ショーン達に向かってくるゾンビの集団は、透明なバリアを越えてくるゴーレム達と衝突する。
「お前ら、後は監視室に入れっ! 戦闘は、ゴーレム達に任せるんだっ!」
「分かったわっ!」
「確かに、ここは戦いに巻き込まれる前に、逃げなきゃな」
皆に指示を出しつつ、ショーンもドアの中に入ろうして、すばやく走っていく。
リズは、一気に飛び込み、ワシントンも中に入り込んで、邪魔にならないように奥へと向かう。
「さあ、ショーンもっ!」
「はやく、くるにゃあ」
フリンカとミー達も、室内に入ると、ドアの左右から、彼を手招きする。
「ああっ! 今、行くぜっ!」
ショーンは、とにかく、ドアを目指しながら必死で走っていった。
「ブェックションッ!」
「うわわ、危ないっ! は、踏まれるっ!」
しかし、短い距離にも関わらず、ショーンは床に伏せることを余儀なくされた。
右側から、いきなり散弾銃のように、くしゃみが発射されたからだ。
しかも、避けた先で、今度はゴーレムが迫ってきており、その歩行に踏まれそうになった。
だが、体を転がしながらドアの側まで逃げた事により、それも運良く回避できた。
「今のは、ヤバかった」
難を逃れた事で、ショーンは再びドアまで走り出し、ゴーレム達を避けながら進む。
「ショーン、早く中に入って」
「ああ、今行くっ!」
手招きするリズに答えながら、ショーンは監視室に逃げ込むと、ドアを閉めた。
「上階は? 裏側が、シールドとシャッターで、封鎖されているな? どうやら、別の監視室があるようだ…………」
「監視室は、複数あるっ! 外部と三階まで用、四階から7階用、それより上の幹部用のだっ! 恐らく、もうBB団とアリ人間たちが戦っているだろう」
「私たちが隠れているのは、この辺りね? 今、各フロアの様子を映し出すわ」
「まだ、敵が優勢だにゃあっ! 警備用の装置やゴーレムがあるからだにゃ?」
PCを動かし続け、スバスはビル全体の様子を、3D画像として、映し出す。
ショーンは、それを見ながら説明して、激しい戦闘を予想しながら険しい顔つきになった。
リズは、社内の内部構造を確認しながら、各地で行われている戦闘を目にする。
ミーも、監視カメラの映像に移る、天井に設置された電球を兼ねた、レーザー水晶を眺める。
『レーザーに、ゴーレムだっ! アサルトライフルくらいじゃ破壊できないぞ』
『俺の魔法でも、アレは無理だっ! 撤退しろっ!』
『ウガアアアア』
『アリ人間のゾンビかっ! 体が半分くらい溶けているっ! 強酸に殺られたかっ!』
天井の水晶によるレーザー射撃は、顔を赤布で巻いているBB団員を、テーブルから出させない。
警杖から、風斬魔法を放って、黄アリ人間は、すぐさま事務机に顔を引っ込める。
別な場所では、ゾンビと化した、黒アリ人間が、海トカゲ団員に他のゾンビ達とともに襲いかかる。
HK416による一斉射撃で、連中は崩れるように倒れてしまった。
『このアリ野郎っ! あっ!』
『うっ! 死ね、海トカゲ団っ! うわっ!』
『グルルッ!』
『ギャアアアア』
青アリ人間が、釘を溶接した鉄パイプを振るうと、海トカゲ団員は、サーベルで攻撃を受ける。
しかし、両者の背後から、ゾンビとウォーリアー化したBB団員が、ロングナイフを振るう。
『うらああっ! 死ね、死ね』
『撃ちまくれっ!』
『ぐはあっ!』
『ぎゃっ!?』
オモチャの拳銃から、紫ビームを連射する銀色アリ人間は、エネルギー切れになるまで射ちまくる。
金髪ウッドエルフBB団員も、レミントン散弾銃のポンプを何度も引いて、敵を射殺しまくる。
デザートエルフの海トカゲ団員は、ナイフを投げようとしたが、腹を射たれて、後ろに倒れる。
ドライアドの海トカゲ団員も、リピーター・ボウを射とうとしたが、時すでに遅かった。
『行くぞ、まだ上に敵が残っているっ! うわっ! 来やがった』
『エレベーターは、使えないっ! 非常階段から行くぞ』
『ウガアア』
『ギュアーーーー』
オモチャの拳銃に、左手から魔力を充填して、する銀色アリ人間は、すぐに廊下を走りだす。
