投げ捨てた死体が、地面に落下する中、ショーンは、チンピラ集団に単騎で駆けていった。
「うらあっ! 当たって、たまるかっ! こっちに行けばっ!」
ショーンは、無数の銃弾を避けながら、敵に向かっていくように見えた。
彼の心臓は高鳴り、冷たい汗が背中を流れるが、臆する事なく、足を止めない。
そうして、行った先は右側に停車してある、ピックアップのフロント側だった。
ここに隠れたら、きっと安全だろうと考えての無謀な行動だった。
「奴を狙えっ!」
「先に殺してやるっ!」
「うわわわわっ! これじゃ、身動きが取れないっ!」
ショーンが隠れている、ピックアップを狙って、魔法使いのチンピラは、氷結魔法を発射する。
同じく、赤茶色いホブゴブリンのチンピラは、マグナムを撃ちまくる。
その結果、彼が身を寄せる車体を、氷柱や弾丸が貫き、窓ガラスが派手に飛び散った。
とは言え、バリケード側と反対側から、連チンピラ中も射たれている。
そのため、あまり集中攻撃する事ができず、両方を相手に、射撃武器や魔法を放ち続ける。
「うおおっ! 突撃だああっ!」
「疾風迅雷、早く動いた者が勝つっ!」
ピストルを乱射しながら走ってくる、ゴードンの凄まじい気迫と怒声は、チンピラ達を怯ませる。
火炎薙刀の炎を勢いよく燃やし、ひたすらに突進してくる、サヤは恐れ知らずで勇猛だ。
「アイツら…………よし、俺も行くぜっ! うらあっ!」
「死ねっ! ぐあっ! ああっ!」
ピックアップの左側から走り出した、ショーンは、チンピラ達に斬りかかる。
赤茶色いホブゴブリンのチンピラは、マグナムを撃つ前に、右手首を斬られた。
「次は、お前の番だぜーー!」
「来るなっ! 来たら、射つぞっ! ぐぶふっ!」
魔法使いのチンピラは、右手から
しかし、慌てて射っているため全てが、当たらない上に、一瞬で距離を詰められてしまった。
その間に、バックラーで顔を隠しながら突っ込んできた彼により、顔面を殴られてしまった。
こうしてできた、大きな隙を晒した奴は、喉を切り裂かれて、激しく吐血しながら後ろに倒れた。
「おしっ! 混戦しているからなっ! 直ぐに隠れなきゃっ!」
「わあっ! ぐふ…………」
そう言いながら、ショーンは自警団が陣取っている、バリケード側から撃たれないように走る。
こうして、彼はトラックの陰に隠れながら、黒人チンピラを袈裟斬りにした。
「ぎゃ~~~~!?」
「ああっ! あ…………」
「不味い、このままじゃっ! ぐわっ!」
「ぐあっ! こ、降伏するっ!」
ショーンは、他のチンピラ連中も斬り捨てようとしたが、次々と敵が倒されていく。
紫ビームに射たれて、焼け焦げる白人チンピラや、拳銃弾に、オーガーは胸を貫かれる。
暗黒球が左肩に当たり、後ろに倒れた、黒人チンピラは怪我した箇所を右腕で押さえる。
右足をクロスボウに撃たれた、アジア人チンピラは、必死で命乞いをする。
「ダメだ、お前らは生かしちゃ成らない…………」
「ぐ、このっ! わっ!?」
「た、頼むっ! 助けっ! ひぎゃあ」
二人に迫った、ショーンは黒人チンピラが、拳銃を右手に握るのを見て、即座に腹を斬る。
降伏する振りをして、アジア人チンピラは、背中側から、ナイフを取り出した。
だが、それを付き出した瞬間、彼は攻撃を避けて、胸を深々とショートソードを差し込んだ。
残りの敵は、形成不利となった事を悟り、一斉に逃走を開始した。
「あっ! お前ら、逃げるんじゃねえっ! 男らしく戦えっ!!」
「誰が戦うかっ!?」
「ひぃ~~~~!!」
「そう易々と、逃がしはしませんっ!」
「アタシから逃げられると思ったかいっ?」
逃走する敵を、ショーンは追いかけようとして、トリップソードを片手に駆け出した。
だが、完全に戦意を喪失しているチンピラ達は、彼から逃れようと必死で、足を止めない。
