今度は、マッスラーと戦わねば成らなくなった、ショーンは、咆哮を上げる奴に向かっていった。
「やるしかない…………コイツを倒さねば、前には進めないからなっ!」
「グオオオオッ! グオオオオッ!」
ショーンは、まっすぐ突っ込んでいき、ショートソードを振るい、マッスラーの右腕を斬りつけた。
当然、奴は咆哮を上げながら、凄まじい怒りとともに反撃してきた。
「グオオ、グオオオオ、グオオオオッ!!」
「はっ! ふっ! ぐああっ!?」
左腕の反撃を避けつつ、後ろに下がった、ショーンだったが、下から強烈なアッパーを喰らう。
「グウオオオオーーーー」
「わあっ! やめろっ! この野郎っ! てめっ!」
叫び声を上げるマッスラーは、両手を組んで豪腕を、ショーンの頭に振り下ろそうとした。
それを寸での所で、バックステップをして、彼は回避する事に成功する。
「うらっ! うらっ! クソ、コイツは体力が多いっ!」
「グア、グアアッ! ウオオッ!」
ショートソードで右腕を斬りつけ、左胸付近を袈裟斬りして、最後に腹を蹴っ飛ばす。
ショーンの三連撃を喰らっても、マッスラーは堂々と近づいてくる。
「ウゴオオーー!?」
「やばああっ! 不味いな…………」
「ショーン、下がれっ! 爆裂矢だ、喰らいやがれっ!!」
「今だ、こっちに来るんだっ!」
マッスラーは、体を捻りながら思いっきり、右腕を引いて、思いっきりパンチを繰り出した。
自らの顔面を狙った一撃を、ショーンはバックラーで受け止めたが、余りにも強い衝撃で弾かれる。
こうして、窮地に陥った彼に、筋骨隆々の巨体が迫る中、仲間たちが攻撃を仕掛けてくれた。
ワシントンは爆裂アローを放ち、スバスは奴の右足を狙って、鉄球を叩き混む。
「グッ? グアアッ! ゴアアーー!」
「今だ、コイツを喰らいやがれっ! 止めの一撃だっ!」
マッスラーの左肩に刺さった矢は、小さな爆発を起こして、腕を使えなくする。
さらに、鉄球の打撃により、奴は一瞬だけ怯んでしまい、大きな隙を晒した。
「今だああああっ!」
「ウグゥーー!!」
ショーンは前に飛び出し、ショートソードを、マッスラーの顎下から深々と突き刺した。
それは、奴の頭を易々と貫き、筋肉に包まれた巨体を左側に倒してしまった。
「終わったな? お前ら、他は大丈夫なのかっ?」
「いいや、かなり、不味い状況だなっ!!」
「ショーン、頼むから早く来てくれっ! 横からも来てるんだっ!」
休む間もなく、ショーンは仲間たちの方へと走っていき、状況を聞きながら左右を見渡す。
スバスは、右側に走ってゆき、振り回した鉄球を投げて、ワシントンは矢を放ち続ける。
「グギィッ!?」
「死んだかっ! なら、次の奴に、一撃を叩きこんでやるっ!」
「ゴアアッ!」
「ぐああっ! このおおっ! 俺の豪拳を受けて見ろっ!」
「にゃあっ! にゃあっ! 凄い数が来てるにゃ?」
「この数、ヤバイぜっ! 俺のスパタもダメに成るかも知れないっ!」
右側では、スバスの鉄球を腹に食らった、ジャンピンガーが、壁にまで吹き飛ぶ。
マッスラーから顔を殴られた、ゴードンは反撃して、強烈なボディーブローを繰り出す。
ミーは、続々と小走りで向かってくる、ゾンビ達を相手に、棍による打撃を叩き込んでいた。
しかし、大人数ではないが、次から次へと歩いてくる連中に、マルルンは対処するだけで精一杯だ。
「ブクアッ!?」
「グゲェッ!」
「まだまだ、来やがるわっ! 流石に私の魔法でも、コイツら殺しきれないわっ!」
「それでも、殺るんだよっ! 殺らなきゃ、こっちが殺られるんだよっ!」
「ヴォロロロロ~~~~」
ワシントンの放った矢は、スピットゲロー達を二体も仕留めた。
紫ビームを発射しまくる、カーニャは多すぎるゾンビに手を焼き始める。
ロングソードを振るって、フリンカは飛来する強酸を弾き飛ばす。
そこに、ファットゲローが小走りで現れて、しかも奴は路上に、強酸ゲロを撒き散らした。
