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第110話 三人との夜、そして新たな物語へ

―――金髪を肩くらいの長さに揃えて均整の取れたプロポーションと白い肌、アリエスと双子に見えるほどそっくりでありながら、仕草や性格は違うものの同じ蒼い瞳を潤ませながらメイド服を脱ぎ捨てていくと、その下から現れた蒼い下着姿が妙に色気を感じさせるサジテール。


長い金髪の癖毛を揺らし、綺麗な肌のモデル体型で形の良いバストを黒いブラに包み、そのスリットが深く切れ込んだスカートも脱ぎ捨て右目の眼帯を取ると下から現れた金色の瞳と左目の赤色の瞳のオッドアイが八雲を見つめながら、頬を少し赤く染める初々しさを見せるスコーピオ―――


―――体型はふたりと比べると幼さがあるものの美少女と呼ぶに相応しく、脱いだメイド服の下からは可愛いピンクの下着を装い小振りながらも形の良い胸と水を弾くほどのきめ細かい白い肌が男を魅了する魔性すら感じさせるジェミオス。


三人とも覚悟を決め、八雲の前に自ら下着姿を披露しながらも表情は頬を赤くして恥ずかしさに耐えているのが八雲にも十分伝わってきていた―――


「三人とも、すごく綺麗だ。ありきたりな言い方かも知れないけど、本当にそれ以上の言葉が見つからない」


正面から八雲に見つめられてハッキリと『綺麗』だと言われた三人は、ますます顔を赤らめて、


「そ、そうか、あまり言われ慣れていないから……恥ずかしいな/////」


「俺もだ、これまで自分の中にこれほど女を感じたことはない/////」


「とっても嬉しいです、兄さま……大好きです♡/////」


それぞれ思ったことを八雲に伝える三人に、


「皆だけ脱いでもらうのはダメだよな」


そう言って八雲も上着を脱ぎ筋肉質な上半身を曝け出すと見事な肉体に三人の視線が集中し、ハァと感嘆の吐息を漏らしていた。


そうして八雲は下着も含めて全裸になる。


「あうう////……」


「おお……凄いな/////」


「きゃ?!はわわ!お、大きいですぅ/////」


彫刻のように筋肉が引き締まり、そして雄々しく立ち上がる雄に三人とも食い入るように見つめて目が離せない様子を八雲はすこし優越感を感じて眺めながら―――


右の牙ライト・ファングの子達は素直で積極的だけど、左の牙レフト・ファングの子達は男女のことに関しては奥手というか知識がない分、少しビビッてるように思えるな)


