せてっ! 火炎魔法で仕留めて見せるわっ!」
「射撃なら任せろ、鹿のように頭を射ち抜いてやる」
「出番だな、クロスボウで狙撃してやるか」
「なるべく、音を出さない威力の低い魔法を放ちますっ!」
小さな火を発射して、リズは路上を、よろよろと歩いている、ゾンビの頭を燃やす。
ワシントンは、狩猟弓を構えて、次々と敵が気づかぬうちに葬っていく。
クロスボウから発射された、テアンの一撃は、動く死体を物言わぬ骸に変えた。
氷結魔法で、マジックワンドから小さな氷柱を作った、ジャーラは音も立てずに放つ。
「ジャーラ、マルルン、ミー、ワシントン…………着いてきてくれっ! トラックを動かす間、あの十字路を見張っててくれ」
「分かったにゃ、ゾンビが見えたら、丸ノコを投げてやるにゃ」
十字路に見えるだけのゾンビは倒したが、まだ左右に敵が存在するかも知れない。
それを考慮して、ショーンは護衛役に、ミーを含む何人か、仲間たちを連れて行こうとした。
「待てよ? 先に、あそこの十字路を塞ぐか」
「その方が良いにゃ、見張りは任せてくれにゃ」
「私は、こちら側を封鎖します」
「前方を警戒する、ゾンビの相手は任せてくれ」
ショーンは、道路を塞ごうとして、黄色いトラックを動かして、右側に停車させた。
周りを見渡しながら、ミーは右手に棍を握り、左手には、丸ノコを持って警戒する。
氷壁を作成して、ジャーラは仮説バリケードを構築しながら、その向こうから敵が来ないか見張る。
ワシントンは、前方を睨みながら、ゾンビやチンピラ達が攻撃してくるのを待ち構えた。
「よっと、ミー? 手伝ってくれ、道を塞いでしまうぞ」
「にゃっ? 分かったにゃ、今から手伝うにゃあ~~」
後部ドアを開けた、ショーンとミー達は、荷物の木箱やプラスチックケース等を持ち出していく。
「よっと、これで完成したな?」
「にゃ、にゃ、完成だにゃっ!」
ショーンは、トラックの車体正面に、たくさん木箱などを積んで、バリケードを作成した。
後部は、ミーがドラム缶や樽を転がしながら、道を塞いでしまった。
「あとは? そっちだな」
「おーらい、おーらい、ここです」
ショーンは、白いキャンピングカーの運転席に飛び乗ると、急いでUターンさせる。
そして、運転席に座る彼を、ジャーラが両手を降りながら十字路の左側まで誘導した。
「お前ら、そのまま三方向を警戒しててくれ、俺は残る車を運転してくるからな」
「ああ、しかし、後で相談があるから直ぐに来てくれ」
青い業務用バンを運転するショーンは、車を発進させようとした。
その時、ワシントンが弓を構えながら何かを発見したらしく、顔を険しくさせた。
「分かった、後でな」
ショーンの運転する青い業務用バンは、そのまま真っ直ぐ、向こう側にある氷壁にまで走らせる。
「お前ら、中身を出してくれ」
「分かっているわ、ショーン」
「仕方ない、やるわよ」
「こう言うのは任せろ」
そう言いながら、ショーンが運転席から降りて、後部ドアを開いて、中身を漁る。
すると、大型の古タイヤと金網が見つかり、これは使えるなと、彼は思った。
そこに、リズも来て、中から材料を運ぶのを手伝ってくれた。
さらに、フリンカとゴードン達も、バリケードを作成する作業を助けてくれた。
こうして、後部の方に何枚も金網が置かれて、裏側には古タイヤが何個も積まれた。
「これで、大丈夫だな? しかし、ワシントンの言ってた事が気になるな? まあ、みんな着いてきてくれ」
「分かってるわ、きっと、ゾンビやチンピラを見つけたんでしょうね?」
そう言いながら、ショーンとリズ達は、先に向かって歩いていく。
「だろうな? しかし、敵じゃないと良いんだが~~」
そう呟きながら、不安感と警戒心を抱きつつも、ショーンは、ワシントンの元へと向かう。
「ピストルの出番だな、厄介な事になって来たな…………」
「私も、敵だろうと思うけどねぇ」
「どうだろうか、敵なら狙撃するだけだ」
