ショーンは、仲間を引き連れて、いよいよ商工会議所の玄関にまで、やってきた。
その両側には、厳つい冒険者たちが、警備員として、見張りに立っている。
「やあ? ここを通して、貰いたいんだが? ルドマン商会の冒険者ショーンと言うんだが」
「アポ無しは、御断りしている」
ショーンは、中に入る前に、冒険者たちに声をかけたが、右側の白人冒険者に断られてしまった。
「いや、そうは言っても?」
「今、会議で忙しいんだっ! 怪しい連中を見かけたら、排除しろと命令が出ているっ!」
今度は、ショーンは左側の黒人冒険者から、すばやく長槍を向けられる。
「わわ、分かったよ? なら、会議が終わったは、ルドマンさんに伝えてくれないか? ショーンは生きてたし、訪ねてきたとな…………」
「ふんっ! 良いだろう」
「それだけは、伝えておいてやる…………さあ、行けっ!」
二人の剣幕に気圧された、ショーンは取り敢えず今は出直す事にして、踵を返した。
白人冒険者と黒人冒険者たちは、身構えていたが、彼が帰ると分かると警戒を解いた。
「それから、リズ達と合流したいのと、シューと言うコックが経営する中華料理屋、セキリュウに行ったとも伝えといてくれな」
ショーンは、それだけ呟くと、そのまま商工会議所から離れていった。
「はあ? いきなり、無駄足になってしまったな? 仕方ないから、さっき言った通り、セキリュウに行くぞ」
「そうですね~~お腹も空く時間に成りましたし」
ショーンは、みんなを誘いながら、中華料理店へと向かっていった。
その隣で、ジャーラは真上から日光を照らす太陽と、スマホを眺めながら呟く。
こうして、彼等はアジア人街の北西にあるセキリュウへと歩いていく。
道中、様々な人々を見かけながら、アフリカ料理屋やアラブ料理屋の合間を通っていった。
「ここだっ! 相変わらず、店も繁盛しているようだな」
「ほぉ~~! 期待していた通り、かなり本格的な中華料理屋のようですね」
「これは期待できそうだな」
「それより、早く入りましょっ! こっちは腹が減ってるんだし」
街の北西にまで来た、ショーンは紅く大きな建物と、黒い瓦屋根の建物を見つけた。
ジャーラは、その入口まで来ると、豪華な外観に感嘆して、何気なく呟いた。
ゴードンは、早速だが中に入ると、複数あるカウンター席に座る。
同じく、カーニャは店内に入って、他の客達が楽しそう会話している様子を見た。
「いらっしゃいませ~~」
「ご注目は、何にしますか?」
店内の内装は、紅色であり、チャイナドレスを着ている娘たちが、ショーンを出迎えた。
片方は、黒服を着ているキョンシー娘であり、もう片方は紅い服装をした、普通の中華系だった。
「いらっしゃい? お、ショーン…………ようやく、きてくれたか? ミー、仲間が来たぞ」
「にゃ? ショーン、来たかにゃっ! 今、蟹チャーハンを作るから、食べながら他の人間に関して話すにゃ」
「ああ、シューさん、料理を仲間にも頼むっ! ミー、選ぶのが面倒だから、それに頼むよっ!」
シューとミー達は、客として現れた、ショーン達を笑顔で歓迎してくれた。
「さて、チャーハンが来るまで、待つしかないな? いったい何を話そうか? ここの警備やチンピラに関する事、俺達の仕事に関する話だな」
「そのようですね? ここの警備は人手は足りているようですが、それでも冒険者や傭兵と言った仕事の人間は、まだまだ必要でしょう」
ショーンは、街の平和な光景と違い、外に広がるチンピラ達が潜む危険な地域を見てきている。
それを考慮して、ジャーラも自分たちは、ここを守るために見張りなどに加わるしかないと思う。
「だろうな~~? 正直、考えたくはないが、チンピラ連中が増えて来ているから、心配なんだよな? それに、安全区域とは言え、戦いが発生するなら冒険者として、参加する責務ってもんがあるし」
両腕を組んで、ショーンは険しい顔で、紅い天井を見上げながら呟く。
