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第51話 建築現場とホテル


 ショーン達が乗った装甲トラックは、時おりゾンビを引き殺しながら、建築現場の付近に到着した。


 と言っても、路上には事故を起こして、壊れた車両が散乱しているため、近くに停車させられた。



「よっ! 到着したよ、アンタら、早く降りな?」


「あのな…………うぅ? うぇ」


 カーニャが、装甲トラックから元気よく飛び降りて、ドアを閉めた音が木霊した。


 その反対側では、嘔吐しそうに成りながら、テアンが路上でうずくっていた。



「着いたのか、うう? 気持ち悪いな、しかし、もう安心だな」


「そうねっ! 次は、別な人が運転を担当しましょう」


 後部ドアを開きながら、ショーンは道路に飛び降りると、フラフラと歩きだす。


 その後ろには、リズが具合悪そうな顔で、ヨロヨロと動いていた。



「右には、建築現場? 左に、ホテルか? 取り敢えず、もう少し近づいて見よう」


「待て、斥候せっこうに俺が行く」


「それなら、私も行きますっ! 戦闘になったら、援護できるので」


 両方の建物が怪しいと思う、ショーンは接近して、周辺を偵察しようと考えた。


 そこで、ワシントンが調査に行くと答え、ジャーラも斥候に志願した。


 二人は、路上



「分かった、二人とも頼むっ! 俺たちは、待機しながら周りを警戒する」


 ショーンは、そう言うと近くに立つ、建物や家屋を静かに眺める。


 窓には、カーテンが掛けられており、囲いのゲートには内側に木箱が設置されている。



「ショーン、静かなのが、すごく不気味だわ」


「敵が現れたら、クロスボウを射ってやる」


 リズは、静寂に包まれる周囲に不安を抱き、テアンは辺りから敵が襲撃して来ないかと警戒する。



「だな? しかし、このまま静かなら、いいんだなけどなーー? お、以外と早く向こう側から戻ってきたな」


「建築現場は、ゾンビだらけだった…………ただ、奥の方では、チラリと人影が見えた」


「反対側のホテルでは、人影が見えたけど、武装していたわ」


 静まり返る不気味さに、ショーンは警戒心を高めたが、遠くから戻ってくる二人の姿を見つけた。


 ワシントンは自動車の間から出てきて、ジャーラはカバードワゴン馬車から飛び出る。



「武装していたか? これじゃあ~~民間人か、チンピラか? 分からないよな…………」


「格好や雰囲気から、チンピラではないと推測するんだが?」


「しかし、変装している場合がありますからね」


「どっちにしろ、行くしかないにゃ? んっ!! にゃあっ!!」


 建物を占拠する人間たちが、敵と味方かは現時点では、ショーン達に区別がつかない。


 彼等の雰囲気から、悪人でないと思いたい、ワシントンは、本当に生存者だろうかと悩む。



 チンピラ達が、無害な民間人を装って、罠に誘い込む可能性を、ジャーラは冷静に考慮する。


 取り敢えず、行かなければと思った、ミーは銃声や爆発音を耳にする。



「敵だっ! た、助けてくれーーーー!?」


「襲撃だっ! 援護射撃を頼むっ!」


「撃ちまくれっ! 連中を殺して、ブツを奪うんだっ!」


「ヒャッハーー!!」


 ホテルや建築現場からは、生存者たちが、応戦しながら発する悲鳴が聞こえる。


 そして、収奪者たちによる激しい銃撃と、威勢のいい奇声が轟く。



「不味いっ!! 襲撃を受けているようだ、はやく救援に向かわなくてはっ!!」


「ホテル側は、俺達が行くっ! ショーン達は、建築現場に行ってくれっ!」


 ショーンが走りだし、車や馬車の間を通り抜けると、右側から、マルルンが声をかけてきた。


 こうして、双方の率いるチームが、左右に別れて、すばやく救援に向かっていく。



「分かった、こっちは任せろっ! そっちも、上手くやれよっ!」


「行くぞっ! ウニ鉄球を振り回すして、民間人を助けるために走るぞっ!」


「にゃっ! にゃっ! 風魔法の効果で、めちゃくちゃ速く走れるにゃっ!」


「ああ…………とにかく、ホテルの人を助けに向かわなくてはなっ! 敵は俺のスパタでっ!」


「私の火炎薙刀の威力、とくと味わせてやりますっ!!」


「悪党には、新しい弾薬か、俺のビッグナックルを食らわせてやる」


 左側にある鉄板の側を進み、ショーンは仲間たちとともに、入口を目指す。


 トラックや業務用バンの間を、スバスは通り抜けて、とにかく走り続ける。


 ミーは、自動車やワゴン車の屋根を飛び越えながら、颯爽と駆けていく。



 ホテルのベージュ色をした壁に剃って、マルルン達は、襲撃されている正面に回ろうとする。


 その後ろから、火炎薙刀を抱えながら、サヤは真っ直ぐ突撃していく。


 ゴードンは、拳銃を両手に握りしめながら、ドシドシと足音を立てつつ、勢いよく向かっていく。



「ヒャハハハハッ!! ここの資材は貰っていくぜっ!!」


「てめえら、さっさと、死にやがれっ!!」


「誰が、お前ら何かに資材を渡すかっ! 死んでも、ここは通さないっ!」


「野郎、近づいてきたら私のハンマーで、頭を潰してやるよっ!!」


 ショーン達が、入口にちかづくと内側から、チンピラ達の声が聞こえてきた。


