ショーンは、ビーチ方面に向かって、リズとスバス達とともに、中華街を走っていった。
「ここだな?」
やがて、ショーン達は海岸へと向かう街の一角へと、たどり着いた。
ここは、広い駐車場と成っており、観光用の馬車が走っている姿も見えた。
そして、海のある西側と北側は、トラックや木箱で、バリケードが構築されている。
もちろん、ここにも何人かの冒険者や兵士たちが、チンピラ連中を警戒して、駐屯していた。
「リオンとマーリーン達を、救いに誰かが行かないとっ!」
「しかし、今は海トカゲ団が、バリケードを包囲しているから、我々は動けない…………」
自警団員であるトロールの冒険者は、怒鳴りながら、救助に行こうと言っていた。
対する、黒人冒険者は、冷静な顔で、バリケードの方を睨みながら呟く。
「おい、アンタらっ! 俺は、ルドマン商会の冒険者だっ! 今日は非番だが、俺たちなら手が空いているっ!」
「私達に、救助隊の役を任せて貰えないかしら?」
「ああん? なら頼みたいが、外は危険だぞ、海トカゲ団やチンピラ部隊が、待ち構えているからな」
「それでも良いなら、向こう側の木箱から、トラックに上がっていけ」
ショーンとリズ達は、自警団員たちに向かって、自分たちが助けに行くと、大きな声で言った。
それを聞いて、トロール冒険者と黒人冒険者たちは、二人に警告を伝える。
「にゃあ? ショーン達じゃあにゃいか?」
「ミー? 何で、ここに居るんだっ!」
「あら、貴方は昨日の…………」
「お客様ですよねーー」
そこに何故か、ミーが現れて、ショーンは驚いたまま固まってしまった。
また、彼女の後ろには、キョンシー娘と中華娘たちが、笑顔で立っていた。
「ショーン? リズ、スバスとミー達も、いったい何してるんだ?」
「今日は、朝から魔物退治に向かうはずだったけど、まさか、ここで会うとはね~~」
今度は、ワシントンとフリンカ達まで、駐車場に姿を現して、声をかけてきた。
「俺たちは、警察官が戻って来ないと聞いて、助けに行こうとしてな」
「ワシントンとフリンカ達は、分かったけど? ミー、貴方は?」
「私は、ここに朝食を、配達しに来たばかりだにゃ?」
ショーンは、三人に対して、自分たちが置かれた状況を冷静に説明する。
リズは、ミーが居る理由を聞いてみると、彼女は後ろのトラックを指差しながら、直ぐに答えた。
「と言うか、人助けなら、私も行くにゃあっ!」
「シューさんが、心配するぞ? 良いのか?」
ミーは、背中から、風打棍を取り出しながら頭上で、回転させつつ意気込む。
それを見て、ショーンは心意気は認めつつも、彼女の親類であるシューの事を質問する。
「いや、シューさんも人助けに行けと言うにゃっ! と言うワケで、二人とも後はトラックで、先に帰ってくれるかにゃ? それから、叔父さんに救助隊に加わったと、伝えてくれにゃあっ!」
「分かったわっ! 御無事を祈ってますっ!」
「伝えておきますね~~!」
ミーは、後ろのキョンシー娘と中華娘たちに対して、言伝てを頼むと、再びショーンに目を向ける。
「ショーン、早速行くにゃっ!」
「何か知らんけど、警察官を助けに行けば良いんだね~~」
「俺たちも、救助隊には当然だが、加わるぞっ!」
「ああっ! 三人とも頼むっ!」
ミーが走り出そうとすると、フリンカとワシントン達も、直ぐに身構える。
そして、ショーンも三人と動揺に、何時でも出発できるように、気を引き締める。
「アンタら? いいか、二人は小さな警察署に向かったんだっ! 豪華客船の側だから、直ぐに分かるっ! 最近、あの辺でチンピラ達が妙な動きをしていたからなっ!」
「あと、ひょっとしたら、海トカゲ団やチンピラ連中とも戦闘に成るかも知れないが、音は立てるなよっ! 船からゾンビが降りてくるからな」
「分かったぜ」
トロール冒険者と黒人冒険者たちから、話を聞いて、ショーンは素早く走り出そうとした。
「それから、無線機の話を聞いたか? 最近、ガスモークと言う毒ガスを吐く危険なゾンビの目撃が報告されている」
