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第53話 裏門を守れっ!


 ヨランダ達から別れて、ショーンが走り出すと、仲間たちも建物の裏へと回っていく。



「みんなっ! 後ろに行くぜっ!」


「待ってって、言ってられないわねっ!」


「グズグズしている暇は、ないねぇっ!」


「とにかく…………射撃開始だな」


 ショーンは、建物の左側から裏側へと、すばやく回り込もうと、広い路地を走っていく。


 その後ろを追いながら、リズは、マジックロッドを抱えて、苦し気に息を吐く。



 フリンカは、ポイズンソードを構えながら、ゾンビ達に向かって、突撃していく。


 敵の姿が目に入ると、ワシントンは狩猟弓で狙いを定めて、矢を幾つか放った。



「ガウッ! ガアッ!?」


「お前ら、くたばるにゃっ! にゃっ! にゃっ!」


「ウオオーーーー」


「かなり、後方を狙えばっ!」


 ワシントンの放った矢を、右膝に当てられた、ゾンビは、足を引きずりながら歩いてくる。


 ショーン達を追い越して、ミーはゾンビ軍団の正面まで走ると、丸ノコを二枚も投げ飛ばす。



 スバスは、群れの後ろ側に向かって、いくつか小型爆弾を投げ飛ばして、何度も爆発させる。


 それにより、周囲に無数の釘や破片が飛んで、動く死者たちを、何体も倒してしまった。



「にゃああああっ!!」


「グアアアア」


「ギャアアアア~~~~!?」


「間に合わなかったっ! これじゃ、私が二番手だわ」


 ゾンビ達を相手に、ブォンッと力強い音を立てながら、ミーは風打棍を横凪に振るった。


 これを喰らった連中は、小走りしていたが、衝撃を受けて、後ろに倒れてしまう。



 しかし、それでも後続の群れに押されて、再び前に向かい出した。


 そこを狙って、フリンカは飛び込んだまま、敵に何度も、ポイズンソードの刃を喰らわせる。



「グオオオオ…………」


「ガオオーーーー!?」


「軽く、片付けたにゃあっ!」


「簡単な敵だったね」


 路地を塞ぐように向かって来ていた、ゾンビ集団だったが、二人の活躍により、殲滅された。


 ミーの風打棍は、敵に風を纏った打突を、何回も繰り出して吹き飛ばす。



 フリンカのポイズンソードは、首や手足を切り刻みつつ、連続で斬り伏せてゆく。


 また、直撃を与えずとも、猛毒の効果で、群れを続々と倒していった。



「あっちに、まだ居るよっ! ここから先は危険だねっ!」


「こっちは、確保できたにゃあっ!」


「分かったぜっ! お前ら、ここは任せた」


「ここは、ウニ鉄球の出番だっ! と、その前に、氷結瓶を喰らえっ!」


 フリンカは、ゾンビを斬り倒しながら、物置小屋の周辺で叫んだ。


 そこから、釘やナットを左側に、何度も投げ飛ばして、ミーも敵に攻撃を加える。



 二人の援護により、ショーン達は路地から左折して、建物裏側へと回り込んだ。


 当然ながら、そこには大量のゾンビが存在しており、数を減らすべく、スバスは氷結瓶を投げた。



「グゥゥ」


「グア…………」


 瓶が割れると、圧縮された氷結魔法のガスが噴出して、ゾンビを凍結させる。



「お前ら? 援護してくれるのかっ! ゾンビの集団が、建築現場の入口を破壊したんだっ!」


「正面のヨランダ達は、どうなっているんだっ!?」


「知らんっ! けど、彼女たちから助けに行くように頼まれたんだっ!」


 釘や鉄筋を投げる、黄色いヘルメットの黒人作業員は、いきなり現れた、ショーン達に声をかけた。


 長い鉄管を槍のように突きだし、ゾンビ達を攻撃する黄緑色ヘルメットを被る白人作業員も叫ぶ。



 二人は、建物の窓から路上を埋め尽くすゾンビ達を、攻撃しまくっていた。


 ショーンは、雪崩れ込んだ動く死者を相手に、派手に暴れ回ろうと、トリップソードを振るう。



「おら、おらっ! 何で、こんなに大量のゾンビが入って来てるんだよっ! いったい、どうなってるんだっ!」


「ガアガアッ?」


「グアア~~!? グアッ!」


「ショーン、援護するわっ!! ファイヤー…………」


