―――ラーズグリーズとの一夜が明けて
安全地帯の疑似太陽は外の日没と同時に沈むように造られており、夜もやってくる―――
そうして夜が明けたら再び太陽の光が安全地帯に差し込むというサイクルにより、この場所に生息している草木は維持されている。
今この安全地帯に建てられた八雲の
「んん……んぐ……んんんっ/////」
眠っていた八雲に下半身からの温かな感触が脳に届くと、ゆっくりと覚醒し始める。
そして下半身に目をやると、そこには長い黒髪をベッドのシーツに広げるラーズグリーズの姿があった。
その淫靡な姿に見ていた八雲の目も一気に覚醒させられた。
「んんっ……あ、おはようございます。あなた♡/////」
そこでラーズグリーズと思わず目があった八雲。
「おはよう、ラーズ。その……続けてくれる?」
「ええ、もちろん♪ あなたが満足するまでいたしますよ/////」
そう微笑んだラーズグリーズは満足度の高い快感を与えてくるテクニックを披露する。
「ああ、気持ちいい……ラーズ」
繰り返し頭を動かしながら、八雲に目覚めから蕩けるほどの快感を与えていく。
そんなラーズグリーズに暫く翻弄されて八雲は遂に限界を迎え、ブルブルと身体を震わせていった。
「ンンッ!……昨日あれだけしたのに、もうこんな……『絶倫』とは本当に凄い能力ですね♡/////」
「ありがとう、ラーズ……スゲェ気持ちよかったよ」
「そう言ってもらえると、私も貴方の女になれたことが嬉しいですよ/////」
そう言って八雲の胸板に飛び込んで一緒に横になるラーズグリーズの黒髪を八雲は優しく撫でていく。
「今日でこの迷宮も終わりにしたいな」
八雲がそう呟くように言うと、
「……はい。イェンリンの解呪にはどうしても
ラーズグリーズの言葉に八雲がその両頬を引っ張る。
「―――い、いひゃいれす!にゃ、にゃにするのでふか?」
「自分を犠牲にしてでもなんて言い方は、今後絶対に言うな。ラーズのことを想っている皆が悲しむことになる結果は絶対にダメだ。もうラーズが犠牲になる必要なんてないんだから」
引っ張っていた頬を離してやると、その引っ張っていたところが少しだけ赤くなったラーズグリーズが目をパチクリとさせながらも、ようやく八雲の言った言葉の意味を理解して―――
「申し訳ありません。はい、貴方に言われたことは必ず守りますよ/////」
と、八雲の唇に誓いのキスをするのだった―――
―――朝食を終えてから、作戦会議に全員が広間に集まっていた。
九頭竜八雲
草薙雪菜
マキシ=ヘイト
火凜フォウリン=アイン・ヴァーミリオン
カイル=ドム・グレント
葵御前
白金
サジテール
ダイヤモンド
ルビー
サファイア
ラピスラズリ
ブリュンヒルデ
ゲイラホズ
ラーズグリーズ
レギンレイヴ
アルヴィト
イノセント
ウェンス
―――以上、十九名が広間に集合して八雲の話しを待つ。
「此処に来る前にも話していたけど、此処からはメンバーを半分に分ける。レギンレイヴとアルヴィトはイェンリンを護るために一旦此処に残っておいてくれ。第一陣がもし攻略失敗した時は一旦第二階層の
八雲の話しを全員が真剣な眼差しで見つめて聴いている。
「―――それで、主様は誰をお連れになるのです?勿論、妾はお供致しますが♪」
そう言って口元を黒鉄扇=影神楽で隠しながら笑みを浮かべる葵に皆の視線が移る。
「ああ、俺が考えた第一陣は―――」
―――そこから八雲による突入部隊の編成が発表される。
九頭竜八雲
草薙雪菜
マキシ=ヘイト
カイル=ドム・グレント
葵御前
白金
ダイヤモンド
ルビー
ブリュンヒルデ
ラーズグリーズ
以上、十一名だ。
だが、そこでウェンスから待ったが掛かった―――
「お待ちくださいな!何故わたくしかイノセントを入れて下さらないのですか!」