金髪ウッドエルフBB団員は、散弾銃ベネリM3に下から弾を込めながら、颯爽と去っていく。
死体と化した、デザートエルフの海トカゲ団員に、OLゾンビが近づいていく。
ドライアドの海トカゲ団員にも、ジャンピンガーが飛び掛かった。
『ガツガツ、ムシャムシャ? ウアア』
『ウガアアァァ?』
『バクバクバクバク…………グルオオ』
『アア、グオオ~~?』
OLゾンビが立ち上がると、デザートエルフの海トカゲ団員も、ゾンビ化して起き上がる。
ジャンピンガーが興味を失くすと、ドライアドの海トカゲ団員も、同じく廊下を歩いていく。
「地獄絵図だな、どうやら社内で、三つ巴の激闘が繰り広げられているようだっ! 何とか、味方を助けてやりたいが」
「ここに、隠された兵器があるようだわ? ルドマン商会本社の事務所にも、同じ装置があったわ」
「本当かい? なら、ソイツを動かして欲しいねぇ」
「これかっ! 豆戦車ロボットだっ! リズが魔力を注入するなら、その前に俺はハッキングして、プロトコルを書き換えないとな」
スクリーンに映し出される画像や、会社全体の3D映像を見ながら、ショーンは険しい顔で呟く。
リズは、社内を映した画像の中で、セキュリティ装置が設置された場所を発見する。
それを見ながら、フリンカは長剣を手に取り、すぐに戦闘へと向かう準備をする。
スバスは、隠された兵器を稼働させるため、タッチパネルの上で、指を動かし続ける。
『ブェックションッ!』
『スニージンガーだっ!』
『頭を狙えっ!』
「どうやら、監視カメラの映像から察するに、敵は社内の裏側に集結しているようだな? そこで、籠城戦を展開するらしい? あと、中央ホールが激戦区となっているようだ」
「もし敵が、そこで待ち構えているなら、俺が先に行くっ! BB団とアリ人間を案内する予定だったが、こんなに混乱するとわな…………」
映像の中では、相変わらず、ゾンビ達と海トカゲ団による銃撃戦が続いている。
くしゃみを受けて、クモ人間の海トカゲ団員は、ソファーに身を隠す。
額に札を貼る、キョンシーの海トカゲ団員も、ステッキから火炎魔法を放つ。
それを見ていた、ショーンとスバス達は、急いで、敵を殲滅するべく位置を特定する。
「激戦区か? 中央ホールは広い、俺が居た頃は、ラペリング訓練やボルダリング訓練に使われていたっ!」
「なら、今から行くか? 豆戦車ロボットは放ったぞ、これで、こちらは有利になるはずだっ! 敵はコイツも使う予定だったが、使う暇なく撤退したのか」
「それより、急ごうにゃあっ! 私達も戦列に加わるにゃあっ!」
「俺の射撃支援も、必要だろうしな…………敵の射撃部隊も、相当な数だし」
元海トカゲ団員であるショーンは、訓練生だった頃の記憶を思いだす。
スバスも、ハッキングを終えて、椅子から立ち上がり、懐から小樽型爆弾を取り出す。
ミーは、ドアから廊下の様子を確認して、ゴーレム達が、歩く様を見た。
スバスは背中に手を回し、矢筒から、一本の矢を取り出しながら呟く。
「ゴーレム達は、敵を探して、何処かに行ってしまったようだにゃ?」
「なら、連中に期待は出来ないな? せっかく、戦力化できると思ったんだが」
「連中なら、ホールに向かわせたが、あちらは激戦区だし、そっちには、ゾンビも行ってるからな」
「だとしたら、何体かは撃破されているだろうねぇ~~? まっ! 結局は、私達が活躍するしかないさっ!」
ドアから飛び出た、ミーは散乱するゾンビの死体を見ながら、慎重に歩きだす。
ショーンは、スニージンガーと呼ばれた特殊なゾンビの亡骸を見下ろしながら呟く。
小樽型爆弾を右手に握りながら、スバスは廊下の奥を目刺しながら、進んでいく。
フリンカは、ポイズンソードを正眼に構えながら、不適な笑みを浮かべる。
「取り敢えず、行くぞっ! ここを潰せば、この区域で、海トカゲ団は活動できなくなるからなっ!」
「いよいゃ、決戦ね…………」
走り出して、廊下の奥へと向かっていく、ショーンに、リズは着いていった。