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16「あいつやばすぎだろ!」

 ※ディーン視点


 (ぜんっぜん距離を取れない!! てか技を封印ってあいつやばすぎだろ!)


 鏡の世界で乱反射する閃光は、ディーンが扱う魔術である。

 だがそれら多種多様な技は一度扱えば、すぐに彼女に封印された。

 ディーンはつい数分前、自分の元にやって来た小さな光の粒を覚えている。

 それは彼の耳元に移動し、そしてその声を届けた。


 光の粒は耳元で囁く。


「私は魔女の魔力が模倣した精霊です。今、司教からの攻撃を受けています。彼らの目的は魔女との接触、そしてこの結界の破壊です。破壊されれば中にいる人々は同じ場所に放り出され、そこで司教たちに確保されます。カーディナルが先行して『脱出用のポータル』を作ってくれたので、そこへ向かってください。道案内はこの光がします」


 やけに慇懃に語る精霊とやらに従い、鏡の道を走っているディーン。

 既にカーディナルとザザ・バティライトが安全な場所にいると伝えられるも、そのほかの卵の安否が分かっていないのだそう。


「っつっても、俺もちとやばいけどな!」


 脳内でハイテンポな音楽が流れた。

 身軽な体でガラスの壁を蹴り、そして高度を上げていく。

 だが次の瞬間、体は一気にだるくなってずるずると危険な落ち方をする。


「めんどくさいな!」


 起き上がってまた走る。

 ただ、この逃走劇も手帳に記している『勇者の行く道』の事を思うと、ほんの少しだけ楽しく感じた。彼はそういう性格だった。



 *



 ※シトラス視点


「な、なんなのあいつ」


 シトラスは灰色の髪を垂らしてぜえぜえと息を急ぎ憤慨している。


 豹の様に飛び、鏡を反射する赤髪の青年は止まる事を知らず、身体の機能を奪っても魔術で攻撃し、身体の機能を奪い返す。

 『目』の弱点に気がつかれてからずっとこの調子だ。


「魔術! 徹頭徹尾!」


 またディーンが魔術を使った。

 彼は迷うことなく魔術を乱発させる。


「――百七十五の瞳!」


 また封印する。

 でもあの男は、封じても封じても別の魔術を使ってくる。

 それほど魔術を覚えている様には見えなかったのに。


 あの男の知識はなんだ!

 それも魔術だけに飽き足らず剣術も多種多様に覚えている!

 何者なんだ!

 とシトラスは規格外な男に激怒していた。


 (ぜんっぜん勝てる気配がない!! あいつやばすぎだろ!)


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