ショーン達は、中央ホールへと続く廊下から、飛び出て、ついに決戦の場へと着いた。
彼等は、左右の太い石柱に身を隠し、向こう側にある大きな青い垂れ幕を見た。
そこには、黄色いトカゲが描かれており、裏からは海トカゲ団の兵士たちが、武器を発砲している。
また、右側からは、ワイバーンやドラゴンの化石が、上から吊り下げられている。
左側にも、巨大なクジラの黒い骨が存在するが、今にも動きだしそうだった。
これ等を、固定している紫色の闇魔法による紫レーザーワイヤーが、薄暗い中央ホールで光る。
階下で戦う、味方のアリ人間やBB団員たちと、ゾンビ軍団なども、目に入った。
「もっと、狙撃兵を配置しろっ!」
「火力も集中させるんだっ!」
「魔法で吹き飛ばせ」
「援護するわ、はやく走って」
赤いリザードマンの海トカゲ団員は、垂れ幕に身を潜めつつ、背中から狙撃銃ヘカートを取り出す。
それを構えて、五階のガラス手摺から、呼吸を調えながら下を狙う。
左側にあるボルダリング用に設置された壁からは、M2ブローニングが連続で火を吹きまくる。
それを握り、左右に振るうのは、青いアーメットを被り、海トカゲ団員だ。
右側にあるラペリング訓練用の壁からも、敵は激しい攻撃を仕掛けてくる。
クモ人間の海トカゲ団員は、オモチャに見えるライフルから、紫レーザーを放ちまくる。
弓を構える白髪女性のデザートエルフ海トカゲ団員は、竹弓を射つ。
「行くぞっ! アリの根性、見せてやるっ!」
「撃ち返してやれ、こっちも手を休めるなっ! あっ! キラービー達も来たぜっ!」
「後ろから、ゾンビの集団が来ているっ!」
「上からも、ドローンが来るわよっ! 気をつけてっ!」
黒アリ人間は、一階で左側にある柱の陰に隠れながら、バーニーキャロンを構えて叫ぶ。
茶アリ人間は、マグナムを両手で握りしめ、上を狙って、何発も弾丸を放つ。
右側でも、柱に隠れながら、味方が必死で武器を手に取り、敵に応戦している。
赤いキャップを被る、アジア系BB団員は、右手に握る短杖から、後方に氷結魔法を放ちまくる。
紅いショートヘアのゾンビ女性BB団員は、AK47を上方に向けて、連射する。
「不味いな? 味方が必死で、戦っているっ! ワシントン、リズ、ここから上の狙撃兵の排除を頼むっ!」
「分かったが、お前は降りるんだろっ! 気をつけて行けよっ!」
「ここは、私達に任せてねっ! 火炎魔法で、援護するわっ!」
ショーンは、右側の石柱から走りだし、割れているガラス手摺を越えて、一階に飛び降りていく。
それを援護しようと、ワシントンは狩猟弓で、上階から味方を攻撃する、狙撃兵や弓兵たちを狙う。
リズは、中規模の火球を幾つか乱発して、海トカゲ団が下げる垂れ幕を燃やす。
二人が、敵を惹き付けている間に、他の仲間たちも走り、味方も攻撃を強める。
「私たちも飛び出すよっ! 銃弾や魔法は、長剣で弾いてやるさっ!」
「にゃあっ! 突撃だにゃああああっ!」
「爆弾は、まだ使い時じゃないなっ! 鉄球を振り回せられるかっ!」
飛んできた矢を叩き斬りながら、フリンカは一階へと落下していった。
ミーも、風打棍を目の前で、回転させながら、勢いよく床に飛び降りた。
スバスは、二人に遅れまいと、素早く駆け出していき、大理石の床に着地した。
それを見て、味方部隊も士気を高めて、さらに射撃頻度を激しくさせる。
「味方が下に行ったぞっ!」
「援護して、やらなきゃっ!」
「援護射撃だっ!」
「敵が多すぎるわっ!」
赤アリ人間が、左側に丸テーブルをガラス手摺に転がしてくると、オートマグを撃ちまくる。
青アリ人間は、その背後から、バーニーキャロンを構えて、何発も弾丸を発射する。
銀髪エルフのBB団員は、箒から雷撃魔法を放ちながら、右側にある石柱に身を隠す。
ピンクアフロの黒人女性BB団員は、AK47を乱射しながら注意を惹くと、すぐに走り出す。
彼等以外にも、多数のアリ人間やBB団員たちが、魔法や銃撃を放ちまくる。
これにより、双方で激しい撃ち合いになり、一階から十階まで、さまざまな攻撃音が響き渡る。
「上でも派手にやってるな? しかし、俺たちは迂闊に出られない…………それに、凄い数の物質だ」
「宝物に、食糧、武器弾薬だにゃあ?」
ショーンは、柱の間に設置されている大きなプラスチック製ケースに身を隠す。
右側では、ミーが壁際に立て掛けられた、絵画や掛け軸などを眺めながら呟く。
ここには、他にも壁の方に、英雄や女神に悪魔や魔物と言った、美しい彫刻が飾られている。
また、幾つもある石柱の側にも、缶詰めや缶ジュース、酒樽や段ボール箱などが置かれていた。