「それは蒼神龍の陣営から参加するものがいなくてマキシが孤立すると言いたいのか?」
「端的に申しますと……そうです」
ウェンスと八雲は鋭い眼で睨み合う。
「ウェンスの言いたいことは分かった。それで、マキシ。お前はどう思ってるんだ?」
そこで八雲はマキシに問い掛けると、マキシはグッと表情を引き締めて―――
「八雲君の判断に従います。僕は今こそ
「マキシ様……」
「ウェンスには本当に感謝してるんだよ。僕の我が儘に最後までつき合ってくれてありがとう。イノセント、僕が戻らなかったらセレストに謝っておいてほしい。何もしてあげられない御子でゴメンねって」
「何をおっしゃいますか。我等、
「ありがとう……」
イノセントの言葉に瞳を潤ませているマキシだったが、
「はあ?何を悲壮な雰囲気出してるんだよ。確かにお前はここでケジメを着けないと駄目だ。でもな?それは別にお前に死ねと言ってる訳じゃない。俺達が傍で見ていてやる。だからお前の覚悟を示して見せろ」
「―――うん!!」
八雲の言葉にマキシは力強く頷く。
そうして残留するメンバーは―――
サジテール
サファイア
ラピスラズリ
ゲイラホズ
レギンレイヴ
アルヴィト
イノセント
ウェンス
―――以上、八名である。
「サジテール。待機メンバーのことはお前に一任する。俺達が
「分かった。だが、八雲様ならば必ず成功すると俺は信じている」
「ありがとう。俺も失敗はしたくないからな」
サジテールと話しているところに、サファイアがやってくる。
「どうしてわたくしが後詰めですの!雪菜様を護れないじゃない!!」
「お前は俺の世話役じゃなかったか?」
「ウッ!?……覚えてたのね」
「サファイアお前、俺のこと馬鹿だと思ってるだろ?」
「なっ!?―――心が読めるなんて?!」
「お前、ホント可愛いなぁ。まあ、お前がいると五月蠅いから外した」
「なぁ?!そんな理不尽が通るとでも思っているのですか!断固として抗議します!!」
「―――却下だ。お前にはラピスと一緒にレギンレイヴの護衛に就いてもらう。この攻略はイェンリンを回復させることが第一優先だ。これだけは絶対に譲らない」
「ウウウ―――ッ!/////」
涙目で呻き声を上げるサファイアを後ろからラピスラズリが抱き抱える。
「―――まあまあ♪ サファイアも落ち着いて。八雲様達が成功したらすぐ下りていかないと行けないんだから、今は此処で待とう。ね?」
「……わ、分かりました。でも!!雪菜様は絶対に無事に帰すのですよ!!」
「言われなくても分かってるっつうの!すぐに呼びつけてやるからな!笑顔で抱擁しながら俺の無事を喜ぶ言葉を言わせてやるぞ!」
「―――世界が引っ繰り返ってもそんな真似いたしませんわ!!」
ガルルル―――ッ!!と、ふたりして唸っているところに―――
「ふたりともホント仲良いよねぇ。なんだか妬いちゃうなぁ」
―――雪菜がふたりの間に立って、そう声を掛けてくる。
「雪菜様!?誰がこんな変態と仲が良いものですか!誤解なさらないでください!!/////」
「おい、触手に興奮を覚えた雪菜を差し置いて俺を変態扱いするなよ。雪菜も言ってやれ」
「―――なんで私がダメージ受けてるの!?まぁ、確かに触手プレイは興味あるけど……/////」
「雪菜様!!お気をたしかに!!!」
会話がカオスになりだしたところでルビーが痺れを切らす。
「おい、御子殿。そろそろ出発した方がいいのではないか?サファイアも弁えろ」
「うっ!ルビー!?……申し訳ございません」
「そうだな。そろそろ出発するか」
バタバタしたが、八雲と攻略組は安全地帯にある第五階層へ続く階段に向かうだった―――
―――第五階層へ通じる階段を下りていく八雲達。
下へと続いていく階段は壁に光を発する魔法石が埋め込まれていて足元まで明るく照らしている。
