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第143話 浮遊島に我が屋敷を

「―――土属性基礎アース・コントロール!!」


その大地に流し込まれた土属性の基礎魔術によって、地中に含まれる鉄分が集中して大地から鉄筋が立ち上がっていく―――


「なっ!!こ、これは―――」


周囲で見ている皆は目の前に高速で組み上がっていく鉄筋と壁の部分に立ち上がっていく土壁に驚愕する。


エルフの娘達の家を建てた時よりもかなり大型の建物が早送りの映像のように組み上がっていく様は、初めて見た者は誰も言葉が出なかった。




―――三階部分まで組み上がっていく鉄筋。


―――土壁はコンクリートとなり、立ち上がった鉄筋を取り込みながら建ち上がっていく。


―――正面には屋根の張り出た入口を創造。


―――各部屋に張り出した窓と地中の硝子砂を抽出してガラス窓も取り付ける。


―――建物の外壁を黒い装甲で覆って侵入、攻撃にも問題ない防壁にする。


―――建物はロの字型の吹き抜け中庭のある屋敷で、三階まで部屋を造っていった。


―――建物の周囲に生い茂っていた雑草は地中に呑み込まれて、地面は平坦に整備される。


―――更に敷地を囲むようにして石造りの壁を立ち上げて正門を造ると遂に屋敷は完成した。




「ふぅ……これで後は少し中を整理して水回りを引けば問題無いな」


一息ついた八雲の後ろには唖然として完成した屋敷を見上げるイェンリンやフォウリン達とヴァレリアやシャルロット、それに雪菜も驚いていた。


「おい八雲……お前、今何をした?」


イェンリンが無表情で問い掛けてくるが、八雲にとっては『黒神龍特区』でよくやっていたことなので、


「え?屋敷建てただけだけど?」


「屋敷を建てたって……いや確かに建っているが、こんなことありえんだろう!?」


言っている意味が良くわからないと首を傾げる八雲に、


「八雲さん……貴方、普通は土属性基礎アース・コントロールでこれだけの建物を一気に建てるなん出来ないものなのよ?」


紅蓮が説明していく。


「え?そうなの?―――でも今までもこうして家とか建てていたんだけど?それにノワールはそんなこと今まで言ってなかったし」


と答えると近くでチビッ子達と一緒にいたノワールはあっけらかんとした表情で答える。


「ん?―――ああ、八雲、それ異常だからな」


「ええ……それを今言うのかよ……」


「―――我は御子であるお前の契約者だからな。お前のステータスが見えているから不思議とは思わなかっただけだ。お前のステータスが見えていない他の者からすれば異常にしか見えない」


そうだったのかぁ!と理解した時には遅く、フォウリンにエルカ、カイルとイシカムは呆然としたまま八雲を見ている。


だがやがて―――


「―――八雲様はやはり只者ではなかったのですね!このような魔術、いえ!もはや神の御業と言ってもいいほどの御力をお持ちだなんて改めてわたくし、感激致しましたわ」


八雲の手を取ってフォウリンがブンブン!と勢いよくその手を上下に振り、その後ろではカイルとエルカがウンウン!と力強く頷いていた。


「八雲君!―――君は攻撃魔術の操作は不得手のようだけど、こういう何かを造ったりする力は尋常じゃない力を発揮するんだね!こんなこと僕にも無理だし、きっと誰にも出来ないよ!」


とイシカムは魔術を得意とするだけに、目の前で起こった事象に感激しているようだった。


「お、おう。そうか。まあこれで俺達も浮遊島に拠点が出来たことだし、明日は学園が休みだから引っ越しして、明後日には此処から通うことにするよ」


そうして皆で出来立ての屋敷の中に入ることにした―――






―――入口から中に入るとエントランスのようなスペースが広がり太い飾り柱が立っていて、その中にはあの鉄筋が要の柱として入っている。


入った正面から吹き抜けになったロの字型の中庭が一望できるガラス窓が取り付けられていた。


「素敵ですわ!こんなに大きなガラス窓、見たことがありません!」


フォウリンを始め、ヴァレリアやシャルロットも中庭の見える窓に近づいて中庭を眺めている。


「まだ中庭の整備まで仕上げていないけど、天気のいい日には此処で食事とか出来るようにしようと思ってる」


まだ土と雑草しか生えていない中庭の使い道を皆に話す八雲と、その話しに瞳をキラキラさせている乙女達。


するとユリエルがそっと雪菜に近づき―――


「―――ねえ雪菜さん。これって私達の世界でも人気があった中庭付きの住宅っぽくない?」


―――と問い掛ける。


「あ、やっぱりユリエルには分かっちゃったか♪ 八雲ってけっこうその手の建築物とかお城とかネットでよく見ていたから。きっとこういうのが理想なんだと思うよ♪」


と答えて、ユリエルと顔を見合わせて笑い合った―――


「一階には厨房やお風呂といった水回りのスペースを造ったけど、各部屋にも個別に浴室と手洗いは造っておいた。これから部屋に家具とか入れていかないとだから、その辺のところをフロックに協力して欲しい」


