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第100話 お姫様達のキス

―――大空を進みリオンへ向かっている黒翼シュヴァルツ・フリューゲル


娯楽室で過ごしていた面々もそのまま娯楽室に残ったり、自分の部屋に戻ったりと解散し始めていた―――


そうして八雲も自分の部屋に戻ろうとした時だった―――


「―――おわぁあ!!!な、なんだ!?ジェナか……脅かすなよ」


丁度通路の分かれ道になっているところで、突然その横道から腕が伸びてきて引き込まれた先にはニコリとスマイルを浮かべたジェナが立っていた。


「驚かせてゴメンね♪ お兄ちゃんにお願いがあるの♡/////」


「……お願い?」


(しかし、あれから妙にジェナが小悪魔的な雰囲気を醸し出している気がするんだが……)


そこでジェナが八雲の胸元にポスッと収まったかと思ったら、上目遣いで潤んだ眼差しを向けてくる。


「ジェナについて来て欲しいの……ダメ?/////」


「いや、ダメ……じゃないけど」


八雲の同意を受け取ったジェナはクスリ♪ と笑いを溢しながら八雲の手を取り―――


「―――それじゃあ!こっち!こっち!」


―――と引っ張り出した。


ジェナに手を引かれて向かった通路の先は黒翼シュヴァルツ・フリューゲルの使われていない客室だった。


その客室の自動ドアが開くと中で待機していたのは―――


―――ヴァレリアとシャルロットそしてユリエルとジュディがいる。


「ほ、本当に八雲様をお連れしてしまったのね……/////」


ヴァレリアが少し動揺したような表情を浮かべているが、八雲にはこのメンバーに呼び出される身に覚えがない。


「なにこれ?俺これからカツアゲでもされんの?」


無意識にユリエルへ視線を送って言い放つ八雲に笑顔で、


「此処が体育館裏に見える?」


と冗談を真面目なユリエルが返してきたことに八雲は逆に驚いた。


「そんな返しが出来るってことは……ユリエル、日本にいた頃にまさか……カツアゲとかしていたのか?」


この世界で聖女と呼ばれる少女が前世では体育館裏に生徒を呼び出してカツアゲやらパシリやら、同級生や後輩にやらせていたのかと思うと八雲の背筋をヒュッと寒気が走り抜ける。


「―――し、してないよ!そんな罪深いこと!勝手に人のことヤンキーにしないで!」


「うん?やんきぃ~とは一体何なのですか?」


「あ、いえ!ヴァレリア様、どうかそのことは気にしないでくださいませ」


「と言いますか、ユリエル様はかなり八雲様と親しげですのね?……やっぱりダンジョンに行かれた際に、何かあったのではないですか?」


いつにないシャルロットの鋭いツッコミにユリエルは思わずウッ…と言葉に詰まって、上手く言い訳が出来ないでいる。


その様子を見て八雲が仕方ないと助け舟を出すことにする。


「俺の故郷にユリエルも住んでいたことがあるんだよ。勿論それを知ったのはつい最近のことなんだけどな。だから親近感があるんだよ」


八雲と同じ日本から転生して、この世界に来たユリエルという観点からすれば八雲の言葉に嘘はない。


「―――そうだったのですね!?驚きましたわ!それで八雲様と親しげにされているのですね♪ 納得しましたわ」


「はい、そうなんです!初めてお会いした際にそのことが分かって、それからは親しく接して頂いております」


ユリエルも八雲のフォローに乗っかる形でシャルロットに納得してもらえてホッと胸を撫で下した。


「それで?ジェナが言っていたお願いって、此処にいる皆も関係することか?」


「うん!そうだよ♪ あのね?お兄ちゃん、これから皆と―――して欲しいの!!」


「―――ブフッ!?は、はあぁ!?その、して欲しいって?」


「はい!わたくし八雲様に―――して欲しいのです!!」


「―――シャルロットまで!?ジュ、ジュディ!一体何がどうなってる?皆一緒になんて初めてで、いきなりそんな高等プレイを姫様達はご所望なの!?むしろジュディとジェナも一緒まである!?」


