―――紅龍城の玉座の間でセレストはマキシについて語っていく。
「―――マキシが十歳になり、分別のつく年頃になり父親のライグと祖母のエチルダがマキシの母ヘルガをマキシに何の断りもなく放逐したと告げました」
その当時のことを思い出しているのか、俯いたマキシは膝をつきながらも拳を強く握っているのを八雲の目は捉えていた―――
「そんなの酷いよ……」
静かに聞いていた雪菜が声を漏らす。
実際に八雲自身も、この話には同情している部分は多い。
だがイェンリンや後から聴いたルトマン校長への所業は看過出来ない。
「それからマキシが十二歳になる直前の頃、その時のマキシはライグとエチルダにも反抗的な意志を見せ始めていて、ふたりはどうにかしてマキシの【
―――それはマキシ=ヘイトの十二歳の誕生日。
その日は最初から父親と祖母の様子がおかしかった―――
「マキシ、お前に話がある」
父親に呼ばれて行った先には、祖母も一緒だった。
いつも厳しい眼差しで祖父の仇討ちの話ししかしない祖母も父親も、今日はふたりともがにこやかでマキシが不気味に感じてしまうくらいだった。
「マキシ、お前も今日で十二歳になる」
「……エッ?」
父ライグの言葉で今日が自分の誕生日だと思い出したマキシ。
「ハハッ!こいつめ!忘れていたのか?仕方のない子だ。マキシ、十二歳になれば人は種族に関わらずギルド登録が出来ることは知っているな?」
「は、はい……父さん」
「うむ。そこでもしお前がこれから告げる試練を乗り越えたなら、お前のやりたいことを考えてギルド登録してもかまわない。商人でも冒険者でも生産系のギルドでもな」
「エッ?……本当に?」
「ああ、試練をちゃんと乗り越えたら、そのあとはギルド登録して、もうお前の好きに生きることを許そうじゃないか」
いきなりそんな話を持ち掛けてくるなんて普段のライグからは考えられない。
だが、隣のエチルダもうんうんと相槌を打って聞いているだけだ。
「その……試練というのは?」
―――これがマキシ=ヘイトの人生を狂わせる切掛けの事件になるとも知らずに……
別の部屋に連れて来られたマキシは、目の前にある大きな木の箱を見つける。
縦横高さは一mより少し大きいくらいといった正方形の木箱があり、その上から白い布が被せられていた。
「マキシよ。あの箱の中には魔物が一体入っている。いや魔物といってもそれほど強い魔物ではない。だが、これからお前がどんな人生を歩むにしても【
ライグの説明はこの世界の常識からすると聴いているだけなら、まともなことを告げているように思える。
マキシの思考もその父からの言葉に疑いをもつような点はなかった。
何より父と祖母からの敵討ち話を聴かなくてすむのだと思うと喜びが溢れ、その気持ちがはやり猜疑心が薄れていた。
「……分かりました」
そう答えたマキシに向けたライグとエチルダの歪んだ笑顔をマキシはこの後一生忘れることは出来ない……
そうして箱に向かい合ったマキシは―――
「―――【
―――箱の中の魔物に【呪術】を仕掛ける。
途端に大きく揺れる木の箱を見てマキシはビクリと震えるが、それでも【呪術】で早く終わらせようと必死になっていた。
そして暫くして気がつくと箱は動かなくなり、その箱の隙間からはジワジワと血が溢れて床に血溜まりを作り出した。
「ここまではよくやったぞ、マキシ。さあ、箱の中身もしっかりと自分の目で確認するのだ。それが命を奪った者の責任でもあるのだから」
肩越しに耳元で囁く父の声に、マキシは震えながらも木箱に近づいていく―――
これさえ終われば父と祖母から開放される―――
そうしたらギルドに登録をして自分の生き方が出来る―――
冒険者ギルドにでも登録しようか―――
【
そうなればパーティに入れてもらって仲間達にお願いして母を探しに行こう―――
