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第46話 バリケードを守れ


 今度は、マッスラーと戦わねば成らなくなった、ショーンは、咆哮を上げる奴に向かっていった。



「やるしかない…………コイツを倒さねば、前には進めないからなっ!」


「グオオオオッ! グオオオオッ!」


 ショーンは、まっすぐ突っ込んでいき、ショートソードを振るい、マッスラーの右腕を斬りつけた。


 当然、奴は咆哮を上げながら、凄まじい怒りとともに反撃してきた。



「グオオ、グオオオオ、グオオオオッ!!」


「はっ! ふっ! ぐああっ!?」


 左腕の反撃を避けつつ、後ろに下がった、ショーンだったが、下から強烈なアッパーを喰らう。



「グウオオオオーーーー」


「わあっ! やめろっ! この野郎っ! てめっ!」


 叫び声を上げるマッスラーは、両手を組んで豪腕を、ショーンの頭に振り下ろそうとした。


 それを寸での所で、バックステップをして、彼は回避する事に成功する。



「うらっ! うらっ! クソ、コイツは体力が多いっ!」


「グア、グアアッ! ウオオッ!」


 ショートソードで右腕を斬りつけ、左胸付近を袈裟斬りして、最後に腹を蹴っ飛ばす。


 ショーンの三連撃を喰らっても、マッスラーは堂々と近づいてくる。



「ウゴオオーー!?」


「やばああっ! 不味いな…………」


「ショーン、下がれっ! 爆裂矢だ、喰らいやがれっ!!」


「今だ、こっちに来るんだっ!」


 マッスラーは、体を捻りながら思いっきり、右腕を引いて、思いっきりパンチを繰り出した。


 自らの顔面を狙った一撃を、ショーンはバックラーで受け止めたが、余りにも強い衝撃で弾かれる。



 こうして、窮地に陥った彼に、筋骨隆々の巨体が迫る中、仲間たちが攻撃を仕掛けてくれた。


 ワシントンは爆裂アローを放ち、スバスは奴の右足を狙って、鉄球を叩き混む。



「グッ? グアアッ! ゴアアーー!」


「今だ、コイツを喰らいやがれっ! 止めの一撃だっ!」


 マッスラーの左肩に刺さった矢は、小さな爆発を起こして、腕を使えなくする。


 さらに、鉄球の打撃により、奴は一瞬だけ怯んでしまい、大きな隙を晒した。



「今だああああっ!」


「ウグゥーー!!」


 ショーンは前に飛び出し、ショートソードを、マッスラーの顎下から深々と突き刺した。


 それは、奴の頭を易々と貫き、筋肉に包まれた巨体を左側に倒してしまった。



「終わったな? お前ら、他は大丈夫なのかっ?」


「いいや、かなり、不味い状況だなっ!!」


「ショーン、頼むから早く来てくれっ! 横からも来てるんだっ!」


 休む間もなく、ショーンは仲間たちの方へと走っていき、状況を聞きながら左右を見渡す。


 スバスは、右側に走ってゆき、振り回した鉄球を投げて、ワシントンは矢を放ち続ける。



「グギィッ!?」


「死んだかっ! なら、次の奴に、一撃を叩きこんでやるっ!」


「ゴアアッ!」


「ぐああっ! このおおっ! 俺の豪拳を受けて見ろっ!」


「にゃあっ! にゃあっ! 凄い数が来てるにゃ?」


「この数、ヤバイぜっ! 俺のスパタもダメに成るかも知れないっ!」


 右側では、スバスの鉄球を腹に食らった、ジャンピンガーが、壁にまで吹き飛ぶ。


 マッスラーから顔を殴られた、ゴードンは反撃して、強烈なボディーブローを繰り出す。



 ミーは、続々と小走りで向かってくる、ゾンビ達を相手に、棍による打撃を叩き込んでいた。


 しかし、大人数ではないが、次から次へと歩いてくる連中に、マルルンは対処するだけで精一杯だ。



「ブクアッ!?」


「グゲェッ!」


「まだまだ、来やがるわっ! 流石に私の魔法でも、コイツら殺しきれないわっ!」


「それでも、殺るんだよっ! 殺らなきゃ、こっちが殺られるんだよっ!」


「ヴォロロロロ~~~~」


 ワシントンの放った矢は、スピットゲロー達を二体も仕留めた。


 紫ビームを発射しまくる、カーニャは多すぎるゾンビに手を焼き始める。



 ロングソードを振るって、フリンカは飛来する強酸を弾き飛ばす。


 そこに、ファットゲローが小走りで現れて、しかも奴は路上に、強酸ゲロを撒き散らした。



