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第60話 酔っぱらいと夜の✕✕…………


 フリンカ達が消えたあと、ショーン達は老人ホーム内を巡回しながら、色々と仕事を行う。



「こっちで良いのか?」


「有りがとう、ございます」


「本当に済まないねぇ~~」


 ショーンは、非常食の入っている大きな段ボールを運び、廊下を歩いていく。


 女性エルフの介護士と、彼女が押している車椅子に座る、お婆さんから礼を言われる。



「いや、これくらいな? じゃあ、また何かあったら呼んでくれ」


「はい、どうもっ!」


「有り難うねーー」


 段ボール箱を、ショーンはドアの前に置くと、再び巡回に戻ろうとする。


 エルフ介護士は笑顔で、お婆さんも、にこやかな顔で、彼の後ろ姿を見送る。



「ウヒヒ…………」


「うわっ! なんだっ!」


 いきなり、妙な声が聞こえた、ショーンは敵かと思い、後ろに振り向いた。



「ショーン、あんたも飲みな~~♡」


「うっ! 酒くせぇ…………フリンカ、飲み過ぎだぞっ! てか、あの爺さん達はどうしたんだ?」


 そこに立っていたのは、フリンカだったが、彼女ら泥酔していた。


 しかも、ショーンは漂うアルコール臭に思わず、吐きそうになってしまう。



「ああーー? あの爺さん達なら、飲み比べ勝負をして酔いつぶれたら、体を好きにしていいと言って、戦ったんだけど? そしたら、全員もう飲めないとか言って、顔を赤くして寝てしまったわ」


