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第54話 裏門での激闘


 ショーン達は、迫り来るゾンビ軍団を殲滅しようと、皆の士気を高めた。


 だが、工事現場に強力な特殊感染者である、さまざまなゾンビ達が現れた。



「グオオオオッ!」


「ギャアア~~~~」


「グルルゥゥ」


「ギアアーー!」


「ゲローー! ゲロロッ!」


 マッスラー達は、ドシドシと足音を立てながら入口から歩いてくる。


 フレッシャーズやジャンピンガー達は、鉄板の壁を乗り越え、工事現場へと侵入してきた。



 剣や槍を手にした、ウォーリアー達は、群れの後ろから続々と走ってくる。


 無秩序な軍団の中には、スピットゲロー達が混じり、強酸を吐こうと口を膨らませた。



「不味い、ゲロ野郎が混じっているぞっ!」


「分かっているわっ! 今やるわねっ!」


「小型爆弾と氷結瓶を投げてやるっ!」


「あ…………うぎゃっ!」


 ショーンは、最初の一体であるジャンピンガーを狙い、鋭い刃を突きだし、頭を一撃で貫いた。


 血飛沫ちしぶきが、後頭部から飛び散り、仲間たちも次々にゾンビ軍団を倒そうと構える。



 しかし、連中による動きは、連携が取れており、まるで一つの生き物みたいだった。



 奴等の体制を崩そうとして、リズは入口に火炎魔法を放ち、炎をゾンビ達を燃やす。


 スバスも、敵がやってくる道路に向けて、無我夢中で投擲武器を投げまくる。



 そうやって、二人が何体かの特殊感染者たちを倒していると、スピットゲローが強酸を吐いた。


 しかも、それを真正面から喰らってしまったのは何と、ミーだった。



「ミーー!?」


「嘘…………嘘よね?」


 あまりの出来事に、ショーンとリズ達は、凄まじいショックを受けた。



「みんな、アレッ! 何とも無いにゃっ!」


「ボケッとしている暇が、あったら攻撃するんだっ!」


「ゲロローー!?」


「きっと、魔法具の効果で、風魔法に守られたんだよっ!」


「右側の方に行ったっ! 来るぞっ!」


 殺られたと思った、ミーだったが、体中全体を包み込む風のバリアが、強酸を弾いていた。


 そして、彼女を狙った、スピットゲローは、ワシントンによる射撃を頭部に受けた。



 フリンカは喋りながら、マッスラーの右腕を斬り飛ばしたあと、直ぐに後ろに飛んで反撃を避ける。


 仲間たちの叫び声を聞いていた、ショーンは彼等に敵が攻撃してくると、注意を促す。



「ギャアアアアッ!」


「ワシントン、そっちに行ったぞっ!」


「分かってるっ! 俺なら大丈夫だ、心配するなっ!」


「グアアアアッ!」


「こっちは、私達が守るにゃあっ!」


「だねっ! 私達さえ居ればっ!!」


 ショーンは、鉄板を飛び越えて、建築現場に入ってくる敵が目に入った。


 ワシントンは、素早く振り向き、迫るフレッシャー達に向かって、矢を放ちまくった。



 続々と、蟻みたいに物置小屋へと集る連中に対して、矢が命中しまくり、その場に崩れ落ちる。


 ミーとフリンカ達も、必死で武器を振るい、周囲には、倒れた動く死体の山ができていた。



「グルアアッ!!」


「ゴアアアアッ!」


「不味いっ! また、別のゾンビがっ!」


「反撃しろっ! とにかく近寄らせるなっ!」


 次々と、新たなゾンビ達が現れては、連中の数は減るどころか、逆に増えていく。


 軍団を成す死者の群れは、非常に不気味であり、戦っている者達全員に恐怖を抱かせる。



 しかも、特殊ゾンビ軍団はリズが放った、火炎カーテンを通り抜けてしまう。


 最初は、体を燃やしては何体かが倒れていたが、やがて炎の勢いは小さくなり、消えてしまった。



 金網や木箱の向こう側から、釘を投げている黄色いヘルメットを被る、リザードマン作業員は叫ぶ。


 同じく、黄緑色のヘルメットを被る、青アリ人間も鉄筋を投げ飛ばしながら、すごく焦っていた。



 ゾンビ軍団の勢いは凄まじく、一体を倒す度に、また二体と増えていく。



「これじゃ、俺達が不利だぜっ! このっ! これを使えばっ!」


 ショーンは、焦りを感じながらも、仲間たちとともに、ゾンビの群れに立ち向かい続ける。