自分の生き方は自分で選ぶのが万人に与えられた本当の自由と教えてくれた母を―――
見つけたら今度こそふたりで生きていこう―――
―――この木箱を開ければ、自由が待っているのだから。
ゆっくりと血の染みた白い布を避けると、木箱の上の蓋を慎重に開いていく―――
仄暗い箱の中をそっと見たマキシは、呼吸が止まった―――
「――――――ア、アア……アアア……アァアアアア……ウグ、アガ、あ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ああああああぁああああああ―――ッ!!!!!!」
箱の中には拘束されて猿轡を噛まされ、やせ細り別人のように変わり果てていたが間違えるはずもないマキシの母ヘルガが、全身から血を噴き出して目を見開き、息を引き取っている姿があったのだ……
藍色の髪を振り乱しながら絶叫を上げるマキシを、後ろから羽交い絞めにしたライグはマキシの耳元で告げる。
「―――お前!この女に唆されて自由になるなんてことを夢みていただろう?馬鹿が!お前に余計なことを教え込んでくれたせいで、お前は俺達に反抗的な態度まで取る様になってきたから、こうしてお前自身の手で始末させてやった!」
羽交い絞めにしたライグに顔を箱の傍まで押し付けられて更に叫び声を上げるマキシ。
「母親を手にかけたお前に人並の幸せなんてもう一生来ない!さあ大人しく俺達と一緒にイェンリンに復讐するための道具になれぇえ!!!」
「アアァアアアッ!!!あぁああああああぁああああああ―――ッ!!!!!」
それでも現実を受け入れられないマキシは藍色の瞳から涙を流しながら叫び声を上げる。
「いい加減に黙るんだよ!!!!!」
エチルダの言葉と同時にバシン!とマキシの頬を叩く音が部屋に響く―――
「あんたはあの忌々しいイェンリンを殺すための道具なんだ!あんたを一人前にするためにこうして二年も飼っておいてやったんだ!さっさと母親のことなんか忘れて、覚悟を決めな!!!!!」
今、この父親と祖母は何を言っていた?……復讐の道具だ……母親のことなんか忘れろ……
この二年の間……飼っていた……だからあんなに痩せていて……【呪印返し】もまともに出来なくて……
母さん……どうして……こんなことに……
ああ……僕はただ、家族で笑って過ごしていければ……それで……
急に大人しくなったマキシを訝しんだ目で様子をみながらもライグはゆっくりと羽交い絞めを解く。
「どうやら、漸く自分の立場ってものが分かったようだねぇ」
エチルダが歪んだ笑みを浮かべながら俯いて立ち尽くすマキシに近づく。
「ああ、漸く……分かったよ。自分がどうするべきなのかを……」
「ああ、そうかいそうかい。それはよかった。さあ、これからは私達と―――」
「―――【
「……は?」
「……え?」
ここからは優しくして懐柔しようとマキシに近づいたライグとエチルダにマキシの呪いの言葉が耳に届けられる―――
その途端に―――ベチャリ!と地面に何か液体のようなものがぶちまけられるような音が響いた。
「は、は、はきゃあああああああああ―――ッ!!!!!」
「うぁああああああぁああああああ―――ッ!!!!!」
けたたましいふたりの悲鳴が響き渡る―――そして、
「―――何事です!!!」
蒼龍城の地下で鳴り響くふたりの悲鳴に気がついた、この城内の侍従長にして『回復』の加護を持つ
「これは!?一体なにが……」
―――そこには脚が骨のなくなったクラゲのようになって溶解し、腕も同じように溶けて半透明になり、胴体だけを床にバタつかせている異形の生物と化したライグとエチルダがいた。
「た、助けてくれぇ!!!イギャアアア!!!い、痛ぇえええ!!!!!」
「セ、セラフィア―――ッ!か、『回復』を!『回復』をかけてちょうだいぃいい!!!」