イェンリンや紅蓮と一緒に来ていたフロックが前に出て、


「ああ!これだけ凄いモノ見せられたら、私も黙ってはいられないからね♪ うちのドワーフ達が造った家具を持ち込ませるよ!」


張り切るフロックだが、そこでイェンリンが告げる。


「しかし今日は家具も寝具もないのであろう?一旦下に降りて紅龍城に戻ってから明日引っ越しの準備だな」


「う~ん、確かにそこまでは石や土では造れないからな。それにフィッツェ達も迎えに行かないといけないし」


「では一度クレーブスやラーズグリーズ達とそれに白雪達とも合流して下に降りるか」


「―――そうだな。明日は学園も休みだし、一気に引っ越しするぞ!」


「オオォ―――ッ!!!」


掛け声を上げて八雲達は明日の引っ越し計画に話の花を咲かせるのだった―――






―――全員と合流してフォウリン達とそこで挨拶をして別れて、一旦地上に戻った八雲達は紅龍城から明日引っ越しを行う旨を皆に伝える。


もう既に屋敷を建ててきたことにヘミオスや白雪達は驚いていたが、クレーブスはその状況が見たかったと悔しそうにしていた……


「フィッツェ。移動に次ぐ移動でバタバタさせて悪いけど、浮遊島の屋敷に移ったらまた厨房は使いやすいように造るつもりだから、遠慮なく希望を言ってくれ」


「―――ありがとうございます。厨房は黒龍城の時と同じように造って頂ければそれで十分ですわ♪」


夕食を出してくれたフィッツェに笑顔でそう答えられたので、八雲も「わかった」と笑顔で頷いた。


食事を終えて自分の寝室に戻ると、ノワールと雪菜、それにユリエルが寝室のベッドで待っていた。


「―――ヴァレリアとシャルロットは?」


「あのふたりは昼間の中位魔術を修得する訓練で疲れていたみたい。夕食を取った後にバタン!キュウしちゃった」


雪菜が答えるとノワールが徐に服を脱いでいくが、するとそこには―――


「うお!それは……」


「フフン♪ どうだぁ八雲ぉ♡ これを覚えているか?/////」


―――ノワールが纏っているのは、リオンの聖ミニオン女学院の学院祭で購入した、あの紐のような下着だった。


褐色の肌に幅三cmほどの黒い布で首の後ろから下りてきたそれは、胸の先端の上を通過して股間に下りて行き局部がギリギリ隠れる程度で、そのまま後ろに一本のTバックとなって腰に上がり、腰の上辺りでまた二本に別れて腹部側に回って来て結ばれている扇情的な下着だった……


「忘れられる訳ないだろ。むしろいつそれを見せてくれるのかと思っていたけど……まさか、雪菜とユリエルも?」


そう言って見た雪菜とユリエルは少し頬を染めながら雪菜は唇をチロリと舐めて八雲の欲望を煽り、ユリエルは純粋に恥ずかしがって八雲の欲望を掻き立てた。


「さあ、ふたりも早く八雲に見せてやれ♪ 今晩はこの三人でゆっくりと八雲に奉仕するのだからな」


ノワールの言葉に雪菜はすぐに脱衣に取り掛かり、ユリエルは「アウゥ……」と恥ずかしさに声を漏らしながら脱いでいく。


そうして雪菜とユリエルもノワールと同じ紐下着姿を現した。


「すごく厭らしいよ。三人とも、エロ可愛すぎて俺が我慢出来ない」


そう言って八雲も脱衣していくと、潤んだ瞳で上目遣いしながら手を曳く雪菜にされるがままベッドへと向かう。


煽る様な下着に魅入られて八雲の中の欲望は大きく膨らみ続けると、そこからは夜を通して三人を貪るように抱いていく―――


―――部屋の中には三人の嬌声が次々に響き渡り続けて、いつしか窓の外は白みだしていた。


その三人の姿に満足して、八雲は明日の引っ越しのことを思い浮かべながら心地いい眠りにつくのだった―――






―――ノワール、雪菜、ユリエルの三人と愛し合った翌日。


紅龍城で朝食を取った八雲達は早速、浮遊島の屋敷に引っ越しするために準備を始めた。


「おはよう八雲様。うちのドワーフ達に家具や寝具も作らせておいたよ。今日それをこっちの方で運ぶから、八雲様達は身の回りの物だけ忘れないようにね」


フロックが八雲の肩を叩いてそう告げてくる。


「おはようフロック。昨日あれからドワーフ達に無理させてすまなかったな」


「なんの!なんの!シュティーアのところのドワーフ達もこのくらいの仕事をこなしているのだろう?だからうちのヤツ等にも言ってやったんだよ!シュティーアのところのドワーフ達に出来て、お前達には出来ないのか!ってね♪ そしたら気合い入ったみたいで何十年振りかのヤツ等の本気を見たよ♪」


「オゥ……楽しそうに言ってるけど中身ブラックなやつですね」


そんな会話をしながら皆で発着場に向かい、そこから浮遊島に上がると昨日建てた屋敷に向かった。


「よぉし!!それじゃあお前達!しっかりと仕事しな!仕事でシュティーアの工房のドワーフに負けるんじゃないよぉおお!!!」


「オオオオォ―――ッ!!!!」


フロックの掛け声にドワーフ達は運んできた家具や寝具などを軽々と担いで屋敷の中に入って行く。


そんな中、その輸送風景を面白がったシェーナにレピス、トルカとルクティアがドワーフに向かって両手を広げて、


「……んっ!」


と、自分を運べと言わんばかりの様子に気の良いドワーフ達は、


「ほぉら!行くぞぉ~♪ おお!これは大事に運ばんといかんなあ~」


そう言って家具の代わりにシェーナ達を肩に担いで屋敷の中に入って行くドワーフ達。


チビッ子達はキャッキャ♪ と笑いながら屋敷の中に運ばれていき、その様子を見ていた八雲達はホッコリほんわかとした気分になっていた―――



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