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第45話 チンピラとゾンビ達…………


 チンピラ達の射撃が飛び交う中、いきなり周辺の死体が動きだした。


 その中には、拷問死したであろう、怒鳴り声を上げる女性ゾンビも存在した。



「ウアアアア~~?」


「グアアアア…………」


「ギャアアアアーーーーーー!!」


「うわわわわ、どうすんだよ」


 ショーン達は、怒鳴り声を上げる女性ゾンビによる咆哮を喰らってしまう。



「ギャ~~~~~~!?」


「うぅ、うわあ…………これでは、スパタを」


「うぐぐ、や、止めて、耳がっ! 暗黒魔法も放て…………」


「にゃあーーーー!」


 音響兵器のように、女性型ゾンビによる凄まじい叫び声は、全員を苦しませる。


 しかも、チンピラたちの銃声が響き渡り、仲間たちの足元を掠める。



 マルルンとカーニャ達は、苦しみながら反撃すらまま成らず、ひたすら地面を転がるしかない。


 ジタバタと悶えながら、ミーも両耳を塞ぎながら、必死で叫ぶ。



「お前ら、気を付けろよっ!!」


「グアア…………」


「ギャアアアアーーーー!!」


 ショーンは、心臓が高鳴るのを感じながらも、仲間たちが、無事安全である事を第一に考えた。


 しかし、そう考えている間にも、周りのゾンビ達や女性型ゾンビは、凄まじく暴れまわる。



「耐えろっ! ワシントン達の援護がくるまで、もう少しだっ!」


「ウアアアアアア」


「ギャアアアアーーーー! ギャアアッ!?」


「そんな事を言ったって、無理だってのっ!? はあ?」


 ショーンは叫び、全力で横に転がり、ゾンビ達の攻撃や拳銃弾を避ける。


 女性型ゾンビの鉤爪が迫る中、彼は仲間たちを振り返り、無事なのか様子を確かめる。



 しかし、いくらなんでも、ゾンビの群れ&チンピラ達を、相手に戦う事は難しい。


 激しい銃撃を木箱に隠れながら座り、動く死体を、マチェットで近づけまいと、カーニャは叫ぶ。



「な、何が起こったの?」


「分からないにゃ?」


「ウゲェーーーー!!」


「ガア~~~~~~!?」


 いきなり、女性型ゾンビの頭に矢が突き刺さり、後ろに倒れた。


 それを見て、カーニャは訳も分からず、混乱したまま木箱を背に、マチェットを振り回す。



 ゾンビ達が肉に喰らいつかんと迫る中、ミーも転がりながら、釘や丸ノコを必死に投げていた。


 それを喰らって倒れる敵も出たが、何処からか飛んでくる攻撃に殺られる者も存在した。



「はあ、今だっ!? ぐ…………」


 状況を打開するため、マルルンは隙を見て、敵に突撃していこうとした。


 だが、彼の被るアーメットに弾丸が当たって、カチンッと金属音を鳴らした。



「マルルンッ!?」


「大丈夫だっ! 直撃した訳じゃないっ!」


 頭を撃たれた姿に、ショーンは物凄くショックを受けて心配するが、マルルンは無事だった。


 拳銃弾は威力が低く、アーメットを掠っただけであり、それゆえ彼に怪我は無かったのだ。



「ショーン、援護してやるっ! さっきのも俺の一撃だ」


「ファイアウォール、みんな、もう大丈夫よっ!」


「後は、こっちも、これを…………」


「ここから射つか、いや、チンピラより、ゾンビの相手をしなくては」


 そう言いながら、右側にある木箱の裏から弓矢を放ちまくり、ワシントンは怒鳴るように叫ぶ。


 左側からは、リズが火炎魔法を放って、チンピラ達が潜む両側の建物を燃やす。



 彼等の援護により、周りを囲んでいた、ゾンビ達は一掃された。



 しかし、それでも向こうからは銃撃が止まなかったので、ジャーラは分厚い氷壁を作る。


 そこに隠れて、ゴードンは左右から、次々と現れる、ゾンビ達を相手にピストルを撃ちまくった。



「やれやれ、俺のはワシントンのより強力だが、連射はできないぞ」


「来るなら、切り刻むまでですっ!」


「アタシの腕力を嘗めるなよっ! ってんだっ!」


「爆弾より、ここは鉄球を振り回すしかないようだな?」


 クロスボウから、矢を一発だけ放ち、テアンは地面に伏せて、次矢を射たんと準備する。


 サヤは、銃撃を掻い潜り、右側の十字路へと木箱から飛び出し、そこでゾンビを迎え討たんとした。



 フリンカは、左側の建物に立てこもる、チンピラ達に死体を投げつけて、圧力をかけた。


 鉄球を振り回しながら、スバスは敵を目掛けて、勢いよく走っていく。



 ゾンビ連中は、左右から現れるが、銃声に引き寄せられたらしく、どんどん歩いてくる。