―――などと考えていると、あることを試すことにした。


「三人ともこっちにもっと近づいて」


「エッ!?/////」


八雲の言葉に正気に戻った三人はおずおずと近づいてくる。


「それじゃあ触ってみて」


そう言って両手を広げて身体を差し出す八雲。


「はぁあ!?さ、触るのか!?/////」


「い、いいのか?/////」


「あうう!は、恥ずかしいです……/////」


―――と、やはり一歩引いてしまう。


「これから三人共、こういうことに慣れてもらわないといけない。それにはまず触れるところから始めようと思う。別に喰いついたりはしないから、ほら!手を出して?」


そう言って三人に手を差し出させると、「大丈夫!大丈夫!」とゆっくりその手を身体に触れさせる。


そうして少し触れては離し、触れては離しを繰り返すうちに、少しずつ慣れて身体の表面を優しく撫で回し始める。


「……固いな/////」


「ああ。まるで鉄みたいだ/////」


「これが兄さまの……逞しくて素敵です/////」


次第に夢中になって触れてくる三人のスベスベで少し冷たい指の動きが気持ち良くなってきて、八雲も寄せてくる快感の波に堪えていた。


身体の表面、胸や腕を撫でだした三人を見ている。


「あ、なにか、身体が熱くなってきました/////」


ジェミオスがそう告げるとサジテールもスコーピオも同意したように頷く。




三人共こういった知識もあまり持ち合わせていないため八雲は実践しながら教えるしかないと考える。


「それじゃあ、今からひとりずつ相手するけど、順番はどうする?」


三人を見回して問い掛けると、スコーピオが一歩前に出る。


「俺を一番初めにしてくれ御子/////」


一番に名乗り出たのはスコーピオだった。


「俺は勿論かまわないけど、他のふたりはどうなんだ?」


三人を相手にすると言っても八雲はひとりしかいない。


相手をするならひとりずつになるのは当たり前で順番は八雲が決める形でも良かったのだが、この三人の反応を見たくてワザと順番を問い掛けた。


スコーピオの名乗りを聴いてサジテールは―――


「お、俺は、かまわない/////」


―――と返答してジェミオスは、


「い、一番はすこし怖いので、どうぞ/////」


とやはりまだ緊張が続いている様子だったので八雲はスコーピオの手を取りベッドに向かう―――


「ふたりも一緒にベッドに上がって、同じことをするから見ておくんだ」


「わ、分かった/////」


「はい、兄さま/////」


キングサイズはある大型のベッドの真ん中にスコーピオを横に寝かせて、サジテールとジェミオスには自分の番が来た時のために見ておけと指示する八雲だが処女を三人ベッドに上げて、しかも初体験を見ていろと言っている内容は鬼畜だなと自分でも理解している。


しかし知識の少ない三人にはこの機会に色々見て感じてもらった方がこの先もやり易いだろうと考えてのことだ。


仰向けで横たわるスコーピオの横に添い寝状態になりながら、八雲が横から身を乗り出して、スコーピオを上から眺めて語りかける。


「どうして一番を希望したんだ?スコーピオ」


突然の質問に瞳をすこし大きく開いて驚いてから、スコーピオはゆっくりと答える。


「御子がサジテールと閨を共にするという話を聞いた瞬間、胸が苦しくなって同時に怒りのような感情が湧いてきたんだ……たぶん俺はふたりの内どちらかが先に御子に抱かれるなら、その場でおかしくなってしまうかも知れない。だから一番に名乗りを上げた」


スコーピオの答えを聴いて、それが嫉妬の感情だということをスコーピオは自覚していないと理解した八雲は、今それは言わないでおこうと考えた。


「分かった。今からお前を俺の女にする。俺の『龍印』でお前に『龍紋』を刻むぞ。スコーピオ」


「望むところだ。俺は御子のモノになりたい。きっとこの気持ちはこれから先も変わらないことだけは俺には分かる。だから、お前の好きにしてくれ/////」


その言葉を言い終わるか終わらないかというところで、八雲がスコーピオの唇を奪った。


「んん?!ん、んん……ん……/////」


初めはビックリしていたスコーピオだったが、そこから何度も何度も重ねられる八雲の唇の感触を、まるで自分の唇に染み込ませるような感覚に陥り、次第に余計な力を抜いていく。


次第に全身がふわふわしてくるように感じたとき、八雲が少し舌を伸ばしてスコーピオの下唇をその先で舐め始めたので、無意識にスコーピオも舌を表に出してくる。


そこで八雲の舌と擦れ合い、徐々に絡め合っていくと、スコーピオの脳がディープキスの刺激に蕩けるような感覚に囚われ思考が麻痺していく。


「んちゅ♡……ん、御子ぉ/////」


表情も次第に蕩け始めたのを確認した八雲は、キスしながら右手でそっと綺麗な山を描く胸にそっと置いてみる。


手には勿論いつもの『神の手』スキルを纏わせており、ゆっくりと張りのある胸を包むように揉むと、スキルの効果で強い快感が胸から伝わったスコーピオは身体を無意識にくねらせ、両脚を寄せてスリスリと自らの脚同士を擦り付けていく。