「ち、違います!八雲様!落ち着いて下さい/////」


「そ、そうだよ!八雲君!いくら何でも6Pはやり過ぎだよ!悪魔の所業だよ!!」


ユリエルの言葉を聴いて、八雲も他の女性達もユリエルへと視線が集まる。


「えっと、ろくぴ~とは何ですの?何かのお遊びのことですの?」


シャルロットは純粋な眼差しをユリエルに向けて訊ねてきて、ヴァレリアとジュディは意味が分かっているのか顔を赤くして視線を逸らしてジェナはニマニマしながらユリエルの答えを待っている。


「あ、ああ、あああ、アアアア―――ッ!!/////」


ユリエルの奇声に全員がビクリと身体を震わせると、その場にしゃがみ込んだユリエルが、


「ああ……神よ……この汚れた心をどうかお救いください……正しき道へとお導きください……悪しき心を浄化してください……」


なにやらブツブツと念仏のように祈りを唱えだしたのを見て、八雲も責任を感じてしまい話題を変えようとする。


「それで?何をして欲しいって話なんだ?」


ジュディも慌てて否定していたのでまさか6Pはないことぐらいは八雲にも察しはついたのだが、お願いの内容がまだ分からないでいる。


「えっとね?ヴァレリア様もシャルロット様もユリエル様もね、三人ともお兄ちゃんとキスしたいんだって♪」


「エッ?―――キス?」


ジェナの説明にイマイチ理解が追いつかない八雲にジェナが続けて説明する。


「三人ともお兄ちゃんの婚約者様でしょ?シャルロット様が公爵様から聴いた話では、婚約者になったときからキスしていたんですって!だからシャルロット様も婚約者様なのに、まだキスもしていないのが気になるってことなの。ジェナやお姉ちゃんや他の皆とはしているのに婚約者様としてないのはおかしいでしょ?」


「オオ……ジェナに正論で論破された。あとエアスト公爵はあとで説教だな……」


「いやこれ正論なんですか?」


得意気にムフン♪ とした表情のジェナに論破された八雲。


そしてその八雲にこれは正論なのかと突っ込みを入れるまでに成長したジュディ……


ジュディもジェナもメイドになった時からアリエスに鍛えられていて、今でも指導役はアリエスが就いている。


ジェナが小悪魔的なあざとい行動を見せたり今回のように言い負かすほどの話術を身につけたり、ジュディが冷静に会話へツッコミを入れたり、そしてさらには密かに戦闘訓練を受けていて『龍紋』の効果で高度な戦闘もこなせるほどの技術を身につけているのはすべてアリエスのお陰であった。


そんな中で考え込んだ八雲だが結局は本人達の気持ち次第だという結論に至って、


「シャルロットは俺とキスしたいの?」


―――と気持ちを確かめると、


「は、はい!/////―――八雲様が……お嫌でなければ……」


「―――こんな可愛いいお嬢様にキスしたいなんて言われて断る男なんていない」


「まあ♡ 可愛いって……言ってもらえました/////」


八雲の言葉にポォ~♡ と頭の中が呆けてしまうシャルロットに八雲がそっと近づいてゆっくりと抱き寄せる。


「……アッ/////」


見上げるとすぐ近くにある八雲の顔にシャルロットはますます頭が沸騰するかのように混乱して顔を真っ赤にしていると、八雲がそっとシャルロットの美しい金髪の髪を撫でて落ち着かせた。


「シャルロット……」


「……はい、八雲様/////」


お互いの名前を呼び合って、そっと唇を寄せ合うと―――


「ん……」


「ちゅ……んん/////」


シャルロットのぷるぷるとした潤いのある唇に八雲は自らの唇を重ねる。


唇を重ねるだけの優しいキスをして、そっと離れるとシャルロットは瞳を潤ませて胸の鼓動が早鐘のように鳴り響いているのを感じていた。


これで八雲の婚約者としての第一歩を踏み出したとシャルロットは実感していた。


「や、八雲様!!……その……わたくしも……/////」


シャルロットと八雲の口づけを目の当りにして、ヴァレリアの胸中には『羨ましい』という感情が湧き上がり思わず声を上げずにはいられなかった。


「おいで、ヴァレリア」


「―――は、はい/////」


シャルロットが場所を空けて八雲の胸元にそっと入ったヴァレリアも上目遣いで八雲を見上げる。


すると八雲はそっとヴァレリアの頬に手を添えて、その唇に自身の唇を重ねた……


「……ん」


「ん!……んちゅ……んん/////」


人生で初めての口づけを八雲に捧げたティーグルの姫は、この時から八雲にどこまでもつき従うと改めて誓いを立てる。


ティーグルのプリンセスの唇を奪った八雲もまた元々は一般人なのでドキドキと鼓動が早まっていた。


そんなふたりのキスシーンを見ていたユリエルは愛し合う者同士のキスはこれほど美しいものかと感動していた。


聖女として数々の婚姻の儀式に参加している経験を持つユリエルは、式で新郎新婦が誓いの口づけをするところが自分も幸せになったような気持ちになりながら愛し合う者同士の口づけをいつも見ていた。


