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第55話 生き残りは?


 建築現場の裏から雪崩れ込んだ、ゾンビ達が、暴れ回っていたが、ショーン達が全て倒した。



「終わった、終わった」


「まだだっ! 物置小屋の中に、仲間たちが逃げたんだ、連中を助けないとっ!」


「中に逃げた、吸血鬼のワイリー、グールのレスター達が心配だっ!」


「だったら、開けないと」


「よし、やるぞ…………」


 ショーンは、肩から力を抜いて、背中を丸めてしまい、だらしない格好で溜め息を吐いた。


 激戦が終わり、大量の死体を前にして、かなり彼は疲れていたからだ。



 黄色いヘルメットの黒人作業員は、窓から仲間が無事かどうか、心配そうな顔をしながら叫ぶ。


 黄緑色ヘルメットを被る、白人作業員も、かなり疲れた表情を見せる。



 黄色いヘルメットを被る、リザードマン作業員は、物置小屋のドアを開けようとする。


 黄緑色のヘルメットを被る、青アリ人間も鉄筋を使って、開こうと試みた。



「はあ? まだ、中に居るのか…………」


「ショーン、外は見張っているから、確認してくれ」


 二人の作業員が、ドアを開く様子を見ていた、ショーンは近づいていく。


 ワシントンは、敷地内から周りの建物を警戒して、狩猟弓を構え続けていた。



「おっし、開いたぞっ!」


「二人とも、無事かっ! ワイリー? やはり、生きてたか?」


「ああ…………」


「どうやら、無事のようだぜ?」


 黄色いヘルメットを被る、リザードマン作業員は、ドアを開けた勢いで後ろに転ぶ。


 黄緑色のヘルメットを被る、青アリ人間も開いた途端、疲れた表情で鉄筋を杖にしながら立つ。



 薄暗い物置小屋の中では、ワイリーらしき人物が、こちらに背中を向けていた。


 どうやら、話に聞いた通り、彼は吸血鬼族らしく、肌が異様に蒼白い。



 ショーンは、様子を確かめに、内部に入ろうとして、ゆっくりと歩きだした。



「ワイリーだな? おい、大丈夫なのか?」


「ああ、アアアア…………」


 ショーンが肩を叩いて見ると、ワイリーは振り向いたが、すでに彼はゾンビ化していた。


 しかも、作業員仲間であるレスターを食っていたらしく、遺体が足元に頃がっている。



「うわあっ! この野郎っ!!」


「ゲガガ…………ゴッ!」


 ショーンは、ゾンビ化していた、ワイリーのアゴから脳天を目掛けて、トリップソードで貫いた。


 そうして、彼が力無く倒れると、急いで物置小屋から下がって出てゆく。



「グエエ、グアア」


「うわっ! 今度は、もう一人、ゾンビ化したのか? しかも、ガス吐きにかーー!?」


「ショーン、任せなっ! オラッ!」


「にゃあっ!」


 ガス吐きゾンビと化した、レスターから、ショーンは急いで離れていく。


 その好きに、フリンカが奴に死体を投げつけ、ミーは丸ノコをたてに投擲する。



「ゲガアアッ! ブガアッ!」


 毒ガスを、体や口から噴出させようとしていた、レスターは死体を当てられて怯んでしまう。


 次いで、そこを狙われた投擲により、眉間に回転しながら飛んできた、丸ノコが突き刺さった。



「ふぅ~~! 吸血鬼やグールと聞いて、油断したが? まさか、二人とも感染していたとは…………」


「まさかのまさかで、私は動けなかったわ…………」


「アンデッド族、感染者っ! 両者の区別は、中々しづらいからな? 最初から分かっていれば、ウニ鉄球を喰らわせたんだが」


「大変だっ! 今度は、真正面の連中が劣勢に立たされているっ!」


 ショーンは、ガスを発するレスターの死体を見ながら、険しい表情で呟く。


 あまりの出来事に、リズや作業員たちは体が動かず、恐怖に震えていた。



 額から頬へと、汗を滴しながら、スバスは両腕を組んで立っていた。


 そこに、黄色いヘルメットを被る、バッタ人間の作業員は、左側から走りながら救援を求めてきた。



「こっちは、何とかバリケードを作ったが、反対側から、ゾンビが走って来るだろうっ!」


