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第99話 社内への侵入


 ショーン達は、強力なゾンビが来る前に、警備会社の正面玄関へと走る。


 その左右には、アリ人間やBB団たちが、並走しており、彼等も動く死者を倒しながら進む。



「後少しだなっ! うわっ? 危ないっ!」


「ガア、ガア、ガアガアッ!!」


 走るショーンを、背後から、ゾンビ化オオトカゲが飛びかかりながら襲う。


 もちろん、彼は足音を察知して、左側に転がる事で、奴の攻撃を回避する。



「ガアッ! ガアッ! ガアーー!」


「うわわ、今度は避けられな…………」


「死ね~~~~!!」


 ゾンビ化オオトカゲは、地面に頃がっているショーンの隙を逃がす訳はなく、今度は突進してくる。


 奴が、彼の直前で、大顎を開いた瞬間、右側からコンボイが走ってきた。



「ガアーーーーーー!?」


「た、助かった…………」


 白人BB団員が、コンボイの上から、ガトリングを、四方八方から迫るゾンビ達に向けて放つ。


 それに、ゾンビ化オオトカゲは引き殺されたので、ショーンは運よく生き残った。



「ショーン、早くするにゃあっ! もう、味方はガラスの向こうに行ってるにゃあっ!」


「グオ」


「ガアッ!」


「ショーン、早くしろっ! 後ろから来る奴らは、援護しながら倒すから走れっ!」


「グハッ!」


「アッ!」


「前に立ち塞がるのは、私に任せなっ!!」


「グャッ!?」


「ギャアアアアッ! アアッ!?」


 ミーは、ショーンに迫るゾンビやフレッシャー達の脳天に、指弾や釘を飛ばして倒してゆく。


 彼女より、少し離れた場所から、ワシントンは狩猟弓を射っては、ウォーリアーを倒す。



 フリンカは、ポイズンソードで、ジャンピンガーを斬り倒しつつ走る。


 邪魔なエングラーには、手近なゾンビを捕まえては、投げつける。



「お前ら、済まないっ! 後は中に侵入するだけだな」


 仲間の援護を受けながら、ショーンは正面玄関を目指して、ひたすら走っていく。


 ガラス張りの一階は、ダンプが突っ込んだせいで、右側に大穴と亀裂が入っている。



「この野郎っ! 死にやがれっ!」


「殺るなら、殺ってやるっ! こいっ!」


「ガアアアアッ!」


「グオオオオオオ」


 玄関右側では、フレッシャーの頭を、アラブ系BB団員が、マチェットで叩き割る。


 左側の方では、青アリ人間が、火炎ロングソードで、ウォーリアーを串刺しにする。



 この辺りは、すでに味方部隊が確保しており、ゾンビ達を中に入れないように、戦っていた。


 だが、二階の窓やガラス窓を見ると、内部にも動く死者たちが侵入している様子が見えた。



「かなり、ゾンビ達も入っているな? ワシントンの毒矢だけじゃなく、連中も突入した数は多かったのか? さっき見た時より、数が増えてるし」


 ショーンは、分厚い防弾・対魔法用ガラスに張り付いて、左側のダンプが開けた穴を覗く。



「入るぞ、俺が先に行くから援護してくれっ! ミー、リズ、ワシントン、頼むぞっ! スバス、フリンカッ! 行くぜ、突入だっ!」


「背中は任せてっ! ここから、火炎魔法を射つわっ!」


「敵の兵士は、弓で射殺してやるからなっ!」


 内部に転がり込み、広いホールを確認するショーンと、その背後から二人は武器を構える。


 リズは、マジックロッドを抱えて、ワシントンは狩猟弓で、二階の方を睨む。



「二階は、戦闘が続いているらしいな? 一階は、ほぼ制圧されたのか、誰も居ない? みんな、上に向かうぞっ!」


「あいよっ! ここは、ゾンビがまばらに居るだけだからねっ!」


「にゃあっ! 上に行けば、まだ敵部隊が残っているにゃあっ! 私達で残りを殲滅するにゃっ!」


「ここからは、罠や伏兵に気をつけねば成らないなっ!! 俺の爆弾が役に立つはずだっ!」


「敵も、上に建て込もって、籠城戦を展開する積もりね…………ここが、決戦の場になるわ」


「三階や四階まで、連中を追い込んでやろうっ!!」


 二階の奥からは、銃撃や魔法による戦闘音が続き、そちらから声も聞こえてくる。


