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第218話 夏のレジャーに行こう!

―――7月29日


窓から差し込む朝の陽射しが差し込む中、腕の中で眠るブリュンヒルデの寝息を感じながら八雲の意識が覚醒し始める。


白い肌を八雲の身体に密着させて、昨夜の疲れを癒すように静かな寝息を立てるブリュンヒルデの髪を優しく撫でる―――






昨夜は―――


「お“お”っ!お“ほ”っ!お“う”っ!!/////」


終わった直後に、再び腰を前後に動かし出した八雲の動きに強烈な絶頂を迎えたことで意識が殆ど飛んでいたブリュンヒルデから、普段の彼女からは信じられないくらい淫靡な声が漏れる。


「ハア!ハア!ブリュンヒルデ……ブリュンヒルデ」


上目遣いに半白目になり、開いた口から洩れる濁音のような喘ぎ声が、あの凛々しいブリュンヒルデと同一人物とは思えないような痴態を晒していることで八雲の欲望を更に燃え上がらせる。


意識が薄れていてもブリュンヒルデの女になったばかりの雌の本能は、八雲という雄に魅かれて夢の中を漂うような感覚に飲まれていた。


何度も何度も打ちつけられる八雲の動きにブリュンヒルデが嬌声を上げて逆に意識が戻り始めていた。


「ハア!あん!や、やくもどのぉ、こ、これは?ど、どうして?またっ!あんん♡!!/////」


「ブリュンヒルデと、ハアハア、もっとしたくて、クッ!我慢できなかった」


「そ、そんな!!あああっ!!そこっ!あん!―――アアアアッ!!いいぃ♡!!/////」


意識が朦朧としている間に二回目がすでに始まっていたことに一瞬驚いていたブリュンヒルデだったが、愛する八雲に求められていることの幸福感と快感が勝り、そのまま八雲の首に両腕を回して自ら抱き着いて受け止める姿勢を見せる。


「アンッ!アンッ!ンンンッ!!いま!また!アンッ!ンアア♡!!/////」


「ああ!もう!―――いくぞォオオッ!!!」


最後に深く突き進めた八雲は欲望を解放して、その濁流が噴出する―――


「おぉあああっ!!!お“っ!お”っ!アァアアア―――ッ♡!!!」


弾けるように注ぎ込まれる熱を受けて、ブリュンヒルデの下腹部がビクビクと波打ったように動いているのを八雲は最高の気分に包まれながら眺めていく―――


舌を天に向かって突き出し、ビクビクと震わせるブリュンヒルデの痴態に八雲の『絶倫』が反応しない訳はなく、この後も様々な体位で繋がり、泣いて嬌声を上げるブリュンヒルデに八雲はあらゆる角度から自分のものだと教え込んでいくのだった……






―――そんな昨夜の情事を思い出すと、眠っているブリュンヒルデの金髪を優しく撫でていく八雲。


すると、全裸で静かに寝息を立てていたブリュンヒルデがゆっくりと瞼を開く。


「おはよう、ブリュンヒルデ」


「……ハッ?!え?あれ?―――あっ/////」


どうやら寝ぼけていたようで、どうして八雲が此処に!?といった表情から一瞬で昨晩のことを思い出したようで顔が真っ赤に変わっていく。


「おはよう。よく眠れたか?」


「あ、ああ!お、おはよう、ございます……やくもどの/////」


ようやく朝の挨拶を交わしたブリュンヒルデは上半身を起こしたところで自分が全裸だったことを思い出し、思わずサッとシーツで胸元を隠す。


そんな恥じらいを振り撒くブリュンヒルデが、昨晩はあれほど乱れていたことを思い出すと八雲はそのブリュンヒルデの肩を抱いて、何も告げずにキスをする。


「んん!?んちゅ!…んっ♡……ちゅ♡……チュッ♡……」


始めは驚いていたブリュンヒルデも八雲の舌が唇に触れたところで自らの舌を差し出し、どちらからともなく絡めて舐めて吸い合って夢中になっていく―――


そうして一頻りキスを堪能して、八雲は―――


「朝食、一緒に食べよう」


―――とブリュンヒルデの手を曳いてベッドから立ち上がるのだった。


八雲の今日が始まる―――






―――身形を整えたふたりが白龍城の食堂へ向かうと、多くの乙女達が朝食にやって来ていた。


その輪の中にいたイェンリンと目が合うと、


「おお♪ 戻ったか、ふたりとも―――うん?ブリュンヒルデ?お前、その宝石はどうしたのだ?」


と、ブリュンヒルデが纏うレッドダイヤモンドを鏤めた髪飾りとイヤリングに首飾り、ブレスレットのことを問い掛ける。


「あ、えっと……その、八雲殿に……/////」


「ちょっ!ちょっとそれ!まさか……やっぱり!レッドダイヤモンドじゃないか!!」


そこに横から声を上げたのはブリュンヒルデの装飾品を見ていた紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリーのフロックだった。


