クジラの模型が落下すると、衝撃で骨が飛び散り、ゾンビ達が何体か犠牲になった。
「うわ、焦ったぜっ! あんなのの下敷きになったら確実に死んでたな」
「気をつけてっ! ショーン、まだまだ、ドラゴンの化石から狙撃兵が攻撃してくるからっ!」
ショーンが唖然と立ち尽くしていると、リズは火炎魔法を連発しまくる。
ドラゴン化石模型や上階からは、未だに海トカゲ団側による機銃掃射や狙撃が行われるからだ。
「く、このまま、ここに居ても的になるだけだっ! 前進するぞっ! 着いてこいっ!」
「分かったわっ! 援護は任せてっ!」
「私は、ここで敵を押さえているわっ! マッスラーやファットゲローが見えるからね…………」
「俺も、爆弾でゾンビ達を排除するぞっ! だから、先に行っててくれ」
ショーンは、機銃手や狙撃兵による機銃掃射と狙撃を避けるべく、黄金の小山へと走っていく。
リズは、ドラゴン化石や垂れ幕の裏から、ヘカートやクロスボウ等で攻撃してくる敵を狙う。
彼女は、自分たちだけでなく、BB団やアリ人たちを支援しようと、大火球を何度も放つ。
その間に、集まってくるゾンビ達を、フリンカは斬り捨て、スバスは爆弾を転がして吹き飛ばす。
「分かったっ! フリンカ、スバス、BB団の援護を頼むぞ」
「私たちは、裏側に続く中央廊下を目指すわよっ!」
「にゃあ、あそこを制圧すれば、敵を押し返せるにゃあっ!」
「お前ら、援護するっ! 今、味方が前線を上げる気だからな、俺も来たぞ」
ショーンは、黄金の小山や木箱を避けながら、走り回り、やがて青いドラム缶に身を隠す。
リズも、彼に着いていき、同じ場所から敵が集う廊下の入口を険しい顔で眺める。
そこは、ドラム缶が並べてあり、その裏には、プラスチック製ケースが山積みされていた。
また、何人かの海トカゲ団員が、雷撃魔法や自動小銃を撃つ姿が見える。
ミーも、スライディングしながら、やってくると、風打棍を杖代わりにして、二人の側に隠れる。
その左側にある段ボール箱が詰まれた山に、ワシントンが走ってくると、矢を一度だけ放つ。
「ワシントン、分かったっ! 急ぐか、早くしないと、ゾンビに殺られちまうからなっ!」
「ぐおお~~!?」
「ガギャアーー!」
「きゃあっ! いやあっ!」
「グルルッ!」
ショーンが叫びながら、走っていくと、周りでは味方と敵が戦っている様子が見えた。
クジラ模型の残骸を中心に、アリ人間とゾンビ達が入り乱れて、激しい攻防が続いている。
黄アリ人間は、フレッシャーを三段警棒で押さえ、何とかしようと踏ん張る。
ドラゴン模型に乗っていた、白人女性の海トカゲ団員は、短弓を構えていた。
だが、背後から、ジャンピンガーに襲われてしまい、左腕を噛まれながら床に落とされる。
「不味いぜ、ゾンビが襲ってくるっ!」
「ギャアアアア、ギャッ!」
「うわっ! 殺られ…………」
「このっ! 味方側まで、逃げなきゃっ!」
「グルア~~!?」
ショーンの突撃する先でも、敵味方が入り乱れる混戦が続いている。
フレッシャーに顔を殴られた、黒アリ人間は、電磁警棒を床に落としてしまう。
ダガーを振るう、インキュバスの海トカゲ団員は、踵を返すと味方陣地に走っていく。
それを、ジャンパーは凄まじい速度で、ピョンピョンと飛びはねながら追いかける。
「あそこまで、逃げるぞっ! あの木箱の山だっ!」
「ええ、次は向こうね? 行くわよっ!」
遮蔽物を指差しながら、ショーンは群がるゾンビ達を避けながら走る。
彼は目立たないように、混乱する中央ホールを駆けていき、素早く木箱に身を隠す。
リズ達も同じく、一直線に移動していき、そこから海トカゲ団側の様子を探る。
連中は、奥から援軍が来ているらしく、攻撃が劣ろえる気配はない。
「警備装置を作動させるわっ! 敵の勢いを止めるわよっ!」
「なら、早くしろっ! このままだと、我々は後退しなくては成らなくなる」
廊下の奥で、右側にある装置に、青服を着ている女性魔法使いらしき、海トカゲ団員が手で触れる。
すると、ドラゴン化石が紫色のオーラを発して、空を飛び回り始めた。
青いフリッツ・ヘルメットを被る、スケルトンの海トカゲ団員は、HK416を撃ちながら怒鳴る。