 トリップソードを振り回して、ショーンは敵を倒すのではなく、斬り着けていく。


 これで、同じゾンビ同士が混乱に陥り、目に入る者を味方でも攻撃し始める。



 後方から、リズは火炎魔法を上空に放ち、巨大な火炎球を作り、小さな火玉を雨霰みたいに降らす。


 それに身を焼かれた、ゾンビ達は体が炎上して、路上で、ヨロヨロと動きながら倒れていった。



「リズ、助かったぜっ! おいっ! 大工さん達、いったい何があったんだ?」


「バリケードを築き、何とか、この場所を守っていたが、ついに防衛線が破られてしまったんだ」


「はやく言えば、さっきの戦闘で、自爆するゾンビが裏門を壊してしまったんだっ!」


「中々、厄介な事に成っているな…………しかし、矢を発射するぞ」


 ショーンは、リズの魔法による強力な援護射撃なや感謝しながら、作業員たちに声をかける。


 黄色いヘルメットの黒人作業員は叫び、黄緑色ヘルメットを被る白人作業員も怒鳴るように話す。



 物置小屋に上がった、ワシントンは狩猟弓から爆弾付き矢を放ち、一体のゾンビを吹き飛ばす。



「お前ら、はやく助けてくれぇっ!?」


「こっちも、もう持たないんだっ!!」


「あ? まだ作業員が居たのか? じゃあ行くぞ、準備はいいか? 俺は出来てるぜっ!」


「私も行けるわ、今魔法の壁を作るから安心してっ!」


 黄色いヘルメットのアジア系作業員が、必死で叫びながら、木箱を置いている。


 黄緑色のヘルメットを被るアラブ系作業員も、金網を設置している。



 他にも、スパナやレンチを投げたり、バリケードを設置する作業員たちが何人か見える。



 ショーンは、仲間たちに声をかけるが、彼の目は、真っ直ぐ敵を捉え、決意に満ちていた。


 火炎魔法で、リズは燃え盛る炎の壁を作り、ゾンビが作業員たちに襲いかかれないようにした。



「おらああっ! 喰らえっ! わざと殺さないでっと…………こうすれば」


「グアアアア?」


「ガアガアガアガア?」


「助かった、だが、まだまだ敵は来るからなっ!」


「こっちからも援護してやるっ!!」


 ショーンは、トリップソードを振るいまくり、ゾンビを斬り着けて、同士討ちさせる手法を使った。


 これにより、何体もの動く死者たちが、互いに攻撃しあい、混乱したまま殴り合い続ける。



 その間に、さまざまな作業員たちが、鉄筋やカッターなどを投げて、援護してくれる。


 彼等は、木箱や金網を使って、敵が侵入して来られないような、簡易バリケードを即座に構築した。



「大工さん達、頑張っているなっ! 俺らも負けてられないぜっ!」


「本当だねぇ~~? 私だって、本気を見せないと成らないわっ!」


「にゃあっ! 確かに、冒険者として、いい所を見せなきゃ成らんにゃっ!」


「何発、矢を放っても、ゾンビが減らないな…………」


 ショーンは、敵と果敢に戦う作業員たちの姿をみて、自らも奮闘しようと、敵陣に突っ込む。


 風打棍を振り回して、ミーは次々とゾンビ達を吹き飛ばしていく。



 フリンカが両手で振るう、ポイズンソードは敵を切っ先で斬り向けただけで、猛毒で簡単に倒す。


 予備の矢がある限り、動く死者たちを倒そうと、ワシントンは、額から汗を垂らして射ちまくる。



「お前ら、ここが正念場だぞっ! スバス、右側を頼むっ! リズ、俺とともに正面で援護してくれっ!」


「右側を頼まれたか? こりゃ、ウニ鉄球を振り回す間合いを取らんとな」


「分かってるわっ! 火炎の壁を入口に作るわっ!」


「ギュアアアアアア~~~~」


「グオオオオオッ!!」


 ショーンは、右側に味方を配置するが、左側は作業員たちが存在するので、彼等に防衛を任せた。


 スバスとリズ達は頷き、武器を確りと握りしめて、ゾンビ達と対峙する。



 彼等は、一丸となって、迫り来るゾンビ軍団を排除するために動き出した。



 だが、そこに強力な特殊感染者である、マッスラーやフレッシャー達が現れた。


 もちろん、ジャンピンガーやウォーリアー等も、勢いよく走ってきた。

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