目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第74話 ビーチを進んで


 ショーンは、ビーチ方面に向かって、リズとスバス達とともに、中華街を走っていった。



「ここだな?」


 やがて、ショーン達は海岸へと向かう街の一角へと、たどり着いた。


 ここは、広い駐車場と成っており、観光用の馬車が走っている姿も見えた。



 そして、海のある西側と北側は、トラックや木箱で、バリケードが構築されている。


 もちろん、ここにも何人かの冒険者や兵士たちが、チンピラ連中を警戒して、駐屯していた。



「リオンとマーリーン達を、救いに誰かが行かないとっ!」


「しかし、今は海トカゲ団が、バリケードを包囲しているから、我々は動けない…………」


 自警団員であるトロールの冒険者は、怒鳴りながら、救助に行こうと言っていた。


 対する、黒人冒険者は、冷静な顔で、バリケードの方を睨みながら呟く。



「おい、アンタらっ! 俺は、ルドマン商会の冒険者だっ! 今日は非番だが、俺たちなら手が空いているっ!」


「私達に、救助隊の役を任せて貰えないかしら?」


「ああん? なら頼みたいが、外は危険だぞ、海トカゲ団やチンピラ部隊が、待ち構えているからな」


「それでも良いなら、向こう側の木箱から、トラックに上がっていけ」


 ショーンとリズ達は、自警団員たちに向かって、自分たちが助けに行くと、大きな声で言った。


 それを聞いて、トロール冒険者と黒人冒険者たちは、二人に警告を伝える。



「にゃあ? ショーン達じゃあにゃいか?」


「ミー? 何で、ここに居るんだっ!」


「あら、貴方は昨日の…………」


「お客様ですよねーー」


 そこに何故か、ミーが現れて、ショーンは驚いたまま固まってしまった。


 また、彼女の後ろには、キョンシー娘と中華娘たちが、笑顔で立っていた。



「ショーン? リズ、スバスとミー達も、いったい何してるんだ?」


「今日は、朝から魔物退治に向かうはずだったけど、まさか、ここで会うとはね~~」


 今度は、ワシントンとフリンカ達まで、駐車場に姿を現して、声をかけてきた。



「俺たちは、警察官が戻って来ないと聞いて、助けに行こうとしてな」


「ワシントンとフリンカ達は、分かったけど? ミー、貴方は?」


「私は、ここに朝食を、配達しに来たばかりだにゃ?」


 ショーンは、三人に対して、自分たちが置かれた状況を冷静に説明する。


 リズは、ミーが居る理由を聞いてみると、彼女は後ろのトラックを指差しながら、直ぐに答えた。



「と言うか、人助けなら、私も行くにゃあっ!」


「シューさんが、心配するぞ? 良いのか?」


 ミーは、背中から、風打棍を取り出しながら頭上で、回転させつつ意気込む。


 それを見て、ショーンは心意気は認めつつも、彼女の親類であるシューの事を質問する。



「いや、シューさんも人助けに行けと言うにゃっ! と言うワケで、二人とも後はトラックで、先に帰ってくれるかにゃ? それから、叔父さんに救助隊に加わったと、伝えてくれにゃあっ!」


