ショーンは、リズとともに、四人の仲間と合流しようと、巨大な駐車場を歩く。
「と言うか、お前らも来るんだな? リズとスバスは、カラチスやパルドーラ達の仇討ちだから分かるが…………」
「何言ってるんだいっ! ここまで来て、私たちだけ、決戦に参加しない訳にも、いかないでしょっ!!」
「敵は、飛び道具を使うだろう、そんな時に狩人が居ないと困るだろうが」
「ショーン、私も参加するにゃあっ! シューさん達は無事だったけど、放っておいたら、また海トカゲ団は再び、やってくるにゃっ!」
四人の仲間たちが待っていた事に、ショーンは感心して、声をかける。
彼等は、本来ならば戦闘に参加する義務はないが、やはり冒険者として悪を倒す積もりなのだ。
ニカッと笑いながら、フリンカは拳を振り回し、覚悟を決めていると見せつける。
ワシントンとミー達も、敵を完全に殲滅するには、自分たちが必要だと意気込む。
「お前ら…………分かったっ! 冒険者だもんなっ!」
「ショーン、リズ、みんな? 車を用意したぞ」
仲間たちが、自分とともに戦う決意を固めた事に、ショーンは感動する。
そんな時に、スバスが黒いワゴン車を運転してきて、運転席の窓から顔を出した。
「スバス、今行くぜっ! さあ、みんなっ! 行こうっ!」
「待って、誰か二人組が来るわよ?」
ワゴン車に乗り込もうとした、ショーンだったが、そんな彼の背後から、リズが呟く。
どうやら、体格のいいBB団員と黒アリ人間たちが、こちらに歩いてくるようだ。
「ショーンだったけか、また会ったな? お前、案内役をやるんだろ? 一番槍は、頼むぜ~~」
「私は、ターシアよっ! ゴルバから派遣部隊を任されているから宜しくねっ!」
「ああ、二人ともっ! 内部構造は、大体把握しているからなっ! ただ、どんな罠が仕掛けられているかは分からないから、気をつけてくれよな」
「内部を先導するのは、ショーンに任せてちょうだいっ! じゃあ、さっそく行きましょう」
やって来たのは、チンピラ達を消したらしたBB団幹部タイソンだった。
もう一人は、ターシアと言う赤目の黒アリ人間女性で、彼女は赤いベストを着ている。
二人の前で、ショーンは真剣な強気な顔を見せて、ワゴン車に入ったいく。
リズも後に続き、勝ち気な態度で、決戦に向かうべく車内へと乗り込む。
「じゃ、お前ら乗ったか? だったら、出すぞっ!」
「地獄へGOだねっ! ここからは、黙示録の戦いだよっ! ヘリコプターに乗った気で、気を引き締めなっ!」
「それは、地獄の黙示録だろ? と言うか、ゾンビが溢れてる時点で、黙示録なんだが…………」
「にゃあ、確かにそうだにゃ…………」
ワゴン車を走らせて、スバスが車列に混ざると、車内で他の仲間たちも騒ぎだす。
助手席で、フリンカは腕を組ながら、戦いに備えて、武者震いしながら笑う。
冷静に突っ込みながら、ワシントンはため息を吐きつつ、彼女に呆れてしまう。
ミーも、何だか閉まらない雰囲気に、体なかから力が抜けてしまった。
「お前ら、敵は強い? おそらくだが、かなりの戦力を用意しているだろう? そう簡単に殺られてくれないぞ」
「きっと、警備ロボット、罠、大量の兵士を用意しているでしょうね? こっちも、それなりの数は用意しているけど」
ショーンは、一番後ろの座席に、座りながら真剣な表情で、決戦に備えて呼吸を整えていた。
一方、リズは東側を目指す、車両部隊を護衛するバイクやレッドアント、ファイヤーアントなど。
車列を護衛するために両脇を挟むように、並走している、味方の騎兵隊を眺める。
中でも、レッドアントより体格の良く、二倍ほど大きい、ファイヤーアントが目立つ。
AK47、MP5、レミントンM870等で武装しているBB団員たちが目立つ。
バーニーキャロン、マテバ、マジックロッド等を背中に担ぐ、様々な色のアリ人間たちも目に入る。
時折、複数台のテクニカルが、左右を走って、先頭へと向かっていく、姿を目にする。
また、コンボイが横に並走しており、両方の車種が、機関銃やガトリングを撃つさまが気になった。
「ゾンビを撃っているのか? まだまだ、この辺りも、安全とは言えないからな」
「それより、十字路よっ! あの時に戦った場所だわ?」
窓から流れるように過ぎていく、景色には、ゾンビたちが、屋根や路地から出てくる姿が見えた。
ショーンとリズ達は、連中が機銃掃射や魔法で吹き飛ばされる様子を眺める。