「んん!ああ♡ 御子、胸、好きなのか?御子に触られると、気持ちよくなってきて/////」


「ああ、スコーピオの胸だけじゃなくて全部好きだぞ」


唇から離された八雲の口がスコーピオの耳元でそう囁くと、ビクビクと身体を震わせるスコーピオが、


「だ、ダメだ♡……そんなこと……言われたら/////」


頬を赤らめるスコーピオ―――


―――その様子に固唾を飲んで見守るサジテール。


顔を両手で覆いながらも開いた指の間から、それらの様子を見つめているジェミオス―――


―――こうしてこの夜……


八雲によってサジテール、スコーピオ、ジェミオスの下腹部に『龍紋』が刻まれたのだった―――






―――次の日の朝。


窓から優しい陽射しが差し込む貴賓室のベッドで八雲が目を覚ますと……


ベッドに仰向けで横になる八雲の左右にスコーピオとサジテールが、腰の辺りにしがみ付く様にしてジェミオスがいて三人とも全裸のまま熟睡していた。


窓の外が白むまで貪るように絡み合っていたため、三人共ベッドで静かに寝息を立てて幸せそうな顔で眠っている。


そんな幸せそうな顔を眺めていると、誰からともなく目を覚まして―――


「……おはよう……八雲様/////」


「おはよう御子/////」


「おはようございます……兄さま/////」


昨晩のことを当然思い出した三人は、顔を赤らめながら八雲と朝の挨拶を交わし、八雲がシャワー代わりのクリーニングに使用している風属性基礎ウィンド・コントロール水属性基礎ウォーター・コントロールの魔術を用いて三人の全身を綺麗にすると自らも綺麗にしてから身形を整える。


服装を整えると貴賓室を出て、食事の出来る広間まで移動すると既にノワールとエヴリン、エルドナがそこで朝食を取っていた。


「おお!おはよう八雲!―――昨日はお楽しみだったな♡」


「おはよう御子様―――昨日はお楽しみでしたね♡」


「おはようございます御子様―――もう少し声は抑えてくださいね♪」


ノワール、エヴリン、エルドナに昨日のことをすっかり知られていたことにサジテール、スコーピオ、ジェミオスは真っ赤になって否定しようとしていたが八雲はまったく気にせずに、


「あれくらい普通だ。むしろもっと激しいのまである―――なぁ?ノワール」


とノワールに話を振って返すと、


「な、何故そこで我に問い掛ける!いや、まあ、確かに我の時はもっと激しいのを……/////」


「―――なに丸め込まれているのよ。ノワール」


とエヴリンにツッコミを入れられて―――


「う、うるさい!独り身のお前に言われたくない!いい加減再婚したらどうなんだ!」


―――とエヴリンに言い返す。


「あら♪ だったらエディスも娶ってもらったことだし―――私も御子様に娶ってもらおうかしら?」


「―――は?ダメに決まっているだろう?年を取り過ぎてボケたか?」


マジ引き気味の表情をエヴリンに向けて言い返すノワールにエヴリンも心の中でブチッ!となにか大切なモノが切れる音がする。


「あ?…ちょっとそこの泣き虫ドラゴン、表に出なさい……」


「は?…いまなんて言った性悪エルフ……消し炭になりたいか?」


ふたりの魔力が一気に膨張して食事の席が暴風に見舞われる直前―――


「はいはい!―――もう!ふたりともいい加減にして!!昨日からこればっかり」


ふたりの間に入って止めたのはエルドナだった。


どうやら昨晩三人で話している時から徐々にこの展開が始まり、今ではなにか言うたびにエルドナがこうして仲裁に入る形になったようだ。


「分かったわよ、エルドナ。あ!そうだ♪ 御子様!貴方、今日リオンに帰るんでしょう?」


「―――え?ああ、そうだな。その予定だけど?」


すると八雲の返事を聞いて、エヴリンが八雲の腕に巻きつくと豊満な胸で八雲の腕を挟んできて、


「私も一緒にリオンに連れて行って♪ エディスに会いたいのよ♪」


と、お茶目な笑顔で擦り寄って来る。


「こ、こらぁ!エヴリン!!ちょっと八雲様にくっつき過ぎだぞ!八雲様が迷惑じゃないか!/////」


そこで八雲とエヴリンの間にサジテールが割って入るよう身体を差し込んできた。


「あら♪ 随分と素直になったみたいね♡ サジテール♪ それはとても良いことだわ♪」


「―――なっ!?お、俺は別に、そんなんじゃ!/////」


途端にシドロモドロになるサジテールを八雲が抱き寄せて肩を抱きながらエヴリンに向いて、


「一緒に行くのはいいけれど国のことはいいのか?ルドナもいなくなって、アンタまでいなくなったんじゃエルドナさんがキツイんじゃないの?」


レオパール魔導国の三導師のうち、ふたりまでいなくなったら国の政が機能するのかと八雲は心配した。


「ああ、その事なんだけどルドナがあんな事になって、それでエルドナとふたりで話し合って国の代表はエルドナにしてもらうことにしたのよ。私は引退」


「ええ?いいのか?国の重鎮がいきなり引退なんて?」


エヴリンの言葉に驚きを隠せない八雲がそのことを訊くと、


「ああ、私が引退と言ってもまったく国に関与しない訳じゃないわ。私はエルドナの相談役に収まる形にしたの。そして今まで私達三導師がしていたことを今後は『三公』を置くことにして統制を取ることにしたわ。実際のところ私達がいつまでも三導師にいたんじゃ、若い者達の成長に繋がらないということでね」