「分かったわっ! 御無事を祈ってますっ!」


「伝えておきますね~~!」


 ミーは、後ろのキョンシー娘と中華娘たちに対して、言伝てを頼むと、再びショーンに目を向ける。



「ショーン、早速行くにゃっ!」


「何か知らんけど、警察官を助けに行けば良いんだね~~」


「俺たちも、救助隊には当然だが、加わるぞっ!」


「ああっ! 三人とも頼むっ!」



 ミーが走り出そうとすると、フリンカとワシントン達も、直ぐに身構える。


 そして、ショーンも三人と動揺に、何時でも出発できるように、気を引き締める。



「アンタら? いいか、二人は小さな警察署に向かったんだっ! 豪華客船の側だから、直ぐに分かるっ! 最近、あの辺でチンピラ達が妙な動きをしていたからなっ!」


「あと、ひょっとしたら、海トカゲ団やチンピラ連中とも戦闘に成るかも知れないが、音は立てるなよっ! 船からゾンビが降りてくるからな」


「分かったぜ」


 トロール冒険者と黒人冒険者たちから、話を聞いて、ショーンは素早く走り出そうとした。



「それから、無線機の話を聞いたか? 最近、ガスモークと言う毒ガスを吐く危険なゾンビの目撃が報告されている」


「また、スカルビーマーと言うスケルトン頭の紫ビームやレーザーを放つ個体もな」


「そいつ等が、出たら気をつけるっ! しかし、隠密行動を取るから心配しなくていいっ!」


 トロール冒険者と黒人冒険者たちは、かなり有益な情報を話した。


 それを聞いて、ショーンは駐車場の西側にある木箱へと向かっていく。



「この階段を登って」


 ショーンは、階段を上がると、トラックの上から向こう側に目を向ける。


 そこからは、ビルの隙間に太陽から降り注ぐ光を浴びて、キラキラと輝く、海が見えた。



「よっ! ここから先は、まだ敵は居ないだろうが、それでも気をつけて行くぞ」


「だろうね~~? まあ、私やショーンの剣なら音を立てずに、敵を切り伏せられるだろうけど」


「俺の弓もな…………」


「私の投擲とうてきだって」


 ショーンが、地面に飛び降りると、フリンカも隣に着地して、ビーチに向かって走り出した。


 それに続いて、ワシントンとミー達も、波打つ海沿いを目指していった。



「砂浜だ、本当なら休みたいところだが、今は二人の警察官を探すために、遊んでいる暇はない」


「綺麗なビーチだけど、水着姿に成れないのは残念ね? ま、チンピラ達が出るかも知れないから、仕方ないんだけどね」


「ナンパ男だろうと、チンピラだろうと? 私の場合は、投げ倒してるんだよね~~」


「おっかない女だな…………ウニ鉄球を持ってても、びびってしまうぜ」


「その女より、おっかないのは、ゾンビの群れだ」


「そうだにゃ、チンピラ達だけでなく、ゾンビ達も出るかも知れないにゃあ」


 ショーンは、先頭を歩きながら、クリーム色の砂浜を歩いていく。


 リズも、その背後から火炎魔法を放つ事に成るかも知れないと、険しい表情で着いていく。



 二人に続いて、フリンカは笑顔で、辺りを警戒しながら、ポイズンソードを片手で振るって呟く。


 重たい刀剣を軽々と振るう、頼もしい彼女に冗談を言いながら、スバスは砂地に足跡を作っていく。



 ワシントンは後ろの方で、街並みに目と弓矢を向けながら、敵が潜んで居ないか探す。


 波打ち際を、真剣な顔で、ミーは妙な物音が聞こえないかと、猫耳を動かして周辺を探る。



「波打ち際に怪しい動きは無いな?」


「この様子じゃあ、チンピラ達はまだ遠くに居るようね?」


 そう言って、ショーンとリズ達は砂浜を進んでいると、手摺の付いた高台が見えた。


 また、その後ろには、大きなビルがあり、屋上付近にホテルだと青い文字が飾られていた。



 皆で、そこに向かうと、手摺付きの階段があり、そこを上がっていく。


 すると、白いビーチパラソルとビーチチェアが並ぶ、光景が広がっていた。



「まさに、リゾート地だな? しかし、今や客もなく、閑古鳥が…………いや、鳴いているのは空飛ぶ、カモメだけか?」


「週末は、こんな場所で、ゆっくりと休むのが夢だったけど、暫くは営業中止でしょうね」


「あっ! 前方に人影だっ! 不味い、あっちのレストランだっ! どうする…………ステルスキルするなら、ここから援護してやるぞ」


「ここは、迂回しながら、ワシントンに援護して貰うしかなないねぇ~~」


 ショーンは、高いビルを見上げ、たくさんの窓を見るが、そこには誰も居なかった。


 リズも動揺に建物を見たあと、ビーチチェアに手を添えながら呟く。



 しかし、ワシントンだけは前方にある紺色の木造施設に、敵が歩いている姿を見つけた。


 それを聞いてから、フリンカは直ぐに身を低くしながら、手摺から向こうを観察した。



「青や水色の帽子、海トカゲ団だにゃっ! それに傘下のチンピラも見えるにゃ?」


「連中、こんな場所で何をしているんだ?」


 ミーが目を凝らして、クロスボウや弓矢を装備している海トカゲ団員を睨む。


 ショーンも、多数のチンピラ達が、鉄パイプや棍棒を握りながら歩く姿を観察した。


 紺色の木造施設は、レストランらしく、手前に大きな四角い看板が、高い塔みたいに立っている。


 その周りは、木陰と草むらにが囲むように、配置されており、見つからずに移動できそうだった。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?