「うわっ! みんな、下がりなっ! グズグズしてると、殺られちゃうよっ!」


「援護するわ、先に行ってっ! 私は魔法を射ちまくるわっ!」


「援護射撃だ、早く内側まで下がれっ! もう、矢が失くなるっ! 今の内しか援護できないんだっ!」


「俺のボルトで…………頭を狙えば、楽に死ねるさ」


 道路に広がった、強酸に対して、警戒しながら前を向きつつ、フリンカは後ろに引き下がった。


 その間に、カーニャは暗黒球を放ちまくり、ゾンビ達を吹き飛ばしていく。



 木箱の上から、ワシントンは矢を放っているが、相当焦っているのか、冷や汗を額から流している。


 対するテアンは、バリケードの入口から、ファットゲローを狙い、矢を放つ。



「グゲエェェーーーー!?」


「お前ら、家具を俺が動かすっ! これで、一般のゾンビは入れなくなるはずだっ! お前らは上から登ってこいっ!」


「分かったよ、それまで、特殊ゾンビは剣で相手してやるさっ!」


 クロスボウの矢を腹に喰らった、ファットゲローは、おぞましい悲鳴を上げる。


 それに、紫ビームや狩猟弓から放たれた矢が、集中砲火を浴びせて、奴を前のめりに倒す。


 重たそうなたなを動かしながら、ショーンは仲間たちに指示をだす。


 フリンカは、ロングソードを正眼に構えて、殿しんがりを勤めようと、ゾンビ達を睨む。



「こっちも手伝って、結構ヤバいのよっ!!」


「魔法で、壁は作りましたが…………」


「ウアアアア」


「はあっ! 警官ゾンビが銃を撃ったぞっ!! これじゃ、殴れないっ!」


 火炎魔法をしまくったり、炎の壁を生成するリズは、続々と現れるゾンビ達に押されている。


 後ろにある、破壊された入口に氷壁を張って、ジャーラは、敵が入れないようにしていた。



 ノロノロと歩いてきた、警官ゾンビは、右手に握るピストルを適当に乱射してきた。


 当然、拳銃弾が当たる事はないが、ゴードンは攻撃を非常に警戒して、ピストルで反撃して倒す。



「警官ゾンビの登場か? とにかく、下がるんだっ! 魔法で壁を作ったんなら、バリケード内まで逃げるんだっ! 音の鳴る武器は使うなっ! ゾンビを呼び寄せてしまうからなっ!」


「そんな事を言っても、魔法や銃の支援がなければキツいにゃっ!!」


「薙刀だけでは、対応できないですっ! 私達は劣勢のまま戦っているのにっ!」


「ああ、これじゃあ~~殺られちまうぜっ! 俺のスパタを振るう腕も限界だっ!」


 ショーンは、後退するように反対側の仲間たちにも、大きな声で指示をだす。


 とは言え、氷壁の向こうで、棍を突きだしながら戦っている、ミーは引き下がる事ができない。



 サヤも、必死で突きを繰りだし続け、ゾンビ達を裁きまくりながら後退しだす。


 戦いの中、マルルンは剣と盾を振るう両腕が疲れ、思わず叫んでしまう。



「分かってるっ! しかし、特殊ゾンビが居ないなら、バリケードの中に入れば、雑魚の相手をしなくていいから下がれっ!」


「と言っても、フレッシャー、ジャンピンガーは入ってくるわよっ! 火炎魔法でも射たなきゃっ!?」


 今度は、マルルン達の方に走っていき、ショーンは氷壁を飛び越えた。


 ゾンビが走ってくると、リズは両手で握るマジックロッドのオレンジ玉で、頭を叩きつける。



「それでも、外で戦うよりはマシだろ? オラッ!! そっには、マッスラー、ファットゲローは存在しなかったんだろっ? なら、後は狭いけど、バリケード内で戦っていたら戦闘は終わるっ!!」


 指示を出しながら、ショーンも先頭に立って、ゾンビ達を次々と、切り伏せていく。



「なるほどね? じゃあ、先に下がるわよっ! ここは任せたわっ!」


「後ろに引き下がりますよ、支援を願います」


「俺も、先に行かせて貰うぜっ! 腕が持たないからなっ?」


「援護に残るっ! 後ろは心配するなっ! このっ! うりゃっ!」


 リズは、早々に後退していき、二段に詰まれた木箱を掴んで飛び上がる。


 同じく、ジャーラも後ろに向かって走りだし、バリケード内へと逃げ込む。



 さっと、マルルンも棚を飛び越えて、すばやく内側へと退避した。


 だが、ゴードンだけは、ショーンとともに最後まで残って戦おうとしていた。

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