「あっ? この紅い大きな宝玉は…………マリンピア博物館の展示品だわ、魔王軍の時代の贈答品よっ! あの装飾が施された剣は、フルルンク一世の遺品」
「きっと、盗んで来たんだね? ここに置ききれないから、ホールにまで置いてやがるわっ! まるで、連中は盗賊団だわ」
「俺が居た時から、良くない噂が、チラホラとあったが? やはり、あれから更に、マフィア化してたか」
「食糧や貴金属は、どっかから略奪して来たんだ? 今までも、チンピラに襲撃させたり、ホテルやアジア人町を攻撃してきただろう」
右側で、リズは山積みにされた黄金の中から、歴史的に価値がある高価な宝石類を見つける。
同じく、そこに身を隠しているフリンカも、ネックレスを掴みながら、中央ホールを睨む。
この石柱だけでなく、札束と貴金属類などが、無造作に置かれて、そこら中で山を作っている。
ショーンは、頭上から狙撃銃や弓矢に狙われないように警戒しながら、顔を上半分だけだす。
そして、様子を伺う彼の左側で、酒樽から立ち上がり、スバスは煙玉を幾つも投げる。
「視界が…………く、撃ちまくれっ!」
「ぐわ、スモークを撒かれたぞっ!」
「銃撃を続けていればっ!」
「敵をくい止めるんだ、近寄らせないわっ!」
「よし、前進するぞっ! 頭上のスナイパーに注意しろよっ!」
「あいよ、何処までも着いてくよ? 相棒っ!」
茶髪白人の海トカゲ団員は、灰煙が充満する中、それでも前方にHK416を撃ちまくる。
OLPロゴが描かれた、青帽子を被る、黒人の海トカゲ団員は、両手から火炎魔法を連発する。
カエル人間の海トカゲ団員は、分隊支援火器ミニミを構えて、途切れなく機銃掃射を続ける。
ワーキャット女性の海トカゲ団員は、骸骨ドラゴン模型に勢いよく飛び乗り、弓矢を放ってきた。
ショーンとフリンカ達は、上や横から飛んでくる攻撃を避けるため、右側にある札束の山を目指す。
その間に、さまざまな銃撃や魔法により、紙幣や貴金属類が飛び上がる。
ジャラジャラと、金銀が派手に砕ける音が鳴り響き、お札は焼けて、灰と火の粉を舞い散らせる。
「うわ…………やはり、上から攻撃されるなっ!」
「ふっ! この距離なら見切れるにゃっ!」
「爆弾を転がしてやるぜ、これで、敵は混乱するだろう」
「火炎魔法の援護よっ! あのクジラを落とすわっ!」
「これは、不味いねぇ? 銃弾が鎧を貫通してしまうわ」
ショーンは、金銀財宝に混ざる赤や青と言った、宝石の山に、素早く飛び込む。
その背後で、ミーは風打棍を振り回して、矢を弾くとともに、同じく輝く砂金の中に突っ込む。
小樽型爆弾を、何個も転がしながら、スバスは宝物の山や食糧品などを走り抜ける。
リズは、天井の吊り下げ装置や敵狙撃兵に対して、大きな火球を放ちまくる。
弓矢や弱い拳銃弾ならば、フリンカの長剣も攻撃を耐えられるが、流石に小銃弾までは防げない。
さらに、頬や鎧を敵の攻撃が掠めたため、彼女も木箱が積まれた場所に逃げ込んだ。
「ぶはあっ! 戦況はっ? どうなっている?」
「にゃあっ! どちらも混乱しているにゃあ」
ショーンとミー達は、黄金の山から頭だけを出して、
「あ、こっちにも転がっ! ぐああああっ!?」
「爆弾だ、ぐぎゃあっ!」
「もうダメだ、中央ホールに逃げ込むわよっ!」
「いったい、どれだけ居るんだよっ!」
「援軍だっ! 豆戦車が来たぞっ!」
「ファイヤーアントの火炎放射だっ!」
石柱の陰で、青い陣笠を被る海トカゲ団員が、HK416からマガジンを抜いた。
それと同時に、いきなり子樽型爆弾が転がってきて、奴は爆風で吹き飛ぶ。
防弾シールドを並べた裏で、クロスボウに爆裂ボルトを、グールの海トカゲ団員は装填した。
しかし、同じく回転しながら向かってきた物に気づく事なく、爆炎に包まれた。
右側では、何人かのBB団員が、中央ホールへと逃げ込んでくる。
赤髪ショートヘアの女性エルフBB団員は、M2ブローニングを抱えながら走ってくる。
顔に赤いマフラーを巻いている、トロールのBB団員は、ガトリングガンを背負いながら並走する。
左側からは、援軍として、アリ人間たちが歓声を上げながら雪崩れ込んでくる。
青色に屠蘇された、豆戦車の二連機銃がある銃塔を、後ろから、茶アリ人間が掴みながら乗る。
その後ろから現れた、黒アリ人間が騎乗するファイヤーアントは、
「不味いな? アリ人間たちは、かなり有利だが、BB団員が押されている」
「これは、私たちも、ウカウカしてられないにゃっ!」
ショーンは、左右を見て、金銀財宝から飛び出して、BB団の方へと走る。
ミーも、彼の後を追って、押し寄せるゾンビを相手にするべく、援軍に向かっていった。