「また、スカルビーマーと言うスケルトン頭の紫ビームやレーザーを放つ個体もな」
「そいつ等が、出たら気をつけるっ! しかし、隠密行動を取るから心配しなくていいっ!」
トロール冒険者と黒人冒険者たちは、かなり有益な情報を話した。
それを聞いて、ショーンは駐車場の西側にある木箱へと向かっていく。
「この階段を登って」
ショーンは、階段を上がると、トラックの上から向こう側に目を向ける。
そこからは、ビルの隙間に太陽から降り注ぐ光を浴びて、キラキラと輝く、海が見えた。
「よっ! ここから先は、まだ敵は居ないだろうが、それでも気をつけて行くぞ」
「だろうね~~? まあ、私やショーンの剣なら音を立てずに、敵を切り伏せられるだろうけど」
「俺の弓もな…………」
「私の
ショーンが、地面に飛び降りると、フリンカも隣に着地して、ビーチに向かって走り出した。
それに続いて、ワシントンとミー達も、波打つ海沿いを目指していった。
「砂浜だ、本当なら休みたいところだが、今は二人の警察官を探すために、遊んでいる暇はない」
「綺麗なビーチだけど、水着姿に成れないのは残念ね? ま、チンピラ達が出るかも知れないから、仕方ないんだけどね」
「ナンパ男だろうと、チンピラだろうと? 私の場合は、投げ倒してるんだよね~~」
「おっかない女だな…………ウニ鉄球を持ってても、びびってしまうぜ」
「その女より、おっかないのは、ゾンビの群れだ」
「そうだにゃ、チンピラ達だけでなく、ゾンビ達も出るかも知れないにゃあ」
ショーンは、先頭を歩きながら、クリーム色の砂浜を歩いていく。
リズも、その背後から火炎魔法を放つ事に成るかも知れないと、険しい表情で着いていく。
二人に続いて、フリンカは笑顔で、辺りを警戒しながら、ポイズンソードを片手で振るって呟く。
重たい刀剣を軽々と振るう、頼もしい彼女に冗談を言いながら、スバスは砂地に足跡を作っていく。
ワシントンは後ろの方で、街並みに目と弓矢を向けながら、敵が潜んで居ないか探す。
波打ち際を、真剣な顔で、ミーは妙な物音が聞こえないかと、猫耳を動かして周辺を探る。
「波打ち際に怪しい動きは無いな?」
「この様子じゃあ、チンピラ達はまだ遠くに居るようね?」
そう言って、ショーンとリズ達は砂浜を進んでいると、手摺の付いた高台が見えた。
また、その後ろには、大きなビルがあり、屋上付近にホテルだと青い文字が飾られていた。
皆で、そこに向かうと、手摺付きの階段があり、そこを上がっていく。
すると、白いビーチパラソルとビーチチェアが並ぶ、光景が広がっていた。
「まさに、リゾート地だな? しかし、今や客もなく、閑古鳥が…………いや、鳴いているのは空飛ぶ、カモメだけか?」
「週末は、こんな場所で、ゆっくりと休むのが夢だったけど、暫くは営業中止でしょうね」
「あっ! 前方に人影だっ! 不味い、あっちのレストランだっ! どうする…………ステルスキルするなら、ここから援護してやるぞ」
「ここは、迂回しながら、ワシントンに援護して貰うしかなないねぇ~~」
ショーンは、高いビルを見上げ、たくさんの窓を見るが、そこには誰も居なかった。
リズも動揺に建物を見たあと、ビーチチェアに手を添えながら呟く。
しかし、ワシントンだけは前方にある紺色の木造施設に、敵が歩いている姿を見つけた。
それを聞いてから、フリンカは直ぐに身を低くしながら、手摺から向こうを観察した。
「青や水色の帽子、海トカゲ団だにゃっ! それに傘下のチンピラも見えるにゃ?」
「連中、こんな場所で何をしているんだ?」
ミーが目を凝らして、クロスボウや弓矢を装備している海トカゲ団員を睨む。
ショーンも、多数のチンピラ達が、鉄パイプや棍棒を握りながら歩く姿を観察した。
紺色の木造施設は、レストランらしく、手前に大きな四角い看板が、高い塔みたいに立っている。
その周りは、木陰と草むらにが囲むように、配置されており、見つからずに移動できそうだった。