チンピラ達の射撃が飛び交う中、いきなり周辺の死体が動きだした。
その中には、拷問死したであろう、怒鳴り声を上げる女性ゾンビも存在した。
「ウアアアア~~?」
「グアアアア…………」
「ギャアアアアーーーーーー!!」
「うわわわわ、どうすんだよ」
ショーン達は、怒鳴り声を上げる女性ゾンビによる咆哮を喰らってしまう。
「ギャ~~~~~~!?」
「うぅ、うわあ…………これでは、スパタを」
「うぐぐ、や、止めて、耳がっ! 暗黒魔法も放て…………」
「にゃあーーーー!」
音響兵器のように、女性型ゾンビによる凄まじい叫び声は、全員を苦しませる。
しかも、チンピラたちの銃声が響き渡り、仲間たちの足元を掠める。
マルルンとカーニャ達は、苦しみながら反撃すらまま成らず、ひたすら地面を転がるしかない。
ジタバタと悶えながら、ミーも両耳を塞ぎながら、必死で叫ぶ。
「お前ら、気を付けろよっ!!」
「グアア…………」
「ギャアアアアーーーー!!」
ショーンは、心臓が高鳴るのを感じながらも、仲間たちが、無事安全である事を第一に考えた。
しかし、そう考えている間にも、周りのゾンビ達や女性型ゾンビは、凄まじく暴れまわる。
「耐えろっ! ワシントン達の援護がくるまで、もう少しだっ!」
「ウアアアアアア」
「ギャアアアアーーーー! ギャアアッ!?」
「そんな事を言ったって、無理だってのっ!? はあ?」
ショーンは叫び、全力で横に転がり、ゾンビ達の攻撃や拳銃弾を避ける。
女性型ゾンビの鉤爪が迫る中、彼は仲間たちを振り返り、無事なのか様子を確かめる。
しかし、いくらなんでも、ゾンビの群れ&チンピラ達を、相手に戦う事は難しい。
激しい銃撃を木箱に隠れながら座り、動く死体を、マチェットで近づけまいと、カーニャは叫ぶ。
「な、何が起こったの?」
「分からないにゃ?」
「ウゲェーーーー!!」
「ガア~~~~~~!?」
いきなり、女性型ゾンビの頭に矢が突き刺さり、後ろに倒れた。
それを見て、カーニャは訳も分からず、混乱したまま木箱を背に、マチェットを振り回す。
ゾンビ達が肉に喰らいつかんと迫る中、ミーも転がりながら、釘や丸ノコを必死に投げていた。
それを喰らって倒れる敵も出たが、何処からか飛んでくる攻撃に殺られる者も存在した。
「はあ、今だっ!? ぐ…………」
状況を打開するため、マルルンは隙を見て、敵に突撃していこうとした。
だが、彼の被るアーメットに弾丸が当たって、カチンッと金属音を鳴らした。
「マルルンッ!?」
「大丈夫だっ! 直撃した訳じゃないっ!」
頭を撃たれた姿に、ショーンは物凄くショックを受けて心配するが、マルルンは無事だった。
拳銃弾は威力が低く、アーメットを掠っただけであり、それゆえ彼に怪我は無かったのだ。
「ショーン、援護してやるっ! さっきのも俺の一撃だ」
「ファイアウォール、みんな、もう大丈夫よっ!」
「後は、こっちも、これを…………」
「ここから射つか、いや、チンピラより、ゾンビの相手をしなくては」
そう言いながら、右側にある木箱の裏から弓矢を放ちまくり、ワシントンは怒鳴るように叫ぶ。
左側からは、リズが火炎魔法を放って、チンピラ達が潜む両側の建物を燃やす。
彼等の援護により、周りを囲んでいた、ゾンビ達は一掃された。
しかし、それでも向こうからは銃撃が止まなかったので、ジャーラは分厚い氷壁を作る。
そこに隠れて、ゴードンは左右から、次々と現れる、ゾンビ達を相手にピストルを撃ちまくった。
「やれやれ、俺のはワシントンのより強力だが、連射はできないぞ」
「来るなら、切り刻むまでですっ!」
「アタシの腕力を嘗めるなよっ! ってんだっ!」
「爆弾より、ここは鉄球を振り回すしかないようだな?」
クロスボウから、矢を一発だけ放ち、テアンは地面に伏せて、次矢を射たんと準備する。
サヤは、銃撃を掻い潜り、右側の十字路へと木箱から飛び出し、そこでゾンビを迎え討たんとした。
フリンカは、左側の建物に立てこもる、チンピラ達に死体を投げつけて、圧力をかけた。
鉄球を振り回しながら、スバスは敵を目掛けて、勢いよく走っていく。
ゾンビ連中は、左右から現れるが、銃声に引き寄せられたらしく、どんどん歩いてくる。