「いよいよ、交差点だっ? ここは、襲撃されなかったらしいな?」
「トラックが無くなっているにゃ、いや、誰かが脇に退かしたようだにゃ」
こうして、彼等は、以前ファットゲローと戦った交差点まで、ついに来た。
スバスは、激しい戦いを思い出すが、運転に集中するため、それに気を取られては居ない。
ミーも、以前存在した、トラックが右側に寄せられているさまを指差した。
そうしている内に、様々な車両からなる車列は、段々と交差点に近づいていく。
「ここを越えたら、左に曲がって、北側の大通りを通過するわ、この辺りは中世の建物と近代化された建物が混在している地域だわ」
「その地域の中にある巨大ビルと敷地が、この地域にある海トカゲ団の支部だ…………」
リズは、向こうに見える冒険者やBB団員たちがスライド式の金網ゲートを開ける様子を伺う。
ショーンは、ワゴン車の中で、見張りが増員されているなと、呟きながら思った。
やはり、ここも未だに、先程通過した同様と同様に、ゾンビ達が近寄ってくるのかも知れない。
それだけではなく、チンピラや海トカゲ団が、襲撃してくる可能性もある。
「車列が移動する」
スバスは、それだけ言うと、ゆっくりと、ワゴン車を左側に走らせる。
こうして、彼等は大部隊とともに、腹を
「町は穏やかだな? さっきから、銃声がしない? こりゃ罠だ? さて、爆弾の用意しなければな」
「本当に不気味なほど、こっちは静かだねぇ~~」
中世から、近世にかけての煉瓦壁や、木造住宅が並び、たまにビルや工場が見える。
だが、ここはゾンビ達が歩いておらず、見張りを行っているであろう警戒部隊すらない。
スバスは運転しながら、額から冷や汗を流し、狙撃や爆弾、或いは魔法で奇襲されないかと思った。
フリンカも、笑っているが、いざとなれば、車道での不利な戦いになると考えた。
「はあ、お前らの考えは杞憂だったな? だが、道中で、奇襲がなかったからと言って、油断はできないな」
「にゃっ! むしろ、ここからが本番だにゃっ! 車両部隊が突入していくにゃっ! きっと、敵も何かしらの攻撃をしてくるんじゃ?」
彼等は、長い戦いの末、ついに目的地である警備会社として、使われる要塞にたどり着いた。
会社ビルの周りには、潮風が運んだ、濃い霧が立ち込め、神秘的な雰囲気が漂っていた。
なので、上層階は、視界不良でよく見えないが、左右にある倉庫は目立つ。
ショーンとミー達は、車内から出ると、ワゴン車を楯にしながら、敵の出方を伺う。
トラック、ワゴン車、テクニカル等が、バリケードを構築するように並ぶ。
「うわわっ! 機銃掃射だっ! 魔法も飛んでくるっ!」
「撃ちまくれっ! 反撃するんだっ!」
「大型スリングショットを使えっ!」
「迫撃砲を放てっ! 施設ごと、破壊するんだっ!」
赤アリ人間が、トラックの後ろに隠れながら、AK47で、敵に向かって応戦する。
レッドアントを乗り回す、青アリ人間は、マジックワンドから雷撃魔法を放つ。
敵の機銃掃射に対抗するべく、赤いキャップを被る、白人BB団員は、すぐに引き金に指をかける。
そして、テクニカルの荷台から同じく、M2ブローニングが機銃弾とを銃火を放ち、反撃する。
トラックの荷台に飛び乗った、ゴブリンBB団員は、弾を迫撃砲に装填する。
「凄い勢いだっ! マシンガンと大量のアサルトライフル…………それに、魔法が飛んでくるっ!」
「あっ! 倉庫とビルの二階と三階が、燃えたり、爆発したわっ! 火炎瓶と迫撃砲の砲撃だわ」
ショーンは、ワゴン車の正面から顔を少しだけ出して、敵部隊を睨む。
リズも、地面に伏せながら、弧を描いて飛んでくる火炎瓶と、炸裂する砲弾の爆発を目にした。
「これは、不味いっ! と言うか、このまま撃ち合ってても、埒が開かないっ!」
「あっ! それより、左右の倉庫のシャッターが開かれるよっ! 装甲車でも来るのかねぇっ! いや、アレはっ!」
ポンッと発射音を立てる迫撃砲、バルンッと、ゴムが伸び縮みする音を鳴らす、スリングショット。
これらは、敵の施設や窓を、派手に砕き、真っ赤な火炎に包み込んでいく。
しかし、敵もロケットランチャーを射ったり、雷撃魔法や氷結魔法を放ってくる。
それにより、トラックや業務用バンが、被弾してしまい、爆発しつつ空に舞い上がる。
ショーンとフリンカ達は、爆風に巻き込まれた際の事を考え、ワゴン車から少し離れる。
だが、そうしている間に、海トカゲ団は左右の施設から、ゾンビ達をゾロゾロと大量に出してきた。