 ここには、ゾンビや敵味方の死体に混じって、瓦礫や事務用品が壊れて、散乱していた。



 ショーンは、皆を先導するべく、止まっている右側のエスカレーターを駆け上がっていく。


 フリンカは、彼に続いて、ポイズンソードを背中の鞘に仕舞い、走りだした。



 ミーとスバス達も、左側のエスカレーターから、上に向かっていく。


 リズとワシントン達も、それぞれ左右に別れて、四人の後を着いていった。



「止まれ、ここから先は、ゴーレムが配備してあったはずだ」


「どうしましょう? あっ! マッスラーと戦っているわっ!」


 エスカレーターを上がった廊下の先には、柱が何本かあり、そこには死体が転がっている。


 また、BB団員やアリ人間の無惨な遺体に混じり、ゾンビが床を這っている。



 ショーンとリズ達は、左右の白い壁に身を隠して、そこで行われている戦闘を眺める。


 激しい衝突音が響き渡るが、見れば、ゴーレムが豪腕で、マッスラーを殴り倒している。



「迂回するぞ、こっちの方に警備監視室があった」


「そっちに行きましょう」


「ワザワザ、危ない場所に行く必要はないからねっ!」


「警備員室のハッキングは任せろ」


「ゴアアアアッ!!」


 左側の通路を通り、ショーンは警備監視室を目指して、密かに歩いていった。


 リズも、彼に続いて、敵に見つからないように、物音を立てずに素早く移動を開始する。



 フリンカは、二人を追って、ポイズンソードを構えながら走っていく。


 スバスも動くが、彼が通路に目を向けると、マッスラーが、ゴーレムを殴っているのが見えた。



「こっちだ、この先はエネルギーシールドが張られているっ! あのゾンビの死体を見ろっ! 頭だけがないだろう」


「分かった、これを解除するには、俺が何とかするしかないな…………」


「にゃあっ! 敵が来たにゃっ! 何で来たにゃっ!」


「きっと、匂いや音に釣られて来たのだろうっ!? ここは戦うしかないっ!」


 ショーンは、両手を広げて仲間たちを制すると、通路の先で倒れているゾンビの死体を指差した。


 そこで、右側にある監視室と書かれたドアを開けて、スバスは中に入った。



 何かの物音を猫耳で、ミーは聞き取ったらしく、すぐに振り向くと、後ろからゾンビ達が来ていた。


 ワシントンは、即座に狩猟弓で、足を射ち抜くが、敵の全員に当てられない。



「ぐっ! ここは狭いから、私のポイズンソードは使えないわっ!」


「私の棍も、近すぎてダメだにゃあっ!」


 フリンカは、険しい顔つきで、両手の拳を構えて、ファイティングポーズを取った。


 ミーも、風打棍を背中に背負って、指弾を両手から発射するが、ゾンビの群れは止まらない。



「スバスッ! 早くしてくれっ! もう、持たないっ!」


「待っていろ、もう少し、もう少しで終わるんだっ!」


「火炎魔法よっ! 炎の壁なら、全体を燃やせるわっ!」


「この距離なら、ナイフが有利かっ!」


「グオオオオ~~~~」


 ショーンが叫ぶと、スバスは黒いPCをカタカタと動かしながら答える。


 炎の壁を、リズが放ったが、それをゾンビ達は、火達磨に成りながら越えてきた。



 ボウイナイフを腰から抜いた、ワシントンは逆手に持って、接近戦に備えた。


 しかし、その中には、マッスラーが三体も存在しており、かなり不味い状況になった。



「マッスラーを中心に突破してきたっ? くっ! いや、リズ、あの装置を作動させてくれっ! 魔力回路を動かせば、ゴーレムが動くはずだっ!」


「はっ! ここねっ! これさえ有れば、私達は助かるわっ!」


 ショーンは監視室のドアとは反対側にある壁に取り付けられた、タッチパネルを指差した。


 それに、リズが右手を付けると、3D画像が浮き出て、八体のゴーレムを写し出す。



「今、動くわ」


「分かった」


 リズが、すぐに作動させると、ゴーレム達は左右のドアから出てきて、ゾンビ達に向かっていく。


 ショーンは、それを見て助かったと思ったが、気を抜く事なく、鋭い目付きで敵を睨んだ。

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