だが、いざ自分がそのキスをするという状況になって戸惑っている気持ちもあった。


取り戻した日本で過ごしていた記憶を遡っても、自分は異性とキスをしたことがない。


それどころか異性と交際をしたことすらないまま―――事故で命を落としたのだ。


そんな青春時代しか思い出せないユリエルにとって、目の前にいる八雲は日本にいた頃の自分と同じ価値観を共有できる唯一の存在であり地聖神に導かれた相手でもあり、いや、そのような外部からの事情は関係無くユリエル自身が想いを寄せている相手であることは揺るがされることのない本物の自分の気持ちだった。


「八雲君!あの、わ、私も……/////」


「ユリエルには訊いておくべきだと思っていたんだけど俺達の国とこの世界は違った文化と価値観があって、俺も最初は戸惑ったけどユリエルは、その、いいのか?複数の女性と……」


この異世界に初めて来た頃の感情を思い出して一夫多妻といった文化の違いというカルチャーショックを共有しているだろうユリエルには、どうしても訊いておきたかった八雲の言葉にユリエルは笑みを浮かべて―――


「責任……取ってくれるんでしょ?それに、言われたの。必要なのは私の覚悟だって。だからいいよ/////」


誰に?といった野暮な質問などする気のない八雲は黙って頷き、


そして―――


「……ん」


「んん……ん……んちゅ/////」


―――お互いの唇をそっと重ねて、お互いの存在を確かめるように何度も啄む様なキスを繰り返した。


柔らかいユリエルの唇を楽しむように愛おしむように口づけを続ける八雲。


―――漸くふたりのキスが終わり、ふたりが離れたことで儀式のようだったキスの会に突然終わりを告げる声が響く。


『―――マスター。まもなくリオン議会領の主都レオーネに到着する。アサド評議会議事堂のタラップに接舷の予定』


艦内放送として設置した風属性魔術の拡声スピーカーから響くディオネの声で皆がハッと現実に戻ってきた。


「―――よし!もうすぐリオンに到着する。皆、降りる準備をしようか」


八雲の指示に皆で返事をして、だが背を向けた八雲の後ろではヴァレリア、シャルロット、ユリエルの三人が名残惜しそうに自分の唇を指先で撫でている。


「良かった♪ 良かった♪―――次はベッドでお兄ちゃんのお相手をしないとね♡ アイタ―――ッ?!」


とんでもないことを口走る妹の頭にジュディお姉ちゃんの鉄拳制裁がゴチン!と音を立てて落ちてきた。


「―――調子に乗らないの!!!」


怒ると怖いジュディを涙目で頭を摩りながら見上げるジェナだった……






―――リオン議会領アサド評議会議事堂の上空


以前に八雲が前もって造っておいた黒翼シュヴァルツ・フリューゲル用のタラップがある場所にディオネが器用に操船して着陸すると、地上ではジョヴァンニとカタリーナを始め多くの評議員とティーグルからジョヴァンニを護衛してきたジェミオスが待っているのが見えた。


接舷したタラップから八雲を先頭にぞろぞろと降りてくるとその面々を見て、その場で待っていたジョヴァンニ達の顔も引き締まった。


八雲とノワールを始めとしてティーグルの王女ヴァレリアに公爵令嬢シャルロット、そしてフォック聖法国の聖女ユリエルに美女揃いの龍の牙ドラゴン・ファング達、更にノワールの胸に抱かれたシェーナ?


