―――白龍城の城内
白い基調の大理石のような床に赤い絨毯が敷かれていて、等間隔に白い柱の立つ広い通路を進む白雪と八雲達―――
そうして案内されたのは大きな広間で中には特大の長テーブルが用意されていた。
長い辺には十二席が向かい合って並べられているテーブルに、上座には白雪、紅蓮、セレストが並んで座り、白雪から見て左の十二席に
向かいの席には上座に近い席から―――
草薙雪菜
九頭竜八雲
ヴァレリア
シャルロット
ユリエル
葵御前
白金
フォウリン
マキシ
と、着席して残りの眷属、家臣である、
サジテール
スコーピオ
ブリュンヒルデ
ゴンドゥル
フロック
ゲイラホズ
ラーズグリーズ
レギンレイヴ
アルヴィト
エルカ
カイル
イノセント
サジェッサ
ウェンス
レーブ
―――以上の者達は八雲達の後ろに立ち並んでいる。
序列外の
神龍が四人中三人も集っていて、その勢力は四勢力すべて揃っているという異様な室内だが、全員が着席して揃ったのを見て白雪が声を上げる。
「改めて―――私の眷属たる
「ハッ!」
返事をして立ち上がったダイヤモンドは、雪菜と同じ白いコートを装い、その下には白のブラウスと白いベストに金の刺繍が入っていて、下も雪菜と同じくグレーの生地に白のチェック柄が施されたプリーツスカートを履いている。
そしてその蒼い髪には金の装飾にダイヤモンドが鏤められた髪飾りを両耳の上に装っていた。
「改めまして
そう言って着席したダイヤモンドの隣に座っていたエメラルドが入れ替わりに立ち上がる。
勿論その際に胸元がポヨン♪ と上下に揺れたのを八雲は見逃してはいない。
「わたくしはエメラルドです。
ダイヤモンドと同じ服装にそのエメラルドグリーンの巻き髪には、金の装飾にエメラルドが鏤められた髪飾りを両耳の上に着けている。
その包容力を感じさせるボディーと母性を溢れさせた雰囲気は周囲を和ませる効果があるようだ。
そして次に入れ替わって立ったのが―――
髪には同じく金の装飾にパールが飾られた髪飾りをしている。
「私はパール。
美人の笑顔で金の話をするパールに八雲は少し恐怖を感じて背筋を伸ばした。
次に立ったのが、燃えるような真っ赤な長いストレートの髪に金の装飾とルビーが鏤められた髪飾りを付けた金色の瞳の美女が立って八雲達を見下ろしながら―――
「私の名はルビーだ。序列は四番。どうぞよろしく」
―――と、短く挨拶を終えて再び腰を下ろす。
(―――えっ?それだけ?)
ぶっきら棒な挨拶に意表を突かれた八雲は思わず目を一瞬見開いて身体が前に出たが、ツッコミまでは口にせず堪えた。
―――何故ならルビーから発せられる圧に気づかない八雲ではない。
敵対心を持っているという訳ではないが、警戒心は持たれていると伝わってきていた。
そんなルビーの次に立ったのがエメラルドよりも少し薄いグリーンでセミロングの髪をした茶色い瞳の美女でゆっくりと立ち上がる。
髪には金の装飾に薄緑のペリドットが飾られた髪飾りをしている。
「はぁい、わたくしはペリドットと申しますぅ♪
終始ゆっくりとした口調で語り掛けるペリドットはマイペースな印象を受ける八雲。
俗な言い方をすればお嫁さんにしたいタイプといったところだろうか。
次に立ったのは、ボブカットで水色の髪をして蒼い瞳をした美少女だ。
髪には高潔・崇高・成功・誠実・慈愛の象徴であるサファイアを鏤めた金の髪飾りをしている。
「わたくしはサファイアと申します。六番です。雪菜様の身の回りのお世話などを仰せつかっております。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
そう言ってペコリと頭を下げるサファイアに、八雲は違和感を受ける。
雪菜の身の回りのお世話係なら、どうして雪菜が黒龍城に旅してきた時について来なかったのかと―――