助けを求めるふたりを見て、セラフィアはこれが【呪術】だとすぐに見抜き、
「残念ですが……この【
ふたりにとって死刑宣告と同じ意味の言葉が下されると、傍に立っていたマキシが狂ったように笑い声を上げた。
「アハッ♪ アヒャヒャヒャッ!!!イィヒヒヒヒ!!!―――アッハッハッハッ!!!」
そのマキシの姿にセラフィアは背筋がゾッとするのを覚える。
「ハハハハッ!―――どうだい?その【呪術】は?痛いだろう?苦しいだろう?ふたりのために飛び切り苦しい術を掛けてあげたよぉ♪ 僕って優しいから、絶対に助からない上に長い時間苦しみながら死んでいく術を選んであげたんだよ?感謝してよねぇ♪」
床に転がる実の父親と祖母に向かって上から光のない瞳で見下ろすマキシ。
「マ、マキシィイイ!!!!!いでぇええ!!!うぐぅうう!!!―――お、お前はぁああ!!!」
「こ、この恩知らずがぁあああ!!!!!こ、こんなことしてただで済むとでもぉおお!!!」
ライグとエチルダは激痛が身体を走りながらも見下しているマキシに罵声を浴びせようとするが、
「いいの?助かりたくないの?」
と、マキシは突然、ふたりを助けることができるような言動を口にする。
「いでぇええ!!!―――な、なにぃい!だ、だすげられるのがぁあ!?」
「は、早ぐぅじなざいぃいい!!!」
ライグとエチルダは必死に助けろとマキシに命令するが、マキシの瞳は濁っている。
「ああ、母さんをこんなことに利用しようと言い出したのがどっちなのか、正直に話してくれたら教えてくれた方は助けてあげるよ♪」
マキシの言葉は悪魔の囁きだった。
魔族の象徴たる角を額に持ち、歪んだ微笑みをふたりに向けるマキシはまさに悪魔だった―――
「は、母上だぁああ!―――お前を!!!女のおまえを!!産んだ時から!!!へ、ヘルガを気に入らなかった!!!母上が仕組んだことだ!!!」
「なぁあ!!!―――ライグぅうう!!!お、おまえだってぇええ!!!賛成していただろぉおお!!!!」
―――そんな醜い争いが始まったところに、
「何事ですか?―――ッ!?これは、一体……マキシ?これはあなたが?」
そこに現れたのは蒼神龍と
―――マキシは黙って部屋の奥にある木箱を指差す。
蒼神龍とイノセントがゆっくりとその箱に近づき、中を覗き込むと―――
「ウッ?!ヘルガ!?どうして……こんな……」
―――ふたりは箱の中の変わり果てたヘルガに驚愕する。
その間も歪んだ親子の醜い言い争いがお構いなしに部屋に響いたが、
「―――ああ、もう分かった!分かった!ようは婆ぁが仕組んで親父もそれにノッかったって話だよね?そして僕に母さんを殺させた」
マキシの口調が変わった言葉に苦痛で顔が歪んだふたりも黙り込む。
「うん、そうか、だったらふたりに良いこと教えてあげるね。僕その【呪術】、解き方なんか知らないし、その術は手足を溶かして動けなくしたあとは、ゆっくり身体を溶かしていくから地獄の苦しみを味わってから死んでね―――」
マキシが父親と祖母を見たのは、それが最後だった―――
―――事態を把握した蒼神龍はマキシを連れ出してセラフィアに世話をさせる。
そして事件から数日後、蒼神龍はマキシを連れて蒼龍城の中庭の綺麗な花が咲く場所でひとつの石碑が佇むその前にやってきていた……
「これは……貴女の母の墓です」
「母さんの……ありがとう……ございます……蒼神龍様」
弱々しい言葉で答えるマキシを見て、蒼神龍は彼女に掛ける言葉がなかった。
ヨルンの戦死以降、息子のライグを御子にと何度も願ったエチルダも、その息子のライグもこの世にはいない。
あれからマキシの【呪術】で三日三晩苦しみ抜いていたふたりは、心臓の辺りが溶けだしたところで遂に息絶えた。
