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第102話 中央ホールの激闘


 ショーン達は、中央ホールへと続く廊下から、飛び出て、ついに決戦の場へと着いた。


 彼等は、左右の太い石柱に身を隠し、向こう側にある大きな青い垂れ幕を見た。



 そこには、黄色いトカゲが描かれており、裏からは海トカゲ団の兵士たちが、武器を発砲している。


 また、右側からは、ワイバーンやドラゴンの化石が、上から吊り下げられている。



 左側にも、巨大なクジラの黒い骨が存在するが、今にも動きだしそうだった。


 これ等を、固定している紫色の闇魔法による紫レーザーワイヤーが、薄暗い中央ホールで光る。



 階下で戦う、味方のアリ人間やBB団員たちと、ゾンビ軍団なども、目に入った。



「もっと、狙撃兵を配置しろっ!」


「火力も集中させるんだっ!」


「魔法で吹き飛ばせ」


「援護するわ、はやく走って」


 赤いリザードマンの海トカゲ団員は、垂れ幕に身を潜めつつ、背中から狙撃銃ヘカートを取り出す。


 それを構えて、五階のガラス手摺から、呼吸を調えながら下を狙う。



 左側にあるボルダリング用に設置された壁からは、M2ブローニングが連続で火を吹きまくる。


 それを握り、左右に振るうのは、青いアーメットを被り、海トカゲ団員だ。



 右側にあるラペリング訓練用の壁からも、敵は激しい攻撃を仕掛けてくる。



 クモ人間の海トカゲ団員は、オモチャに見えるライフルから、紫レーザーを放ちまくる。


 弓を構える白髪女性のデザートエルフ海トカゲ団員は、竹弓を射つ。



「行くぞっ! アリの根性、見せてやるっ!」


「撃ち返してやれ、こっちも手を休めるなっ! あっ! キラービー達も来たぜっ!」


「後ろから、ゾンビの集団が来ているっ!」


「上からも、ドローンが来るわよっ! 気をつけてっ!」


 黒アリ人間は、一階で左側にある柱の陰に隠れながら、バーニーキャロンを構えて叫ぶ。


 茶アリ人間は、マグナムを両手で握りしめ、上を狙って、何発も弾丸を放つ。



 右側でも、柱に隠れながら、味方が必死で武器を手に取り、敵に応戦している。



 赤いキャップを被る、アジア系BB団員は、右手に握る短杖から、後方に氷結魔法を放ちまくる。


 紅いショートヘアのゾンビ女性BB団員は、AK47を上方に向けて、連射する。



「不味いな? 味方が必死で、戦っているっ! ワシントン、リズ、ここから上の狙撃兵の排除を頼むっ!」


「分かったが、お前は降りるんだろっ! 気をつけて行けよっ!」


「ここは、私達に任せてねっ! 火炎魔法で、援護するわっ!」


 ショーンは、右側の石柱から走りだし、割れているガラス手摺を越えて、一階に飛び降りていく。


 それを援護しようと、ワシントンは狩猟弓で、上階から味方を攻撃する、狙撃兵や弓兵たちを狙う。



 リズは、中規模の火球を幾つか乱発して、海トカゲ団が下げる垂れ幕を燃やす。


 二人が、敵を惹き付けている間に、他の仲間たちも走り、味方も攻撃を強める。



「私たちも飛び出すよっ! 銃弾や魔法は、長剣で弾いてやるさっ!」


「にゃあっ! 突撃だにゃああああっ!」


「爆弾は、まだ使い時じゃないなっ! 鉄球を振り回せられるかっ!」


 飛んできた矢を叩き斬りながら、フリンカは一階へと落下していった。


 ミーも、風打棍を目の前で、回転させながら、勢いよく床に飛び降りた。



 スバスは、二人に遅れまいと、素早く駆け出していき、大理石の床に着地した。


 それを見て、味方部隊も士気を高めて、さらに射撃頻度を激しくさせる。



「味方が下に行ったぞっ!」


「援護して、やらなきゃっ!」


「援護射撃だっ!」


「敵が多すぎるわっ!」


 赤アリ人間が、左側に丸テーブルをガラス手摺に転がしてくると、オートマグを撃ちまくる。


 青アリ人間は、その背後から、バーニーキャロンを構えて、何発も弾丸を発射する。



 銀髪エルフのBB団員は、箒から雷撃魔法を放ちながら、右側にある石柱に身を隠す。


 ピンクアフロの黒人女性BB団員は、AK47を乱射しながら注意を惹くと、すぐに走り出す。



 彼等以外にも、多数のアリ人間やBB団員たちが、魔法や銃撃を放ちまくる。


 これにより、双方で激しい撃ち合いになり、一階から十階まで、さまざまな攻撃音が響き渡る。



「上でも派手にやってるな? しかし、俺たちは迂闊に出られない…………それに、凄い数の物質だ」


「宝物に、食糧、武器弾薬だにゃあ?」


 ショーンは、柱の間に設置されている大きなプラスチック製ケースに身を隠す。


 右側では、ミーが壁際に立て掛けられた、絵画や掛け軸などを眺めながら呟く。



 ここには、他にも壁の方に、英雄や女神に悪魔や魔物と言った、美しい彫刻が飾られている。


 また、幾つもある石柱の側にも、缶詰めや缶ジュース、酒樽や段ボール箱などが置かれていた。