「もう見えているっ! アガニ・アローを喰らわせるっ!」


「グアアアアッ!」


「ギャイイイイッ!」


 黄色いヘルメットを被る、バッタ人間の作業員は、ショーン達が通って来た道を指差す。


 それより前に、ワシントンは爆薬から伸びる導火線に着火しながら、弓矢を放ちまくった。



 剣と盾を握るウォーリアー、叫び声を上げるエングラー達の奇声と怒号が轟く。


 連中の勢いは凄まじかったが、炸裂した矢の爆発で、何体かが吹き飛ぶ。



「仕方ない、行くしかないか? おいっ! アンタ等は向こう側から回れっ! 俺達はゾンビを倒しながら救援に向かうっ!」


「分かった、じゃあ任せたぞ」


「そっちは頼むっ!」


「先方は、私が務めるよっ! ワシントン、援護してくれっ!」


「言われなくても、そうするぜっ!」


 ゾンビの群れに突撃していく、ショーンは叫びながら、トリップソードを振るう準備をする。



 黄色いヘルメットを被る、バッタ人間の作業員は、彼とは反対方向へと走っていく。


 黄色いヘルメットを被る、リザードマン作業員も、とにかく急ごうと駆け出していった。



 ポイズンソードを、横凪に何度も振り回し、フリンカは、フレッシャー達を薙ぎ倒しまくる。


 狩猟弓を何度も引きながら、ワシントンは小走りするゾンビ達の頭を射貫いていく。



「っと、この数は流石に危ないね」


「にゃあっ! にゃあっ! 私の打突を喰らうにゃっ!」


「火炎魔法の援護よっ!」


「この距離だと、一体ずつ、ウニ鉄球を振り回すしかないな」


 フリンカは引き下がると、代わって、ミーが前に出ながら、風打棍を何度も突きだす。


 風を纏った強力な打撃を、連続で受けて、ゾンビ達は次々と後ろに弾き飛ばされる。



 しかし、路地の後方から走ってくる群れに押されて、連中は再び前に戻ってくる。



 これでは、埒が明かないので、リズは火炎球を上空に放ち、火花を地上に降り注ぐ。


 さらに、飛び出てきた敵は、ウニ鉄球の重たい一撃を、スバスが喰らわせる。



「お前ら、助かったぜっ! 俺も前に出るっ!」


 ショーンも、フレッシャーの首を斬ったり、ゾンビ達をバックラーで弾きながら突き進む。



「ガアアーー!!」


「グルアアッ!!」


「うわっ! 危ねっ!」


 突っ走るショーンの前に、グレイブを振り回す、ウォーリアーが現れた。


 その後ろには、レイピアを振り回しながら走ってくる、ウォーリアーが見える。



「ショーン、下がって」


「近距離戦は避けろっ!」


 リズは、火炎放射を浴びせて、ウォーリアー達を燃やしてしまう。


 スバスも、敵から離れた位置から、ウニ鉄球を振り下ろして、相手の頭を叩きつける。



「お前ら、助かったぜっ! 絶対に負けるわけにはいかないからなっ!」


 ショーンは叫びながら、ヨランダ達を助けるために、剣を振るいながら必死で走り続ける。


 建築現場のゾンビを掃討するため、彼等は全力を尽くさんと、とにかく戦い続ける。




「みんなっ! 曲がり角だっ! あそこまで行けばっ!」


「ええっ! もう少しで、たどり着くわねっ!」


 ショーンと、仲間たちも同じ思いを抱き、全力で路地を駆け抜けた。


 彼等の眼前には、言葉通り曲がり角が迫っており、そこには、ゾンビ達も存在しなかった。



「おっし、このまま行けばっ! あっ!!」


「みんな、下がってっ!」


「にゃあーーーー!! 不味いにゃあーーー!!」


「これは、不味いっ!? 逃げろっ!!」


 ショーンは急に立ち止まり、いきなり現れた敵を見て、驚いてしまった。


 火炎魔法を乱発しながら、リズは叫んで、仲間たちを下がらせようとする。



 ミーは直ぐさま、三回も後ろにバックステップして、相手から距離を取ろうとした。


 自身の爆弾が爆発するよりも、先に殺られてしまうと判断した、スバスは踵を返して走り出す。



「ゲルアア~~~~ば、バクハツスル?」


 何故なら、そこに自爆ゾンビであるボンバーが、曲がり角の右側から登場したからだった。

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