「うわっ! みんな、下がりなっ! グズグズしてると、殺られちゃうよっ!」
「援護するわ、先に行ってっ! 私は魔法を射ちまくるわっ!」
「援護射撃だ、早く内側まで下がれっ! もう、矢が失くなるっ! 今の内しか援護できないんだっ!」
「俺のボルトで…………頭を狙えば、楽に死ねるさ」
道路に広がった、強酸に対して、警戒しながら前を向きつつ、フリンカは後ろに引き下がった。
その間に、カーニャは暗黒球を放ちまくり、ゾンビ達を吹き飛ばしていく。
木箱の上から、ワシントンは矢を放っているが、相当焦っているのか、冷や汗を額から流している。
対するテアンは、バリケードの入口から、ファットゲローを狙い、矢を放つ。
「グゲエェェーーーー!?」
「お前ら、家具を俺が動かすっ! これで、一般のゾンビは入れなくなるはずだっ! お前らは上から登ってこいっ!」
「分かったよ、それまで、特殊ゾンビは剣で相手してやるさっ!」
クロスボウの矢を腹に喰らった、ファットゲローは、おぞましい悲鳴を上げる。
それに、紫ビームや狩猟弓から放たれた矢が、集中砲火を浴びせて、奴を前のめりに倒す。
重たそうな
フリンカは、ロングソードを正眼に構えて、
「こっちも手伝って、結構ヤバいのよっ!!」
「魔法で、壁は作りましたが…………」
「ウアアアア」
「はあっ! 警官ゾンビが銃を撃ったぞっ!! これじゃ、殴れないっ!」
火炎魔法をしまくったり、炎の壁を生成するリズは、続々と現れるゾンビ達に押されている。
後ろにある、破壊された入口に氷壁を張って、ジャーラは、敵が入れないようにしていた。
ノロノロと歩いてきた、警官ゾンビは、右手に握るピストルを適当に乱射してきた。
当然、拳銃弾が当たる事はないが、ゴードンは攻撃を非常に警戒して、ピストルで反撃して倒す。
「警官ゾンビの登場か? とにかく、下がるんだっ! 魔法で壁を作ったんなら、バリケード内まで逃げるんだっ! 音の鳴る武器は使うなっ! ゾンビを呼び寄せてしまうからなっ!」
「そんな事を言っても、魔法や銃の支援がなければキツいにゃっ!!」
「薙刀だけでは、対応できないですっ! 私達は劣勢のまま戦っているのにっ!」
「ああ、これじゃあ~~殺られちまうぜっ! 俺のスパタを振るう腕も限界だっ!」
ショーンは、後退するように反対側の仲間たちにも、大きな声で指示をだす。
とは言え、氷壁の向こうで、棍を突きだしながら戦っている、ミーは引き下がる事ができない。
サヤも、必死で突きを繰りだし続け、ゾンビ達を裁きまくりながら後退しだす。
戦いの中、マルルンは剣と盾を振るう両腕が疲れ、思わず叫んでしまう。
「分かってるっ! しかし、特殊ゾンビが居ないなら、バリケードの中に入れば、雑魚の相手をしなくていいから下がれっ!」
「と言っても、フレッシャー、ジャンピンガーは入ってくるわよっ! 火炎魔法でも射たなきゃっ!?」
今度は、マルルン達の方に走っていき、ショーンは氷壁を飛び越えた。
ゾンビが走ってくると、リズは両手で握るマジックロッドのオレンジ玉で、頭を叩きつける。
「それでも、外で戦うよりはマシだろ? オラッ!! そっには、マッスラー、ファットゲローは存在しなかったんだろっ? なら、後は狭いけど、バリケード内で戦っていたら戦闘は終わるっ!!」
指示を出しながら、ショーンも先頭に立って、ゾンビ達を次々と、切り伏せていく。
「なるほどね? じゃあ、先に下がるわよっ! ここは任せたわっ!」
「後ろに引き下がりますよ、支援を願います」
「俺も、先に行かせて貰うぜっ! 腕が持たないからなっ?」
「援護に残るっ! 後ろは心配するなっ! このっ! うりゃっ!」
リズは、早々に後退していき、二段に詰まれた木箱を掴んで飛び上がる。
同じく、ジャーラも後ろに向かって走りだし、バリケード内へと逃げ込む。
さっと、マルルンも棚を飛び越えて、すばやく内側へと退避した。
だが、ゴードンだけは、ショーンとともに最後まで残って戦おうとしていた。