幅の広い階段を全員で周囲に警戒しながら進む。
「また突然階段が消えたりしないだろうな?」
前回のことから一抹の不安が過ぎる八雲だったが、ダイヤモンドがそれを否定する。
「これまで何度か第五階層まで行きましたが、あそこだけは様子が変わることはありませんでした。ですので、今回はそのようなことが起こる可能性は低いかと考えられます」
「ふ~ん……第五階層ってどんなところなんだ?」
「第五階層は一言で言えば―――地底湖です」
「地底湖?大きいのか?」
「ええ。それこそ地上にある白龍城を囲んだ湖よりも大きいです」
「そんなに大きな地底湖があるのか!?それはそれで興味が湧くなぁ」
地下に広がる巨大な地底湖というだけで男子としてはロマンを感じてしまう。
現に日本にある鍾乳洞などの中を流れる水を思い浮かべても澄んでいて、鍾乳石の幻想的な景色を醸し出す観光地もあるのだ。
「それで
ダイヤモンドに問い掛ける八雲だが、彼女の表情は難しい顔をしている。
「どんな、と言われましても
「神龍達の方が上なのかよ。だったら白雪がいうことをきかせてくれたら済む話じゃないのか?」
「それは……白雪様は
「それは聴いたけど、でも一体どうして仲が悪くなったんだ?」
「それは私も詳しくは知りません。白雪様がひとりで此方に来られた際に仲違いしたと……」
白雪と言えば物腰は柔らかいが言いたいことはズバッと言い切るタイプであり、何か
「出口だ。いや入口と言うのが正しいか」
階段の先に終わりが見えて、そこから平坦な地面に繋がっているのが見えてくる。
そうして漸く長い階段を終えた八雲達の目の前に広がっているのは―――
「これが―――第五階層の地底湖か!?」
―――階段を下りたところにある湖岸より先、地下に広大な広がりを見せる地底湖がその姿を現したのだった。
八雲を含めて初めてこの場に来た者達は、その幻想的な地底湖に思わず息を呑んでいる。
階段を長い時間下りて来ただけあって天井はかなり高くにあり、その天井には幾つも氷柱の様に鍾乳石がぶら下がっている。
湖には透き通った清らかな水が湛えられ、湖底もよく見える。
階段から下りて来たところの湖岸は見たところ五十mほどの幅がある湖岸になっていて、その壁際には明るい光を放つ魔法石が幾つも埋め込まれて周囲を昼間のように照らしていた。
「うわぁあ!スッゴイ綺麗な湖だねぇ♪ 流石は
雪菜が湖岸から見る地底湖の美しさに思わず見惚れながらそう告げると、他の者達も同じ様なことを思っていた。
「―――ダイヤモンド。
精霊召喚の儀式でもあるのかと思った八雲だが、ダイヤモンドはひとり湖に向かって前に出ると―――
「
―――と、湖に向かって大きな声で呼び掛ける。
ダイヤモンドの行動に呆気に取られていた八雲達だが、すぐに周囲に警戒を向ける。
すると―――
―――突然、目の前の水面が揺れ出したかと思うと、間欠泉のようにその場で二十mほど噴き上がり、その天辺に何者かが姿を現す。
―――水で人の形が形づくられたかと思うと、
―――その姿は見る間に人の身体に変化し始めて、
―――遂にはその間欠泉の頂上部分に人肌色をした全身に輝きを放ちながら、
―――青く長い髪と、その髪にクリスタルのような宝石の髪飾りを纏った女が姿を現す。
―――その身体には水色の絹のような光沢をしたドレスを纏い、そのドレスもクリスタルのような装飾が鏤められていて、各々が光り輝いている。
だが―――姿を現したその女は顔に白地に金の装飾をしたマスクを着けていた。
静かな地底湖に浮かび上がった不気味な女に、八雲達は気を引き締め、奥歯を噛み締める。
遂に第五階層へと到達した八雲達―――
―――しかし、
そのことをこの後に八雲達は知ることになるのだった―――