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第44話 道の先に向かって

 十字路にある何台かの車両を、ショーンは見つけたが、そこにはゾンビ達も、何体か存在する。


 それより手前、右側にはオレンジ色のハチが描かれた、黄色いトラックが停車している。


 左側には、白いキャンピングカーと青い業務用バンがあった。



「しまったな? リズ、ワシントン、テアン、ジャーラ…………奴らを頼む」


 ショーンは、狙撃支援を頼みながら、自身は右側の壁に沿って、ゾンビ達へと密かに近づいていく。



「任せてっ! 火炎魔法で仕留めて見せるわっ!」


「射撃なら任せろ、鹿のように頭を射ち抜いてやる」


「出番だな、クロスボウで狙撃してやるか」


「なるべく、音を出さない威力の低い魔法を放ちますっ!」


 小さな火を発射して、リズは路上を、よろよろと歩いている、ゾンビの頭を燃やす。


 ワシントンは、狩猟弓を構えて、次々と敵が気づかぬうちに葬っていく。



 クロスボウから発射された、テアンの一撃は、動く死体を物言わぬ骸に変えた。


 氷結魔法で、マジックワンドから小さな氷柱を作った、ジャーラは音も立てずに放つ。



「ジャーラ、マルルン、ミー、ワシントン…………着いてきてくれっ! トラックを動かす間、あの十字路を見張っててくれ」


「分かったにゃ、ゾンビが見えたら、丸ノコを投げてやるにゃ」


 十字路に見えるだけのゾンビは倒したが、まだ左右に敵が存在するかも知れない。


 それを考慮して、ショーンは護衛役に、ミーを含む何人か、仲間たちを連れて行こうとした。



「待てよ? 先に、あそこの十字路を塞ぐか」


「その方が良いにゃ、見張りは任せてくれにゃ」


「私は、こちら側を封鎖します」


「前方を警戒する、ゾンビの相手は任せてくれ」


 ショーンは、道路を塞ごうとして、黄色いトラックを動かして、右側に停車させた。


 周りを見渡しながら、ミーは右手に棍を握り、左手には、丸ノコを持って警戒する。



 氷壁を作成して、ジャーラは仮説バリケードを構築しながら、その向こうから敵が来ないか見張る。


 ワシントンは、前方を睨みながら、ゾンビやチンピラ達が攻撃してくるのを待ち構えた。



「よっと、ミー? 手伝ってくれ、道を塞いでしまうぞ」


「にゃっ? 分かったにゃ、今から手伝うにゃあ~~」


 後部ドアを開けた、ショーンとミー達は、荷物の木箱やプラスチックケース等を持ち出していく。



「よっと、これで完成したな?」


「にゃ、にゃ、完成だにゃっ!」


 ショーンは、トラックの車体正面に、たくさん木箱などを積んで、バリケードを作成した。


 後部は、ミーがドラム缶や樽を転がしながら、道を塞いでしまった。



「あとは? そっちだな」


「おーらい、おーらい、ここです」


 ショーンは、白いキャンピングカーの運転席に飛び乗ると、急いでUターンさせる。


 そして、運転席に座る彼を、ジャーラが両手を降りながら十字路の左側まで誘導した。



「お前ら、そのまま三方向を警戒しててくれ、俺は残る車を運転してくるからな」


「ああ、しかし、後で相談があるから直ぐに来てくれ」


 青い業務用バンを運転するショーンは、車を発進させようとした。


 その時、ワシントンが弓を構えながら何かを発見したらしく、顔を険しくさせた。



「分かった、後でな」


 ショーンの運転する青い業務用バンは、そのまま真っ直ぐ、向こう側にある氷壁にまで走らせる。



「お前ら、中身を出してくれ」


「分かっているわ、ショーン」


「仕方ない、やるわよ」


「こう言うのは任せろ」


 そう言いながら、ショーンが運転席から降りて、後部ドアを開いて、中身を漁る。


 すると、大型の古タイヤと金網が見つかり、これは使えるなと、彼は思った。



 そこに、リズも来て、中から材料を運ぶのを手伝ってくれた。


 さらに、フリンカとゴードン達も、バリケードを作成する作業を助けてくれた。



 こうして、後部の方に何枚も金網が置かれて、裏側には古タイヤが何個も積まれた。



「これで、大丈夫だな? しかし、ワシントンの言ってた事が気になるな? まあ、みんな着いてきてくれ」


「分かってるわ、きっと、ゾンビやチンピラを見つけたんでしょうね?」


 そう言いながら、ショーンとリズ達は、先に向かって歩いていく。



「だろうな? しかし、敵じゃないと良いんだが~~」


