ショーンとミー達は、四人の男女を見ると、ラブコメ展開から空気が一変して、険しい顔になる。
「くっ! このっ!」
「やってやるにゃっ!」
トリップソードを、握りしめながら、立ち上がるショーンは、敵に斬りかかろうと走り出す。
両手に釘を隠し、ミーは先手を取らんと、一気に駆け出していった。
「いや、私たちだよ? 中の連中は全員、首絞めするか? 刃で喉を切り裂いたわ、これで喋る奴は居なくなったわよ~~」
「残りは、この二人組だけだな」
「誰だ、ソイツ等は?」
「アルラウネと白人男のチンピラだにゃ?」
フリンカは、体を縄で縛られた上に、全身にアザがある、アルラウネの背中を押して歩いてくる。
スバスの方は、同じような格好をしている、白人男性を引き連れて、ゆっくりと向かってくる。
「俺は、ダニーだ? 中華街に親戚が居るのと、海トカゲ団に嫌気が差して、抜けようとしたら捕まってしまったんだ、そっちはマレリアだ」
「私も、チンピラだったけど、同じ理由で抜けようとしたら、この様よ…………連中、道路に爆薬を仕掛けて、豪華客船からゾンビを連れてくる気よ」
ダニーは、黒髪パンチパーマで、赤いTシャツを来ており、緑の短パンを履いている。
マレリアは、金髪ロングヘアーを覆うように赤い花を咲かせ、ベージュ色のワンピースを着ていた。
「人質かと思ったら、チンピラだったか? しかも、海トカゲ団の傘下の? なら、殺されても文句を言うなよ」
「ひぃ~~!! 待ってくれっ!! 俺は、麻薬売買や、一般人には手を出してないっ!!」
「私だって、強盗や詐欺には参加してないよっ! チンピラ同士の抗争に参加しただけなんだよっ! それに、結婚するために、私達は組織から足抜けする気だったんだ」
「どうするかしら? 死刑にしても、いいけど、」
「生かしておいても、また別な悪事を働く可能性があるしな」
ショーンは、二人に近寄りながら、トリップソードの切っ先を向ける。
それを聞いて、ダニーとマレリア達は、光る刃を見ながら震えがる。
フリンカも、彼等の背後で、ポイズンソードを背中に回して、いつでも振るえるように構えた。
ウニ鉄球を、じっくりと眺めながら、スバスは無表情で淡々と呟く。
「いや、それは本当なんだな? おい、じゃあ~~聞くが? お前ら、他のチンピラ部隊や海トカゲ団の数は分かるか?」
「分からない、だが、この先にある公園と警察署に向かったんだ」
「ピックアップトラックに乗ってる連中だったけど、車の数は三台だよ」
刃を二人に向けて、低い声で脅しながら、ショーンは質問してみた。
すると、ダニーとマレリア達は、殺されたくないので、顔を真っ青にしながら情報を吐いた。
「三台か? それなりの人数だと考えられるな? 公園と警察署か? 爆弾を使うのはダメだし?」
「まあ、取り敢えず行くしかないねぇ~~? 私は、リズとワシントン達を呼んでくるわ」
「ショーン、この二人の処遇は、どうする?」
スバスは、真顔で敵を倒すには、やはり地道に暗殺していくしかないと語る。
その言葉を聞いたあと、フリンカは呑気な顔で、ホテル側まで歩いていく。
ミーは、心配そうな表情をしながら、捕虜だった彼等を、どう処遇するか悩む。
一応は、捕らえられた民間人とも言えるし、チンピラの仲間であるとも考えられる。
「どうする? もちろん、刃に斬られるしかないっ!」
ミーの問いに答えるべく、ショーンは片手で、トリップソードを振り回した。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
ダニーとマレリア達を、トリップソードの刃が、真っ二つに切り裂いた。
「アレ、死んでない」
「縄を解いてくれた?」
と思われたが、ダニーは縄が切られた事で、安堵した表情を浮かべる。
マレリアも、深い溜め息を吐きながら、胸を撫で下ろして呟いた。
「お前ら、アジア人街に知り合いが居るとか? 親戚が居るだか、言ってたな? 解放してやる代わりに、そこのトラックに乗って、直ぐに逃げろ」
