ショーン達は、強力なゾンビが来る前に、警備会社の正面玄関へと走る。
その左右には、アリ人間やBB団たちが、並走しており、彼等も動く死者を倒しながら進む。
「後少しだなっ! うわっ? 危ないっ!」
「ガア、ガア、ガアガアッ!!」
走るショーンを、背後から、ゾンビ化オオトカゲが飛びかかりながら襲う。
もちろん、彼は足音を察知して、左側に転がる事で、奴の攻撃を回避する。
「ガアッ! ガアッ! ガアーー!」
「うわわ、今度は避けられな…………」
「死ね~~~~!!」
ゾンビ化オオトカゲは、地面に頃がっているショーンの隙を逃がす訳はなく、今度は突進してくる。
奴が、彼の直前で、大顎を開いた瞬間、右側からコンボイが走ってきた。
「ガアーーーーーー!?」
「た、助かった…………」
白人BB団員が、コンボイの上から、ガトリングを、四方八方から迫るゾンビ達に向けて放つ。
それに、ゾンビ化オオトカゲは引き殺されたので、ショーンは運よく生き残った。
「ショーン、早くするにゃあっ! もう、味方はガラスの向こうに行ってるにゃあっ!」
「グオ」
「ガアッ!」
「ショーン、早くしろっ! 後ろから来る奴らは、援護しながら倒すから走れっ!」
「グハッ!」
「アッ!」
「前に立ち塞がるのは、私に任せなっ!!」
「グャッ!?」
「ギャアアアアッ! アアッ!?」
ミーは、ショーンに迫るゾンビやフレッシャー達の脳天に、指弾や釘を飛ばして倒してゆく。
彼女より、少し離れた場所から、ワシントンは狩猟弓を射っては、ウォーリアーを倒す。
フリンカは、ポイズンソードで、ジャンピンガーを斬り倒しつつ走る。
邪魔なエングラーには、手近なゾンビを捕まえては、投げつける。
「お前ら、済まないっ! 後は中に侵入するだけだな」
仲間の援護を受けながら、ショーンは正面玄関を目指して、ひたすら走っていく。
ガラス張りの一階は、ダンプが突っ込んだせいで、右側に大穴と亀裂が入っている。
「この野郎っ! 死にやがれっ!」
「殺るなら、殺ってやるっ! こいっ!」
「ガアアアアッ!」
「グオオオオオオ」
玄関右側では、フレッシャーの頭を、アラブ系BB団員が、マチェットで叩き割る。
左側の方では、青アリ人間が、火炎ロングソードで、ウォーリアーを串刺しにする。
この辺りは、すでに味方部隊が確保しており、ゾンビ達を中に入れないように、戦っていた。
だが、二階の窓やガラス窓を見ると、内部にも動く死者たちが侵入している様子が見えた。
「かなり、ゾンビ達も入っているな? ワシントンの毒矢だけじゃなく、連中も突入した数は多かったのか? さっき見た時より、数が増えてるし」
ショーンは、分厚い防弾・対魔法用ガラスに張り付いて、左側のダンプが開けた穴を覗く。
「入るぞ、俺が先に行くから援護してくれっ! ミー、リズ、ワシントン、頼むぞっ! スバス、フリンカッ! 行くぜ、突入だっ!」
「背中は任せてっ! ここから、火炎魔法を射つわっ!」
「敵の兵士は、弓で射殺してやるからなっ!」
内部に転がり込み、広いホールを確認するショーンと、その背後から二人は武器を構える。
リズは、マジックロッドを抱えて、ワシントンは狩猟弓で、二階の方を睨む。
「二階は、戦闘が続いているらしいな? 一階は、ほぼ制圧されたのか、誰も居ない? みんな、上に向かうぞっ!」
「あいよっ! ここは、ゾンビが
「にゃあっ! 上に行けば、まだ敵部隊が残っているにゃあっ! 私達で残りを殲滅するにゃっ!」
「ここからは、罠や伏兵に気をつけねば成らないなっ!! 俺の爆弾が役に立つはずだっ!」
「敵も、上に建て込もって、籠城戦を展開する積もりね…………ここが、決戦の場になるわ」
「三階や四階まで、連中を追い込んでやろうっ!!」
二階の奥からは、銃撃や魔法による戦闘音が続き、そちらから声も聞こえてくる。