「戦いなら、私の刃で、切り刻みます」
ピストルを両手で握り締めて、ゴードンは額から汗を掻きながら歩き出した。
フリンカも、ロングソードを右手で持ちながら、ゆっくりと進んでいく。
クロスボウを構えながら、テアンは足音を立てずに小走りで向かう。
サヤも、薙刀を両手で構えて、何時でも突きだせるようにしながら走っていく。
「はああ? 面倒な事に成らないと、楽で良いんだがなーー」
愚痴りながら、ショーンは剣と盾を持って、ワシントンが待つ、十字路に行く。
「ワシントン、何を見つけたんだ?」
「この先、バリケードがあったようだが、破壊されている」
ショーンは、何を見つけた知らないが、どうせ録な物ではないと分かっている。
そんな彼の質問に、ワシントンは神妙な顔で、遥か先を睨みながら答えた。
確かに、そこには、木箱を何重にも置いた、バリケードが構築されていた。
「なあ? ワシントン、小柄な俺が先に行って、確かめてくる? それまで、援護を頼めるか?」
「近距離での乱戦なら、私の暗黒魔法やマチェットが役に立つよ」
「私の投擲武器も、暗殺に向いているにゃっ!!」
真剣な顔つきで、マルルンが喋りながら、ひっそりと前に出ていく。
カーニャも、マチェットを持ちながら、静かに彼に着いていった。
姿勢を低くしながら、ミーも動き、丸ノコを放てるように右手に握る。
そんな彼等の後を、ショーンも渋々ながら仕方なく、着いていった。
「ワシントン、背中は預けるぜ」
「ああ、任せろ…………」
ショーンが前を見ながら言うと、ワシントンも答えながら狩猟弓で、バリケードを狙う。
「ふぅぅ~~」
「…………」
マルルンとカーニャ達が、慎重に破壊された木箱の山に近づいていく。
すると、そこにある物は、両側が焼け焦げた、バリケードだった。
「死んでるな、どうやら自爆ゾンビ達と戦って負けたようだな」
「息は無さそうだね? こりゃあ、酷い有り様だね」
「全くだにゃ、でも気は抜けないにゃ?」
「そうだな、ここで気を抜いたら、殺られちまう? ん? 女の死体…………凄まじい拷問を受けたようだな」
爆発の原因である飛び地った肉片と、真っ赤な下半身を見て、マルルンは顔を反らす。
もちろん余りにも、惨たらしく見えたからであり、カーニャも同様に思わず吐きそうになる。
ミーは、恐る恐る棍で、死体を突っついたり、叩いては動かないか確かめる。
ショーンは彼等より、少し遅れて、バリケード内に入ると、薄着の女性を見つけた。
もちろん、それは衣服が破れており、切り傷だらけで、物言わぬ骸と化していた。
それを見つめながら、彼は可哀想だと思った瞬間、ピストルの発砲音が周囲に轟いた。
「かなり酷いなっ!? 攻撃だっ!? 伏せろっ!?」
地面に伏せて、ショーンは狙撃されないようにするが、複数の方向から銃弾は飛んでくる。
「やっぱ、敵が襲撃して来たかっ!? クソ、これじゃ、木箱から出られないっ!」
「にゃーー!! これじゃ、頭も上げられないにゃっ!!」
「いったい、何処から撃ってきているんだよっ? 下手に魔法も射てないじゃないかっ!」
「分からん、でも、俺達じゃあ~~敵わない相手のようだっ!」
木箱の裏に、小柄な身を隠して、マルルンは射撃しているチンピラ達を探す。
丸ノコを、ミーは手裏剣のように投げようとするも、攻撃が激しすぎて、反撃ができないでいる。
カーニャの暗黒魔法である紫ビームや暗黒球は、超強力な攻撃だが、迂闊に身も晒せられない。
四方八方から、拳銃の弾が頭上を飛び交う中、ショーンは地面に伏せたまま叫ぶ。
「ウアア、ウアアア?」
「グアア…………」
「ギャア? ギャアアアアアアーーーー!!」
「うわっ! マジかよっ!」
ショーン達は、全員が射撃により、身動きができないでいる中、周囲の死体が動きだした。
しかも、その中には拷問を受けた、女性が変化した、怒鳴り声を上げる女性型ゾンビも存在した。