蒼神龍はただ復讐のことしか口にしない、あの親子を避けていた。
だがヘルガとマキシのことは気にしてはいたのだが自分が何か手を差し伸べれば、あのふたりがマキシを御子にと強要してくることが目に見えていたからだ。
城には住まわせていたが、無縁のスタンスを一貫していたのだ。
しかし、そのことがあのような悲劇を生み、この目の前の少女は家族をすべて失ったのだと考えると、蒼神龍の胸には他者には想像もできないほど大きな後悔の念が押し寄せていた。
「マキシ……貴女はこれからどうしたいですか?」
「……え?」
突然の蒼神龍の質問にマキシは少し狼狽えてしまった。
「復讐……したいと思いますか?」
「……」
『復讐』という言葉に目を見開いたマキシだったが、そこから考え込むような仕草をして、
「僕は、何も知りません……剣術と魔術、それと【呪術】を教えられた程度で、自分に何が出来るのか、何を知らないのかを知りません……イェンリンに復讐することの意味が分かりません」
「そうですか……」
「ですから……色々知って……色々分かって……色々納得したら……そしたら死にます」
「―――ッ?!」
目の前の十二歳になったばかりの少女は母を亡くし、その原因となった父と祖母を殺し、そして納得が出来たなら自ら死ぬと大陸の東を縄張りとする神龍に宣言した。
その瞬間、蒼神龍の中で何かが動いた―――
―――この感覚は覚えている。
御子を見つけた時の言葉には言い表せない感覚―――
「マキシ……貴女……私の御子になりませんか?」
―――それがマキシに向かって伝えた蒼神龍の本心からの御子を望む言葉であり、マキシはそれを聴いて藍色の瞳を大きく見開く。
そして蒼神龍である彼女は『セレスト』になった―――
―――セレストが話し終わって、紅龍城の玉座の間にいる者達全員にその言葉が届いていた。
黙って聴いていた雪菜はその黒い瞳から、はらはらと涙を頬に伝わせて涙を隣の白雪が黙って拭ってやっていた。
中央の玉座に座る紅蓮も瞳を閉じて俯き、黙ってセレストの話しを聴いていた。
ノワールは変わらぬ表情で聴いているようだが椅子の肘置きを力強く握りすぎて、そこに亀裂を生じさせていることに八雲は気がついている。
並び立つ
―――誰もが黙り込み、シーンと静まり返った玉座で九頭竜八雲が椅子から立ち上がってマキシに向かって行く。
誰もが八雲はどうするのかと見守る中で―――
「―――俺の質問に正直に答えてくれ」
上からマキシを見下ろしながら、そう告げるがマキシは何も答えない。
だが沈黙は肯定として八雲は質問を投げ掛ける。
「イェンリンに掛けた【
「……」
マキシは何も答えない。
「別に出来ないからといって責めるつもりもないし、訊いているだけだ。だから正直に答えてくれ」
「……でき……ない」
不可能の返事に八雲は天井を見上げてゆっくりと息を吐く。
「フウゥ……だったら、あの【呪術】を解除する方法を知っているか?」
「……知らない」
「本当だな?」
「……本当に……知らない」
早速の手詰まりに八雲は周囲の神龍関係者全員に告げる。
「誰か、その方法を知っているやつはいるか?」
「……」
あのラーズグリーズやクレーブスでさえ目を合わせると首を横に振っている。
だがそこで―――
「―――あの、確証がある訳じゃないけど……」
―――雪菜が声を上げた。
「何か知ってるのか、雪菜?」
八雲が振り返って涙ぐんだ雪菜を見つめる。
「えっと……白龍城にいた時にね、私にこの世界のことを教えてくれた
「え?そんなところがあるのか?でも、そんな場所があるなら有名になってそうだけど?」
そこで白雪が雪菜に代わって答える。
「確かに貴方の言う通り、そんな特別な場所があれば有名になりそうなものよね。けれど、そのダンジョンはある特別な場所にあって私が管理しているから、通常のダンジョンとは違うの。だから見聞も広がらないってことよ」