新たな役職を置いて、そこに若いエルフを就かせて後進に道を譲っていく形を構築していくのが目的だとエヴリンから説明を受ける。


「それで、これからまた忙しくなりそうだから娘の顔を見ておこうかと思って」


「そうだな。エディスもきっと喜ぶよ」


「そう、かしら?……そうだといいのだけれど」


最後に少し影を落とす表情をしたエヴリンだったが、エディスと会うことが一番の薬になると思った八雲は余計な慰めは止めておくことにした。


そして―――


「―――準備はいいか!」


表に出た一行は八雲の用意したキャンピング馬車に乗り込み一路リオン議会領へと向かうのだった―――






―――八雲がレオパール魔導国の黒き魔女の件が落ち着き、リオンに向けて出発した頃、


―――シュヴァルツ皇国ティーグル公王領


エアスト公爵領の街道にふたりの女性が歩みを止めて―――


「はぁ~!よ、ようやくたどり着いたよ……遠かった……本当に……アルブムからティーグルってホント遠すぎでしょ!」


黒髪のストレートロングに黒い瞳をした少女は一緒に歩いている白髪のストレートロングの少女に嘆いていた。


「仕方がないでしょう?貴女が九頭竜八雲にどうしても会いたいなんて我が儘を言って聞かないから、こうして此処までやってくることになったのよ?―――雪菜」


「わ、分かってるわよ、白雪。貴女には本当に感謝してるわ!大好きよ♪」


「またそんな調子の良いことを言って……別にいいけど/////」


雪菜に対してはつい甘くなってしまう白雪こと白神龍スノーホワイト・ドラゴン。


そして、漸くふたりが辿り着いた場所とは―――


「此処が……黒龍城……此処に八雲が……」


見上げる門は黒き鋼の城―――黒神龍の黒龍城の城門だった。


だが、そこに―――


なんの前触れも気配もなく、もう一組の人影が現れた。


「ほお~♪ これは珍しいヤツがいるではないか?―――久しいな白神龍スノーホワイト


まったく気配を感じられなかった白雪と雪菜は驚いて声のする方に振り返ると、そこには紅の瞳をした美少女と美女が立っている。


シャプカと呼ばれるふわふわの白い毛で覆われた二十cmほどの高さをした円筒状の帽子を被った少女。


髪は金髪に一部赤い髪のメッシュが入り、見た感じ長い髪はその帽子の中に仕舞い込んでいるようで纏められた髪により、首の後ろの白いうなじがよく見えている。


白いブラウスに赤いネクタイを締め、赤い生地に白のチェックカラーのプリーツスカート、そしてその上から白地に赤い刺繍が鏤められたコートを纏っている。


「貴女は!?……どうして、此処に貴女が?」


「エッ?―――知り合いなの?白雪」


「白雪……それが御子につけてもらった貴女の名前なのね」


そこでその美少女と共に立っているもうひとりの美女が声を掛けてくる。


真っ赤な腰まで伸びた長髪に白雪同様の長い耳、炎のような赤い瞳に白い肌をした女性。


慎重は雪菜と同じくらいで、まるで巫女の装束に似た着物状の白い衣服に赤い刺繍が鏤められていて、しかしその下は袴ではなく、赤いロングのスカート状で左右には腰の高さまでスリットが切り込まれ美しい太腿が覗いている。


紅蓮グレン……当然貴女も一緒なのね」


「―――白雪?此方の方ともお知り合いなの?」


ひとり場についていけない雪菜はブンブンと首を振り登場した女性達と白雪を交互に見ていると、


「まだ名乗っていなかったな。余は炎零イェンリン=ロッソ・ヴァーミリオン。ノルドの覇王だ。ヴァーミリオン皇国の皇帝にして紅神龍の御子、そして剣聖などと呼ばれているものだ―――白神龍の御子よ」


「え?―――ノルドのヴァーミリオン皇国って確か大陸最大の国土を有する国……そこの……皇帝陛下!?」


「あはははっ!!―――そのような反応を見るのは久しぶりだ。可愛らしいではないか!気に入ったぞ!白神龍の御子」


「あ、そうだ!えっと……草薙雪菜です!白神龍の御子になりました!ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」


