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第178話 空の旅、一夜目

―――天翔船雪の女王スノー・クイーンで旅の一日目が終わりを告げる夜になり、


初日から食事にかなり気合を入れた八雲は、体力は大丈夫でも気疲れが出たのか、眠気を佩びて欠伸をしながら自分の個室へと向かい通路を歩く―――


―――すると、


ある部屋の前で八雲に背中を向ける恰好で耳を扉に押し付ける不審人物を発見した。


その背中は少し丸まりながら扉につける耳を近づけたり、ビクッと驚いたように離したりと、どう見ても不審人物以外の何者にも見えない……


いくら知っている者しか乗船していないとはいえ、これほどまでに不審な態度を取られると八雲も注意なり確認なりをしておかなければならないと、好奇心と悪戯心を内に秘めてその背中に『隠蔽ハイディング』スキルで接近する。


そして―――


「―――なにしてるんだ?ブリュンヒルデ」


―――と、不審な行動を取っていた紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー第二位『勝利する者』ブリュンヒルデに背中越しに声を掛けると、


「うひゃあぁ!?/////」


あり得ないような声を上げてその場で飛び上がりながら振り返った。


しかも、どこかその顔は赤く染まって耳まで赤くなっていた。


そんなブリュンヒルデの肩を優しく捕まえると、八雲は今まで聞かせたことがないほどの優しい口調でブリュンヒルデの耳元に囁く。


「―――盗み聞きするような真似をして、いけない子だな。ブリュンヒルデは♪」


「ヒェ!?―――い、いや!わ、私はぁ決してぇ、そのようなぁ/////」


いつもの凛々しい雰囲気はどこへ行ったのか、顔を真っ赤にしたブリュンヒルデは八雲に言い訳めいたことを口走ろうとするが、そうは八雲が許さない。


「―――誰がどう見ても扉に耳をくっつけて様子を窺っていれば、盗み聞きだってことは子供でも分かるぞ?『勝利する者』がそんな言い訳をするのか?んん?」


今度はブリュンヒルデの背後に回り、後ろから耳元でそう囁く八雲にブリュンヒルデは困惑しつつ、しかし言われていることは間違いのないことだと認めるよりない。


「わ、悪かった……その、偶々この前を歩いていたら、だな……こ、此処から、その、変な、声が……/////」


そう言われて部屋を見ると、そこは紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー第五位『杖を振るう者』ゴンドゥルに与えられた部屋の前だった。


変な声が聴こえたと言っておきながら、顔を耳まで赤くしたブリュンヒルデの様子を見れば、聡明な男子諸君であればすぐに想像がつくだろう―――


八雲も当然、ゴンドゥルの何かしら厭らしい現場だと信じて疑わなかった。


「他人の恥ずかしいところを盗み聞きするような悪い子は―――お仕置きが必要だな?ブリュンヒルデ」


本当にお仕置きなどするつもりはない八雲だが、耳元でそう囁かれたブリュンヒルデは、


「お、お仕置き……/////」


そう呟くように言って、ふと背後の八雲に振り返る。


その瞳は乙女となって目尻が下がり潤んでいて少し涙を溜めて、まるで八雲の言ったお仕置きに期待するかのような魅惑を振り撒いていた……


八雲は意識していなかったが、ブリュンヒルデの脳裏には八雲と初めて会った時の魔神拘束イーヴァル・バインディングに刻まれた快感が身体の奥で疼いていたのだ。


(おんやぁ?―――まさかブリュンヒルデ、本当にお仕置きしてもらいたいとか?)


