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第106話 ここは高級ホテルか?


 ショーンとリズ達は、オフィス内を通り、敵の裏を取るべく静かに進んでいった。


 パソコンと事務机が並ぶ、近代的な部屋の中には、どうやら敵は潜んでいないようである。



「安全そうに見える? しかし、ゾンビが潜んでいるかも知れない? リズ、後ろを頼む」


「大抵のホラー映画だと、事務机の下に敵が隠れているからね」


 ショーンは、次の廊下に出るために、密かにドアを開けて、左右を確かめる。


 そして、リズは、事務机やパソコンに目を向けて、マジックロッドを構えた。



「ウアア~~~~!!」


「グルアアーー?」


「ここから先に、連中を行かせるなっ!」


「敵を食い止めろっ! 援軍が今くるから、耐えるんだっ!」


「右は、ゾンビ連中が? 左は海トカゲ団か?」


「どうする? 背後に回って、仕留める?」


 銀髪ポニーテール女性エルフ海のトカゲ団員だった怪我だらけで歩く、ゾンビ。


 赤いターバンを巻いているアラブ系のBB団員は、ウォーリアー化しており、メイスを握る。



 反対側からは、銃撃音が聞こえる事から、戦闘が続いている様子が分かる。



 フェイスバイザー付き、フリッツ・ヘルメットを被る白人の海トカゲ団員は、ミニミを撃っている。


 タワーシールドを構える、スケルトンの海トカゲ団員は、グロック17を連射している。



 この様子を見て、ショーンとリズは両方から攻められないと思い、またもやドアを見る。



「この中は、確か昔は会議室や応接室に使われていた? 今度は敵が潜んでいるかも知れないから、気をつけて入るぞ」


「ええ、すぅ~~? 大丈夫よっ! 何時でも突入できるわ」


 覚悟を決めた、ショーンはドアに近づき、リズも彼に続いて、内部に突入するため、呼吸を整えた。


 それから、二人は素早く中に入り、左右に転がりながら、敵を攻撃しようと周囲を観察する。



 しかし、天井から紫の水晶玉は、四個も下がっているが、どうやら作動してないようだ。


 また、ここには、ゾンビや海トカゲ団員は居なかったが、変わりに騎士の幾つかある。



「何かヤバイな? 罠かも知れないっ!」


「どうやら、そう言う雰囲気だわ…………」


  応接室は、まるで、ホテルや城内のような豪華な内装を施されていた。


 琥珀色の照明や、金箔で装飾された壁、壮大なシャンデリアが、危険な感覚を一変させる。



 長四角の黒いテーブルが、六個ずつ配置されており、さらに周りには、黄色いソファーがある。



 だが、ショーンとリズ達は余りにも、豪華すぎる室内と静寂さに違和感が脳裏に浮かぶ。


 ここはまるで、洞窟型ミミックの体内に居る気がするように、妙な気配を感じるワケだ。



「リズ、昔より内装が派手になっている…………たぶん、ここは罠だっ! 机の下に隠れろ」


「もちろんだわ、警備システムが作動したっら!?」


 ショーンとリズ達は、嫌な雰囲気を感じとり、すぐに安瀬な物陰に隠れようとした。


 しかし、そこを狙って、海トカゲ団員たちが、クロスボウを射ってきた。



「うわっ! 物音がしないから、コイツ等は厄介だなっ!」


「やっぱり、罠だったのね? 今射ち返すわっ!」


「散会しろ」


「GO、GO、GOーー!」


「ファイア」


 ショーンは、咄嗟に地面に伏せたあと、近くにあった深緑のソファーに転がっていく。


 リズは、マジックロッドのオレンジ水晶で、矢を弾き、二発目を回避するべく、左側に走る。



 青いバシネットを被る海トカゲ団員たちは、三方向から、二人を方位しようと走る。


 彼等は、通常の団員と違って、動きが素早く、クロスボウに矢を装填する速度も同様だった。



「ぐわっ! 何て言う射撃の上手さだ、射つ速さも、射撃精度も高いっ!?」


「どうする? このままじゃあ、殺られちゃうわよっ! 当然、反撃はするけどっ!」


 身を潜めて姿勢を低くしているショーンだが、ソファーを矢が突き破る。


 リズは、長四角の黒いテーブルを立てて、盾として活用したため、攻撃が貫通しない。