奴を含め、廊下を塞ぐバリケード代わりに並べられた、ドラム缶から行われる射撃は途切れない。
「あそこを突破するには、爆弾が無いと…………誰か、何かいい手はないか?」
「なら、俺の爆裂矢を使うか? 火を着けなくても、リズの火炎魔法なら撃った後に着火できるっ! 大した威力は無いが、バリケードの連中を撹乱できるはずだ」
「なら、私も大火炎魔法を放つわっ! ワシントン、やってちょうだいっ!」
「にゃあっ! 近づいてくるゾンビは、私が引き受けるにゃあっ!」
「グエッ!」
「ギャアッ!」
敵を密かに観察しながら、ショーンは方策を練りつつ、すぐにゾンビ達を見るために振り替える。
左側から、ワシントンは、何度も小箱をガムテープで巻き付けた、爆裂アローを射ちまくる。
それが、一発ずつドラム缶に突き刺さると、リズが扇状の全体火炎魔法を放った。
彼女が、目立ってしまっため、ミーは近づいてくる、ゾンビ達の額に釘を投げつけまくる。
「何だ? 弓矢か?」
「うわっ! 火炎魔法がっ!」
「ぎゃああ~~!?」
「きゃああああっ!」
ドラム缶に刺さっている、弓矢を気にする、黄色いリザードマンの海トカゲ団員。
それと、自分たちに向かってくる火炎魔法を見て、赤アリ人間の海トカゲ団員は思わず叫んだ。
その後、すぐに火炎と火薬が合わさり、爆発を起こして、遮蔽物を吹き飛ばした。
それに、何人かの海トカゲ団員が、巻きこまれてしまい、彼等は負傷してしまう。
「グルア~~~~」
「グオオ」
「未だっ! 連中を追撃してやるぞっ! うわあっ! お前ら、ゾンビと上に気を付けろっ!」
「ギャアアッ!? ギュアーーーー!」
「きゃあっ! スカルゴンが来るわっ! 早く逃げないとっ!」
派手な爆発音を聞き付けて、ゾンビ達が群がり、ショーン達の行くてに立ちはだかる。
さらに、上空からドラゴンの化石模型が飛来して、ジャンパーを脚で鷲掴みにする。
リズは、上に向かって、マジックロッドから火玉を連射しまくる。
そうして、対空射撃をしている内に、他の仲間たちも奥に向かっていく。
「みんな、早くしろっ! でないと、ゾンビ達が向かってくる」
「グルア~~」
「ギャアアッ!?」
ショーン達は、迫るゾンビの群れを掻い潜りながら、中央ホールから裏面に続く、廊下へと進む。
「あっ! 上から来るわっ!」
「不味いにゃっ!」
「アレは、俺の弓でも…………いや?」
「邪魔だっ! 撃ち落とせっ!」
「死にやがれっ!」
リズとミー達は、上空から滑空してくるスカルゴンを見ると固まってしまった。
咄嗟に、狩猟弓を構えるワシントンも、矢が弾かれる事を悟り、額から汗を垂らした。
しかし、そこに豆戦車が現れて、二連装の銃塔を斜め上に向けて、対空射撃を始めた。
それに乗っている、黒アリ人間が、バーニーキャロンを撃ち、茶アリ人間はマグナムを発砲する。
「行ったな? 流石に、ライフル射撃には耐えられなかったか? うわ、今度は敵が体制を立て直したぞっ! 仕方ない、左右に別れて、壁を目指そうっ!」
「タワーシールド、バンカーシールドを持ってこいっ!」
「防弾装備部隊も到着したぞっ!」
「私は、ショーンと行くわっ! ゾンビ達を露払いするからっ!」
「分かったっ! こっちは左側から、ミーとともに行く」
「任せるにゃっ! 近づく、ゾンビは私が相手するにゃあっ!」
ショーンは、スカルゴンが飛びさっていくのを見ると、すぐに走り出す。
彼は、ゾンビの襲撃や海トカゲ団が体制を立て直す前に、廊下に向かうが時既に遅かった。
青いミイラの海トカゲ団員は、ひたすらHK416を撃ちながら叫ぶ。
青いベレー帽を被る黒人の海トカゲ団員も、警杖から氷結魔法を連射しまくる。
リズは、炎のカーテンを作りながら、自分たちが敵から見えないようにしつつ、走ってゆく。
ワシントンは、狩猟弓を時おり射ちながら立ち止まる事なく、走り続ける。
ミーも、釘を投げたり、風打棍で押し寄せるゾンビ達を撃退しながら、臆する事なく進んでいった。
「よし、着いたな? 爆弾でも有れば投げ込むが、生憎と今は無いからな」
「火炎魔法も、中の防弾装備に通じるかしら?」
ショーンとリズ達は、廊下の右脇で、海トカゲ団を倒す方策を練る。
もちろん、自分たちに近づくかも知れないゾンビ達を警戒しながらだが。