「なるほどな……でも普通と、どう違うんだ?」
「……その場所が白龍城の地下だからよ」
素気ない白雪の答えだがそれで八雲も納得がいった。
「その泉に行くことは可能か?」
「ええ、可能よ―――但しアルブムまで戻って、直接その泉までイェンリンを連れて行かなければならないのだけれど」
「そのくらいは天翔船を使えば飛んで行けるから問題ない―――よし!明日アルブムに向かうぞ!」
「え!?明日!?―――でも確かにイェンリンをずっとあのままにはしておけないもんね!」
雪菜の顔にも笑顔が戻ってくる。
「紅蓮もそれでかまわないよな?」
「ええ!イェンリンが治るのなら、何でも協力します」
紅蓮の許可も出たところで、次はマキシについてだ。
そこで八雲は
「ラーズグリーズ先生!」
―――と、ラーズグリーズを呼ぶ。
「―――私に、なにか?」
背中にブリュンヒルデの視線を突き刺されながら、ラーズグリーズが八雲の元に近づく。
「教えてほしいことがあるのですが?」
「私に教えられることなら、教えましょう」
「先生はマキシと同じ【
「―――ええ、確かに」
「だったら、マキシの【呪術】を封印する【呪術】とかありますか?」
突然の八雲の質問に思わずマキシは顔を上げた。
「あるにはありますが……マキシの力を封じるには条件付けをしなければ無理でしょうね」
「条件付けとは?」
「例えば何かをする時には【呪術】を使ってもかまわない。その一方、他の状況では絶対に使えなくする、と言った具合の条件です」
「なるほど。その条件はこちらから指定出来るんですか?」
「ええ、出来ますよ」
「それじゃあ―――」
マキシの【呪術】を封じる条件
―――マキシ=ヘイトの【呪術】をすべて封印する。
但し、次の条件下では【呪術】の使用を許可する。
―――マキシ=ヘイトの命に関わることが起こった場合。
―――他者の人命に関わる事態における救命の場合。
―――他者を支援するために使用する場合。
これらの条件で使用した【呪術】から他者が不可抗力で傷ついた場合、マキシ=ヘイトはその責を負わない。
―――ラーズグリーズが用意した羊皮紙に八雲は条件を記載する。
「フムフム……分かりました。この条件なら封印は可能です」
ラーズグリーズが確認したので、次にマキシへと向かってその羊皮紙を見せる。
「まずはお前の【呪術】に制限を付けさせてもらう。その上でお前にはイェンリンの件の責任を取って、俺と一緒に南部スッドのアルブム皇国へ行ってもらう。異論反論質問意見に夢も希望も受け付けない」
「……夢と希望まで……でも、分かった……」
「よし、それじゃあラーズグリーズ先生!お願いします」
「分かりました……
―――【
ラーズグリーズの【呪術】により、マキシの額の角に紅い楔形文字のような紋様がリング状に浮かび上がる。
「―――これで先ほどの条件下でのみしか【呪術】は使えません」
「よし。セレストと
八雲の言葉に紅蓮は頷き、セレストは深々と頭を下げて、
「八雲殿のお言葉のままに。私も
セレストの言葉にマキシは藍色の瞳に少しだけ涙を光らせていた。
「よし!―――明日出航するぞ!準備しておいてくれよ!!」
「それで船は八雲の船で行くの?」
雪菜のその質問に八雲はニヤリと笑みを浮かべる―――
「こんなこともあろうかと……雪菜の天翔船も造っちゃいました!テヘッ♪」
お茶目に答えた八雲だが、玉座の間はその事を知るフロックと鱗を提供した白雪以外、まったく寝耳に水の話しだ。
そして当人の雪菜だが、
「マジで!?艦長はどんな娘なの!いやぁマジかぁ~!とうとう宇宙戦艦を手に入れちゃうのかぁ~♪」
「いや、宇宙までは行かねぇよ……」
おかしなベクトルの方向に舞い上がっていた……