「リズ、頼むっ! 俺は何とか背後から回り込めないか、試すっ!」


「分かっているわっ! こっちが、派手な魔法で、惹き付けるっ! ついでに炎のカーテンを出すわっ!」


 ショーンは、バックラーで顔を隠すように構えると、右側に飛び出していこうと身構える。


 そんな彼を援護するべく、リズは火炎魔法で大きな火玉を乱射してから、すぐに炎を噴射した。



「助かるっ! うわあっ! コイツらも動きだしやがった?」


「気をつけて、ショーンッ! ただの鎧じゃないわっ! 鎧型ゴーレムやロボットの類いだわっ!」


 中世の騎士鎧が、部屋に飾ってあると思っていたが、これは鎧型ロボットだった。


 ショーンは、アーメットを被り、ロングソードを振り回し、ノルマンシールドを構える連中に驚く。



 リズは、彼を支援しようと、火炎魔法を放ったが、海トカゲ団員には効果がなかった。


 青バシネットは、大きな火球を当てても、軽く炎が弾かれてしたうのだ。



「奴らは、精鋭部隊か? くっ! 騎士型ロボットも厄介だぜっ! これじゃあーーどちらとも、剣で斬られない」


「敵、殲滅スル…………」


「私の魔法も弾かれるわっ! 参ったわね、ここは特大魔法を射ったあと、撤退しましょうっ!」


「逃がさんっ!」


 長四角いテーブルに転がりこんで、それを倒して、ショーンは身を隠しながら、剣を振るう。


 そうして、騎士型ロボットの振り下ろすロングソードを刃同士で、受け止める。



 金属音が派手に成るなか、リズは極大火炎魔法を放ち、撹乱しながら何とか逃げようと考えた。


 しかし、素早く背後に回った海トカゲ団員は、クロスボウから彼女に向けて、矢を放つ。



「きゃああっ!」


「リズッ!」


「行カセナイ…………」


「抹殺スル」


「増援よっ! 敵を押し返すわっ!」


「叩きのめせっ!」


 リズが悲鳴を上げる中、ショーンは彼女を助けに行こうとするも、それは出来ない。


 騎士型ロボット達が、二体で、長剣を振り上げ、何度も斬撃を繰り出してくるからだ。



 短弓を構える、金髪女性エルフの海トカゲ団員たちが、ドアから入ってきた。


 続いて、金砕棒を握るトロールの海トカゲ団員たちも、勢いよく走ってくる。



「うわわっ! どうしろってんだっ? これじゃあ、死んで…………は?」


「グオオオオーーーー!!」


 いきなり、ショーンの背後から天井が崩れて、大きな何かが、二体も振り落ちてきた。


 それが、床に当たった瞬間、轟音とともに灰煙が舞って、視界を遮った。



「ケホッ! ケホッ! ご、ご、ゴーレム? 不味い、急いで離れないとっ!」


 ショーンは、煙が晴れると、目に入った新たな敵を見て、倒れているリズの元へと走った。


 そんな彼を、ゴーレムは追撃しようとしたが、そこに大量のゾンビ軍団が天井から落下してきた。



「なっ! なんだ、味方のゴーレムか? いや、ゾンビもいるぞっ! まずは連中から殺るかっ!」


「エリート兵、トロール族と連携するわよっ!」


「エルフ族は下がれっ! 我々、トロールが前衛を務めるっ!」


 続々と、天井から侵入してくるゾンビの群れに、海トカゲ団員たちは、対応に負われる。


 バシネットを被る、エリート兵たちは、冷静にクロスボウの照準を、ゾンビ達に合わせた。



 女性エルフの部隊は、短弓やマジックロッドから、すばやく、矢と氷結魔法を放つ。


 トロール達は、金砕棒やフランジメイスを振り回しながら、動く死体を殴りまくる。



「くっ! リズ、リズッ! リズーーーー!!」


 テーブルの裏で倒れている、リズに駆け寄ったが、ショーンは攻撃を受けなかった。


 どうやら、敵はゾンビ達に夢中で、彼を狙う暇もなく、さらに後退していたようだ。



「リズ…………」


「しっ! ショーン、私は生きているわ、頬を撃ち抜かれただけよ」


 ショーンは、顔面に酷い怪我を負っているように見える、リズの体を起こそうとする。


 しかし、彼女は左頬を矢に射ち抜かれていが、能を傷つけておらず、奇跡的に生きていた。

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