「はあ? どれだけ、飲んだんだよっ!」


 フリンカから話を聞いて、ショーンは酒豪なのかと思った所を、前から彼女に羽交い締めにされた。



「それより、ショーン? …………私、爺さん達と夜の特訓を期待していたんだけどさっ! みんな、負けちゃったんだわ、だからね♡」


「うわ、うっ! いや、まだ夜ですら無いし、その勝負をする場所もないだろ?」


 首を絞められたまま、フリンカは背後に回って、ショーンを、お姫様だっこで抱き上げる。



「大丈夫、どっか、空いている部屋を探せば~~? ほら、あった♡」


「いや、マジで今は、そう言う事をしている暇は無いしっ!?」


 フリンカは、ショーンを片手で抱きながら、もう片方の手で、ドアを開いた。


 すると、そこは誰も使っていなかった部屋らしく、介護用ベッドが、一つだけ設置してあった。



「ほらぁ~~! ちょうどいい場所に、ベッドも置いてあったわ♡ これで、夜の特訓をっ!」


「いや、マジでやめっ! うわっ! ぎゃあっ!」


 フリンカは、ショーンをベッドに放り投げて、その上に、ボディープレスをしてきた。


 しかも、また首を羽交い締めにして、様々なプロレス技を仕掛けてきた。



 それから、彼女が深く眠るまで、凄まじい暴走行為は続けられた。



「昨日は凄かったな? ゾンビの襲撃かと思って、鉄球を用意したが? 男女の声がしたから、思わず、この部屋から離れてしまったが」


「本当だにゃっ! あんなに激しく、ベッドを揺らすなんて、よっぽどの性豪と変態に決まってるにゃ?」


 スバスは、仕事を終わらせて、廊下を歩いている内に、誰かが行為に及んでいる声を聞いていた。


 巡回任務で、ミーも敵を探していると、部屋から怪しげな音が鳴っていたのを耳にした。



「と言うか? 昨日は、フリンカが凄く酔っぱらっていたにゃっ! それに、ショーンの姿も見えなかったにゃ?」


「まさか? 二人とも…………」


 急いで、部屋のドアを開いた、ミーとスバス達が見た光景は、物凄く衝撃的だった。



「う、うう? ふあ~~! よく寝たねっ!」


「あ、ああ…………」


 フリンカが眼を覚まして、ショーンは白眼を向いたまま、ベッドで横たわっている。


 もちろん、二人とも白いシーツにくるまり、どう見ても、行為をしたようにしか見えなかった。



「にゃ、にゃにゃっ! 不味いにゃっ!」


「これは、失礼したっ!」


「ふあ? 二人とも、おはようさんっ?」


「う、う? 朝か? 何だか、息苦しかった気が…………」


 今度は、急いで部屋のドアを閉めようとして、ミーとスバス達は、慌ててしまう。


 そこに、フリンカは白いシーツから体を起こし、ショーンも物音に反応して、気絶から覚めた。



「うわっ! お前ら、これはっ! そう言うアレじゃっ!」


「あら~~? これは、勘違いされてる感じかな?」


「いや、何も言わなくていい」


「何も、私は見てないからにゃっ!」


 昨日から夜中にかけて、ショーンは男女の営みをしてないと、必死で弁明しようとした。


 ほんのりと頬を赤くしながら、フリンカは照れるように、シーツを強く掴んで、下を向いてしまう。



 だが、スバスは見ては成らぬ場面に、立ち入ってしまったと、顔を剃らしながら謝りつつ退散する。


 ミーはと言うと、顔面を真っ赤にしながら、両手で覆ってしまい、部屋から逃げるように立ち去る。



「お前ら、絶対に違うんだからなっ! これは、誤解だからな~~~~~~!?」


「アハハ、誰も信じてくれないよ」


 ショーンの叫び声が木霊する中、フリンカは仕方ないと、ケラケラ笑うしかなかった。



 それから、時間が立つと、見張りの作業員たちなどを除いた、人間全員が食堂に集まっていた。



「ひそひそ」


「まあ~~」


 ショーンとフリンカ達が、情事に及んだと、既に婆さん連中の間では、話題になっていた。



「うう、マジで、みんなの目線が辛い」


「まあ、気にすんなって」


 噂話を立てられて、ニヤニヤした好奇の視線を、爺さん&婆さん達から、ショーンは向けられる。


 それを恥ずかしがる、彼に対して、フリンカは相変わらず、ケラケラと笑うだけだ。



「いや、お前が原因だからなっ!?」


「そう、怒鳴らないで、私は美人だし、まんざらでも無いだろう?」


 周りからの視線に耐えきれない、ショーンは強い突っ込みを、フリンカに入れる。


 だが、彼女は、ニヤリとした美顔と女豹のような視線を向けてくるだけだ。



「そう言う問題じゃっ! はあ~~? まあ、いい、取り敢えず、飯を食うぞ」


「そうそう、腹が減っては戦は出来ないよっ! 敵とも、夜の伴侶ともねっ! ギャハハッ!」


 もう何を言っても無駄だろうと思った、ショーンは、テーブルの上にあるコーヒーを飲もうとした。


 そんな彼に対して、フリンカは下ネタを言いながら、スープに浸した食パンを食べるのだった。



「はあ、食ったな? トイレに行くわ」


「何? そこでまた、私とプロレスをするのかい?」


 朝食のスープと食パンを食べ終えた、ショーンは席を立つと、食堂の出口に向かう。


 その後ろから、フリンカが再び、笑いながら如何わしい言葉をかけた。



「はああああ~~~~」


 ショーンは疲れたのか、フリンカを無視して、深い溜め息を吐きながら、トイレに向かっていった。



「ははっ! はああ、でも本当に悪くは無いだろう? 色男…………」


 食堂に残った、フリンカは呟きながら、ショーンの背中を見ながら、豪快にコーヒーを飲み干した。



「ふぁ~~? ようやく、視線と面倒な女から解放されたぜーー! しかし、良い女なんだが、ああも明るすぎるとな…………」


 ショーンは、欠伸アクビをしながら廊下を歩き、フリンカの姿を思い浮かべる。


 紫ロングヘアーの褐色肌であり、かなり背が高くて筋肉質ではある。



 しかも、頬はゴツいが、大きな鼻と下顎から生えた小さな牙も目立つ。


 そして、鋭い眼光を放つ瞳は黄色く光り、長い睫毛と赤紫のアイシャドウも妖しく見える。



 だが、それら全てが相まって、強い戦士である彼女は美しく見える。



「はい、こちらですね?」


「済まないのう、若いお嬢さん」


「おっ! リズ、何をやっているんだ? リズッ?」


「おい、ショーン、出発準備が出来たぞ? 俺も弓の手入れは終わったし」


 リズは車椅子に座った、トロールの老人を押しながら前へと進んでいく。


 それを見て、ショーンは彼女に声をかけようとするも、ワシントンから呼ばれて振り向く。



「あん? ワシントン、終わったのか?」


「ああ、俺たちの装甲トラックに加えて、資材を積んである輸送トラックを、三台も用意してくれた」


 ショーンは、いきなり背後から現れた、ワシントンに驚いたが、取り敢えず話を聞いてみた。



「そうか、じゃあ、みんなを集めないとな」


 こうして、ショーンは朝から全員集合させて、沿岸警備隊事務所まで戻ろうとした。

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