ヨランダ達から別れて、ショーンが走り出すと、仲間たちも建物の裏へと回っていく。
「みんなっ! 後ろに行くぜっ!」
「待ってって、言ってられないわねっ!」
「グズグズしている暇は、ないねぇっ!」
「とにかく…………射撃開始だな」
ショーンは、建物の左側から裏側へと、すばやく回り込もうと、広い路地を走っていく。
その後ろを追いながら、リズは、マジックロッドを抱えて、苦し気に息を吐く。
フリンカは、ポイズンソードを構えながら、ゾンビ達に向かって、突撃していく。
敵の姿が目に入ると、ワシントンは狩猟弓で狙いを定めて、矢を幾つか放った。
「ガウッ! ガアッ!?」
「お前ら、くたばるにゃっ! にゃっ! にゃっ!」
「ウオオーーーー」
「かなり、後方を狙えばっ!」
ワシントンの放った矢を、右膝に当てられた、ゾンビは、足を引きずりながら歩いてくる。
ショーン達を追い越して、ミーはゾンビ軍団の正面まで走ると、丸ノコを二枚も投げ飛ばす。
スバスは、群れの後ろ側に向かって、いくつか小型爆弾を投げ飛ばして、何度も爆発させる。
それにより、周囲に無数の釘や破片が飛んで、動く死者たちを、何体も倒してしまった。
「にゃああああっ!!」
「グアアアア」
「ギャアアアア~~~~!?」
「間に合わなかったっ! これじゃ、私が二番手だわ」
ゾンビ達を相手に、ブォンッと力強い音を立てながら、ミーは風打棍を横凪に振るった。
これを喰らった連中は、小走りしていたが、衝撃を受けて、後ろに倒れてしまう。
しかし、それでも後続の群れに押されて、再び前に向かい出した。
そこを狙って、フリンカは飛び込んだまま、敵に何度も、ポイズンソードの刃を喰らわせる。
「グオオオオ…………」
「ガオオーーーー!?」
「軽く、片付けたにゃあっ!」
「簡単な敵だったね」
路地を塞ぐように向かって来ていた、ゾンビ集団だったが、二人の活躍により、殲滅された。
ミーの風打棍は、敵に風を纏った打突を、何回も繰り出して吹き飛ばす。
フリンカのポイズンソードは、首や手足を切り刻みつつ、連続で斬り伏せてゆく。
また、直撃を与えずとも、猛毒の効果で、群れを続々と倒していった。
「あっちに、まだ居るよっ! ここから先は危険だねっ!」
「こっちは、確保できたにゃあっ!」
「分かったぜっ! お前ら、ここは任せた」
「ここは、ウニ鉄球の出番だっ! と、その前に、氷結瓶を喰らえっ!」
フリンカは、ゾンビを斬り倒しながら、物置小屋の周辺で叫んだ。
そこから、釘やナットを左側に、何度も投げ飛ばして、ミーも敵に攻撃を加える。
二人の援護により、ショーン達は路地から左折して、建物裏側へと回り込んだ。
当然ながら、そこには大量のゾンビが存在しており、数を減らすべく、スバスは氷結瓶を投げた。
「グゥゥ」
「グア…………」
瓶が割れると、圧縮された氷結魔法のガスが噴出して、ゾンビを凍結させる。
「お前ら? 援護してくれるのかっ! ゾンビの集団が、建築現場の入口を破壊したんだっ!」
「正面のヨランダ達は、どうなっているんだっ!?」
「知らんっ! けど、彼女たちから助けに行くように頼まれたんだっ!」
釘や鉄筋を投げる、黄色いヘルメットの黒人作業員は、いきなり現れた、ショーン達に声をかけた。
長い鉄管を槍のように突きだし、ゾンビ達を攻撃する黄緑色ヘルメットを被る白人作業員も叫ぶ。
二人は、建物の窓から路上を埋め尽くすゾンビ達を、攻撃しまくっていた。
ショーンは、雪崩れ込んだ動く死者を相手に、派手に暴れ回ろうと、トリップソードを振るう。
「おら、おらっ! 何で、こんなに大量のゾンビが入って来てるんだよっ! いったい、どうなってるんだっ!」
「ガアガアッ?」
「グアア~~!? グアッ!」
「ショーン、援護するわっ!! ファイヤー…………」
トリップソードを振り回して、ショーンは敵を倒すのではなく、斬り着けていく。