 そう呟きながら、不安感と警戒心を抱きつつも、ショーンは、ワシントンの元へと向かう。



「ピストルの出番だな、厄介な事になって来たな…………」


「私も、敵だろうと思うけどねぇ」


「どうだろうか、敵なら狙撃するだけだ」


「戦いなら、私の刃で、切り刻みます」


 ピストルを両手で握り締めて、ゴードンは額から汗を掻きながら歩き出した。


 フリンカも、ロングソードを右手で持ちながら、ゆっくりと進んでいく。



 クロスボウを構えながら、テアンは足音を立てずに小走りで向かう。


 サヤも、薙刀を両手で構えて、何時でも突きだせるようにしながら走っていく。



「はああ? 面倒な事に成らないと、楽で良いんだがなーー」


 愚痴りながら、ショーンは剣と盾を持って、ワシントンが待つ、十字路に行く。



「ワシントン、何を見つけたんだ?」


「この先、バリケードがあったようだが、破壊されている」


 ショーンは、何を見つけた知らないが、どうせ録な物ではないと分かっている。


 そんな彼の質問に、ワシントンは神妙な顔で、遥か先を睨みながら答えた。



 確かに、そこには、木箱を何重にも置いた、バリケードが構築されていた。



「なあ? ワシントン、小柄な俺が先に行って、確かめてくる? それまで、援護を頼めるか?」


「近距離での乱戦なら、私の暗黒魔法やマチェットが役に立つよ」


「私の投擲武器も、暗殺に向いているにゃっ!!」


 真剣な顔つきで、マルルンが喋りながら、ひっそりと前に出ていく。


 カーニャも、マチェットを持ちながら、静かに彼に着いていった。



 姿勢を低くしながら、ミーも動き、丸ノコを放てるように右手に握る。


 そんな彼等の後を、ショーンも渋々ながら仕方なく、着いていった。



「ワシントン、背中は預けるぜ」


「ああ、任せろ…………」


 ショーンが前を見ながら言うと、ワシントンも答えながら狩猟弓で、バリケードを狙う。



「ふぅぅ~~」


「…………」


 マルルンとカーニャ達が、慎重に破壊された木箱の山に近づいていく。


 すると、そこにある物は、両側が焼け焦げた、バリケードだった。



「死んでるな、どうやら自爆ゾンビ達と戦って負けたようだな」


「息は無さそうだね? こりゃあ、酷い有り様だね」


「全くだにゃ、でも気は抜けないにゃ?」


「そうだな、ここで気を抜いたら、殺られちまう? ん? 女の死体…………凄まじい拷問を受けたようだな」


 爆発の原因である飛び地った肉片と、真っ赤な下半身を見て、マルルンは顔を反らす。


 もちろん余りにも、惨たらしく見えたからであり、カーニャも同様に思わず吐きそうになる。



 ミーは、恐る恐る棍で、死体を突っついたり、叩いては動かないか確かめる。


 ショーンは彼等より、少し遅れて、バリケード内に入ると、薄着の女性を見つけた。



 もちろん、それは衣服が破れており、切り傷だらけで、物言わぬ骸と化していた。


 それを見つめながら、彼は可哀想だと思った瞬間、ピストルの発砲音が周囲に轟いた。



「かなり酷いなっ!? 攻撃だっ!? 伏せろっ!?」


 地面に伏せて、ショーンは狙撃されないようにするが、複数の方向から銃弾は飛んでくる。



「やっぱ、敵が襲撃して来たかっ!? クソ、これじゃ、木箱から出られないっ!」


「にゃーー!! これじゃ、頭も上げられないにゃっ!!」


「いったい、何処から撃ってきているんだよっ? 下手に魔法も射てないじゃないかっ!」


「分からん、でも、俺達じゃあ~~敵わない相手のようだっ!」


 木箱の裏に、小柄な身を隠して、マルルンは射撃しているチンピラ達を探す。


 丸ノコを、ミーは手裏剣のように投げようとするも、攻撃が激しすぎて、反撃ができないでいる。



 カーニャの暗黒魔法である紫ビームや暗黒球は、超強力な攻撃だが、迂闊に身も晒せられない。


 四方八方から、拳銃の弾が頭上を飛び交う中、ショーンは地面に伏せたまま叫ぶ。



「ウアア、ウアアア?」


「グアア…………」


「ギャア? ギャアアアアアアーーーー!!」


「うわっ! マジかよっ!」


 ショーン達は、全員が射撃により、身動きができないでいる中、周囲の死体が動きだした。


 しかも、その中には拷問を受けた、女性が変化した、怒鳴り声を上げる女性型ゾンビも存在した。

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