「そりゃ、俺たちは冒険者だからな? その時は、援護射撃に徹するぜ」
「私は前のほうで、斬ったり、射ったり、ガンガン暴れてやるわ」
「俺は、冒険者じゃなくて医者だからな? しかし、必要なら前線に加わりはする」
「安全区域で、安穏としているワケには参りません、私も戦場には出ます」
テアンは、椅子に座ると、前を睨んで、敵を狙撃する時に見せる真剣な顔つきになる。
その左側で、カーニャは派手に戦う時を思い浮かべて、凶悪な笑顔を浮かべる。
二人とは、対照的に穏やかな表情で、ゴードンは戦闘ではない仕事をしたいと語る。
そして、サヤも冒険者として、戦列に加わると言って、目の奥で闘志を燃やす。
「ショーン、みんな、水を持って来たにゃ? あと少し調理には時間がかかるけど、待っていてくれにゃあ~~」
「ミー、分かった」
ミーが、トレーに六人分のコップを運んでくると、ショーンは短く答えた。
それから時間が立ち、今度は彼等の前に、蟹チャーハンが運ばれてきた。
「ご注文の品です」
「熱々なので、猫舌の方は気をつけて下さい」
「私は、休憩時間だにゃっ!」
「そうだったな? ミー、私はまだ仕事が残っているから、私に代わって、ショーンに街の話をしてくれ」
キョンシー娘と中華娘たちが、出来上がったばかりの料理を運んできた。
すると、ミーが元気よく休みたいと言いだして、シューさんは時計を眺めた。
「シューおじさん、分かったにゃあっ! じゃあ、私も客席で、蟹チャーハンを食べるとするにゃ~~」
「済まないな、シューさん、世話になって」
「なに、気にするな? さあ、私は仕事に戻るか」
ミーは、厨房から自分が食べる分の蟹チャーハンと水が入ったコップを、トレーに載せてきた。
ショーンは、気を使わせてしまったと思い、シューに対して申し訳なさそうな顔をする。
「それで、ミー? 他の連中は何をしているんだ? リズとスバス達は、別の場所で警備を手伝っているようだが?」
「彼等は、ルドマンとか言う気の良さそうな金持ちのオジサンに、着いて行ったにゃ? あと、フリンカとワシントン達は、海の魔物退治を兼ねた狩猟に向かったんだにゃ」
ショーンは、他の仲間たちが無事かと、ジャーラを挟んだ席に座るミーに質問した。
「マルルンも、警備の手伝いに行くと言ったんだにゃ? 彼は、自分も安全な場所で、ぬくぬくしていたくはないと言ったんだにゃ?」
「そうか、奴らしいな?」
「彼…………根は、真面目ですからね」
ミーの話を聞いて、マルルンらしいと思った、ショーンとジャーラ達は呟く。
「私は、シューさんが心配だし、ここの仕事を手伝う事にしたんだにゃあ? それから、今まで働いてたんだにゃ」
「まあ、お前は冒険者とは言え、シューさんの親戚だからな? こっちの仕事を優先せねばな」
「ミー、俺たちは住む場所を探しているんだが、何処か心当たりはないか? クロスボウを持ったまま街を徘徊するワケには成らんし」
「ホテルでも、有れば良いのですけれど? 風呂で沐浴せねば成りませぬし」
ミーの話を聞いて、ショーンは蟹チャーハンを食べながら、蓮華を皿に置いて答える。
テアンとサヤ達は、自分たちが今夜、泊まれる宿がないかと聞いてみた。
「それなら、ルドマンとか言う人が、保有する事務所があるから、ショーン達が来たら使っても良いと言ってたにゃ? あと、マルルンの心意気を見込んで、ジャーラ達も使っていいと言ったにゃあ」
「そうかっ! ルドマンさんには感謝しても、仕切れないな…………また、迷惑をかけち待ったぜ」
宿の事に関して、ミーは困っているショーン達に、伝言を教えた。
「ここの仕事が終わったら、私が案内するにゃ? それまで…………」
「いらっしゃいませ~~」
「その必要は、無いわ」
「リズ? どうして、ここに…………」
ミーが喋ろうとすると、店内に客が入ってきたので、中華娘が接客する。
そして、店内をリズが歩くと、ショーンは彼女が急に現れたので驚いてしまった。