「……おい、雪菜。あの子、お前の世話係って言ってたけど、どうして連れて来なかったんだ?」
「ああ、ええっと……その件はまた、後から説明するね……」
雪菜にしては珍しく歯切れの悪い返事に八雲が不思議がっていると、突然『威圧』がピンポイントで八雲に向けられたので驚いて振り返ると―――
「フゥ―――ッ!!」
―――目を三角にして吊り上げて威嚇するサファイアと目が合った。
「おい、あの子もしかして……」
「それ以上言わないで……」
雪菜も額に手を当てて首を振っていたので八雲は威嚇するサファイアに、わざとニカリ♪ とした厭らしい笑みを浮かべて返すとサファイアの『威圧』が更に増す。
「―――いい加減にお座りなさい!サファイア!」
「あうぅ……はい……」
なかなか席に座らないサファイアに業を煮やした白雪が一喝する。
怒られてションボリとした表情で席に着くサファイアを見て、八雲が目を三日月のように細めて思いつく限り厭らしい笑い方を見せてやると―――
「ムッキ―――ッ!!/////」
―――と、顔を真っ赤にして今にも飛び掛からん様子で目を吊り上げていた。
「面白いな、あの子」
と揶揄う気満々の八雲がニヤついていると隣の雪菜が、
「サファイアは純粋な性格をしてるから、あんまり虐めちゃダメだよ!」
と、釘を刺してくる。
「俺は自分からは手を出さないぞ。但し出して来たら容赦しないけど」
今までもそうしてきた八雲の行動に雪菜は益々不安が募った……
プリプリしたサファイアが着席して次に立ったのが、
「アタイはオパールだよ!序列は七番さ!この城では鍛冶師の仕事を主にやってるよ!ところで皆が乗ってきたあの船は黒神龍様の御子様が造ったって聞いたんだけど、本当かい?」
青み掛かって毛先だけ翠色をした長い髪を後ろに束ねてポニーテールにした褐色肌の美女、オパールが八雲に問い掛ける。
「ああ、そうだ。俺と
「やっぱりそうなのかい!いやぁ~!あんな船を造るなんて黒神龍様の御子様はスゴイ能力をお持ちなんだねぇ!」
金の装飾にオパールを鏤めた髪飾りを揺らしながら歓喜の声を上げる。
「白龍城で鍛冶師をしているなら、あの船のことを説明するから今後はオパールにメンテナンスが出来るようになってもらいたいんだけど」
八雲の言葉にオパールはその金色の瞳をさらに輝かせて、
「―――勿論だよ!あんな船の面倒見られるなんて夢のようさ!またその時によろしく頼むよ!!」
八雲が頷いて返すとオパールは満足したように席に着いた。
次に立ったのは―――
薄茶色の髪をツインテールにして茶色の瞳を揺らして立つ美少女で、髪には金の装飾にトパーズを鏤めた髪飾りをしている。
「はじめまして。トパーズと……いいます。八番です。どうぞ……よろしく、お願いします……」
ペコリと頭を下げた少女に八雲はどこか掴みようのない感覚に既視感を感じて、思い浮かぶのがコゼロークだった。
「お好きな武器はハルバートですか?」
「は?……いえ、別に……」
「あ、なんか、すいません……」
何故か訊かずにはいられなかった八雲だが、当のトパーズは可愛らしく首を傾げていて他の
トパーズが腰を下ろすと次に紫を帯びた濃い青色、つまり瑠璃色のストレートロングの髪をして銀色の瞳をした八雲や雪菜と同じくらいの年の頃といった見た目の美少女が立つ。
その髪には金の装飾にラピスラズリが鏤められた髪飾りをしている活発そうな美少女が元気に、
「僕はラピスラズリだよ!雪菜様とは友達みたいに仲良くしてもらっています!僕の座右の銘は『心の健康』。だから悩みごとの解決や話し相手が必要なら僕を呼んでね!」
と、まるで元気なスクールカウンセラーのようなラピスラズリに八雲は笑みが零れる。
「ああ!今笑ったね!でも笑えるってことは心が健康な証しだよ!」
「ああ、笑うのは得意だ。ニヤリッ!」
「いやそれ危ない人になってるって八雲……」