ショーンは、彼等を生かす事に決めた上に、真剣な顔で、バリケードまで逃げるように指示した。
「警察官を探しに向かった、冒険者ショーン達に助けられた…………自分たちは、チンピラに捕まって、捕虜にされてたと言えっ! それから、街の連中にゾンビが船から来るかも知れないと、伝えろ」
「わ、分かりました」
「助けて下さって、有り難う御座います」
ショーンから伝言を頼まれた、ダニーとマレリア達は、急いでトラックに乗った。
それから、直ぐにアジア人街まで向かって、車を走らせていった。
「良いのか? 生かしておいて?」
「スパイかも知れないにゃあ」
「まあ、その可能性はあるが、それでも斬られないだろう」
たった今逃がした男女を、スバスとミー達は怪しみながら、走り去るトラックの後部を眺める。
ショーンは、彼等を疑ってはいたが、最初から殺害する気はなかった。
「まあ、そう言う事だっ! それから、スバス、ミー…………これから、海トカゲ団員に変装するぞっ!」
「なるほど、変装すれば楽に通れるからなっ!」
「これなら、見つかっても大丈夫だにゃあっ!」
青フードを被る海トカゲ団員の死体からは、ショーンが、上着を剥ぎ取り、それを着る。
スバスは、スーツの上に青い僧衣を着て、左腕には紋章が描かれた、青い腕章を着けた。
ミーは、レストラン内に向かい、OLPロゴが書かれた青い野戦帽を被り、水色ベストを着てきた。
「ショーン…………まだ、海トカゲ団が居たのかっ!」
「まさか、ショーンやミー達をっ!」
「お前ら、許さないわっ!?」
「わあっ!? 待て、俺だ、俺っ!! 変装しているんだよ」
フリンカが、狙撃チームを引き連れて、レストラン内から出てくると、敵が現れたと勘違いした。
ワシントンは、一気に弓を引いて、海トカゲ団部隊に睨みながら身構えた。
もちろん、リズもショーン達が殺害されたと思い、マジックロッドを向けてきた。
それに対して、ショーンは三人に声をかけ、何とか誤解を解こうとして、焦ってしまう。
「…………って、なんだ? 正体は、ショーンかあ~~」
「てっきり、まだ敵が残っていたのかと思ったぞっ!」
「焦ったわ? いや、本当に驚いたのよっ!」
「済まん、済まんっ! てか、お前らも変装用に、何か着てこい?」
「危うく射たれるところだったにゃあ…………」
「まあ、紛らわしい格好をしている上に、前もって、説明してなかったからな」
フリンカは、一瞬で殺気を消すと、ポイズンソードの切っ先を地面に下げる。
ワシントンは、弓から矢を離して、両肩の力を抜いて、下を向きながら呟く。
プンスカと怒りながら、リズは顔を少し赤くして、ポカポカとショーンを叩く。
肝心の変装を促した、本人である彼は、バックラーで身を守りながら、レストランを指差した。
その間、突っ立ったまま、動けないでいた、ミーは緊張が溶けると、口を開いた。
同じく、身動き出来なかった、スバスも気を落ちつかせてから、ゆっくりと喋った。
「これから、先も海トカゲ団員が残っているらしい? そう言う訳だから、お前らも変装してくれっ! テクニカルを盗んで、まずは公園に向かうぞ」
「分かったよ、じゃあ行ってくる」
「何か使えそうな服装は、あるだろうか?」
「全く、驚かさないでよね」
ショーンの思惑を聞いて、三人は直ぐにレストランへと向かっていく。
それから、フリンカは青いアーメットや鎧を着て、背中にリュックを背負いながら戻ってきた。
ワシントンは、青いベレー帽を被り、青いレインコートを着てきた。
リズも、紺色のポンチョに着替えて、青いカウボーイハットを、被りながら歩いてくる。
「おっし、みんな揃ったな? じゃあ、近くの公園にまで行くぞ」
「行くんだにゃあっ! 連中を全員抹殺してやるにゃあっ!」
ショーンは、全員が変装し終えると、テクニカルの運転席に座った。
その隣には、ミーが乗り込み、荷台にも仲間たちが飛び乗ると、車は走り出した。