 連中の襲撃に対して、誰かが応戦しているような言葉も、同時に耳に届く。



「海トカゲ団かっ!! 連中、こんな場所にまで、来やがったのかっ!? まったく、しつこい野郎どもだぜ…………」


「本当ねっ! 喰らいなさいっ! フェニックスッ!」


「な、ぐあっ!? ごぼぉ…………」


「ぐああああっ!! あ、熱い~~!?」


 建築現場に入り込んで、ショーンは真っ直ぐに、トリップソードを構えて突進する。


 そして、一人のアサルトライフルを持った、海トカゲ団員を狙い、後ろから右脇に刃を差し込む。



 火炎魔法で、リズは鳳凰ほうおうを作成して、魔法使いと弓兵の海トカゲ団員たちを、背後から襲った。


 飛んでいった、燃え盛る魔法の鳥は、二人とも纏めて火達磨にしてしまう。



「この様子だと? どうやら、ホテルの方も、海トカゲ団の襲撃を受けているようだなっ! 向こう側も大変だろうっ! うわ、ヤバい」


「居たぞっ! 後ろから、別な連中が来たぞっ!」


「まさか、増援か? いや、俺たちとは別な略奪者だろうっ!」


 ショーンは、殺した海トカゲ団員を肉盾にしながら、魔法や弓矢による攻撃を受ける。


 もちろん、それ以外にも、ライフル弾や拳銃弾などが飛んでくる。



 投槍使いの海トカゲ団員は、短槍を投げてきて、こちらを攻撃してくる。


 魔法使いの海トカゲ団員は、体を球体型バリアで包んでから、氷結魔法で氷柱つららを放ってきた。



「この野郎、お前ら、やんの、か…………!?」


「うっ! 反撃して来やがったかっ! げっ!」


「この野郎、負けてたまるかっ!」


「前からも、攻撃してくるっ! 挟まれたぞっ!」


 左側にある土管の裏から、アサルトライフルで銃撃してきた、海トカゲ団員は何かに射殺される。


 同じく、そこから、ショットガンを射っていた、海トカゲ団員も、背後から槍で貫かれた。



 右側にある鉄管の束に隠れていた、海トカゲ団員は、ナイフを片手に逃げだす。


 正面の奥にある木箱に隠れていた、全身鎧を着ている海トカゲ団員は、攻撃を受けても怯まない。



 どうやら、何かの銃みたいな武器を、誰かが撃ちまくっているらしい。


 槍に見えた物は、ひたすら上から鉄筋を投げおとしているようだった。



「ぐわっ!?」


「感染する弓矢だ、お前は終わりだ…………」


「死ねっ! 死ねっ! ぎゃあーー!?」


「私の投擲も、あるにゃーーよ?」


 黒アリ人間の海トカゲ団員は、ゾンビ化する、ウイルス・アローに腹を射貫かれてしまう。


 もちろん、奴を射撃したのは、入口右側に隠れていた、ワシントンだ。



 密かに、ミーは左側に回り込んでおり、土管に隠れる虚無僧の海トカゲ団員を奇襲する。


 彼女に気づいた時には、既に遅く、自らの喉を指弾で飛ばされた、ナットが貫いていた。



「クソがあっ! 撃ち返せっ!」


「死にやがれーー!!」


「させるかってんだいっ! アタシを誰だと思っているんだよっ!」


「負けてたまるか、負けてたまるかよっ!!」


 リザードマンの海トカゲ団員は、アサルトライフルを撃ちまくる。


 中華系・格闘家の海トカゲ団員は、包丁を投げまくり、必死で戦う。



 そんな中、筋骨隆々で、ゴードン見たいな緑色の肌をした、トロールが突撃してくる。


 彼女は、黄色いヘルメットの下から、赤オレンジ髪ショートヘアーを風に揺らす。



 黄緑色のヘルメットを被る白人作業員は、電動釘打機を構えて叫びまくる。


 そして、何発もの釘を発射しまくり、敵を近づけまいと、なんとか抵抗する。



「アンタ、私が銃にビビると思ってんのかい?」


「ぐあ、あ…………」


「俺達は、殺られないっ! ここを守り通すんだっ!」


「ぎゃあーー!?」


 女トロールは、勢いよく、砲丸投げのように、スレッジハンマーを思いっきり振り回す。


 これにより、ゾンビ族の海トカゲ団員は、頭を粉々に砕かれてしまった。



 白人作業員は、電動釘打機から、弾切れになるまで、釘を連射しまくった。


 こうして、ミイラ男の海トカゲ団員を、射殺する事に成功した。



「残りは、アンタ等だけだねぇ?」


「うああっ! ぐほっ! があっ!!」


「ガアアーー!! ギャアッ!!」


「うわあ~~~~!! がっ!?」


 フリンカは、死体を投げ飛ばして、リザードマンの海トカゲ団員に衝突させる。


 そして、アサルトライフルを落とした隙を狙い、一気に駆け寄り、アゴを思いっきり蹴飛ばした。



 ゾンビ化した黒アリ人間に、中華系・格闘家の海トカゲ団員は、包丁を振るう。


 しかし、首を噛まれてしまい、絡みつかれている隙に、スバスのウニ鉄球により二人とも叩かれた。



「終わったか? おいっ! アンタ等は、誰だっ!」


「待ちな、まだ、アンタ等を信用した訳じゃあ~~無いんだよ」


 海トカゲ団を殲滅した、ショーンは、作業員らしき女トロールに声をかけた。


 だが、まだ彼女たちは彼等も、略奪のために襲撃してきた、チンピラだと警戒していた。



 彼女たちの後ろには、高級ホテルに見える三階ほどある建物があった。


 また、左側には、工事中の鉄骨が剥き出しに成っているビルが存在した。

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