「ようこそいらっしゃいました皆様。どうかごゆっくりお寛ぎください。それと……あの、黒帝陛下、そのお子様は?」


ノワールの胸でクマのぬいぐるみを抱きしめたシェーナが知らない顔ばかりに視線を向けられて、ノワールの胸に顔を埋めて恥ずかしがっている。


「ああ、ロッシ評議長。あの子は例の事件の被害者のひとりです」


それが戴冠式で訊いた『エルフ狩り』のことを指していることをジョヴァンニはすぐに察した。


「そう……ですか。あんなに小さな子まで被害に……ですが、リオンにいる間はゆっくり心を休めて頂けたら幸いです」


「これからレオパールの調査をするのにもリオンを拠点にして行動するつもりだから世話になります」


「もちろん全面的に協力させて頂きます。まずは中に―――」


そう言ってジョヴァンニは議事堂の中へと八雲達を促す。


そこへカタリーナがジェミオスと共に八雲の元にやってくる。


「―――八雲様♪ 会いたかったですわ/////」


「俺も会いたかったよ!カタリーナ。学院祭の準備は進んでいるのか?」


「はい♪ 明後日の開催は問題ありませんわ!わたくしもソフィー姉さんとサリーと一緒に、その日は露店を出す予定ですの♪」


「へぇ~!それは楽しみだ。それで三人がする露店なら飲食関係なのか?」


「―――それは当日のお楽しみです♡」


「兄さま!無事にリオンにご到着されて安心しました」


次にジェミオスが抱きつかんばかりに喜んで八雲の無事の到着を喜んだ。


「ジェミオスもロッシ評議長の護衛ご苦労様。これからまた別の仕事を頼みたいから龍の牙ドラゴン・ファングに合流してくれ」


「―――はい!承知いたしました♪」


ふたりと会話してからジョヴァンニ達を待たせているので一旦離れて八雲は議事堂の中に入る。


案内された会談室では八雲にノワールとサジテール、スコーピオ、そしてジョヴァンニとリオンの評議会議員が入室して着席した。


因みにこの間シェーナはコゼロークが面倒を見ている。


そこで八雲から先に発言する―――


「リオンの評議会議員の皆さん。今日は皆さんと建設的な話をしていくために来ました」


ジョヴァンニと評議会議員達は黙って八雲の言葉に耳を傾ける。


「まずは―――」


八雲はまず道の舗装後の状況について質問する。


「そのことについては担当議員から説明を―――」


ジョヴァンニの目配せで立ち上がったひとりの議員が状況報告を始める。


―――道路舗装により陸上輸送業は飛躍的にその輸送時間の短縮が実現されたこと。


―――警備府の建設と同時に隣に建てられた宿泊施設の利用率も日々7割~8割の部屋が埋まっており、安全を買うことに躊躇いのないリオン商人達は挙って利用している。


因みにこれほど利用率が高いのはリオンに近い宿泊施設でエーグルやエレファンの国土に建てた宿泊施設の利用率は5割~6割部屋が埋まるくらいとのデータも説明された。


シュヴァルツ皇国を形成する各国の警備府に併設された宿泊施設はすべてロッシ商会が運営を行っている。


一見すると独占状態なのだが、ジョヴァンニはその施設内で使用する消耗品や食材などはすべて他の商会との取引で仕入れを行っている。


建物の運営を行う代わりに施設で利用する消耗品や食材はすべて他の商会に仕事を振ることで納得させているのだ。


その他の商会もエーグルやエレファンにまで支店のある大店に声を掛けて納品させるルートを確保している。


そして宿泊施設で生まれた利益は各国の税率に則り納税されているので各国の王族達も税収が潤っていくシステムだ。


「道の舗装から宿泊施設までやっぱりリオンに任せて正解だったな。対応から運営までの動きが早かった」


「―――ありがとうございます。料金設定も上中下に振り分けた部屋の造りで料金も安価な設定から高級コースまで幅広くできる建物の造りでしたので利用者も多く、なにより隣に警備府があることが安心だと噂が噂を呼んで利用者は増える一方です。各国への納税も増えていくことと思います」


ジョヴァンニの説明に八雲は時期を見て宿泊施設を増やすのもありだと考え始める。


「そして警備府についてですが、これは場所によってはまだ荷物を野盗に襲われたり、死傷者が出たりという場所が散見されます。件数こそ減りましたけれど未だに野盗は存在しています」


「真面目に働けばいいものを……警備府の増設と宿泊施設の増設についてリオンで場所の選定を検討して欲しい。増設する場所はより安全を高めるためとして考えてもらいたいんだ」