まさかあの『勝利する者』がそんなバカな!?と八雲は考えながらも、それならばと試してみることにする。


「ほら、ちゃんと自分の口で言ってみろ?―――『お仕置きしてください』って言わないと」


ブリュンヒルデの頬にそっと右手を差し伸べて、撫でながら優しく語り掛ける今の八雲は、間違いなく『ゴールドフィンガー』という架空のスキルが発動している偽ホストに違いない。


その頬から伝わる温もりと、耳元で優しく囁かれるような脳を蕩けさせる言葉に我を失ったブリュンヒルデは一言だけ、


「お仕置き……して/////」


確かにそう口にした、口にしてしまった―――


だが、ここで八雲は立場が不利になる。


ここまで言えばブリュンヒルデのことだから、「ふざけるな!」と恥ずかしがりつつも言い返してきて、はい冗談!で終わらせようとしていた八雲だが、「お仕置きして」とお願いされてしまうとは思ってもいなかったのだ。


紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー第二位という紅神龍の眷属である彼女を勝手に好きにすることなど考えてもいなかったことであり、ましてやイェンリンが昏睡状態で解呪をしなければならないのに、寝ている間に義姉妹に『龍紋』つけました!とか言った日には、今度こそ殺されてしまうと八雲は内心身震いしながら考えた。


だが、熱い視線を上目遣いに送ってくるブリュンヒルデの潤んだ黄金の瞳にぷるん♪ と潤んだ桃色の唇、それは『理性の強化』をもってしても抑え切れない禁断の果実。


八雲は徐に瞳を閉じたブリュンヒルデの唇に自分の唇を近づけていく―――


すると、そこに扉の向こうから―――


「ヒイィイ―――ッ!!!!!も、もうやめでぇえ!!ゴンドゥルゥウ―――ッ!!!!!」


―――女の声が通路まで響き渡った。


その声にハッとなった八雲とブリュンヒルデは少し距離を取りながらも、今度はふたりして扉に耳をつける。


すると中から―――


「も、もうしんじゃうがらぁあ―――ッ!おぅ!おっ!おっ♡! そ、そこダメェエ―――ッ!!!/////」


「ウフフッ♡ そんなこと言ってぇ~♡ レーブは、このマッサージ♡ 大好きでしょ?」


「だ、だってぇえ!ゴ、ゴンドゥルが無理矢理ぃい!!!あっ!あっ!また、またイ―――ッ!!!!!/////」


「アハハッ!またスゴイねぇ♡ あんなところまで♡/////」


「あああっ♡! も、もう、やだぁあ/////」


「ほぉら♡ 今度はこっちだよ♡ レーブの身体はぁ、全身性感帯にしてあげるからさぁ♡/////」


「イヤァア―――ッ!!!つまんじゃヤダァアッ!/////」


―――といった八雲の予想の斜め上をイク百合の世界が広がっていた……


そんな声を聴いていたブリュンヒルデが茹でダコになるのも頷ける八雲だが、


「ブリュンヒルデ、ひとりでこんな厭らしい声を聴いていたなんて、これは本当にお仕置きしなきゃな」


「あ、あうぅ……はい/////」


今すぐ空き部屋に連れ込んで朝日が昇るまでヤリ尽くしたい衝動を抑えて八雲は、


「いいかい、ブリュンヒルデ。今夜のことは誰にも話しちゃダメだ。お前はこのまま自分の部屋に戻って風呂に入ってベッドに入ったら、自分の思う通りに身体に触れてみろ。その時のお前の手は俺の手だ」


そう言って八雲は『神の手』スキルを発動した掌で背後からブリュンヒルデの胸に触れると、その先っぽがあるだろう場所を服の上から円を描くように撫で回していく。


「ヒィヤッ!?―――な、なにを!?/////」


「―――これはお仕置きの準備だ。ブリュンヒルデが望んだんだろ?」


後ろから耳元で囁かれたブリュンヒルデはそれ以上抵抗の素振りを見せない。


服の上からでも十分効果を発揮する『神の手』によって、ブリュンヒルデの胸の先端が自己主張を始めると、途端にブリュンヒルデの声が漏れそうになるので八雲が左手でその口を塞ぐようにして覆う。


「ウウッ!あうっ……んん……ウンンッ……ンン……あっ!あっ!んあっ!んふっ♡!/////」


八雲の指の間から吐息と共に漏れ聞こえる可愛らしい喘ぎ声に八雲の理性もオーバーヒート寸前だったが、胸を弄っている手の『神の手』を更に強めると、その服の上から更に愛撫する。