そんな彼等の前に、サヤが立ちはだかり、火炎薙刀を豪快に振るい、白人チンピラを斬り伏せた。
もう一人のトロールは、カーニャにより、マチェットで胸をX型に斬られて死んだ。
「うわあ~~~~!?」
「に、逃げろーー!!」
「逃げたとしても、生かしはしませんよっ?」
他のチンピラ連中も、ジャーラが放った氷結魔法に射たれながら、何処か遠くに逃げていった。
「ふぅ? 終わったか? おいっ! 門の連中、俺たちはチンピラじゃないっ! 中に入れてくれっ! そこに、カラチスとパルドーラも居るだろうっ!」
「何を言ってるんだっ! そんな言葉を信用するワケがあるかっ!」
「いや、待て? ショーン、生きていたのかっ! コイツは驚いたぜっ!! てっきり、今ごろは天国で、良い女と遊んでいると思ってたが」
「リズとスバス達は、先に来ているぞっ! そのまま、ゲートまで来てくれっ!」
ショーンは、怒鳴るよう大声で、バリケードに陣取る自警団員に、声をかけた。
すると、向こうからは当然だが、こちらの正体が分からないため、罵声が返ってきた。
そのやり取りを聞いていた、カラチスは懐かしい同僚が叫んでいる事に気がついた。
パルドーラも同じく、知り合いが生きていた事を嬉しく思って、バリケード上から手を振った。
「ああっ! 今そっちに行くが、俺の仲間たちも撃たないでくれよっ! トロール、魔族の女、アジア系の女、サンドエルフの女、アジア系のスナイパーだっ!」
「ショーン…………よく、無事だったな? ゲ
プッ!」
「おい、連中は知り合いだからなっ! 網を垂らしてくれっ!」
「分かったぜ、ほらよっと」
両手を上げながら、ショーンはトラックの陰から出てくると、仲間たちも撃たないように注意する。
緊張が解けた、カラチスは敵を攻撃するために、腹に溜めていた空気が、ゲップとして出てしまう。
パルドーラは、他の自警団員に対して、彼等を中に入れるように頼む。
それを聞いて、黒アリ人間の自警団員は、素早く網を下に投げる。
「よっと? カラチス、パルドーラ、よく生きていたな? お前らも、ゾンビに食われてたのかと思ったぞ?」
網縄を登りきると、ショーンは災害まで、ともに働いていた同僚たちに声をかけた。
「こっちは、お前が、ゾン美女に大事なアソコを食われたんじゃないかとっ! と言う冗談は置いといて、ルドマンさんも来てるぜ?」
「俺たちは、倉庫番をしていたら、騒ぎになってな? ルドマンさんの護衛部隊と合流しながら、ここまで逃げてきたんだ」
相変わらず、カラチスは下ネタを言って、ショーンを困らせようとした。
一方、パルドーラは、真顔で今まで何をしていたか、経緯を説明した。
「リズとスバス達は、先に来てたが? お前とは別れたと聞いてな」
「ああ、話すと長くなるから手短に言うと、交差点で、トラックが爆発してな? それから分断されて、ここまで来たと言うワケだ」
パルドーラに対して、ショーンは簡潔に今に至るまでの行動を語る。
「それよりも、ここが安全区域なんだな? ゾンビが一掃されたと言う?」
「そうなんだが、お陰で、チンピラどもが飢えたハイエナの如く、ここの女を狙ってるんだっ! 早く女を相手に、マグナムを出し入れしたいってなっ! アハハ」
「よっと、下ネタは
「ショーンの知り合いか? とにかく、奥の方に案内して欲しいぜっと」
バリケードを飛び降りた、ショーンが質問すると、またもカラチスは下ネタを言いながら答えた。
そんな彼に対して、縄を掴んで登ってきたばかりのジャーラは気まずい感じで呟く。
ゴードンも、上に来ると、赤や黄色に彩られた綺麗な街並みと、大勢の人間を眺めた。
ついに、彼等は安全区域にまで、無事にたどり着き、肩から力を抜いて安心するのだった。