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第98話 進め、正面玄関まで後少しだ


 ショーンは、ドローンによる射撃音と、周囲を取り囲むゾンビ達の呻き声に耳を傾ける。



「また、オオトカゲが走ってきたっ! リズ、頼むっ!」


「分かってるわ、今私の火炎魔法で焼き払うわっ!」


「リズが左側の敵を殺るなら、私達は右側から奴等を殺すさっ!」


「私も、同じく右側を担当するにゃっ!? にゃっ! にゃっ!」


「空を飛ぶドローン部隊に気をつけろ、連中は見境なく撃ってくるからな」


「俺は、ワゴンの向こう側に氷結瓶を投げるっ!」


 ショーンは、リズに援護を頼みながらも、額から汗を滴し、なんとか冷静さを保とうと必死だった。


 一方、マジックロッドを構えた彼女は、火炎放射を噴射しつつ、高い炎の壁を作っていく。



 マッスラー、フレッシャー達を、フリンカはポイズンソードで、真っ二つに切り裂いていく。


 ミーは、ゾンビ化オオトカゲやゾンビ達の頭を、風打棍で何度も力強くドン突いてやる。



 こうして、四人が牽制する中、ワシントンはワゴン車に上がり、爆裂アローをビルに放つ。


 スバスも、彼の向こう側に存在するであろう敵に対して、氷結瓶を投げた。



「もうすぐ、煙が晴れるっ! 味方は、どうなっている?」


「車を走らせるようだわっ! 準備しているっ! その前に火炎魔法で、支援するわっ!」


 ショーンの前では、BB団やアリ人間たちが、必死で、車に集まっている。


 リズの言う通り、味方である彼等は、絶望的な状況を打開するために、策を練っていた。



「急げ、敵の銃撃が弱まったっ! 今のうちに突撃の準備しろっ!」


「我々の騎兵隊も、社内に突入するぞっ! 行け、行けっ!」


 BB団員は、トラックに乗り込み、緑色アリ人間は、ブラックアントを走らせる。



「連中も、突撃を準備するのかっ! 俺達も、また突撃しなければなっ! さっきは、一か八か賭けたが、またギャンブルしないとなっ!」


「あのまま、動かなくても、ロケット弾や魔法で、ワゴン車ごと殺られたり? 隠れていても、周りから、ゾンビが押し寄せてただろうからねぇっ!」


「ああっ! 今と同じく、危機に陥っていただろうっ! だから、多少は前身できただけ、今の方がマシかっ!」


「範囲魔法を放つわっ! これで、左側のゾンビは、だいぶ数が減るはずだわっ!」


 ドローンの短い機銃掃射を、ショーンはサイドステップで回避しながら叫ぶ。


 フリンカは、ポイズンソードの刃を横に構えて、頭上から放たれる拳銃弾を弾く。



 ワシントンは、狩猟弓から矢を放ち、上空を飛ぶドローン部隊の一機を射ち落とす。


 巨大な火球を精製して、リズは空に飛ばすと、それから小さな火玉が、地上のゾンビを焼いていく。



「このままじゃ、持ちこたえられないな? ドローンの射撃を回避しつつ、ゾンビの群れを突破するしかないが…………」


 と、ショーンは言って、上空で繰り広げられるドローン部隊とキラービーの群れによる戦いを見た。



「五分五分の戦いか?」


 四機からなる、ドローン部隊の機銃は、キラービーを何匹も射ち落とす。


 かと思ったら、発射される針により、逆に飛行部隊が、カメラのレンズを壊されて撃破される。



「よし、このまま、ここに居ても、いつドローンやゾンビの餌食になるか、分からないっ! また、突撃していくっ!」


「煙が晴れたか? なら、行くしかないなっ! 敵は…………俺の毒矢で、ゾンビ化してるな? しかも、BB団員も暴れてる?」


「さっき、突入した、ダンプの荷台に乗ってたんだろうさっ!」


「とにかく、今がチャンスだにゃっ! この機に一気に、ゾンビの群れを突破するにゃあっ!」


。ショーンの言葉に、仲間たちの目が輝いた。彼らは、ショーンのリーダーシップを信じていた。


「まず、あの建物の屋上に上がって、ドローンの動きを観察する。そこから、隙を見てゾンビの群れを分散させるんだ」


 と、ショーンは続けた。仲間たちは頷き、素早く行動を開始した。


 屋上に到達した彼らは、ドローンの動きに注意を払いながら、周囲のゾンビの位置を確認した。


 ショーンは、手持ちの弾薬を確認し、仲間に指示を出す。