「ンンン―――ッ!!!ンッ!ンンッ!ンアッ!ハァハァ♡!/////」


口を塞がれながらもビクビクと身体を何度も痙攣させる純粋なブリュンヒルデの姿に、八雲は彼女が満足したことを確信した。


そしてそっと口を塞いだ手を退けると、その下から現れた息づかいの荒い唇をそのまま奪った。


「ンンッ!?ンン―――ッ!!んっ!んん……んぅ……んっ……ちゅ……/////」


最初は驚いたブリュンヒルデも次第に絡められた舌に反応し、たどたどしく応えるようにして舌を蠢かせる。


そうして長いキスが終わりを告げると、


「俺の手がどんな感じか、覚えたよな?」


「……はい/////」


「それじゃあ言った通り、ちゃんと自分でやってみるんだぞ。それでも足らなくなった時は……」


その間にブリュンヒルデの喉がゴクリと鳴ると、


「―――イェンリンと紅蓮にブリュンヒルデを貰うと、俺から話しするよ」


そう言った八雲の言葉にブリュンヒルデは嬉しそうに微笑んで、頬を紅潮させながら黙ってコクリと頷くのだった―――






―――ブリュンヒルデと別れて自分の部屋にようやく辿り着いた八雲。


扉が横にスライドして開くと、部屋の中からは女の子独特の甘い香りが鼻を擽った……


「―――お帰りなさいませ☆八雲様」


「―――お帰りなさいませ、八雲様」


そこに現れたのは―――


―――薄い水色の透けたベビードールに青い下着を纏ったシャルロットと、赤い透けたベビードールに赤い下着を纏うヴァレリアのふたりだった。


一国の姫君と公爵家の令嬢がまるで娼婦のような恰好で期待に満ちた瞳を潤ませながら八雲を見つめている。


ふたりの下着はどこで手に入れたのか横を紐で結んだTバックだったことにも八雲は内心驚いていた。


部屋に入ってきた八雲にまるで子犬のように寄ってくるヴァレリアとシャルロットを優しい瞳で見つめながら、


「ふたりとも今夜はメチャクチャ可愛い恰好をして、そんなに昼間フォウリンに邪魔されちゃったのが待ちきれなかったのかな?」


と問い掛けるとふたりとも頬を赤らめながら、八雲の胸に飛び込んでくる。


そんな密着したふたりのTバックで露出された尻のなだらかなラインに沿って撫でながら、


「ふたりとも、舌を出して」


と優しく語りかけると、ふたりは八雲を見上げながら可愛いピンク色の舌をそっと突き出した。


それに合わせるようにして八雲も自分の舌を伸ばしながらふたりに顔を寄せると、何も言っていなくてもふたりとも八雲の舌に自分の舌をチロチロと摺り寄せ、舐め上げていく。


極上の美少女であり王女と公爵令嬢であるふたりの行為に八雲の理性はガラガラと決壊寸前にまで追いつめられながら、ふたりの柔らかな尻を鷲掴みにして耐えるように舌を絡め続ける。


「あんん……ちゅ♡ ちゅ♡ んん♡―――/////」


「レロッ♡ ちゅ♡ ちゅっ♡ ちゅ♡―――/////」


ふたりの舌づかいも激しさを増してきた頃、


「―――それじゃあベッドに行こうか」


という八雲の言葉に、今のふたりは漫画などで表現されるような瞳の中にハートマークが浮かんでいるだろうというくらい蕩けた表情で、


「―――はい♡/////」


「―――わかりました♡/////」


八雲の指示に従ってベッドに向かって行くふたり……


ベビードールから透けた背中とTバックのフリフリとゆれる尻に目が釘付けになる八雲も眺めながら後を追う。


そうしてシャツとパンツを脱ぎ捨てて、ふたりを追う八雲だった―――






―――それから、ティーグルの至宝とも言える王女と公爵令嬢との熱い夜を過ごした八雲は、


「ああ……最高」


白んでくる窓の外を見つめながら呟く。


こうして、八雲の空の旅の一夜目が、終わりを迎えるのだった―――



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