そう言って雪菜はイェンリンにペコリと頭を下げる。


「おお♪ そうか、雪菜というのか」


「初めまして。私は紅神龍紅蓮グレン=クリムゾン・ドラゴンよ。よろしくね雪菜さん」


「―――あ、はい!こちらこそ宜しくお願いします!……それで、御二人はどうして黒龍城へ?」


雪菜はふたりがこの城を訪れた理由が気になり訊ねると、


「ああ、此処の黒神龍の御子の八雲のヤツがな。余がヴァーミリオンに来いと言ったのにまったく音沙汰がなくてな。しかもいつの間にか国を四つも纏めてシュヴァルツ皇国などという我がヴァーミリオンに匹敵する領土の国を興しよったのだ。これはまた痛い目を見てもらおうと乗り込んできたという訳よ♪」


「はあ……って、エエッ!?八雲!?―――イェンリンさんは八雲を知ってるんですか!?」


八雲の話題が出て雪菜はイェンリンに詰め寄って問い掛ける。


「ああ、勿論知っている。余とはお互いに命を懸けて燃え上がった仲だからな♪」


「命を懸けて……燃え上がった……仲……」


厭らしいイェンリンの言い方をそのまま鵜呑みにしてしまった雪菜はガ~ンといった効果音が聴こえそうなほどの落ち込みを見せた。


「……本当のところは?」


雪菜の様子を見ていられなかった白雪がイェンリンに問い掛ける。


「―――言った通り剣を交えたのよ。信じられるか?余と剣を交えて生き残った上、余に手傷を負わせたのだぞ?クックックッ♪ ああ、早く余を超える剣士になって欲しいものだ♪」


「エ?……それじゃあ、好き合っているとかでは?」


「―――はあ?あんな小僧に余が恋心など抱くか。ところでお前は随分と八雲のことを気にしているな?お前こそ一体どんな関係だ?」


今度はイェンリンが雪菜に問い掛ける。


「あ、はい。えっと私達、幼馴染なんです」


「……幼馴染だと?」


その言葉を聴いてイェンリンは紅蓮に目を向けると彼女に『伝心』で―――


【―――まさかこの娘……異世界から来たということか?】


【この子も八雲さんと同じく神の加護の気配を感じるわ。それに言っていることも嘘ではないと思うけれど】


―――紅蓮の返事を聞いて、イェンリンの脳裏に途轍もない八雲へ嫌がらせ的な計画が思い浮かんだ。


「―――おい、雪菜とやら」


「はい?なんでしょうか?」


「今から余が―――お前を攫うことにする」


「エ?なにを一体―――」


―――その瞬間、白雪が雪菜の腕を取り強引に後ろに下がらせる。


そして白雪の目の前に雪菜と同じ白いコートに身を包んだ美女が姿を現すと、イェンリンと紅蓮の目の前にも紅い甲冑を装った美女フレイアが突然その姿を現した―――


「やはり連れてきていたか……白い妖精ホワイト・フェアリーを」


―――イェンリンがニヤリとして口走ると、


「そっちもやっぱり紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリーを護衛につけていたわね」


白雪もそれに対して無表情で返答する―――


「ダイヤ……雪菜を護りなさい。このふたりは私が相手するわ」


「畏まりました白雪様」


ダイヤと呼ばれた白いコートの美女は雪菜を庇うようにして、その前に立ちはだかる。


黒神龍の『龍の牙ドラゴン・ファング


紅神龍の『紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー


そして白神龍にも―――


―――『白い妖精ホワイト・フェアリー』と呼ばれる神龍が生み出した者達がいる。


イェンリンと紅蓮のふたりを相手にすると言って平然としている白雪もまた白神龍と呼ばれる神龍。


そんな大陸を揺るがすほどの強大な存在である両勢力が衝突するかというところで―――


ゴオオオオ―――ッ!!!とその場に鳴り響く音。


―――重厚な音を立てながら黒き城門がゆっくりと開き始める。


その場にいる者達全員の視線を集めるその開かれた門の先に立つ人物は―――


「此処は黒神龍様の土地……無闇に争いを始めるのは、黒神龍様より留守を預かるこのアリエスが許しません……たとえそれが神龍様であろうと」


―――龍の牙ドラゴン・ファング序列01位アリエスが姿を現したのだった。


そして此処から、また新たな物語が始まる―――




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