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第69話 チンピラを挟み撃ちに?


 投げ捨てた死体が、地面に落下する中、ショーンは、チンピラ集団に単騎で駆けていった。



「うらあっ! 当たって、たまるかっ! こっちに行けばっ!」


 ショーンは、無数の銃弾を避けながら、敵に向かっていくように見えた。


 彼の心臓は高鳴り、冷たい汗が背中を流れるが、臆する事なく、足を止めない。



 そうして、行った先は右側に停車してある、ピックアップのフロント側だった。


 ここに隠れたら、きっと安全だろうと考えての無謀な行動だった。



「奴を狙えっ!」


「先に殺してやるっ!」


「うわわわわっ! これじゃ、身動きが取れないっ!」


 ショーンが隠れている、ピックアップを狙って、魔法使いのチンピラは、氷結魔法を発射する。


 同じく、赤茶色いホブゴブリンのチンピラは、マグナムを撃ちまくる。



 その結果、彼が身を寄せる車体を、氷柱や弾丸が貫き、窓ガラスが派手に飛び散った。


 とは言え、バリケード側と反対側から、連チンピラ中も射たれている。


 そのため、あまり集中攻撃する事ができず、両方を相手に、射撃武器や魔法を放ち続ける。



「うおおっ! 突撃だああっ!」


「疾風迅雷、早く動いた者が勝つっ!」


 ピストルを乱射しながら走ってくる、ゴードンの凄まじい気迫と怒声は、チンピラ達を怯ませる。


 火炎薙刀の炎を勢いよく燃やし、ひたすらに突進してくる、サヤは恐れ知らずで勇猛だ。



「アイツら…………よし、俺も行くぜっ! うらあっ!」


「死ねっ! ぐあっ! ああっ!」


 ピックアップの左側から走り出した、ショーンは、チンピラ達に斬りかかる。


 赤茶色いホブゴブリンのチンピラは、マグナムを撃つ前に、右手首を斬られた。



「次は、お前の番だぜーー!」


「来るなっ! 来たら、射つぞっ! ぐぶふっ!」


 魔法使いのチンピラは、右手から氷柱つららを連発しまくって、ショーンを近づけまいとする。


 しかし、慌てて射っているため全てが、当たらない上に、一瞬で距離を詰められてしまった。



 その間に、バックラーで顔を隠しながら突っ込んできた彼により、顔面を殴られてしまった。


 こうしてできた、大きな隙を晒した奴は、喉を切り裂かれて、激しく吐血しながら後ろに倒れた。



「おしっ! 混戦しているからなっ! 直ぐに隠れなきゃっ!」


「わあっ! ぐふ…………」


 そう言いながら、ショーンは自警団が陣取っている、バリケード側から撃たれないように走る。


 こうして、彼はトラックの陰に隠れながら、黒人チンピラを袈裟斬りにした。



「ぎゃ~~~~!?」


「ああっ! あ…………」


「不味い、このままじゃっ! ぐわっ!」


「ぐあっ! こ、降伏するっ!」


 ショーンは、他のチンピラ連中も斬り捨てようとしたが、次々と敵が倒されていく。


 紫ビームに射たれて、焼け焦げる白人チンピラや、拳銃弾に、オーガーは胸を貫かれる。



 暗黒球が左肩に当たり、後ろに倒れた、黒人チンピラは怪我した箇所を右腕で押さえる。


 右足をクロスボウに撃たれた、アジア人チンピラは、必死で命乞いをする。



「ダメだ、お前らは生かしちゃ成らない…………」


「ぐ、このっ! わっ!?」


「た、頼むっ! 助けっ! ひぎゃあ」


 二人に迫った、ショーンは黒人チンピラが、拳銃を右手に握るのを見て、即座に腹を斬る。


 降伏する振りをして、アジア人チンピラは、背中側から、ナイフを取り出した。



 だが、それを付き出した瞬間、彼は攻撃を避けて、胸を深々とショートソードを差し込んだ。


 残りの敵は、形成不利となった事を悟り、一斉に逃走を開始した。



「あっ! お前ら、逃げるんじゃねえっ! 男らしく戦えっ!!」


「誰が戦うかっ!?」


「ひぃ~~~~!!」


「そう易々と、逃がしはしませんっ!」


「アタシから逃げられると思ったかいっ?」


 逃走する敵を、ショーンは追いかけようとして、トリップソードを片手に駆け出した。