「うらっ! どうだ、長い釘で強化した鉄球の威力はっ!」


「おらあーーーー! 私の砲丸投げを喰らいなっ!」


 左側へと飛び出した、スバスは立ち塞がるゾンビの頭に思いっきり、上から鉄球を叩きつけた。


 フリンカも同じ方向に向けて、ジャイアントスイングの要領で、ゾンビを掴んで、ぶん投げた。



「ギャアアアアッ!?」


「凄いなっ? いや、ここで止まるわけにはいかないっ!」


 投げられた、ゾンビが空中を舞い、別のゾンビに当たってしまう姿を、ショーンは目にする。


 しかし、それを呑気に見ている暇は彼になく、直ぐに突っ走りだした。



 その無防備な姿を射殺せんと、チンピラ達は拳銃を発砲しまくる。


 金網が貼られた窓は、物凄く炎上しているが、左右の建物から、何度も射撃音が木霊する。



「一人、突破したぞっ!」


「撃ち殺せっ!」


「左右から撃ちまくるんだ」


「やってしまえっ!!」


 やがて、チンピラ達の叫び声が、銃撃音に混じって、ショーンの耳に聞こえてきた。



「絶対に生き延びるてやるんだっ! お前ら何かに撃たれてたまるかってんだっ!」


 ショーンは何も考えず、とにかく速度を上げて、道路を走りまくった。



「おいっ? 奴が後ろに行ったぞっ!」


「背後から奇襲されるぞっ!」


「うわっ!」


「ぎゃあっ!?」


 チンピラ達は、窓からショーンを狙って、拳銃弾を撃ちまくる。


 だが、すでに彼は後方に回っており、視界から外れてしまっていた。



 ゆえに、ドアや窓は塞いであり、鍵も閉めているとは言え、どんな攻撃をされるか分からない。


 それで、連中は一瞬だけ背後に気を取られるが、その隙を冒険者たちは見逃さなかった。



「へ…………これが狙いだったんだよ」


 ショーンは、走っている最中は何も考えてなかったが、だからと言って無策で走ってた訳ではない。


 自身に注目を集め、仲間たちよるチンピラに対する射撃を行わせるために、単独行動に出たのだ。



「私の火炎放射器を喰らえっ!」


「お前ら、死ねっ! 銃撃を止めたら、反撃できるんだよっ!」


「液体窒素のよう凍らされるのが良いですか? それとも、氷の散弾が宜しいでしょうか?」


 窓に近づいた、リズは火炎魔法を噴射して、左側の建物内部を燃やしていく。


 また、カーニャが両手から暗黒球や紫ビームを放ちまくり、左右のチンピラ達を攻撃していく。



 左側では、まず屋内からの攻撃を封じるべく、氷結ガスを噴射しつつ、氷柱つらら散弾を放った。


 こうして、トーチカのように家屋から攻撃してきていた、敵は殲滅されていく。



「ぐああああ、熱いぃぃっ!?」


「ゲホ、ゲホ、体が…………凍ら、あ?」


「ぎゃあっ!」


「ぐおっ!」


「うわっ! ダメだ、逃げろ~~~~!」


「もう逃げるしかないっ!?」


 火炎放射を浴びて、体が燃えた、チンピラの悲鳴が建物から木霊する。


 全身を凍らされていき、氷柱散弾に撃たれる者の音が、聞こえる。



 暗黒球が金網を破壊したり、紫ビームが敵を射殺する様子も伺える。


 そんな中、左右にある建物のドアから、何人かが逃げ出してきた。



「逃がすかっ! お前ら全員を斬ってやるっ! あの女ゾンビの仇討ちだああっ!!」


「退け、邪魔だっ! ぎゃあっ!」


「殺してやるっ! ぐえっ!」


「撃ち殺してやるぜぇっ! う…………」


「た、頼むっ! に、逃がしてくれーーーー!? うわあ、ぎゃっ!?」


 怒りに任せたまま、ショーンは女性型ゾンビに酷い拷問をしていた、チンピラ達に斬りかかる。



 白人の軽鎧を着た、チンピラは棍棒を手に襲いくるが、頭を右から斜め下に斬られてしまう。


 リザードマンのチンピラは、短刀を手に斬りかかってきたが、反対に首を跳ねられた。



 それでも、諦めない黒人のチンピラは、後頭部を矢に射貫かれて、前方に力なく倒れてしまった。


 残り一人となった、ハサミ虫人間のチンピラは、悲鳴を上げながら必死で逃げた。



 そのせいで、マッスラーを呼び寄せてしまい、頭を捕まれてしまい、ぐしゃりと潰された。



「ざまあ見ろ、女に手を出すからだ…………しかし、とうすっかな? コイツは…………」


「グオオオオッ!」


 女性型ゾンビの仇を見事に取った、ショーンだったが、今度はマッスラーと戦わねば成らない。



 咆哮を上げる奴を前に、彼は額から汗を流して、剣と盾を強く握りしめるのであった。

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