これで、同じゾンビ同士が混乱に陥り、目に入る者を味方でも攻撃し始める。
後方から、リズは火炎魔法を上空に放ち、巨大な火炎球を作り、小さな火玉を雨霰みたいに降らす。
それに身を焼かれた、ゾンビ達は体が炎上して、路上で、ヨロヨロと動きながら倒れていった。
「リズ、助かったぜっ! おいっ! 大工さん達、いったい何があったんだ?」
「バリケードを築き、何とか、この場所を守っていたが、ついに防衛線が破られてしまったんだ」
「はやく言えば、さっきの戦闘で、自爆するゾンビが裏門を壊してしまったんだっ!」
「中々、厄介な事に成っているな…………しかし、矢を発射するぞ」
ショーンは、リズの魔法による強力な援護射撃なや感謝しながら、作業員たちに声をかける。
黄色いヘルメットの黒人作業員は叫び、黄緑色ヘルメットを被る白人作業員も怒鳴るように話す。
物置小屋に上がった、ワシントンは狩猟弓から爆弾付き矢を放ち、一体のゾンビを吹き飛ばす。
「お前ら、はやく助けてくれぇっ!?」
「こっちも、もう持たないんだっ!!」
「あ? まだ作業員が居たのか? じゃあ行くぞ、準備はいいか? 俺は出来てるぜっ!」
「私も行けるわ、今魔法の壁を作るから安心してっ!」
黄色いヘルメットのアジア系作業員が、必死で叫びながら、木箱を置いている。
黄緑色のヘルメットを被るアラブ系作業員も、金網を設置している。
他にも、スパナやレンチを投げたり、バリケードを設置する作業員たちが何人か見える。
ショーンは、仲間たちに声をかけるが、彼の目は、真っ直ぐ敵を捉え、決意に満ちていた。
火炎魔法で、リズは燃え盛る炎の壁を作り、ゾンビが作業員たちに襲いかかれないようにした。
「おらああっ! 喰らえっ! わざと殺さないでっと…………こうすれば」
「グアアアア?」
「ガアガアガアガア?」
「助かった、だが、まだまだ敵は来るからなっ!」
「こっちからも援護してやるっ!!」
ショーンは、トリップソードを振るいまくり、ゾンビを斬り着けて、同士討ちさせる手法を使った。
これにより、何体もの動く死者たちが、互いに攻撃しあい、混乱したまま殴り合い続ける。
その間に、さまざまな作業員たちが、鉄筋やカッターなどを投げて、援護してくれる。
彼等は、木箱や金網を使って、敵が侵入して来られないような、簡易バリケードを即座に構築した。
「大工さん達、頑張っているなっ! 俺らも負けてられないぜっ!」
「本当だねぇ~~? 私だって、本気を見せないと成らないわっ!」
「にゃあっ! 確かに、冒険者として、いい所を見せなきゃ成らんにゃっ!」
「何発、矢を放っても、ゾンビが減らないな…………」
ショーンは、敵と果敢に戦う作業員たちの姿をみて、自らも奮闘しようと、敵陣に突っ込む。
風打棍を振り回して、ミーは次々とゾンビ達を吹き飛ばしていく。
フリンカが両手で振るう、ポイズンソードは敵を切っ先で斬り向けただけで、猛毒で簡単に倒す。
予備の矢がある限り、動く死者たちを倒そうと、ワシントンは、額から汗を垂らして射ちまくる。
「お前ら、ここが正念場だぞっ! スバス、右側を頼むっ! リズ、俺とともに正面で援護してくれっ!」
「右側を頼まれたか? こりゃ、ウニ鉄球を振り回す間合いを取らんとな」
「分かってるわっ! 火炎の壁を入口に作るわっ!」
「ギュアアアアアア~~~~」
「グオオオオオッ!!」
ショーンは、右側に味方を配置するが、左側は作業員たちが存在するので、彼等に防衛を任せた。
スバスとリズ達は頷き、武器を確りと握りしめて、ゾンビ達と対峙する。
彼等は、一丸となって、迫り来るゾンビ軍団を排除するために動き出した。
だが、そこに強力な特殊感染者である、マッスラーやフレッシャー達が現れた。
もちろん、ジャンピンガーやウォーリアー等も、勢いよく走ってきた。