「あっ? この紅い大きな宝玉は…………マリンピア博物館の展示品だわ、魔王軍の時代の贈答品よっ! あの装飾が施された剣は、フルルンク一世の遺品」


「きっと、盗んで来たんだね? ここに置ききれないから、ホールにまで置いてやがるわっ! まるで、連中は盗賊団だわ」


「俺が居た時から、良くない噂が、チラホラとあったが? やはり、あれから更に、マフィア化してたか」


「食糧や貴金属は、どっかから略奪して来たんだ? 今までも、チンピラに襲撃させたり、ホテルやアジア人町を攻撃してきただろう」


 右側で、リズは山積みにされた黄金の中から、歴史的に価値がある高価な宝石類を見つける。


 同じく、そこに身を隠しているフリンカも、ネックレスを掴みながら、中央ホールを睨む。



 この石柱だけでなく、札束と貴金属類などが、無造作に置かれて、そこら中で山を作っている。



 ショーンは、頭上から狙撃銃や弓矢に狙われないように警戒しながら、顔を上半分だけだす。


 そして、様子を伺う彼の左側で、酒樽から立ち上がり、スバスは煙玉を幾つも投げる。



「視界が…………く、撃ちまくれっ!」


「ぐわ、スモークを撒かれたぞっ!」


「銃撃を続けていればっ!」


「敵をくい止めるんだ、近寄らせないわっ!」


「よし、前進するぞっ! 頭上のスナイパーに注意しろよっ!」


「あいよ、何処までも着いてくよ? 相棒っ!」


 茶髪白人の海トカゲ団員は、灰煙が充満する中、それでも前方にHK416を撃ちまくる。


 OLPロゴが描かれた、青帽子を被る、黒人の海トカゲ団員は、両手から火炎魔法を連発する。



 カエル人間の海トカゲ団員は、分隊支援火器ミニミを構えて、途切れなく機銃掃射を続ける。


 ワーキャット女性の海トカゲ団員は、骸骨ドラゴン模型に勢いよく飛び乗り、弓矢を放ってきた。



 ショーンとフリンカ達は、上や横から飛んでくる攻撃を避けるため、右側にある札束の山を目指す。


 その間に、さまざまな銃撃や魔法により、紙幣や貴金属類が飛び上がる。



 ジャラジャラと、金銀が派手に砕ける音が鳴り響き、お札は焼けて、灰と火の粉を舞い散らせる。



「うわ…………やはり、上から攻撃されるなっ!」


「ふっ! この距離なら見切れるにゃっ!」


「爆弾を転がしてやるぜ、これで、敵は混乱するだろう」


「火炎魔法の援護よっ! あのクジラを落とすわっ!」


「これは、不味いねぇ? 銃弾が鎧を貫通してしまうわ」


 ショーンは、金銀財宝に混ざる赤や青と言った、宝石の山に、素早く飛び込む。


 その背後で、ミーは風打棍を振り回して、矢を弾くとともに、同じく輝く砂金の中に突っ込む。



 小樽型爆弾を、何個も転がしながら、スバスは宝物の山や食糧品などを走り抜ける。


 リズは、天井の吊り下げ装置や敵狙撃兵に対して、大きな火球を放ちまくる。



 弓矢や弱い拳銃弾ならば、フリンカの長剣も攻撃を耐えられるが、流石に小銃弾までは防げない。


 さらに、頬や鎧を敵の攻撃が掠めたため、彼女も木箱が積まれた場所に逃げ込んだ。



「ぶはあっ! 戦況はっ? どうなっている?」


「にゃあっ! どちらも混乱しているにゃあ」


 ショーンとミー達は、黄金の山から頭だけを出して、彼方此方あちらこちらに目を向けた。



「あ、こっちにも転がっ! ぐああああっ!?」


「爆弾だ、ぐぎゃあっ!」


「もうダメだ、中央ホールに逃げ込むわよっ!」


「いったい、どれだけ居るんだよっ!」


「援軍だっ! 豆戦車が来たぞっ!」


「ファイヤーアントの火炎放射だっ!」


 石柱の陰で、青い陣笠を被る海トカゲ団員が、HK416からマガジンを抜いた。


 それと同時に、いきなり子樽型爆弾が転がってきて、奴は爆風で吹き飛ぶ。


 防弾シールドを並べた裏で、クロスボウに爆裂ボルトを、グールの海トカゲ団員は装填した。


 しかし、同じく回転しながら向かってきた物に気づく事なく、爆炎に包まれた。



 右側では、何人かのBB団員が、中央ホールへと逃げ込んでくる。



 赤髪ショートヘアの女性エルフBB団員は、M2ブローニングを抱えながら走ってくる。


 顔に赤いマフラーを巻いている、トロールのBB団員は、ガトリングガンを背負いながら並走する。



 左側からは、援軍として、アリ人間たちが歓声を上げながら雪崩れ込んでくる。



 青色に屠蘇された、豆戦車の二連機銃がある銃塔を、後ろから、茶アリ人間が掴みながら乗る。


 その後ろから現れた、黒アリ人間が騎乗するファイヤーアントは、アゴから火炎放射を吐く。



「不味いな? アリ人間たちは、かなり有利だが、BB団員が押されている」


「これは、私たちも、ウカウカしてられないにゃっ!」


 ショーンは、左右を見て、金銀財宝から飛び出して、BB団の方へと走る。


 ミーも、彼の後を追って、押し寄せるゾンビを相手にするべく、援軍に向かっていった。




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