 だが、完全に戦意を喪失しているチンピラ達は、彼から逃れようと必死で、足を止めない。



 そんな彼等の前に、サヤが立ちはだかり、火炎薙刀を豪快に振るい、白人チンピラを斬り伏せた。


 もう一人のトロールは、カーニャにより、マチェットで胸をX型に斬られて死んだ。



「うわあ~~~~!?」


「に、逃げろーー!!」


「逃げたとしても、生かしはしませんよっ?」


 他のチンピラ連中も、ジャーラが放った氷結魔法に射たれながら、何処か遠くに逃げていった。



「ふぅ? 終わったか? おいっ! 門の連中、俺たちはチンピラじゃないっ! 中に入れてくれっ! そこに、カラチスとパルドーラも居るだろうっ!」


「何を言ってるんだっ! そんな言葉を信用するワケがあるかっ!」


「いや、待て? ショーン、生きていたのかっ! コイツは驚いたぜっ!! てっきり、今ごろは天国で、良い女と遊んでいると思ってたが」


「リズとスバス達は、先に来ているぞっ! そのまま、ゲートまで来てくれっ!」


 ショーンは、怒鳴るよう大声で、バリケードに陣取る自警団員に、声をかけた。


 すると、向こうからは当然だが、こちらの正体が分からないため、罵声が返ってきた。



 そのやり取りを聞いていた、カラチスは懐かしい同僚が叫んでいる事に気がついた。


 パルドーラも同じく、知り合いが生きていた事を嬉しく思って、バリケード上から手を振った。



「ああっ! 今そっちに行くが、俺の仲間たちも撃たないでくれよっ! トロール、魔族の女、アジア系の女、サンドエルフの女、アジア系のスナイパーだっ!」


「ショーン…………よく、無事だったな? ゲ

プッ!」


「おい、連中は知り合いだからなっ! 網を垂らしてくれっ!」


「分かったぜ、ほらよっと」


 両手を上げながら、ショーンはトラックの陰から出てくると、仲間たちも撃たないように注意する。


 緊張が解けた、カラチスは敵を攻撃するために、腹に溜めていた空気が、ゲップとして出てしまう。



 パルドーラは、他の自警団員に対して、彼等を中に入れるように頼む。


 それを聞いて、黒アリ人間の自警団員は、素早く網を下に投げる。



「よっと? カラチス、パルドーラ、よく生きていたな? お前らも、ゾンビに食われてたのかと思ったぞ?」


 網縄を登りきると、ショーンは災害まで、ともに働いていた同僚たちに声をかけた。



「こっちは、お前が、ゾン美女に大事なアソコを食われたんじゃないかとっ! と言う冗談は置いといて、ルドマンさんも来てるぜ?」


「俺たちは、倉庫番をしていたら、騒ぎになってな? ルドマンさんの護衛部隊と合流しながら、ここまで逃げてきたんだ」


 相変わらず、カラチスは下ネタを言って、ショーンを困らせようとした。


 一方、パルドーラは、真顔で今まで何をしていたか、経緯を説明した。



「リズとスバス達は、先に来てたが? お前とは別れたと聞いてな」


「ああ、話すと長くなるから手短に言うと、交差点で、トラックが爆発してな? それから分断されて、ここまで来たと言うワケだ」


 パルドーラに対して、ショーンは簡潔に今に至るまでの行動を語る。



「それよりも、ここが安全区域なんだな? ゾンビが一掃されたと言う?」


「そうなんだが、お陰で、チンピラどもが飢えたハイエナの如く、ここの女を狙ってるんだっ! 早く女を相手に、マグナムを出し入れしたいってなっ! アハハ」


「よっと、下ネタはして下さい…………」


「ショーンの知り合いか? とにかく、奥の方に案内して欲しいぜっと」


 バリケードを飛び降りた、ショーンが質問すると、またもカラチスは下ネタを言いながら答えた。


 そんな彼に対して、縄を掴んで登ってきたばかりのジャーラは気まずい感じで呟く。



 ゴードンも、上に来ると、赤や黄色に彩られた綺麗な街並みと、大勢の人間を眺めた。


 ついに、彼等は安全区域にまで、無事にたどり着き、肩から力を抜いて安心するのだった。

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