「ほぉ……これはかなりの値打ち物じゃないか。宝石以外にも土台になっている金の意匠は腕のいいドワーフの手だね」


白い妖精ホワイト・フェアリーのオパールも、その装飾品をまじまじと見つめて鑑定していく。


「ほう……そんな高価な品を贈るとは、八雲も隅に置けんではないか」


ニヤニヤとした顔で視線を八雲とブリュンヒルデに向けるイェンリンだったが、


「まぁ洒落っ気のなかったブリュンヒルデには丁度良い品だろう。良かったな。ブリュンヒルデ」


「イェンリン……ありがとう」


「アルブムの商人ギルドの代表をしている人が宝石商のオーナーをしていてさ。偶々入った店でその人が薦めてくれたんだ」


「―――え?それってもしかしてビクトリアさんのこと?」


今度は雪菜が話しに加わってくる。


「雪菜は知ってるのか?マダムのこと」


「うん。こっちの世界に来てから何度も会ってるよ。オパールに装飾品の作り方を習っていた時に、鉱石の買い付けをするからって一緒に連れて行ってもらってたから」


「なるほどな。確かに装飾品だけじゃなくて鉱石の売買もやってたもんなぁ」


「でも八雲は自分の『創造』の加護で造れるから、あまり参考にならないんじゃない?」


雪菜の問い掛けに八雲は首を横に振る。


「いやいや、あれほど凝った意匠は、俺には無理だよ。そういう造詣を学んだ事もないしな」


「ああ~確かに意匠を凝らすのは作る時に一番大切だもんねぇ」


そんな会話を交わして、八雲とブリュンヒルデも皆と一緒に朝食を取る。


「―――食事が終わったら少し話があるのだ。ふたりとも付き合ってくれ」


イェンリンにそう告げられて首を傾げながらも食事を済ませた後、一緒に食堂を出る八雲とブリュンヒルデ。


そうして白龍城の応接室をひとつ借りているとのことで部屋の中に入ると、


そこには―――


―――ノワール、アリエス、イェンリンに紅蓮、そしてフォウリンとマキシとセレストに雪菜、白雪が待っていた。


「皆お揃いで、一体何の話なんだ?」


「お前達が出掛けている間に皆で決めたことがあってな。その話をしておこうと思う」


そう言ったイェンリンは八雲とブリュンヒルデに語り出した―――






「―――龍紋の乙女クレスト・メイデン……それが俺と契りを結んだ皆の総称だと?」


イェンリンから『龍紋の乙女クレスト・メイデン』のことを一通り説明された八雲とブリュンヒルデ。


アリエスはブリュンヒルデを連名目録に追加で記載していた。


「ああ。乙女を愛でるのはお前の自由だが、お前の『龍紋』は刻んだ相手に多大なステータスの向上効果を与えるだろう。別にその者を信用していないという訳ではない。だがこの先の未来は何が起こるか、巻き込まれるか分からん。ならば誰がお前の寵愛を得たのか、そこは管理する手段を構築しておくに越したことはない」


「それは、そうだけど。そこに書かれた名前が増える度に自分が節操無しの男に思えて自己嫌悪感がハンパないな……」


すると雪菜が笑顔で、


「違うよ、八雲。これは八雲の―――家族の証しなんだよ」


「雪菜……」


そう告げられると八雲の心の中で、家族という言葉が反響していた。


「お前がそう堅苦しく考える必要などないのだ。我はお前の傍に乙女達がいくら増えても喜んで迎えよう。お前の魅力を分かる者が増えることは正妻として喜ばしい事この上ないからな!」