「うらっ! どうだ、長い釘で強化した鉄球の威力はっ!」
「おらあーーーー! 私の砲丸投げを喰らいなっ!」
左側へと飛び出した、スバスは立ち塞がるゾンビの頭に思いっきり、上から鉄球を叩きつけた。
フリンカも同じ方向に向けて、ジャイアントスイングの要領で、ゾンビを掴んで、ぶん投げた。
「ギャアアアアッ!?」
「凄いなっ? いや、ここで止まるわけにはいかないっ!」
投げられた、ゾンビが空中を舞い、別のゾンビに当たってしまう姿を、ショーンは目にする。
しかし、それを呑気に見ている暇は彼になく、直ぐに突っ走りだした。
その無防備な姿を射殺せんと、チンピラ達は拳銃を発砲しまくる。
金網が貼られた窓は、物凄く炎上しているが、左右の建物から、何度も射撃音が木霊する。
「一人、突破したぞっ!」
「撃ち殺せっ!」
「左右から撃ちまくるんだ」
「やってしまえっ!!」
やがて、チンピラ達の叫び声が、銃撃音に混じって、ショーンの耳に聞こえてきた。
「絶対に生き延びるてやるんだっ! お前ら何かに撃たれてたまるかってんだっ!」
ショーンは何も考えず、とにかく速度を上げて、道路を走りまくった。
「おいっ? 奴が後ろに行ったぞっ!」
「背後から奇襲されるぞっ!」
「うわっ!」
「ぎゃあっ!?」
チンピラ達は、窓からショーンを狙って、拳銃弾を撃ちまくる。
だが、すでに彼は後方に回っており、視界から外れてしまっていた。
ゆえに、ドアや窓は塞いであり、鍵も閉めているとは言え、どんな攻撃をされるか分からない。
それで、連中は一瞬だけ背後に気を取られるが、その隙を冒険者たちは見逃さなかった。
「へ…………これが狙いだったんだよ」
ショーンは、走っている最中は何も考えてなかったが、だからと言って無策で走ってた訳ではない。
自身に注目を集め、仲間たちよるチンピラに対する射撃を行わせるために、単独行動に出たのだ。
「私の火炎放射器を喰らえっ!」
「お前ら、死ねっ! 銃撃を止めたら、反撃できるんだよっ!」
「液体窒素のよう凍らされるのが良いですか? それとも、氷の散弾が宜しいでしょうか?」
窓に近づいた、リズは火炎魔法を噴射して、左側の建物内部を燃やしていく。
また、カーニャが両手から暗黒球や紫ビームを放ちまくり、左右のチンピラ達を攻撃していく。
左側では、まず屋内からの攻撃を封じるべく、氷結ガスを噴射しつつ、
こうして、トーチカのように家屋から攻撃してきていた、敵は殲滅されていく。
「ぐああああ、熱いぃぃっ!?」
「ゲホ、ゲホ、体が…………凍ら、あ?」
「ぎゃあっ!」
「ぐおっ!」
「うわっ! ダメだ、逃げろ~~~~!」
「もう逃げるしかないっ!?」
火炎放射を浴びて、体が燃えた、チンピラの悲鳴が建物から木霊する。
全身を凍らされていき、氷柱散弾に撃たれる者の音が、聞こえる。
暗黒球が金網を破壊したり、紫ビームが敵を射殺する様子も伺える。
そんな中、左右にある建物のドアから、何人かが逃げ出してきた。
「逃がすかっ! お前ら全員を斬ってやるっ! あの女ゾンビの仇討ちだああっ!!」
「退け、邪魔だっ! ぎゃあっ!」
「殺してやるっ! ぐえっ!」
「撃ち殺してやるぜぇっ! う…………」
「た、頼むっ! に、逃がしてくれーーーー!? うわあ、ぎゃっ!?」
怒りに任せたまま、ショーンは女性型ゾンビに酷い拷問をしていた、チンピラ達に斬りかかる。
白人の軽鎧を着た、チンピラは棍棒を手に襲いくるが、頭を右から斜め下に斬られてしまう。
リザードマンのチンピラは、短刀を手に斬りかかってきたが、反対に首を跳ねられた。
それでも、諦めない黒人のチンピラは、後頭部を矢に射貫かれて、前方に力なく倒れてしまった。
残り一人となった、ハサミ虫人間のチンピラは、悲鳴を上げながら必死で逃げた。
そのせいで、マッスラーを呼び寄せてしまい、頭を捕まれてしまい、ぐしゃりと潰された。
「ざまあ見ろ、女に手を出すからだ…………しかし、とうすっかな? コイツは…………」
「グオオオオッ!」
女性型ゾンビの仇を見事に取った、ショーンだったが、今度はマッスラーと戦わねば成らない。
咆哮を上げる奴を前に、彼は額から汗を流して、剣と盾を強く握りしめるのであった。