ここには、ゾンビや敵味方の死体に混じって、瓦礫や事務用品が壊れて、散乱していた。
ショーンは、皆を先導するべく、止まっている右側のエスカレーターを駆け上がっていく。
フリンカは、彼に続いて、ポイズンソードを背中の鞘に仕舞い、走りだした。
ミーとスバス達も、左側のエスカレーターから、上に向かっていく。
リズとワシントン達も、それぞれ左右に別れて、四人の後を着いていった。
「止まれ、ここから先は、ゴーレムが配備してあったはずだ」
「どうしましょう? あっ! マッスラーと戦っているわっ!」
エスカレーターを上がった廊下の先には、柱が何本かあり、そこには死体が転がっている。
また、BB団員やアリ人間の無惨な遺体に混じり、ゾンビが床を這っている。
ショーンとリズ達は、左右の白い壁に身を隠して、そこで行われている戦闘を眺める。
激しい衝突音が響き渡るが、見れば、ゴーレムが豪腕で、マッスラーを殴り倒している。
「迂回するぞ、こっちの方に警備監視室があった」
「そっちに行きましょう」
「ワザワザ、危ない場所に行く必要はないからねっ!」
「警備員室のハッキングは任せろ」
「ゴアアアアッ!!」
左側の通路を通り、ショーンは警備監視室を目指して、密かに歩いていった。
リズも、彼に続いて、敵に見つからないように、物音を立てずに素早く移動を開始する。
フリンカは、二人を追って、ポイズンソードを構えながら走っていく。
スバスも動くが、彼が通路に目を向けると、マッスラーが、ゴーレムを殴っているのが見えた。
「こっちだ、この先はエネルギーシールドが張られているっ! あのゾンビの死体を見ろっ! 頭だけがないだろう」
「分かった、これを解除するには、俺が何とかするしかないな…………」
「にゃあっ! 敵が来たにゃっ! 何で来たにゃっ!」
「きっと、匂いや音に釣られて来たのだろうっ!? ここは戦うしかないっ!」
ショーンは、両手を広げて仲間たちを制すると、通路の先で倒れているゾンビの死体を指差した。
そこで、右側にある監視室と書かれたドアを開けて、スバスは中に入った。
何かの物音を猫耳で、ミーは聞き取ったらしく、すぐに振り向くと、後ろからゾンビ達が来ていた。
ワシントンは、即座に狩猟弓で、足を射ち抜くが、敵の全員に当てられない。
「ぐっ! ここは狭いから、私のポイズンソードは使えないわっ!」
「私の棍も、近すぎてダメだにゃあっ!」
フリンカは、険しい顔つきで、両手の拳を構えて、ファイティングポーズを取った。
ミーも、風打棍を背中に背負って、指弾を両手から発射するが、ゾンビの群れは止まらない。
「スバスッ! 早くしてくれっ! もう、持たないっ!」
「待っていろ、もう少し、もう少しで終わるんだっ!」
「火炎魔法よっ! 炎の壁なら、全体を燃やせるわっ!」
「この距離なら、ナイフが有利かっ!」
「グオオオオ~~~~」
ショーンが叫ぶと、スバスは黒いPCをカタカタと動かしながら答える。
炎の壁を、リズが放ったが、それをゾンビ達は、火達磨に成りながら越えてきた。
ボウイナイフを腰から抜いた、ワシントンは逆手に持って、接近戦に備えた。
しかし、その中には、マッスラーが三体も存在しており、かなり不味い状況になった。
「マッスラーを中心に突破してきたっ? くっ! いや、リズ、あの装置を作動させてくれっ! 魔力回路を動かせば、ゴーレムが動くはずだっ!」
「はっ! ここねっ! これさえ有れば、私達は助かるわっ!」
ショーンは監視室のドアとは反対側にある壁に取り付けられた、タッチパネルを指差した。
それに、リズが右手を付けると、3D画像が浮き出て、八体のゴーレムを写し出す。
「今、動くわ」
「分かった」
リズが、すぐに作動させると、ゴーレム達は左右のドアから出てきて、ゾンビ達に向かっていく。
ショーンは、それを見て助かったと思ったが、気を抜く事なく、鋭い目付きで敵を睨んだ。