「ノワール……ありがとう」


この異世界に放り込まれて最初に出会ったのがノワールで本当によかったと、八雲はノワールの存在に改めて感謝する。


「それと―――紅蓮、白雪、セレスト。三人は自身の眷属が八雲を憎からず想い、慕っていくことがあれば反対はしないか?」


イェンリンの問い掛けにまず紅蓮が、


「ブリュンヒルデやラーズグリーズ、なにより貴女が八雲さんと結ばれているのに今更でしょう?」


微笑みを浮かべて答える。


「雪菜が既にそうだし、もしも私の子達が九頭竜八雲との契りを望むなら、それはその子の気持ちを優先するわ」


白雪も反対はしないと宣言した。


「フフッ♪ 白雪自身はどうなの?八雲のこと、どう思ってるの?」


悪戯っ子のようなジト目で見つめながら問い掛ける雪菜の言葉に―――


「―――私の雪菜を奪っていい度胸ね今すぐ氷漬けにして愚か者の標本として城に飾られて終える人生に変えてあげてもいいのだけれどそのことを肝に銘じることね」


「藪蛇だった!?」


「サラッと恐ろしい言葉が飛び出してましたけど……」


―――白雪の言葉に雪菜も八雲も背筋がヒヤッとするのを感じる。


「セレスト、お前はどうなのだ?もしも蒼天の精霊シエル・エスプリの誰かが八雲のことを慕っていたら、どうする?」


神龍で最後に残ったセレストに質問を投げ掛けるイェンリン―――


するとセレストは、


「私は八雲殿にマキシを救われました。八雲殿がそれだけ器の大きな方だということは理解しているつもりです。もしも彼女達の中から八雲殿と契りを結びたいと決意する者が現れたとしても反対はしません」


「いや、蒼天の妖精シエル・エスプリとはそんなに絡んでないし、そんな軽はずみな判断はしないだろう?」


セレストの言い分に八雲は一応自分の考えを告げるが、


「あら?そうでしょうか?ウェンスなどはかなり貴女と関わっている時が多かったと思いますが」


「会話しただけで好きになるとは限らないだろう」


すると、八雲以外の全員が、「お前は何を言っているんだ?」と言わんばかりのジト目を向けてくる……


「な、なに?」


なんでそんな視線を向けられるのか心当たりなんかないぞ、と言わんばかりに問い掛ける八雲。


「お前はもう少し乙女心を学んだ方がいいぞ……」


「八雲って昔から女の子に好かれるのに、そういうところは鈍感だよね」


イェンリンと雪菜にダメ出しを受ける八雲は―――


「解せぬ……」


―――と、納得がいかないといった言葉を放って更に周囲の乙女達に溜め息を吐かせることになった。


だが、そこで突然―――


「―――あの、八雲様!」


「は、はい!?」


―――大声で八雲の名前を呼んだのはフォウリンだった。


両手を握って祈る様に胸元に持っていったフォウリンが、少し頬を赤らめながら―――


「あの、今日は、なにかご予定がおありでしょうか?/////」


―――恐る恐るといった様子で問い掛けてきた。


「いや、予定は、ないけど……」


フォウリンの様子に鈍感と言われた八雲も察しがつく。


「剣帝母様にも紅蓮様にも、わたくしの気持ちを告白して認めて頂きました。わたくしは本気です。どうか……どうか今日はわたくしにお付き合いくださいませ/////」


そのフォウリンの言葉に触発されたようにマキシも、


「八雲君……僕は罪人で君に預けられた身ですけど……それでも君をお慕いしています。どうか、この想いにどうか貴方のお情けを僕に頂けませんか?お願いします/////」


応接室のテーブルに頭をぶつけそうな勢いで八雲に頭を下げ、懇願するマキシ。


すると、イェンリンが―――


「八雲、お前の気持ちが一番だというのは勿論だが、このふたりの想いを受け止めてやってはくれないか?マキシの件も余はもう水に流すと決めている。お前がふたりを受け入れてくれるなら、余もこのふたりも、嬉しいのだ」


―――ふたりの誘いに乗るように助け舟を出す。


そこまで言われては八雲も無下に扱うような真似はしない。


少し考えてから―――


「よし!それじゃあ雪菜!お前も一緒に来い」


―――とフォウリンとマキシだけではなく、雪菜も一緒に誘う八雲に全員が「えっ?」と言った表情に。


「えっ?私も?でも……いいの?」


迷宮の中で一度八雲に怒られたことを思い出している雪菜が、一緒に行っていいのか訊き返す。


「いいから誘ってるんだ。今は夏休み、夏休みといえば―――キャンプに行くぞ」


「へ?キャンプ?」


「だからお前にアルブムでキャンプ出来そうなところを教えて欲しいんだ。フォウリンとマキシもいいだろ?」


「勿論、わたくしは雪菜様がご一緒だと嬉しいですわ」


「僕も、嬉しい」


「……ふたりとも、ホントありがとね」


あの日のやり直しを望む三人の女の子と意中の男の子……この四人だけのキャンプが今日始まるのだった―――



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