 彼は、トリップソードを振り回しまくるが、全員を守り抜くと言う、強い信念があるからだ。



「ゴアアッ! グオオ、グアアーー!!」


「ゲロロッ!」


「絶対に負ける訳には、いかないぜっ!」


 ショーンが何度も斬りつけた、マッスラーは薬が効いたらしく、スピットゲローを殴り倒した。


 他にも、彼はフレッシャーやウォーリアー達を狙って、トリップソードの刃を突きだす。



「ギャアッ! ギュアアッ!」


「グルアアッ! ゴルアッ!」


「ウォーー!!」


「ギギィッ!?」


「この距離じゃ、次は遠距離魔法よりも、近距離でっ!!」


「リズ、頼むぜっ!」


 マジックロッドのオレンジ玉を光らせ、火炎放射器みたいに、リズは炎を噴射する。


 ショーンは、トリップソードの効果で、同士討ちしていく、ゾンビ達が火攻めに合う姿を睨む。



「ん? ショーン、妙な奴が現れた、ガスを吐いているっ! 取り敢えず、射殺しておくっ!」


「ガスを吸い込んだら、感染するかも知れないっ! ここは俺のウニ鉄球でも…………いや、迂闊には近寄れないな?」


 ワシントンは、物置小屋の上から、ジャンピンガーやフレッシャー達を、狩猟弓で屠っていた。


 しかし、彼は道路に、体中から深緑色の毒ガスを排出しているゾンビを発見する。



 それを見て、スバスも近接戦闘で、相手にするのは不味いと思い、ゆっくりと後ずさる。


 気味の悪い新型ゾンビは、口から毒ガスを噴射したり、全身から毒ガスを出して煙幕を張った。



「うわっ! みんな離れろっ! 奴は遠距離攻撃じゃないと、倒せないっ!」


「火炎魔法を射つわっ! ショーン、離れてっ!」


「後ろに下がれ、俺も爆弾を投げてやるっ!」


 毒ガスを出している異様なゾンビに、ショーンは距離を置いて、近づかないように気をつける。


 その言葉を聞いて、リズは大火球を放ちまくり、群れに向かって乱射する。



 スバスも、小型爆弾に火を着け、緑煙の中に幾つか投げ込んだ。


 こうして、煙幕や周辺の動く死者たちが、炎と爆風で、路上に倒れていく。



「グアアアッ!」


「どうやら、奴は倒れたようだなっ! 残りは敷地内の連中だけだっ!」


「ギャアア~~~~!?」


「ぐううっ! うるさいんだよ、黙って死んでなっ!」


 ショーンは叫び、最後の力を振り絞って、残るゾンビ達を殲滅しようとした。


 ガス吐きゾンビを倒した今、トリップソードに斬られた連中は、大半が同士討ちしていた。



 そこに現れた、エングラーも右側から奇襲を仕掛けた、フリンカにより、一気に首を切断される。


 こうして、数を減らした、動く死者たちを掃討するため、彼等は攻勢を仕掛けた。



「鉄筋を喰らえっ!」


「グオオ、グアッ!」


「グルアアッ!」


「にゃあっ! にゃあっ!」


 左側のバリケードから、黄緑色ヘルメットを被るアラブ系作業員が、鉄筋を投げつける。


 それは、弧を描いて、回転しながら、マッスラーの右頬に当たった。


 ウォーリアーが、ロングソードとノルマンシールドを手に襲いかかってくる。


 右側から、ミーが投擲した、丸ノコが奴の側頭部に、深々と突き刺さる。



「ウオオオオーーーー!!」


「アイツで最後だ、殺ってしまえっ!」


「それは、俺の役目だ…………喰らえっ! アガニ・アローを」


 黄色いヘルメットの黒人作業員は、釘を投げながら、マッスラーを攻撃する。


 彼に目をつけ、窓を眺めた奴の頭部に、左側から矢が突き刺さり、爆散して肉片を撒き散らす。



 今の狙撃は、ワシントンが物置小屋から放った爆裂する矢だった。


 残る敵も、ショーン達の魔法や剣により、瞬く間に殲滅されていく。



「どうやら、勝ったようだなっ!」


「はあ、はあ、終わったわね…………」


「急げ、バリケードを作り直すんだっ!」


「木箱を運ぶぞ」


 ショーンとリズ達が、苦しそうに息を吐くなか、作業員たちは、入口を塞ごうと動く。


 こうして、彼等は大量の特殊ゾンビ軍団に、何とか勝利する事ができた。

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