サファイアの時と同じ怪しい笑みを浮かべる八雲に雪菜のツッコミが入る。
そうして次に立ち上がったのは、橙色の長い髪を一本に編んでいて、緑の瞳をした美女だ。
金の装飾に橙色のガーネットを鏤めて髪に飾っているその美女は、立ち上がるとお辞儀をして、
「
「よし分かった。早速カレーを作ろう」
『カレー』という言葉にその料理を知る者達が一斉に反応を示すが、雪菜が慌てて―――
「初日からカレー戦争勃発させない!それはイェンリンが復活してからお祝いにね?」
―――と、慌てて封印する。
ガーネットはそれほどまでに雪菜が反応する料理に興味があるようだったが、ここは大人しく言う事を聴くことにする八雲だった。
次に立ち上がるのは、紫色のセミロングの髪をした濃い紫色の瞳をした美女だ。
髪には金の装飾に紫のアメジストを鏤めた髪飾りを着けている。
「私は
外交を担当すると言うだけあって身の熟しや立ち居振る舞い、言葉遣いとどれも礼儀正しい女性だ。
そして最後に立ち上がったのが、薄青色のセミロングの髪をした藍色の瞳をした美女だ。
髪には金の装飾に薄青色のアクアマリンが鏤められた髪飾りをしているその美女は笑みを浮かべながら、
「最後になりますのが、わたくしアクアマリンと申します。十二番目であり、アメジストと共に外交関連の仕事を仰せつかっております。特に物資の流通といったことを行っておりますので、もしよろしければこの国の特産の鉱石などお買い上げの際にはお申し付け下さいませ」
最後に商売染みた挨拶で長い挨拶が締めくくられたのだった―――
―――そこから八雲を筆頭に簡単な自己紹介を行い、最後に末席に座るマキシの番になった。
一同が黙ってマキシを見つめていると、少し体を震えさせたマキシが俯きながら、
「そ、蒼神龍の御子……マキシ=ヘイト……です」
それだけ伝えてあとは黙りこくってしまうと、すでにマキシが起こしたヴァーミリオンでの事件を知っているであろう
印象の良い悪いは別としても数百年の間ヴァーミリオン皇国のことを支え、国を想って闘ってきたイェンリンのことは誰もが認めるところであり、それを騙し討ちするような手で【
だが、そんな空気を蹴散らすようにしてマキシの隣に座っていたフォウリンが立ち上がった。
その右手はマキシの左手を握って。
「皆様!ここにいるマキシはわたくしの敬愛する剣帝母様、イェンリン様に【
そう言って話し出したフォウリンに一同が呆気に取られる。
「ですが、わたくし今はマキシを憎んだり、恨んだりしておりません。同じ学舎で学び、共に生活してきたマキシはわたくしの学友であり、大切な友です。マキシは今後絶対に私利私欲で人を傷つけるような【
そう言って深々と頭を下げるフォウリンを見て、マキシも立ち上がってテーブルに額をぶつけそうなほど深く頭を下げる。
その姿に白雪と紅蓮はフゥと息を吐いて柔らかな笑みを浮かべ、セレストは涙ぐみ指でその涙を拭っていた。
するとダイヤモンドが立ち上がり、
「どうか御二人とも頭を上げて下さい。我等は元より白雪様と雪菜様に仕える眷属に過ぎません。我らの意志は常に白雪様と雪菜様と共にあります。そしてマキシ=ヘイト。貴女がラーズグリーズと八雲殿による制約の【
そのダイヤモンドの言葉に今度は八雲達の後ろに立っていたラーズグリーズが一歩前に出て応える。
「
ふたりの言葉を聞いて白雪が声を上げる。
「ダイヤモンド、ラーズグリーズ、もういいわ。皆も聞いた通りマキシ=ヘイトはその身に多大な制約を受けていることは私も見ていることよ。だから今はイェンリンの回復に向けてフォンターナ迷宮と
白雪の一言で
「―――はい!」
と返事を返してフォウリンとマキシはホッとした表情で静かに席に着く。
「それでは挨拶も終わったところでフォンターナ迷宮について説明するわ」
そうして、ついにフォンターナ迷宮の攻略に向けた話し合いが開始される―――