「あのゾンビの群れを突っ切り、社内に突入するっ! 幸い、さっきのスバスが投げた氷結瓶で、ゾンビの数は減っているっ! 行くぞっ!」


「よっしゃ、行くわよっ! とりゃあっ!!」


「ここは、白兵戦を挑むしかないな」


「やってやるにゃあっ! 近寄る奴は、殴ってやるにゃっ!」


 ショーンの指示に従い、仲間たちは強襲を仕掛けるべく、素早く行動を開始した。


 彼は、ドローン部隊による射撃を巧みに回避しながら、ゾンビの群れを引き寄せる。



 そうして、凍結したままのゾンビ達や、動く死者たちを避けながら走り続ける。


 彼を狙うドローンの射撃で、凍っている死体は、氷のように拳銃弾を喰らって、砕けていく。



 フリンカは、氷柱と化した敵や、ウォーリアーを蹴り飛ばし、強引に長剣で切り裂く。


 ボウイナイフを振るい、できるだけ攻撃を避けながら、ワシントンは敵中を駆ける。



 スカルビーマーが射撃を開始するまえに、ミーは釘を投げたり、風打棍で、エングラーをつ。


 こうして、彼等は再度突撃を開始したが、左右でもBB団やアリ人間たちが、前進を始めている。



「行け、行け、突撃だっ!」


「うらああああ」


「オオトカゲが来るっ? 火炎を喰らえっ!」


「射ち殺してやるっ!」


 味方部隊は、ショーン達と同じく、敵の集中砲火が断続的になった事で、一気に攻勢を仕掛けた。


 ゾンビ達の背後や正面から、アジア系BB団員は、テクニカルを使って、衝突事故を繰り返す。



 ヴァンパイアBB団員は、その荷台から機銃掃射を仕掛け、混乱を生み出した。


 これにより、左側のゾンビ達は数を減らしていき、車両部隊が無事に移動していく。



 ファイヤーアントに乗っている茶色アリ人間は、バーニーキャロンを撃っては敵を射殺する。


 また、オオトカゲが真っ向から来ると、火炎放射を浴びせて、黒焦げにさせる。



 走る銀色アリ人間は、マグナムや紫ナイフ等から、強装弾や紫ビームを射ちまくりながら走る。



「ウニ鉄球だっ! コイツを脳天に喰らいやがれっ!」


「ゴクゴク…………火炎魔法は、まだまだ射てるわよっ!」


「行けるな、このまま社内に突入してやる」


 スバスは、ファットゲローの顔面を、ウニ鉄球で殴りながら、怯んだ隙に背後に回り込む。


 エナジードリンクを飲んで、リズは奴が動けないでいる間に、巨大な火球を叩き込む。



 ショーンは、仲間たちによる、勇敢な行動を見つめながら考えた。


 このまま押せば、勝てるだろうと思い、彼も剣と盾を手に、ひたすら走っていった。



「もう少しで、正面玄関だっ! ゾンビ達も侵入しているなっ? 二階からの銃声に釣られたか?」


 ショーンは、ゾンビを蹴っ飛ばし、首を切り落として、疾走しながら心の中で決意を固めた。


 この戦いを乗り越え、社内に侵入して、ライルズとスザンナ達を殺して、必ず生き延びてやると。



 彼らの未来は、今まさに数少ないゾンビ達を蹴散らし、正面に到達できるかに、かかっていた。


 目の前に、マッスラーやファットゲロー等、強力かつ厄介な特殊感染者たちは存在しない。



「ブェックションッ!?」


「うわっ! 危ない」


「グエッ!?」


「ギャッ!!」


 いきなり、くしゃみの音がなったかと思うと、ショーンは感で不味いと思って、身を屈めた。


 それは、当然ながら敵の攻撃だったらしく、扇状に飛んでいき、背後から近寄るゾンビ達を殺す。



「この野郎っ!! やらせるかっ!?」


「フェ、フェッ?」


 ショーンは後ろのゾンビ達が倒れるさまを見て、次なる攻撃が来る前に、トリップソードを振るう。


 刃が、鼻から上の頭を撥ね飛ばして、くしゃみが飛ぶ事を阻止した。



「危なかったぜ? なんだ、コイツは…………見た事がないゾンビだ」


「ショーン、あと少しだぞっ! もう機銃掃射は来ないっ! 喰らえっ! 樽型をコロコロ転がしてやるっ!」


「早くしないと、フレッシャーや、オオトカゲのゾンビに邪魔されちゃうわよ」


 ショーンは、ゾンビの死体を、いつまでも見ている訳にも行かず、目線を前に向けて走り出す。


 すると、スバスが疾走しながら右側に小樽型爆弾を転がしており、リズも火炎魔法を乱発していた。

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