八雲の提案にジョヴァンニも他の評議員達も頷く。


「次に知りたいのはリオンの物価の変動について、いつ頃から変動しているか教えて欲しい」


「―――分かりました」


再びジョヴァンニの目配せに道路事業とは別の評議会議員が起立する。


「黒帝陛下のご質問であります物価の上昇について、その兆候は遡ること二カ月ほど前から始まっております」


「―――その根拠は?」


「遡って調べたところ丁度その頃から少しずつですがレオパール魔導国からの輸入品の遅延が発生し始めており、それがここ一ヵ月になりますと顕著に目立ち始めて常態化している状況にまでなっております」


「―――主に遅延している品目は決まってる?」


「はい。特に多いのは魔法薬関連です。回復薬などの高級薬品から傷薬といった安価な物まで、ここ一ヵ月は殆ど入ってきていません」


「―――理由はこの前言ってた通り?」


「はい。レオパール国内での需要が高まったと……ですが特別どこかと戦争が起こった訳でも、魔物の群れが襲ってきたなどといった事件もありません。他国に流れてもいませんし国内に備蓄しているとしか考えられません」


「その辺はこっちでも調べてみるよ。サジテール、スコーピオ」


八雲に声を掛けられて、ふたりが立ち上がる。


「ふたりに任務オーダーだ。さっきの話しにあった魔法薬などの薬品の備蓄状況、その他の食料などの備蓄も含めてレオパールで何をしようとしているのか探ってきて欲しい。それとルドナ=クレイシアの魔術研究所を特に徹底的に調査してもらいたい。事態が掴めたら『伝心』で報告をしてくれ」


「任務了解した」


「御子の頼みとあれば是非もなし。了解した」


サジテールとスコーピオにレオパール魔導国調査を指示して今日の会談は終わりを告げた―――






―――会談が終わり、部屋を出た八雲をカタリーナとジェミオスが待っていてくれた。


「ふたりとも待っていてくれたのか?」


「―――はい。八雲様のご迷惑でなければ久しぶりにお話しがしたいと/////」


「私はサジテールとスコーピオを待っていましたのでふたりと話してきますね♪ 兄さま!カタリーナ様とちゃんとお話ししてくださいね!」


ジェミオスは何故か可愛くガッツポーズをキメて会談室から出てきたサジテールとスコーピオに向かっていく。


三人には明日出発してもらうようサジテール達には指示しているのでジェミオスも明日には出発することになるだろう。


そしてふたりきりになった八雲とカタリーナだが急に沈黙が間を挟んでしまったので気まずい雰囲気になっていると、そこにジョヴァンニが部屋から出てきて、


「どうしたんだ、カタリーナ?あれだけ黒帝陛下が来られたらあれをしたい、これを話したいなんて息巻いていたのに?」


「―――お、お父様!?そ、そんなこと八雲様の前で言わないで/////」


途端に顔を真っ赤にして照れるカタリーナにジョヴァンニが更に、


「黒帝陛下のお傍に上がりたいとまで宣言しておいて、そのように腰が引けていてはドンドン追い抜かれてしまうよ?」


「んな!?―――そ、そんなことはありませんわ/////」


「そうかそうか。だったらあとは頑張りなさい。黒帝陛下、不出来な娘ですがどうぞ宜しくお願い申し上げます」


「ロッシ評議長にそこまで言われて頭を下げられては、此方もしっかりとエスコートしなければいけないな。カタリーナ、いまから俺の船に招待したいんだけれど、どうかな?」


「エッ!?あの天翔船に?ホントに宜しいのですか?/////」


「ああ、ロッシ評議長には晩餐会のような催しは辞退させてもらった。これから暫くはリオンに滞在するし、毎回晩餐会していたら気楽に訪問できないだろ?」


「うふふ♪ 八雲様はしっかりとご自身のお考えがあるのですわね。是非わたくしもあの天翔船に乗ってみたいと思っておりましたの♪」


「それはよかった。それじゃロッシ評議長、お嬢様をお預かりします」


「はい。カタリーナ、別に今日は無理に屋敷へ戻らなくてもいいよ」


「―――お、お父様!?/////」


そう言い残してジョヴァンニはその場を去り、余計に気まずい空気がふたりに漂う。


「とりあえず……行こうか?」


「あ、ハイッ!……よろしくお願い致します/////」


八雲とカタリーナは少しずつ会話をしながら黒翼シュヴァルツ・フリューゲルへと向かっていくのだった―――



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